2006年3月19日 (日)

決勝戦〜久光製薬-パイオニア(その7)

後日の再放送のフジテレビ739の放送を見た。第3戦の第3セット、19−18ぐらいの場面から解説の中田久美さんは試合が終了する29−27まで、実は一言も(!)しゃべっていない、、、。もちろん緊迫するゲーム展開であったため、解説者も食い入るように見入ってしまった、と言えばそうなのかもしれないが、やはりテレビ中継の解説としてはまずいと思う。

今年の決勝は、戦術的に完全に男子バレーの領域に入っていた。正直言って、そろそろVリーグ女子の試合の中継も、女子バレーしか見ていない(と思われる)関係者が解説するのは限界がきているのではないかと思う。今年の決勝を解説できるとすれば、男子バレーを普段から見ている、あるいは世界のバレーを実際に解説している関係者でなければ、難しかっただろうと思う。具体的に名前を挙げれば、ヨーコ・ゼッターランドさん、あるいは杉山明美さん、そうでなければ、男子バレーの関係者にやってもらうしかないように思う。だからと言って、久光の先野選手ほどの有名な選手を知りもしないで試合が終わるまで「矢野選手」などと呼び続けるという、明らかに選手名簿などの資料を読み間違えたとしか思えないような失態を演じた男子バレー関係者にはやってもらいたくないが(あぁー、書いちゃった!(爆))。

もう一つ言いたいのは、私も会費を払っていて、このサイトからもリンクを張っている「JSVR バレーボール学会」について。バレーボールの普及と発展のために研究しようというのなら、なぜよりにもよって国内の最高レベルの大会であるはずのVリーグの決勝戦の行われる土日に、年に1回の総会を開くのかなぁ?! こんな素晴らしい決勝の対戦を目の前で見ないで、何を研究するというのか? これでは現実にそぐわない、机上の空論について研究していると言われても仕方ないと思う。大いに反省してもらいたいものだ。

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2006年3月18日 (土)

決勝戦〜久光製薬-パイオニア(その6)

総括として、今年のVリーグ女子決勝戦は、非常にレベルの高い試合だったと思う。セリンジャー監督の言葉を借りれば「どちらのチームもパワーバレーを展開した」ということになるのであろうが、この言葉には言葉尻以上の深い意味があると思う。日本バレー界において、「パワーバレー」と言うと、いわゆる日本女子バレーの伝統(?)と思われている「小さな選手が拾って繋いで、速いコンビバレーを展開する」というバレー戦術の、全く両極に位置するバレー戦術のことを指しているように聞こえる。即ち、日本においては「背の低い巧い選手が速いコンビバレーを展開する」バレーと「背の高い選手が高いオープンバレーを展開する」バレーという、2つのどちらかしかないようなイメージで捉えられていて、当然「パワーバレー」と言うと後者のことを指すと思われているような気がしてならないのだ。しかし、果たしてそうだろうか?? 確かに両チームのアタッカー陣から繰り出される攻撃は、Vリーグ女子チームの中でもトップレベルの高さとパワーを兼ね備えている。去年のVリーグ女子決勝戦のNEC-パイオニアは、よくこういう言葉で表現された。「組織プレーのNEC対個人の技術のパイオニア」と。即ち今年の決勝に残った両チーム(パイオニア・久光製薬)は、「高さとパワーを兼ね備えた」各アタッカー陣の「個人技術」に依存したバレースタイルだという風に捉えられているいい例であろう。

しかしその戦術はここまで書いてきたとおり、実は相手チームの戦術を研究した上での、綿密な分析に裏打ちされた組織バレーであった。「背の低い巧い選手が速いコンビバレーを展開する」バレーと「背の高い選手が高いオープンバレーを展開する」バレーのどちらが優れているのか? こんな不毛な議論が長年繰り広げられている日本女子バレー界であるが、答えは簡単である。「背の高い選手が速いコンビバレーを展開」すればいいのである。即ち、「高さとパワーを兼ね備えた選手が、綿密な分析に裏打ちされた組織バレーを展開」するということであり、これこそが「パワーバレー」であると思う。決勝の第3戦、セットカウントこそ3−0のストレートとは言え、すべてのセットが2点差で第2セットを除いてはジュースに持ち込まれている。これはまさに男子バレーの世界である。「20点以降の競り合いの中での、紙一重の差で勝敗が決まる」、しかしその紙一重の差が小さいようで非常に大きな差であることが、ラリーポイント制になってからの全日本男子の国際試合での戦いぶりを見ていれば一目瞭然である。そういう男子バレーの世界に、確実に日本の女子バレーも突入したという象徴的な決勝戦であったと思う。そういう意味で、非常に高いレベルの決勝戦だった。

Numberの記事がこう締めくくられていた。
「パイオニア vs. 久光の決勝戦は、日本バレーの転換期になるかもしれない。」

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決勝戦〜久光製薬-パイオニア(その5)

我ながら、どこまで続くんだろうか???

久光もホントに素晴らしいバレーを展開した。以前「リードブロック」と題して書いたときには、リードブロックの完成度はNECが一番であろうと書いたが、それは去年のリーグまでの話で、今年の久光はそれを完全に上回った。現在のVリーグ女子チームで見れば、久光と武富士がリードブロックの完成度でトップ争いをしていると見て良いだろう。よく、「リードブロック」システムは、背の小さい選手がいるチームでは採用できない、という意見があるが、私はそうは思わない。実際この2チームはセッターがどちらも背が低い。それでもここまで「バンチ・リードブロック」を完成させられるんだ、といういい証だと思う。

例えば、決勝戦2戦目以降、パイオニアはサーブカットが乱れそうになると、すかさずレオがサーブカットをするようにフォーメーションを変えてきていた。久光はそれをきっちり見極めて、レオがサーブカットフォーメーションに入れば「バンチ」で構え、レオがサーブカットフォーメーションから外れてライトからのバックアタックに回ると、「スプレッド」で構えていた。

サーブカットの正確性も、今年のVリーグ女子チームで見ると、久光は抜きんでていた印象がある。リーグを通しての記録上では、久光はトップではなかったが、ファイナルラウンド及び決勝戦という、本当にプレッシャーのかかる試合で、しかもリーグでのサーブ効果率2位だったパイオニアを相手にして、あれだけ安定したサーブカットを全試合通して展開できたのは本当に素晴らしいと思う。現在の日本の男子バレーと女子バレーを比べて、一番技術に差があるのは、何といってもサーブカットの技術であろう。女子バレーが世界でトップ争いをするために必要なのは、女子バレーの戦術が男子バレーのそれを確実に追いかけている以上、男子バレーにいかに近づくかことが出来るか? であることは間違いなく、その意味でも各チームは久光を見習う必要があると言えよう。

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決勝戦〜久光製薬-パイオニア(その4)

何度も書くようだが、バンチ・リードブロックを切り崩すには、両サイド(特にアンテナの幅いっぱいを使った攻撃)をいかに意識させるかが重要である。これまでの(バンチ・リードブロックシステムが普及する以前の)バレーにおける攻撃のセオリーでは、「自チームのエースのレフト攻撃に対する、相手チームのブロッカーのマークを、いかにセンターの速攻によって減らすか?」ということが鍵であった(はずである)。ところが、バンチ・リードブロックの時代になると、セオリーはまるで逆になった。攻撃に幅のないアタックコンビネーションでは、圧倒的な高さを持つセンタープレーヤーの、よほど速い速攻でない限り、バンチ・リードブロックシステムではカモにされてしまって、速攻にはマークはついてくれない。結局エースのレフト攻撃に頼らざるを得なくなり、3枚ブロックにあって負けに終わる。今リーグの東レが、久光に一度も勝てなかった理由の一つはそこにあると思われる。

「リードブロック」という言葉ばかりがもてはやされるが、リードブロックが機能するためにもっと重要なのは「バンチ」である。わかりやすく言えば、両サイドのブロッカーがどの場所に位置して相手チームの攻撃をマークするか? であり、「バンチ」の位置で構えるとは、両サイドのブロッカーがセンターブロッカーに接近してコート中央付近に構える、ということである。東レの今リーグの躍進の立役者である木村選手の中央からの時間差攻撃は、久光相手にはものの見事に3枚ブロックで封じられていた。「バンチ」であるからこそ、中央付近の中途半端な早さの攻撃はカモに出来る。従って、バンチ・リードブロックが当たり前の男子の世界では、両サイドの平行が恐ろしいほど高速となっている。なぜならば相手ブロッカーを「バンチ」で構えさせずに、3人の間があいた状態(=スプレッド)で構えさせるためである。

バンチ・リードブロック時代にあっての、攻撃の新たなセオリーは「両サイドのエースの攻撃を意識させて、両サイドの相手ブロッカーをスプレッドで構えさせて、マークが甘くなった中央からの速攻あるいはパイプでいかに点数を稼ぐか?」である。決勝第3戦、パイオニアの両レフトの決定率は、レオが17.9%・メグが21.9%と惨憺たる決定率であり、一方の久光のケニア選手は43.2%である。データだけを見て普通に考えれば、どう考えてもパイオニアの負けゲームである。なのになぜか? 結果はパイオニアのストレート勝ちであった。いかに久光のブロッカー陣が両サイドに意識がいきすぎて、中央の速攻でやられたか? データが如実に示している。実際、第3戦のパイオニアのセンター陣(アサコ・フランシー)の攻撃は、速いA/B/Cクイックがほとんどであり、ブロードはほとんど見られなかった。その分両レフト陣及びリーが、両サイドからひたすら攻めた(リーが中央からの時間差に回ることは全くなかった)。

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2006年3月12日 (日)

決勝戦〜久光製薬-パイオニア(その3)

もう一つ、初戦の敗戦を受けてパイオニアが修正してきた点は、ブロック後のトランジション(切り返し)である。

レギュラーラウンド中から、久光戦ではケニア選手の攻撃に対して、メグを出来る限りライト側のブロックとして当てる作戦を採っていた。1戦目ではそのために彼女をオポジットに配し、その作戦が功を奏して、久光に圧勝した。2戦目では久光がそれを嫌がって、スタートローテーションをずらしたため、パイオニアは普段のメグをレフト・リーをオポジットに配するポジションに戻したが、それでも出来る限りメグをライトブロックにつけていた。但し問題点は、それが成功して、ワンタッチをとった後の切り返しの攻撃(トランジション)である。以前「リードブロック」と題して書いたとおり、バレーは連続的に攻守の切り替わるスポーツであり、ブロックシステムも重要だが、ブロックポイントで稼げる点数は1セット当たりたかだか3・4点でしかないわけで、トランジションでいかなる攻撃を仕掛けてそれを点数に繋げるか? の方がより重要である。

決勝戦初戦、メグだけでなく対角のレオもケニア選手のレフトオープンに対して、ライトブロックについた。それ自体は機能していたのだが、問題はそこでワンタッチをとった後だった。普段のパイオニアなら、というかフランシーが普段の調子ならば、彼女の速攻でどんどん切り返してくるし、それと後衛のレフト、すなわちメグとレオのパイプで切り返してくる。しかし決勝ラウンドに入ってから、フランシーの右足首ねんざの影響で彼女は本調子とは呼べず、そのためにトランジションでは、レフトブロックに配置されたリーへのレフトオープン一辺倒になってしまった。同じブロック力と仮定しても、その後のトランジションがケニア選手のレフトオープンとリーのレフトオープンとの対決ならば、結果は見えている、、、。

その反省から決勝2戦目、パイオニアは例えばレオがライトブロックについた際のトランジションでは、積極的に彼女のバックセミにトスを上げた。そのために、ラリー中のパイオニアの攻撃に対して久光のバンチ・リードブロックは機能しきれなかった。一方で、レオ・メグの両レフトへ2段トスが上がった際には、積極的に前衛レフトのケニア選手にフェイントボールを拾わせて、久光のトランジションで彼女が打てないように持っていった。久光は落合選手に苦し紛れのパイプを上げざるを得ず、それに対して万全のブロックシステムを敷いた。

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2006年3月 6日 (月)

決勝戦〜久光製薬-パイオニア(その2)

久光が嫌がったのは明らかだった。久光がローテーションを回した第2戦の第4セット。結果的には勢いをつかんだパイオニアの圧勝に終わった。それにも関わらず、翌日の第3戦も真鍋監督は同じく一つ回したローテーションでスタートした。本当のところ、何を嫌がってローテーションを回したのかは私にはわからないが、嫌だったのはそこから見て明らかである。

しかし彼がその判断をした時点で「セリンジャー監督の勝ち」だったと言えよう。なぜならば、久光にとって、ケニア選手が前衛にいる時と後衛にいる時で得点力に差があるのは明らかである。だからこそ、常に(パイオニア戦を除いては)彼女が前衛レフトから始まるローテーションでスタートするのである。それなのに、一つローテーションを回せば、セット中に彼女が前衛となる回数が確実に減る。これは、サイドアウト制よりも確実にローテーションの回る回数の少ないラリーポイント制では、大きな差となり得る。

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決勝戦〜久光製薬-パイオニア(その1)

アップが遅れたのは、土曜日の早朝に新幹線で、試合会場(東京体育館)まで向かったからでした。

書きたいことはたくさんあるのだが、やはり第2戦。ファイナルラウンド初戦から勢いに乗り、第1戦をものにした久光に大きく傾いていた流れが、パイオニアに変わったターニングポイントは何だったのか?

第2戦、パイオニアはスタートローテーションを一つ回してきた。以前書いたように、パイオニアはスタートローテーションを決めるにあたって、相手チームのフォーメーションを考えた上で決めてくるチームである。セリンジャー監督が最終的に何を判断材料にしたかは私にはわからないが、一つは少なくともやはり今年のパイオニアの一番の勝ちパターンである、メグのサーブでいかに点数を稼ぐか? 稼げなくても、いかに相手にプレッシャーを与えられるか? に託した部分があると思われる。

ローテーションを一つ回してスタートすると、メグのサーブの際、久光の前衛はケニア・成田・先野の3選手となる。このローテーションは、以前何回か書いたように、久光にとって実は意外に弱点となるサーブカットローテーションである。オポジットに入っている成田選手がサーブカットの要となっている久光では、このローテーションで前衛センターの彼女が、サーブカットから外れることが出来ず、そうするとこのローテーションで彼女の真後ろに位置するセッターの鶴田選手が、彼女より前に出ることが出来ないために、かなりコート後方からネットに向かってスタートしなくてはいけない。そのローテーションでメグのサーブがぶつかると、普通のサーバーが打ってくる場合よりも、さらにコート後方に成田選手が構えざるを得ない。たとえ彼女が見事なサーブカットを返したとしても、まず間違いなく彼女は攻撃には参加できない。さらに、セッターの鶴田選手がネットまでたどり着いて、セットアップまでの時間的余裕がないために、先野選手の速攻も使えない。すなわちほぼ完全にケニア選手のレフトオープンしかない。さらにもしケニア選手が一発で決められずにラリーになると、サーブカット後に成田選手がネット際まで戻るのにも時間を要するために、今年の久光の持ち味であるバンチ・リードブロックシステムを組み立てられない。対するパイオニアの前衛は、レオ・リー・フランシーの最強ローテーションであり、そこでフランシー・レオの高い2枚ブロックをケニア選手にぶつければ、彼女のミスを誘いやすく、そうでなくてもワンタッチさえとって、トランジション(切り返し)でコンビを使えば、久光はバンチ・リードブロックをとれないだけに決まる確率が高い、、、。

実際にはメグのジャンプサーブでの連続得点がそんなにあったわけではない。ケニア選手が必死に一発でレフトオープンを決めて、「何とかしのいで」いるケースが多かった。しかしコート外から見ている以上に、コート上の選手達及び真鍋監督としては恐らく追い込まれていたのだろう。第2戦の勝負を分けた第3セットをとられた久光は、第4セットにスタートローテーションを一つ回してきた。

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2006年2月26日 (日)

ファイナルラウンド〜パイオニア-武富士

パイオニアはさすがだった。

お互いに4回目の対戦であり、お互いの弱点は研究しつくした同士の戦いである。実際、データで見ても両チームのサーブレシーブ成功率は惨憺たるものである。しかし、そうやって弱点を相手につかれたときに、いかにして試合中にその対策が立てられるか? が優勝するチームに課せられる課題だろう。その意味で、パイオニアの今日の試合運びは見事だった。昨日の久光戦では終始、ほとんどのローテーションをリーとマオの2枚でサーブレシーブをするフォーメーション(即ち、後衛のレフトに回ったレオ・メグはサーブレシーブフォーメーションから外れて、バックアタック用にエンドラインぎりぎりに配置していた)を敷いていた。しかし昨日の久光戦の反省もあって、今日は試合序盤から敢えてカットが乱れた場面でも、ライトからリーの攻撃を多用しようという狙いが伺え、そのために試合序盤は昨日とは違い、両レフトとマオでサーブレシーブをするフォーメーションを敷いてきた。第2セット途中、足立選手のサーブでメグが狙われて崩されてからは、すかさず昨日通りにリーとマオの2枚でサーブレシーブをするフォーメーションに切り替え、そして試合終盤にはまた元に戻した。こういったサーブカットローテーションごとのフォーメーション切り替えは、マッチョがいた頃からパイオニアではおなじみのものなのだが、以前はセリンジャー監督の指示で切り替えていたものが、いまはリアルタイムにコート上の選手達が自主的に切り替えている印象がある。セリンジャー監督からの作戦としては、これもおなじみだが、第2セットで足立選手のサーブでメグが狙われて崩されたことをうけて、第3セット目からはスタートローテーションをずらして、足立・井村両選手のサーブをレオがメインでサーブカットするように切り返させた(そのために、試合前半打数も多く、昨日同様好調だったレオの打数が試合途中から減った)。こういった細かな試合中の微調整により、研究充分であったはずの武富士も、完全にはパイオニアを崩しきれなかった。

もう一つ、今日の試合前半で、リーを意識して使っていたのには、恐らく武富士のバンチ・リードブロックを崩そうという意図があったと思われる。両サイドを意識させられると、「バンチ」ブロックは採りづらくなり、「スプレッド」にせざるを得なくなる。昨日同様、フランシーはあまり調子が試合序盤から上がらなかったが、充分に武富士のブロック陣が「スプレッド」になったのが確認できた第4セットになって、途端にユキはフランシーにトスを集めた。「スプレッド」になったがために、武富士はフランシーの中央からの攻撃に対応しきれなくなった。見事な戦略だった。

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2006年2月25日 (土)

ファイナルラウンド〜東レ-武富士

続いて第2試合。何となく昨日から、武富士が勝つような気がしてならなかった。今年の4強の各チームの戦いぶりを頭の中で整理しているうちに、「こうやって久光に勝ち越した武富士」なのだから、東レ相手にも「こうすれば、東レの負けパターンに持ち込める」はず、という図式が浮かんできて、まさに昨日の書き込みの最後にああいう書き方で結んだ。他のチーム(久光・東レ)については弱点を書いたが、武富士については弱点よりも「こうすれば勝つはず」という書き方に、自然となってしまった。

正直言うと、今日のハニーフ選手の調子は最悪だった。試合中も全く自信なさげで、誰が見ても彼女に上げたとしか思えない2段トスを、内藤選手と譲り合ってしまうほどだった。それでも今年の武富士は、試合中に「これがダメなら、じゃあこのパターンを使う」といった、切り替えが出来るのである。昨日「2つの違う種類の攻撃パターン」といったのがまさにそうで、第1セットの出足で、ハニーフ選手に連続してトスを上げて、全く決まらなかったのを確認した途端に、すぐに両レフト(吉澤・足立両選手)への速い平行中心のトス回しに切り替えた。それである程度リズムをつかむと、東レの各ローテーション毎にサーブで狙うべき場所をきちんとついて、バンチ・リードブロックを機能させた。バンチ・リードブロックが機能すると相手チームは必ず焦り始める。第1試合のパイオニアもそうであった。ただ、パイオニアはさすがにベテランが多いだけに、スパイクミスはあまり出なかったが、その点浮き足立つとスパイクミスを連発する「弱点」のある「若い」東レは、その悪い癖が出てしまった。23歳の「若い」イェレナがスパイクミスで潰れた。こうなると2年前の第10回Vリーグ決勝の時の東レがだぶって見えてくる。若さの勢いで、いつもは押し通せることが、プレッシャーのかかる場面で通用しなくなったときに、打開策となる別の戦術が出てこない、、、。2年前はプレー面でも精神面でも頼れるアダムス選手がいたが、今年の東レにはいない。2年前パイオニアに敗れたときからの課題が、未だに解決されていないことが、今日の「4位確定」という結果として戻ってきたように思う。

もう一つ、第1試合と続けて観戦して強く感じたことは、「やはり女子バレーは男子バレーを確実に追いかけている」ということ。第1試合はまさに(別にスパイクの高さやパワーという意味ではなく、戦術的な意味で)「男子バレー」そのものだった。第2試合の武富士を見ていても、実はこのチームも男子バレー的な戦術を採っている。象徴的なこととして、ラリー中に前衛センターが2段トスを上げる戦術を採っていることがある。これは、リードブロックが確立している男子バレーでは常識である。女子のVリーグチームの中で、それに一番近いところにいるのは武富士である。その意味では、東レには残念ながら、男子バレーに近づこうという戦術は感じられない、、、。

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ファイナルラウンド〜パイオニア-久光製薬

久光の完勝だった。結果から見てもそれは明らかなのだが、何が良かったのか?

実は、パイオニアも相当に考えて試合を組み立てていた。久光の弱点は、成田選手が徹底的にサーブで狙われた時であると、以前にも書いた。まさにその通り、パイオニアは試合序盤から徹底的に彼女をサーブで揺さぶった(レギュラーラウンド中、攻撃的な強いジャンプサーブにこだわって、ミスを連発していたパイオニアの戦いぶりとはまるで好対照だった)。さらにケニア選手が前衛にいるときには、ラリー中には徹底して彼女の前にフェイントを落とした。点数的には常に久光がリードしていたが、第1セット前半に流れをつかみかけていたのは、パイオニアであった。レギュラーラウンド中は、成田選手がサーブで狙われた時の久光は、ケニア選手にボールがいつも以上に集まる。そこで、狙い通りに成田選手を揺さぶることに成功したパイオニアは、作戦通りにレフトのメグをライトに、オポジットのリーをレフトに配置して、ケニア選手にプレッシャーを与えようとした。

ところが、今日の久光はサーブカットが多少乱れても、敢えてケニア選手にはトスを集めずに、いつも以上にセンター陣にトスを集めて切り返した。いわば、昨年までの「本来の久光製薬らしい」戦いぶりに戻った。その上、ラリーになった場合に、パイオニアの攻撃パターンの重要な要素であるフランシーの速攻に対して、見事なまでのバンチ・リードブロックでワンタッチをとった。パイオニアとしては、特に第1セットは、恐らく試合前の作戦通りのプレーを各選手が行って、しかもレオ・メグの両レフトのアタック決定率も高い状況だっただけに、それなのになぜか? 久光に追いつけないという感じで、徐々に焦り始めた。いつものパイオニアならば、セット中盤の競り合いの中や劣勢の状況でも、必ずしも両サイドに頼らずともセンター線で切り返せるのが強みである。ところが今日は、久光の見事なバンチ・リードブロックシステムにより、全くセンター線は機能せず、前衛のレフト攻撃かバックのレフトのバックアタックしかないという、単純な攻撃パターンに追い込まれた。それでもレオ・メグの両レフトは調子は良かったために、試合序盤は何とか久光に食い下がれても、セット終盤になると、今日のようにケニア選手に頼っていなかった久光に対しては、決め手の数で負けていた。第2セットに入ると、第1セットの反省に基づいて、パイオニアも修正を行い、メグをライトブロックに回すのをやめて、序盤は先野選手のブロードにプレッシャーを与えてミスを誘って6−1とリードを奪ったが、久光は冷静だった。鶴田選手は今度はケニア選手にトスを集めるパターンに、さっと切り替えた。パイオニアとしては、やることはきちんとやっているのにという焦りばかりが募る形で、結局第2セット後半からは各選手が精神的に切れ始めた、、、。久光の完勝だった。

ただパイオニアとしては、第3セット後半からはある種「吹っ切れた」かのようなプレーを各選手がし始めて、セット終盤にいったん追いつきそうなところまで追い上げたところが、明日に繋がる負け方だったと言えるだろう。

象徴的な言い方をすると、今日の第1試合は、まさに「男子バレー」の戦い方を見るようだった。リードブロックが機能するかしないか? 及び誰がどのポジションのブロックに跳ぶのか? そして相手のそのブロック付き具合を見て、誰にトスを上げるのか? その駆け引きに勝った久光が圧勝した。これはまさに男子バレーである。ついに日本の女子バレーも、男子バレーのこの領域に完全に追いついたと言える試合だった。

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