2008年7月 2日 (水)

"えせリードブロック"改め"ゲスブロック"

こちらで解説したえせリードブロックだが、東レアローズ男子の小林敦コーチのスポーツナビでのコラムでも登場し、本日届いていた『Coaching & Playing Volleyball(CPV)』の56号でも、米山一朋(嘉悦大)監督の記事中で登場しているゲスブロック "guess block" という言葉が、これと同じ概念を表す用語と考えられる。ゲス "guess" とはまさに「当てずっぽう」の意味である。

ところで、リードブロックの説明として時折、「トスの上がる場所を『読んで』跳ぶブロック」という表現を目にする。リード "read" の訳語が『読む』であることから、このような表現が出てくるものと推測するのだが(何を隠そう、私自身も'99年ワールドカップレポの際には、同じような表現を一部使っていた)、この表現はよく考えると誤解を非常に招きやすい表現である。日本語の『読む』には、単純に「書かれている文字を字面通りに『読む』」という意味もあるが、同時に「行間を『読む』」という表現に代表されるように「書かれていないもの、見えないものを心の目で『読む』」という意味がある。そのため「トスの上がる場所を『読む』」というと、「トスがどこに上がるのかを『予想する』」という意味にとられかねない。そのように誤解するとまさにえせリードブロック改めゲスブロック "guess block" となってしまう。恐らく日本人にとっては、リード "read" という言葉よりも、『セリンジャーのパワーバレーボール』で採用されているシー アンド レスポンド "see and respond" という言葉の方が、スムーズに概念を理解しやすいだろう。

日本人は外国語を理解する際に、いったん日本語の訳語に置き換えないと、意味を理解できないという悪い癖がある。言葉は文化に根ざしたものであり、それぞれの国で文化背景も全く異なるわけなので、訳語といっても必ずピタッと一致するものではない。従って、いったん訳語に置き換えるのではなく、出来れば原文のまま意味を理解しようとした方がいい。今説明したリードブロックの例は、まさにその日本人の悪い癖が災いする好例だと思う。以前何度か解説したデディケートなどは、確かに日本人には馴染みがない英語なので、意味が理解しにくいと思われるが、だからといってそれを無理に訳語を当てるとますます意味がわからない(しばしば『捧げる』という解説がなされているのを見るが、英語の "dedicate" と日本語の『捧げる』は、概念が必ずしも一致しない、、、あくまで「(何かに対して)(自分の神経などを)集中させる」というのが "dedicate" であって、(自分の神経などを)の部分に(自分の人生や一生を)が入った場合に『捧げる』という日本語が当てはまるだけである)。無理に訳語などに置き換えずにデディケートという新しい言葉として理解した方がいい。

例えば "libero" はもともとイタリア語で『自由』を意味する言葉だが、バレーにおけるリベロは実際には『自由』どころかプレー上たくさんの制約で縛られている。 "libero" が日本で『自由』という言葉として馴染みがある言葉であったならば、リベロ制導入時に多くの人が違和感を覚えて、ルールとしても浸透しなかったはずだ。ところが、実際には違和感どころか、すっかり当たり前のルールとして定着した。 "libero" がイタリア語でどういう意味なのか? など知らなくても、リベロという新しい言葉として、日本のバレーファンに定着したのだ。

本当は、日本人誰もが意味を「すぐに」「正しく」理解できる言葉を当てはめられたら一番いいのだろうが、バレーボールというスポーツにおける戦術用語に限っては、その概念自体が日本のバレーボール界に存在しないことも多いという現実があるため、実際には困難であろう。「戦術面で日本が世界から遅れを取っている」という現実を直視するためにも、ある程度英語の戦術用語を採り入れて行くべきだろうと個人的には思う。

えせリードという言葉は個人的にはすごく気に入っているのだが、この言葉だけでは "guess" の概念の全てを表現できてはいない。従って、これからはゲスブロック "guess block" で統一したいと思う。

| | コメント (7) | トラックバック (0)

2008年3月23日 (日)

"キルブロック"と"ソフトブロック"

キルブロック "kill block"とは?・・・ブロックを行う際の手の構え方の一つで、ブロックシャットを狙って手のひらを下に向けて、手をネットから相手コートエリア内に出すブロックの手法のこと。一方、ブロックシャットを敢えて狙わずに、有効なワンタッチを取ることを狙って手のひらを上に向けて、手をネットから相手コートエリア内に出さないブロック手法をソフトブロック "soft block"と呼ぶ。通常ソフトブロック "soft block"は、B級レベルなどで低身長の選手が多いチームなどで活用されるブロック技術であり、トップレベルのバレーにおいてはブロックといえば、キルブロック "kill block"を用いるのが通常だが、トップレベルでも例えばリードブロックを採っていて、ブロックに跳ぶのが遅れた場合に、ブロックシャットは諦めて、ワンタッチ狙いでソフトブロック "soft block"に手の出し方を切り替える、という場面がある。

(追記)トラックバック頂いた、area71さんのブログをご覧頂ければ、具体的にソフトブロック "soft block"の手の出し方がわかりますので、是非ご覧下さい。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2008年2月27日 (水)

"えせリードブロック"とは?

えせリードブロックとは?・・・『へりくつバレーボール』管理人のたれいらんさんが提唱されている概念で、一見リードブロックをやっているように見える(あるいは、それをやろうとプレーヤー自身も努めている)が、その実セッターのセットアップまでの動作やアタッカーの助走などに影響されて、トスアップが実際に行われるまでにトスの上がる位置を先読みしてしまうブロックの跳び方のこと。たれいらんさんの言葉を借りると『読みが当たりまくるとあたかもリードブロックをやっているかのように見える』から、このように名付けたとのこと。詳しくは、こちらを参照。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月15日 (土)

"5−1システム"とは?

5−1システムとは?・・・バレーボールにおける「チーム構成」を表現する言葉で、帰する所チーム内の「アタッカーの数」と「セッターの数」である。最初の数字が「アタッカーの数」、2番目の数字が「セッターの数」を表しており、即ち5−1システムとは、世界の男女ナショナルチームのほとんどが採用している「アタッカーが5人・セッターが1人」というチーム構成を意味する。世界の男女ナショナルチームの中で、5−1システム以外のシステムを採用している例は、キューバ女子ナショナルチームの6−2システム、即ちコート内に6人のアタッカーと2人のセッターがいる、いわゆるツーセッターシステムである。6−2システムにおいては、コート内の6人全員がアタッカーの役割を果たすわけであり、前衛のセッターはアタッカーとして攻撃に参加する。そのため、セッターの役割を果たす2人はローテーション上の配列において対角に位置するように配され、常にどのローテーションであっても後衛に1人セッターがいる状態を作りだし、その後衛のセッターがセットアップを行う。6−2システムの最大のメリットは、常にどのローテーションであっても前衛に3枚のアタッカーが揃うことであるが、現在の世界の男子バレー界にあっては、バックアタックが前衛からのアタックと何ら遜色ない攻撃となっており、5−1システムの下でも前衛レフトのレフト攻撃・前衛センターの速攻・オポジットのライト攻撃あるいはライトからのバックアタック・後衛レフトのパイプ攻撃の「4枚」攻撃が当たり前の戦術となっているため、6−2システムを用いた場合に生じる、セッターの役割を果たす選手が攻撃やレセプション等のセットアップ以外の技術を覚えなければならないというデメリットの方が、上述のメリットを上回ってしまう。そのため、6−2システムは目にすることがない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 2日 (金)

"ハイセット"とは?

ハイセット "high set" とは?・・・"set" はトスのことであり、字面からは「(軌道の)高いトス」という意味になるが、いわゆる「2段トス」の意味で使用される。即ち、ファーストタッチのディグが乱れてしまって、セッターがトスを上げられない状況や、セッターがトスを上げられる状況でも非常に苦しい体勢で上げなければならない状況で、前衛両サイドのアタッカーへ上げる「(軌道の)高いトス」のことである。 ハイセット "high set" を打ち切れるだけのアタッカーがなかなか出てこないことが、長らくの日本女子バレー界の最大の課題である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 6日 (金)

"サイドアウト"と"ブレイク"

サイドアウト "side-out"とは?・・・レセプション側のチームが得点すること。「ラリーポイント制」以前の「サイドアウト制」のルールの下では、サーブ権を持つチームが入れ替わること、とも言える。世界レベルのバレーボールにおいては、一般にサーブ権を持つチームが得点する確率よりも、レセプション側のチームが得点する確率、すなわちサイドアウト "side-out"の確率が高率である(特に男子バレーでその傾向が顕著である)。これは、バレーボールと同じくサーブ権の存在する、例えばテニスの場合などとは全く逆の傾向であり、テニスでは、サーブ権を持つ選手が得点する確率が高く、すなわちサーブ権を持つ選手が「サービスキープ(=ゲームをものに)」する確率が高率である。従って、サーブ権を持たない選手がゲームをものにすることをブレイク "break"と呼ぶ。
テニスとは全く逆に、サーブ権を持たないレセプション側のチームが得点する、すなわちサイドアウト "side-out"の確率が高いバレーボールにおいては、ブレイク "break"とはサーブ権を持つチームが得点することを指す。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年1月17日 (水)

"デディケート"とは?

デディケート "dedicate" とは?・・・組織的なブロックシステム戦術においては、ブロッカー3枚がどのような「位置取り」で相手チームの攻撃システムに対して対抗するのか? が重要となる。その「位置取り」を表す用語にバンチ "bunch" スプレッド "spread" スタック "stack" などがあり、それらについては既に説明済みだが、同じ範疇の用語としてデディケート "dedicate" がある。デディケート "dedicate" とは「(何かに対して)(自分の神経などを)集中させる」といった意味であり、ブロックの場面においては「相手チームの攻撃」に対して「マークを集中させる」という意味となる。具体的には、相手の繰り出す「全ての攻撃」に対して「均等に」マークするのではなく、相手の繰り出す攻撃のうちの「特定の攻撃」に対して「マークを集中させ」る(逆に、それ以外の攻撃に対してはマークを甘くする)ような「位置取り」を取ることを表す。

現在の世界最先端の戦術を繰り出すブラジル男子ナショナルチームが、このデディケート "dedicate" を徹底して採っていることについては、レゼンデバレー(その3)を参照のこと。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月16日 (火)

"トランジション"とは?

トランジション "transition" とは?・・・いわゆる「切り返し」のこと。バレーボールは連続的に攻守が切り替わるスポーツであり、スパイク攻撃(オフェンス)を行う前には(特殊なケースを除いて)必ず守備(ディフェンス)の場面がある。守備の場面は2種類あって、相手チームのサーブに対するレセプションの場面と、相手チームの攻撃に対するディグの場面である。ディグの直後に攻守が切り替わって自チームの攻撃に繋げるまでの展開をトランジション "transition" と言う。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2006年12月 3日 (日)

カテゴリーに「用語集」作りました(その2)

世界バレーも遂に今日で終了、、、またまた、ビデオを酷使してしまったわけだが(また壊れたらどうしよう、、、)如何せん男子バレーはレベルが高いため、まだまだビデオを見るのも追いついていない。というわけで、女子ほどにはなかなかリアルタイムでアップできません。申し訳ありません。

そもそも男子について語るには、まず戦術の変遷の整理が欠かせない、ということで、先日設けた「バレーボール用語集」の方で、ブロックシステム・レセプションシステムの変遷についてまとめましたので、'99年ワールドカップレポを読んで頂いてない方は、一度目を通しておいて下さい。

また、以下に参考書籍を挙げておきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月26日 (日)

カテゴリーに「用語集」を作りました

男子モードに入るにあたって、用語の統一を図る意味からも、カテゴリーに「バレーボール用語集」を設けてみました。

これまでの投稿でも私の使っている用語がその都度変わっていたり、併記して書いているようなものを、今後出来る限り、この「用語集」のカテゴリーに入れた投稿の中で説明したものに統一したいと思います。
また、特にブロックシステムの戦術に代表されるような、専門性の高いバレーボール用語についても、気づいた時に随時説明したいと思いますので、投稿の中にわからない「専門用語」が含まれていた場合には、「バレーボール用語集」のカテゴリーで探してみて下さい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月28日 (土)

"リベロ"についてルール確認(その2)

ところが、導入から8年の時間が経ち、リベロに要求される能力は大きく変わった。

リベロはオーバーハンドパスを用いてトスを上げてはいけない」のではない。あくまで「フロントゾーンでは」上げてはいけない、だけである。後衛プレーヤーはスパイクを打ってはいけない、のではなく、「アタックラインを踏み越えて」スパイクを打ってはいけない、だけである。同じことである。そう、リベロは「アタックラインを踏み越えなければ」オーバーハンドパスを用いてトスを上げても構わないのである。

従来のサイドアウト制から、ラリーポイント制にルール改正されることが決まった1998年。日本のバレー関係者の間では「サーブミスを恐れて、サーブは弱くなるのではないか?」とまことしやかに囁かれていた。ところが、実際にラリーポイント制が導入された1999年のワールドカップでは、外国チーム勢が各セット20点以降の緊迫の競り合いの中で見せたスパイクサーブの迫力は、前年にサイドアウト制の下で開かれていた世界選手権と比して明らかに増していた。ミスの出来ない緊迫した場面でこそ渾身のスパイクサーブを打つ、それが出来るかどうか? その精神力の差が外国勢と全日本との実力差として如実に表れた。あれから7年が経ち、ようやく全日本にも越川選手はじめとして、外国勢にも引けを取らないスパイクサーブを打つ能力を持った選手が現れた。しかし、如何せんそれに7年も要してしまった。

リベロに関しても同じことが言えるような気がする。いまだに「アンダーハンドパス」に固執する日本と、「アタックラインを確認しつつ、その後ろで踏み切ってジャンプトスを上げる」外国勢、、、。これが追いつくのには、いったい何年かかるのだろうか?

| | コメント (4) | トラックバック (0)

"リベロ"についてルール確認(その1)

いよいよ世界バレー開幕が迫ってきた。日本シリーズも終わって、バレー観戦に専念できる状況も整った、といった感じだ。

いきなり話が変わるが、最近実に6年ぶりぐらいに、とある有名掲示板に書き込みをした。ネットサーフィンを始めた10年程前とインターネットの環境がガラッと変わり始めた6年程前からは、覗いてはいても書き込みをするのは控えていた。しかも私が今回書き込んだ場面は、明らかに「荒らし」的意図で書き込まれたメッセージに対して反応する形になるものだったため、本来のネチケットから言えば絶対に避けるべき場面なのだが、「ルールの誤解」に基づいて「荒らされて」いる状態であったため、あえて「釘を刺す」意味合いで書き込みをした。

以前「配列」に関する投稿を何回にもわたって行ったが、本来ならばその前に「ポジショナルフォルト」のルールについて、きちんと説明をするべきだったと反省している。実際、「ポジショナルフォルト」のルールについては、選手やコーチですらも誤解していることがあると『セリンジャーのパワーバレーボール』にも書かれている。「ポジショナルフォルト」については長年改正されていないルールであり、そういったルールですら誤解があり得る以上、ましてや最近改正されたルールについては、プレー経験者でも誤解している可能性が極めて高いと考えられる。その意味で、非常に誤解の多い、1998年に導入されたリベロについてのルールを、世界バレーの開幕前に確認しておこう。

リベロとは1998年に導入された、守備専門プレーヤーであり、チームで1名のみ登録可能(高校や大学では、大会によって2人まで登録可能という独自ルールを採用している場合もある)。他のプレーヤーとは異なるユニフォームを着用してリベロであることを明確にする必要がある(ユニフォームが1着しかないチームでは、"リベロゼッケン" を上から着用することで代用も可)。後衛のプレーヤーならば自由に何回でも交代可能だが、サーブは打てない。
ここまでは恐らく誰もがご存じと思われるが、さらに、(ここからが誤解しやすい部分だが)以下の場合に反則となる。

A)フロントゾーン(センターラインとアタックライン、及びそれぞれの延長線上で挟まれる範囲)でリベロがオーバーハンドパスを用いて上げたボールを、アタッカーがネットの高さよりも高い位置でボールをヒットしてそれが相手コートに返った場合
B)フロントゾーンであれバックゾーンであれ、リベロがネットの高さよりも高い位置でボールに触って、そのボールが直接相手コートに返った場合

である。

よく誤解されているのは、「リベロはフロントゾーンではオーバーハンドパスを用いてトスを上げてはいけない」というものであり、実際にはリベロがトスを上げても、アタッカーが「ネットより高いところでボールをヒットして相手コートに返さ」なければ、反則にはならない。

ただ、反則にはならないとは言っても、現実的にはリベロがフロントゾーンでトスを上げてしまったら、アタッカーはスパイクを打てないわけなので、リベロ制度が導入された当初は、リベロは「いかにしてオーバーハンドパスを使わないでプレーするか?」が重要とされていた感があった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月28日 (水)

【フロントオーダー・バックオーダー】バックオーダーにおけるサーブカットフォーメーション

さて、今のこの時期(黒鷲の後)になぜこの話題(フロントオーダーバックオーダー)について、書き始めたのか?

もちろん、前からいつか書こうと思っていたのは間違いないのだが、なぜこのタイミングだったのか? と言えば、実は黒鷲旗で久々に男子のトップレベルでフロントオーダーを採用しているチームをみたからである。
それは、準優勝に輝いた東海大学である。それについては、また後日詳しく(修理したてのビデオで撮った映像を確認の後)アップする。

まぁ、その東海大学のことは別にして、前に書いたように現在のトップレベルのバレーでは男子も女子もバックオーダーを採用しているチームがほとんどである。極端な言い方をすれば、どのチームも戦術的に似通っていると言えるわけで、今年の黒鷲旗で、特に男子で大学勢の活躍が目立った要因の一つには、そのことが影響していると思う。以前なら、4年間という限られた時間のためにレギュラー陣がめまぐるしく変わらざるを得ない大学勢は、なかなか2人・3人でのサーブカットフォーメーションを敷くことすら難しい様子だったが、今やVリーグチーム勢と大学勢との間での戦術面での違いを探そうにも、組織的なブロック力でVリーグチーム勢の方が少しキャリアの分だけ勝っている、という程度の違いしかないように見える。この光景をたとえるなら、それまでアメリカ・ソ連などの一部の国だけが独占していた世界最先端のバレー戦術が、イタリアを筆頭とする新鋭国から全世界に一気に広まり、戦国時代に突入した10数年前の世界の男子バレーの光景に似ている。

さて、前置きはこのくらいにして本題に入ろう。
現在のトップレベルのバレーで常識のバックオーダーでの配列では、本来ならば6通りある全サーブカットフォーメーションの中で最も弱点となりうるローテーションである、セッターが後衛レフトに位置するローテーションが弱点とならない(というか、弱点にしないためにバックオーダーを採用する)。となると、バックオーダーが常識の現在のバレー戦術の下で最も弱点になるローテーションは?? 答えは2つあると思う。
①男子バレーでは、特に「弱点となるようなローテーションは存在しない」であろう。
②女子バレーでは、「セッターが後衛センターに位置するローテーション」であろう。

これについては、今年のVリーグ女子の決勝戦で露呈した、と思う。決勝戦直後に書いたとおり、今年のVリーグ女子決勝戦の勝敗を分けたのは、久光製薬のこのサーブカットフォーメーションにあった。

Dsc00362オポジット/ライトの2番成田選手がサーブカットの要である久光では、ご覧の通りセッター(10番鶴田選手)が後衛センターのローテーションにおいても、かなりコート後方に構えざるを得ないため、ポジショナルフォルトのルール上セッターは彼女より前に出られず、結果的にコートかなり後方からセットアップ位置に向かう必要があるのである(それが、決勝戦の勝敗を分けたことは説明済みですね)。日本のVリーグにあっても女子の場合は、このように久光同様にオポジット/ライトに攻撃力もさることながらサーブカットの巧い、いわゆる「ユーティリティプレーヤー」が配されることが多く(東レ・JTが代表)、この写真にあるようなサーブカットフォーメーションを「女子型(オポジット/ライト=ユーティリティプレーヤー型)」とでも呼ぶことにしよう。

一方、男子ではオポジット/ライトにはチームで最も攻撃力のある「スーパーエース」を配することが多く、従ってオポジット/ライトの選手は基本的にはサーブカットは行わない。そのため、同じセッターが後衛センターのローテーションでは、このようなフォーメーションとなる。(写真が少し悪く、オポジット/ライトに配されている江口選手の背番号が確認できないが、、、一応全選手の中でもっとも前に位置して、半身になっているのが江口選手であり、当然16番の内田選手がセッター。)

Dsc00363女子のVリーグチームでこのスタイルをとるのは、写真のパイオニアや武富士が代表である。これを「男子型(オポジット/ライト=スーパーエース型)」とでも呼ぶことにしよう。
このサーブカットフォーメーションでは、当然セッターが後衛センターのローテーションも、写真でわかるとおり特に弱点とはなり得ない。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年6月11日 (日)

【フロントオーダー・バックオーダー】フロントオーダー/バックオーダー

フロントオーダーよりバックオーダーが優れている理由は他にもある。

フロントオーダーでは、セッターが後衛ライトのフォーメーションで、前衛は「レフトにオポジット/ライトプレーヤー・センターにレフトプレーヤー(裏レフト)・ライトにセンタープレーヤー/ミドルブロッカー」と並ぶ。この際のサーブカットフォーメーションで、当然オポジット/ライトプレーヤーはレフト側から、裏レフトプレーヤーはライト側から攻撃を仕掛けることになる。その次のローテーションでのサーブカットフォーメーションでも、両者の関係は変わらないので、やはりオポジット/ライトプレーヤーがレフト側から、裏レフトプレーヤーがライト側から攻撃を仕掛けざるを得ない。即ち、本来レフトからの攻撃が得意なはずのレフトプレーヤーが前衛3回のローテーションのうちで2回はライト側から攻撃しなければならず、逆にライトからの攻撃な得意なはずのオポジット/ライトプレーヤーが前衛3回のローテーションのうちで2回はレフト側から攻撃しなければならないのである。これは、各ポジションの専門性という意味から見て、非常に不都合である。この点において、トップレベルに限らず、ジャンプサーブなどの強烈なサーブのほとんどないB級レベルにおいても、フロントオーダーは採用すべきでないと私は昔から考えている。

しかし、敢えて上述の「フロントオーダーの欠点」を逆手に取るならば、時にフロントオーダーを採用する意味が出る場合がある。最近のトップレベルの試合で、うまくフロントオーダーを採用して成功していた例として印象に強く残っているのは、アテネオリンピック最終予選(OQT)の時の全日本女子である。あのときの全日本女子は、レフトからの攻撃が得意な高橋みゆき選手をオポジット/ライトプレーヤーに配し、一方ライトからの攻撃が得意な木村沙織選手を裏レフトに配していた。あの大会の初戦のイタリア戦で、当時まだ高校生だった木村沙織選手がスタメンであったことを、「イタリアのデータバレーの裏をかくための奇襲」と考えた方もいたようだが、私は「フロントオーダーを採用していたこと」から考えて、あのときの柳本監督の頭の中であくまでスタメンは木村沙織選手で固定されていたことを確信した。(実際、ゲーム途中でよく見られた木村沙織選手と佐々木選手との選手交代が行われると、フロントオーダーを採用しているがために、オポジット/ライトプレーヤーの高橋みゆき選手と裏レフトの佐々木選手が上述の関係に陥り、佐々木選手にしかトスが上がらない、単調なトスまわしになっていた、、、結果的にはそれで彼女が大活躍したわけだが。)そしてオリンピック本番では、バックオーダーに戻っていた。オリンピック本番では木村選手をスタメンで使うつもりは最初からなかったのであろうと、そこから受け取れる。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2006年6月10日 (土)

【フロントオーダー・バックオーダー】前回の解答(その4)

もしも、このローテーションで、フロントオーダーを採用しているチームはどうなるのか? 考えてみる。

フロントオーダーでは、セッターが後衛レフトの位置に配置されているローテーションの際に、セッターの真ん前に配置されるのはレフトのプレーヤーとなる。現代バレーでは、レフトプレーヤーはサーブカットの要であり、従ってサーブカットフォーメーション上、コート中央からやや後方に構えざるを得ない。そうするとそのレフトプレーヤーより後方に位置しなければならないセッターは、コートかなり後方からセットアップ位置に向かわなければならなくなるのである。現代バレーではサーブは強力なスパイクサーブが主流となってきており、特に男子バレーではその傾向が顕著のため、フロントオーダーではセッターが後衛レフトの位置のローテーションの際、サーブを打たれてからセットアップまでの時間的余裕がほとんどないのである。そのため、現在の男子バレーでフロントオーダーを採用しているチームを見ることは、トップレベルではほとんどないのである。

ということで、前回の問題の解答が、どのようにして瞬時に導きだされるのかというと、、、
即ち、ここまで書いてきたフロントオーダーバックオーダーの違いをよく理解している方ならば、例のサーブカットフォーメーションを見て、瞬時にセッターの位置を確認するだけで、バックオーダーのチームと判断して、前衛は「8番・11番・2番」とわかるのである。さらに言えば、バックオーダーの特徴をよくご存知の方なら、この次のフォーメーションも6人の位置関係がほとんど変わらないことをご存知のはずである。

Dsc00361

これが、前回の問題にしたローテーションの次のローテーションでのサーブカットフォーメーションである。10番の鶴田選手と8番の大村選手の位置関係が微妙に変わっている以外には、ほとんど変わっていないのが一目瞭然であろう。当然このサーブカットフォーメーションでは、前衛の3選手は「10番・8番・11番」であり、2番の成田選手は後衛である。このように、ほとんどサーブカットフォーメーションが変わらないのに、オポジット/ライトの選手が前衛か後衛かが変わるのがバックオーダーでの特徴であり、これは「知っているか知らないか?」それだけのことである。プレーヤーでも知らないことが多く、実際私はB級レベルの試合で、このことを逆手に取って、前回問題にしたローテーションから試合を始めて、相手チームにオポジット/ライトの選手を「後衛」だと勘違いさせて、相手ブロッカーをノーマークにすることに何回か成功した経験がある。(ちなみに、私はチームを作るとき、バックオーダーでしかチームを作ったことがない。)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

【フロントオーダー・バックオーダー】前回の解答(その3)

何回も言うが、配列には2種類あり、フロントオーダーバックオーダーである。プレー経験者でこのことを知っている方でも、この両者に決定的違いがあることに気づいていない方は多いはずである。なぜならば、実際B級レベルの試合を見ていると、フロントオーダーのチームが意外に多いことに気づくからである、、、。

はっきり断言する。現代のバレー戦術において、両者のうちで明らかに戦術的に優れているのは、バックオーダーの方である。実際今年のVリーグ男女18チーム中で、両者の内訳を見れば一目瞭然である。

男女18チーム中、フロントオーダーを採用しているチームは、たったの1チーム(NEC女子)しかない!
さらに言えば、吉田清司さんによれば、アテネオリンピックに出場した男子チームのすべてがバックオーダーを採用していたとのことである。

では、なぜ? バックオーダーが優れているのか? それにはいくつかの理由があるのだが、もっとも大きな理由が例の問題に出したフォーメーションにある。

自チームがサーブカットの際に、セッターが相手チームのサーブが打たれた瞬間から、セッターの定位置(セットアップ位置)へ向かうのが最も技術的に難しいローテーションはどこかわかるだろうか? (セッターを一度でも経験したことのあるプレーヤーならわかるはずだが、セッターの経験が全くないプレーヤーはひょっとするとわからない方もいるかもしれない。)それは、セッターが後衛レフトのポジションにいるローテーションである。なぜならば、セッターは普通自チームのレフト側に顔を向けてトスアップを行う。セッターが後衛レフトからセットアップ位置へ向かう際には、物理的に移動距離が長いだけでなく、その移動中に相手チームのサーブの軌道から目を離さずに体を270°ほど右回りに回転させなければならないのである。(移動距離的には後衛ライトの際も長いのだが、体はほとんど回転させなくてよい。)

それを前提として、例の久光製薬のフォーメーションを見てみる。実は例の写真のフォーメーションは、その問題の「セッターが後衛レフト」のローテーションでのサーブカットフォーメーションである。このとき、バックオーダーを採用している久光製薬では、セッターの10番鶴田選手の真ん前に配列される前衛選手は、センター/ミドルブロッカーである8番の大村選手となる。前衛のセンター/ミドルブロッカーがサーブカットをすることは現代バレーではあり得ず、サーブカットフォーメーションでその選手(8番大村選手)はネットに張り付いた状態で構えることができる。そのためその選手よりポジショナルフォルトのルール上後ろにいないといけないセッターの10番鶴田選手も、写真のとおり、ネット際に近い位置で構えることが可能となり、セッターの定位置までの移動距離はかなり短くなるため、セットアップが容易になるのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年5月22日 (月)

【フロントオーダー・バックオーダー】前回の解答(その2)

前回指摘したとおり、「配列」には2種類あり、フロントオーダーととバックオーダーである。実は、6種類ある久光製薬のサーブカットフォーメーションのうちで、「なぜわざわざ私が問題のローテーションを選んだのか??」この意図まで把握できた方は、ここから先は恐らく読む必要がない。

実を言えば、解答(その1)で先ほど説明したものは、私の頭の中での思考回路を正確に書き出したものではない。後から論理的になぞっているだけである。実は、あの写真のサーブカットフォーメーションを見た瞬間に(もちろんセッターが10番であることは瞬時に判断するとして)、このチームがバックオーダーであり、当該ローテーションはセッターが後衛レフトのローテーションであるとわからなければならない。そして一番右側に位置する2番がオポジットの選手で、当該ローテーションでは前衛ライトである、と次の瞬間に機械的に判断される。

なぜそれが可能なのかは、次回説明する。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

【フロントオーダー・バックオーダー】前回の解答(その1)

まずお礼から。
サブさん、ディーラーさん、コメント及びご回答頂き、ありがとうございました。

さて、解答だが、せっかくお二方に貴重な意見を頂いたので、それに則って書いてみる。

実は、この問題を考える段階で期待された「典型的間違い」が、ディーラーさんの回答のとおりの「8番(大村選手)・10番(鶴田選手)・11番(ケニア選手)」である。恐らく、プレー経験のない方はほとんどはこの回答を思い浮かべるであろうし、プレー経験者でもこの回答をする方が多いと思う。
ただ、ディーラーさんが奇しくも指摘してらっしゃる「写真を見ると、フロント3人の位置取りは微妙」というのが、実はかなり重要なポイントである。恐らくディーラーさんは、ご自身の回答の矛盾点に気づいてらっしゃると思う。即ち、「オポジット」の「成田(選手:2番)がバックライトにいる」ということは、当然対角のセッターである鶴田選手(10番)がフロントレフトにいるはずで、「鶴田(選手:10番)  大村(選手:8番)  ケニア(選手:11番)」がフロントの3人であるならば、鶴田選手(10番)は大村選手(8番)よりも左に位置していないとポジショナルフォルト(反則)となるため、写真から見て明らかに間違いとわかる。

なぜわざわざ「2秒以内に」答えるように指示したのかと言えば、要するに上述のように「最初から問題のチーム(久光製薬)の各選手のポジションに関する知識」を頼りに回答されるのを避けるためである。ディーラーさんは、久光製薬の各選手のポジションを恐らくもともと知っているはずで、それに基づいて冷静に時間をかけて考えれば、上述のようなことに気づくはず(実際ご自身の回答の矛盾に、後から気づかれたはず)である。更に言えば、サブさんのコメントの通り、確かに冷静に時間をかけて考えると、この久光製薬の各選手の知識が全くなくても、バレーボールのポジショナルフォルトに関するルールを正しく理解していれば、正解が5通りあるというのは「正しい」。サブさんは、それを理解したうえで「2秒で答えるのは至難の業」とコメントして頂いたはずだが、それはあくまで「ルール上での可能性の話」であって、そんなことを言っていたら試合には残念ながら勝てない。全く未知の相手チームと試合する場合に、試合開始時の相手のサーブカットフォーメーションがこの写真のような状態であったとしたら?? 「至難の業」と言って済まされるはずはないのである。

では、いよいよ解答。上述の通り、「最初から問題のチーム(久光製薬)の各選手のポジションに関する知識」に頼らずとも、自ずと正解には到達する。プレーヤーの視点から言えば、まず相手チームのフォーメーションを見て、瞬時にまず把握すべきは「誰がセッターか?」であり、ラリー中のセッターの定位置である、「ネット際のセンターからややライト寄りの位置(今回の写真で言えば、サーブ側のチームの前衛レフトに位置する6番の選手とネットを挟んで向かい合う位置)」に向かって、サーブが打たれた瞬間に一直線に向かおうという足の向きをしているプレーヤーがセッターであり、従って10番がセッターであると瞬時に判断できる。それと同時に、セッターが後衛であることにすぐに気づかなければならない。なぜならば、セッターが前衛であるならば、最初からネット際について自チームのコート側に体を向けている方がプレーしやすいはずであり、わざわざ相手チームに体を向けて、かつ8番の選手よりも明らかに後方に位置しているというのには、それはポジショナルフォルトのルール上の制約のためでしかあり得ない。従って、実はセッターが10番と判断できるとほぼ同時に、その10番の真ん前に「配列」上位置する選手が8番と判断でき、かつ8番は全選手の中で最も左かつ前に位置することから前衛レフト・そして自動的にセッターの10番が後衛レフトと判断できる。となると、後衛レフトの10番より左側に位置する11番は後衛ではあり得ず、前衛に決まる。

従って、ルール上で「実際的に」あり得る解答は、「8番・11番・3番」か「8番・11番・2番」の2つとなる(ユニフォームの色の違う14番はリベロであり、前衛はあり得ないので)。この2つで迷った方は「かなりいい線」と言えるが、「8番・11番・3番」と回答した方は、恐らくはプレー経験のない方であろう。前衛3人ともアタッカーであるならば、わざわざ3人ともレフト寄りに位置させることには、アタックフォーメーションを考えれば全く無意味である。従って「現実的に」あり得る解答は「8番・11番・2番」となる。これが正解である。

こうやって、言葉で書くと「ホントにこれを瞬時に見分けられるの?」と(特にプレー経験のない方は)思うかもしれない。実は、そこにもう一つのポイントがある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年5月 8日 (月)

【フロントオーダー・バックオーダー】黒鷲旗にて(初の写真アップ!)

黒鷲旗の試合の模様は、後日アップする予定、、、(GAORAでの放送が、決勝戦は生中継なのに、準決勝は録画でそれも随分と日にちがあいてから放送されるので、順番としてまず準決勝の放送を見てアップしてから、決勝戦をアップしたい)。

というわけで今日は、過去の投稿で何回か「別の機会で詳しく説明する」と書いてきた、バレーの戦術の中ではかなり根幹に近い部分というか、まずそれを決めない限りはバレーの試合自体が始まらない、各プレーヤーのサーブ順での配置の仕方(『セリンジャーのパワーバレーボール』の中では、「配列」という言葉で表現されているので、それに従って単に「配列」と書かせてもらう)について、さわりだけでも書こうかと思う。

これは当然、プレー経験のある方ならば誰でも本来は知っているはずのことなのだが、意外と知らない、というか「わかっていない」プレー経験者が多い気がする、、、。実は「配列」には、2種類の方法がある。『バレーボール100Q入魂』にも書かれている、吉田清司さんの言葉を借りるとフロントオーダーバックオーダーの2種類である。前者は、セッターが後衛レフトの位置のローテーションで、前衛(フロント)が「レフトにレフトの選手・センターにセンターの選手・ライトにオポジット(セッター対角)の選手」と、本来各プレーヤーがラリー中に専門的に務めるポジション通りに並ぶ「配列」で、後者はセッターが後衛ライトの位置のローテーションで、後衛(バック)が「レフトにレフトの選手・センターにセンターの選手・ライトにセッター」と並ぶ「配列」である。フロントオーダー・バックオーダーといった言葉自体は別に知らなくてもいいのだが、この両者に、戦術上で決定的違いがあることは重大な事実であり、そのことに気づいていないプレーヤーが実は多い。

ためしに、黒鷲旗で撮ったこの写真を見てもらいたい(クリックで大きくなります)。Dsc00360_6
これは久光製薬のあるサーブカットシーン(相手チームがサーブを打つ寸前)を撮影したものだが、これを見て瞬時に(2秒以内に)久光の前衛3人の背番号を当ててみて欲しい。正解できた方は、上記の「配列」のことを普段から意識しているプレーヤーの方であるはずで、恐らくあまり意識してこなかったプレーヤーの方は、間違える可能性が高いと思う。

正解は、次回の投稿にて。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年10月 4日 (火)

レセプションシステムの変遷

'84年ロサンゼルス・'88年ソウルと、オリンピック2連覇を果たしたアメリカ男子ナショナルチームは、現在のバレー戦術におけるブロックシステムの基礎とも言える、バンチ・リードブロックシステムを作り上げただけでなく、レセプションシステムにおいても、現在のバレー界の戦術の基礎を作り上げた。

彼らは2人レセプションシステムを導入、それまではほとんどのチームは4・5人で行っていたレセプションを、いきなり「2人」でやってのけたのだった。これには、当時の "ミスターバレーボール" カーチ・キライをはじめ、アメリカの選手たちは大抵みんなビーチバレー出身者であるということが大きく影響している。ビーチバレーなら2人でレセプションをすることは当たり前であるからだ。そしてその2人にはカーチ・キライはもちろんのこと、両レフトの2人が担当することになる。レフトのレセプション面での負担が非常に大きくなってしまう、この戦術を採るメリットは、他のセンター・オポジットの選手の負担を減らすことにより、それぞれにレセプション以外の面で高度な戦術をマスターさせることを可能にした、ということであった。まず、センターの選手がリードブロックをマスターできる結果に繋がった。一方オポジットの選手に関しては、強力なバックアタックを打つ能力をマスターさせることを可能にした。それまではレフトの選手が "エースアタッカー" と呼ばれ、スパイクもレシーブも巧い選手が配置されており、一方のオポジットは "補助アタッカー" と呼ばれ、どんなプレーもそつなくこなす、"繋ぎ" の巧い選手が配置されていたが、レフトのレセプション面での負担が極端に増えたため、むしろオポジットに、レフトの選手以上のスパイク力が要求される結果となったのであった。オポジットはセッターの対角に位置し、セッターが前衛の時は常に後衛にいる。つまり、前衛アタッカーが2枚の攻撃力が弱いときに、オポジットの選手にバックアタックを打たせれば、常時攻撃が3枚の状態が作れるわけである。バックアタックを中心として、それまでの "エースアタッカー" 以上の攻撃力が要求されるようになったために、そのような役割でオポジットに配された選手を、スーパーエースと呼ぶようになった。

ところが時代が進み、バンチ・リードブロックシステムが完成すると、それを切り崩すための新しい攻撃システムとして、両サイドの高速平行とパイプ攻撃を絡めた攻撃システムが、ブラジル男子ナショナルチームによって編み出されることとなる。両サイドの高速平行をレフトの選手が行うためには、上述の2人レセプションシステムを維持するのが事実上不可能となる。ポジショナルフォルトのルール上、レセプションを行う人数をレフトの「2人」に限定すると、レフトの選手がレセプションの直後に行える攻撃というのは、実は非常に限られてしまい、両サイドの高速平行トスを打つのは不可能なのである。そのため、'92年のバルセロナオリンピック当時のブラジル男子ナショナルチームは、レフトのジオバーニ・サムエルに加えて、センターに配された当時のキャプテン・ゴウベイアの「3人」でレセプションを行うシステムを採ることで、高速平行・パイプ攻撃を実現させていた。このレセプションシステムが、2人レセプションシステムの発展型として、バレー界でのレセプション戦術の基本となり、その後サーブ戦術におけるスパイクサーブの重視傾向が強まったことや'98年のルール改正でリベロ制度が導入されたことも相まって、両レフトの「2人」と、後衛センターが交代するリベロプレーヤーをあわせた「3人」でレセプションを行う形が確立する(リベロが後衛センターと交代する形が一般的なのも、この経緯が理由である)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年10月 3日 (月)

ブロックシステム変遷(その2) - "パイプ攻撃"の完成

バンチ・リードブロックシステムの完成により、再びブロックシステム優位の時代を迎えつつある中で、今度はそれを切り崩す新たな「攻撃システム」が生まれることとなる。それは、'90年代前半のブラジル男子ナショナルチームによってもたらされた(当時の監督は、現在のブラジル女子ナショナルチーム監督であるギマラエス氏)。

バンチ・リードブロックシステムは、「トスが上がってから」ブロックに跳ぶシステムのため「高くて早い」速攻には弱く、また「中央にブロッカー3枚が集まっている」ため、両サイドのアンテナいっぱいまで伸びる低くて早い平行トスにも弱い。そこで、当時のブラジル男子ナショナルチームは、当時(ひょっとすると今でも?)世界No.1セッターと呼ばれた、リマ・マウリシオの「肘をほとんど曲げずに高い位置でセットアップし、そこから左右へと自由自在に早いトス回しを出来る」という優れた資質を基軸として、両サイドのアタッカーに非常に高速の平行トスを打たせ、さらにスーパーエースとしてオポジットに配されていたネグロンには、前衛で主に速攻を打たせる戦術を採った。当時の彼の速攻には、普通のセンタープレーヤーが打つ速攻とは違う、スーパーエースならではのパワーはもちろんのこと、何よりもリードブロックをがたがたにするだけの高さとスピードがかね備わっていた。相手チームとしては、バンチ・リードブロックシステムにこだわっていたのでは、両サイドの平行にもネグロンの速攻にも対応できなくなる。そのため、仕方なくスプレッド・リードブロックシステムに切り替えざるを得ず、さらにはセンターブロッカーは要所でコミットブロックを使わざるを得なくなる。そうなった時に、次にリマ・マウリシオのトスから繰り出される攻撃が、それまでの「前衛のアタッカー同士が絡んで行う」時間差攻撃に代わって、「前衛センターの選手の速攻と後衛センターの選手のバックアタックを絡める」時間差攻撃であった。この、後衛センターの選手が打つバックアタック、それも時間差攻撃である以上は、スーパーエースが打つような高いトスのバックアタックではなく、比較的トスの低いバックアタックとなるわけで、それをパイプ攻撃と呼ぶ。このパイプ攻撃のすごいところは、前衛の両サイドのアタッカーが高速の平行を打つために、両サイドのブロッカーが"スプレッド"で相手アタッカーと同じく両サイドに釘付けの状態にしておいて、なおかつセンター中央付近での時間差攻撃を可能にしたという画期的な点であった。この画期的な武器を引き下げ、ブラジルはアメリカはじめ、イタリア・ロシア・オランダといった並みいる強豪たちを押さえて、'92年のバルセロナオリンピックでの優勝を、ノーマークでさらってしまった。

このブラジル男子ナショナルチームの画期的な攻撃システムの開発以来、男子バレーの世界では相手チームにバンチ・リードブロックシステムを採らせまいとして、両サイドの高速平行トス及びパイプ攻撃が当たり前の時代へと突入する。これは、再び攻撃システムが優位となりうることを意味するわけであり、対抗するブロックシステムとしては、如何にして相手チームの攻撃の幅を狭めるか? が重要となる。それは当然、如何にして相手チームのレセプションを乱して、攻撃の幅を狭めるか? ということを意味するわけであり、それは即ち、スパイクサーブの重要性に拍車をかける結果となった。また、相手チームのレセプションを乱せなくとも、試合の各局面において、どこにトスが上がりやすいか? ということを事前に予測して、その都度最も有効なブロックシステムを、試合中に切り替えることが要求されることにもなり、それは即ち、データバレーの重要性に拍車をかける結果にも繋がった。

以下に、参考となる書籍を挙げておく。

| | コメント (0) | トラックバック (0)