2016年6月19日 (日)

新しいテクノロジーがもたらす〝光と影〟(後編)

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photo by FIVB

(この記事は『バレーペディア編集室Facebookページ』に寄稿したものです。)


… こうして見てくると、FIVBが新システム導入を推進するのは、スコアラーの作業負担を減らすという「運営側の都合」だけが理由であるかのように、感じられるかもしれません。事実、新システムについてのマイナス面ばかりが取り沙汰された今回のOQTでしたが、そんな中で唯一、「タブレットが導入されていたから」こそ、早い段階で気づくことが可能となり、混乱を最小限に食い止めることができたシーンがありました。

それは、男子大会3日目の日本対ポーランド戦の第3セット、ポーランドが21-18でリードの場面で日本が取られた【ポジショナル・フォールト】です。


このシーンで日本が犯したミスの詳細については、下記ブログでわかりやすく図解されていますので、まずはそちらを参照下さい。

「2016OQTポーランド戦最後の混乱解説するよ」『Stay Foolish』より)


多くの報道を見るかぎり、「タブレット操作の義務化」ばかりに焦点が集まっているようですが、タブレットはベンチ以外に実は、主審や副審の視野に入る位置にも設置されています。

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《主審台に設置されているタブレット。左は副審側のポールに設置されているタブレット同様、両チームのラインナップが表示され、右は「チャレンジ」時の検証用映像などが表示されている。(photo by @ux3blust)》


これにより主審・副審は、両チームの正しいラインナップを常時、把握し続けることが可能になったのです。


問題のシーンの直前、コート・ポジション2の関田選手に替わって入った栗山選手がコート・ポジション4に入ったつもりでプレーしており、サイドアウト直後のレセプションの場面で日本は、コート・ポジション4の柳田選手とコート・ポジション2の栗山選手が、お互い(左右)逆に位置する形となって【ポジショナル・フォールト】を取られました。

もし今大会でタブレットが導入されていなければ、副審はリアル・タイムに日本の正しいラインナップを確認できず、反則に気づかない可能性があったと思います。仮にそのまま試合が進行した場合、日本がサイドアウトを取ると正しくは栗山選手がサーバーとなりますが、(間違えて)コート・ポジション2にいた柳田選手が恐らくサーブを打ち、そこで初めてスコアラーが【ローテーショナル・フォールト】に気づき、ブザーを鳴らして試合が中断していたでしょう。

そうなると、日本が「どのラリーから、ラインナップを間違えていたのか?」が問題となり、その時点にさかのぼって、以降に日本が獲得した得点は全て無効となる可能性が生じる(※5)ため、その確認作業に時間を要し、試合が長時間中断したまま、観客は「何が起きたのか?」詳細がわからずに、放置されていたであろう光景が目に浮かびます。


◎ FIVBが新システムを推進する〝真の目的〟

このシーンを整理すると、「e-Scoresheet」に表示された両チームの正しいラインナップを、タブレットを通じて副審が「リアル・タイムに共有できた」からこそ、早い段階で正しい判定が下され、混乱が最小限に食い止められた1例と言えます。

この例からわかるように、タブレットを使用する新システム導入のメリットは、目の前で繰り広げられている試合の〝根幹〟に関わる「正確な情報」が「リアル・タイムに共有できる」点にあるのです。


そうした観点でみれば、今回のOQTから「チャレンジ」がタブレット申請に変更されたのも頷けるはずです。

ワールド・カップ2015における「チャレンジ」の運用は、監督が副審に ①ハンド・シグナルで申請し、②口頭で「どの判定項目に対する『チャレンジ』なのか」を伝え、副審が聞き取った内容を ③インカムを通して主審やスコアラーに伝達する、という伝聞形式であったため、途中過程でコミュニケーション・エラーが生じる恐れがありました。

ベンチが意図した判定項目が副審に「正しく伝わり」、その内容が審判団の間で「リアル・タイムに共有できる」ことを可能にするべく、今大会から「判定項目も含めタブレットで申請する」運用に変更されたわけです。


ベンチと審判団同士の間でコミュニケーション・エラーが生じると、試合の中断時間が長くなり、ひいては、観客ならびに中継を見ている視聴者は「何が起きているのか?」わからないまま、放置されることになります。FIVBが、タブレット使用を前提とした新システムを推進する真の目的は、「コート上で繰り広げられている試合の〝根幹〟に関わる正確な情報を、観客や視聴者にリアル・タイムで提供すること」にあったと考えられるのです。

今大会で疑問の声が多く挙がった「ラリー中の『チャレンジ』容認」についても、ラリー中の「どのプレーに対する『チャレンジ』なのか」を、会場にいる誰もが瞬時に理解できるようにするには、ラリーが終了するまで待ってから申請するより、当該プレーが生じた直後(※6)に申請する方が理にかなっている、という判断が働いたものと考えられます。


◎ 新しいテクノロジーがもたらす〝光と影〟

そうしたFIVBの姿勢は、公式サイトで発信されている試合情報の内容からも伺えます。下記URLにあるとおり、単なる得点経過速報にとどまらず、各ラリーで「何が起きたのか、どういう判定が下されたのか」の情報までもが、リアル・タイムに発信されているのです。

http://worldoqt.japan.2016.men.fivb.com/en/schedule/7102-poland-japan/match#LiveStats

現状ではおそらく「e-Scoresheet」とは別に、主に技術集計に関わるデータを扱う「VIS(Volleyball Information System)」(白ペデ 104〜107ページ参照)と連動したもの、つまり手作業で打ち込まれたデータが発信されていると想像されますが、「VIS」が扱う情報自体「e-Scoresheet」と連携されれば(※7)入力の手間が省けるものも多いため、より正確な情報がよりスピーディーに発信されることが期待できます。

新しいテクノロジーの積極的な導入により「コート上で起こっている〝すべて〟の情報」をつまびらかにして、「バレーボール〝そのもの〟の魅力を、余すことなくファンに伝えよう」とするFIVBの姿勢(※8)が、「タブレット操作を義務化」する〝強硬手段〟として、今大会では前面に表れたのでしょう。


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photo by FIVB


こうして整理していくと、今回のOQTで生じた問題の焦点が、決して「タブレット操作の義務化」にあるのではない、という真実が見えてきます。

本当の問題点は、新システムの「運用の仕方」にありました。


現行ルールに則った上で、タブレットにより簡略化・自動化できる部分を、従来のアナログ手法からタブレット操作へと変更すればよかったものを、「e-Scoresheet」というソフトの仕様に合わせて、ルールの運用を変更する形にしてしまったのが、そもそもの間違いだったのです。


「サブスティテューション」を例にとると、現行のルール・ブックでは、コートに入る選手が「交替する選手の背番号が書かれたプラカードを持って、サブスティテューション・ゾーンに整列する」だけで、交替を許可される【クイック・サブスティテューション】が適用されています。

これは、従来行われていた「監督が副審にハンド・シグナルを提示する」手順を省くことで、試合の時間短縮を意図したルールです。

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ところが今回のOQTでは、選手がサブスティテューション・ゾーンに整列しただけでは、交替が許可されませんでした。ベンチがタブレットを操作して、誰と誰を交替させるかを正しく入力し、そのデータが「e-Scoresheet」側で受信された時点でブザーが鳴って、交替が許可される運用になっていた(※9)ようです。

逆に言えば、タブレットを操作してブザーさえ鳴れば交替が許可されるため、その手順の後で、選手がサブスティテューション・ゾーンに整列しても構わないことになり、【クイック・サブスティテューション】のルールが〝有名無実化〟しました。作業効率の追求のために導入されたシステムが、その運用の仕方のせいで、かえって余計に時間を要しかねない事態を招いたのです。


さらに事態を複雑にしたのが、「ブザーの扱い」に関する変更です。本来ブザーには、試合を中断させる権限はありません(※10)。しかし、今大会では「ラリー中の『チャレンジ』が容認された」ため、「チャレンジ」申請が「e-Scoresheet」側で受信されてブザーが鳴ると、その時点で主審は、ラリーを止めざるを得なくなりました。

「ブザーの扱い」が180°変わったことで、ルールをよく知っているはずの関係者や、試合をしている当事者である選手やベンチ・スタッフまでもが、ラリー中断の理由がよく飲み込めず、女子大会4日目の日本対タイ戦における、あの大混乱の伏線になりました。


「事前に今大会ではこのようなシステムを導入すること、システムについての説明や、タブレット操作のトレーニングが必要であるならば名乗り出るように、と事前に配布した資料には記載したが、大会前に手を挙げたチームはなかった」と、FIVBは自身の正当性を主張しています(※11)が、混乱を招いた本当の要因が「システムそのもの」や「タブレットの操作方法」ではなく、事実上の【クイック・サブスティテューション】撤廃や「ブザーの扱い」に関する変更にあったという本質には、理解が及んでいないようです。


そして何より、問題がここまで大きくなったのは、FIVBがメディアやファンに向けてこうした情報を、事前に一切アナウンスしなかったことに尽きます。

「バレーボール〝そのもの〟の魅力を、余すことなくファンに伝えよう」という姿勢があるならなおさら、参加各国だけに通達するのではなく、メディアにも事前にきちんと公表し、ニュースとして積極的に採り上げてもらえるようアピールする努力を、怠ってはならないと思います。


◎ 「タブレット問題」で問われる、日本のバレー関係者の姿勢

こうした落ち度はFIVBだけでなく、審判団にもあると思います。「e-Scoresheet」自体は昨年から導入されており、無線LANの不調により柔軟な運用になっていただけで、今大会からは厳格な運用となるのは審判団には十分予想できたことでしょう。ワールド・カップ2015以降の、半年以上の時間的猶予を考えても、外部に情報発信するチャンスはいくらでもあったのではないでしょうか?

審判の任務は「ルールに則って公平で厳格な判定を行い、スムーズに試合を進行させる」ことですが、その任務を果たす目的は「試合の魅力を1人でも多くのファンに、わかりやすく伝えること」にあるはずです。任務を果たすこと自体が目的化していないか? ・・・ 審判団は自問自答すべきだと思います。


一方、タブレットが主審・副審にも見えるよう設置されているなら、そこに表示されている画面を、会場のコート・エンド両側にあるオーロラビジョンに表示することも可能なはずです。両チームのラインナップが大きく表示されていたなら、日本対ポーランド戦の問題のシーンでも、ルールをご存じの方ならすぐに事態を飲み込めたでしょうし、ルールをご存じない方のために、会場にはDJやジュリー(白ペデ 089ページ参照)がいるわけです。

会場観戦している大勢の観客が、目の前のコートで起こっている事態が飲み込めずに放置され、試合後にブログでの解説を読んで初めて納得する、という状況自体が、高価なチケット代を取って開催されるスポーツのあり方として、そもそもおかしいと気づかねばなりません。

試合進行に携わる審判団ならびに、会場運営に携わる協会スタッフやメディア関係者は、今回の「タブレット問題」を機に、FIVBが目指す方向性と自身のそれとのギャップに気づけるかどうか? が、まさに今、問われているのではないでしょうか。

(本記事の執筆にあたり、取材に快く協力下さった審判・VIS関係者の皆さまに、この場を借りて、厚く御礼申し上げます。)

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(※5)ワールド・カップ2007男子大会・日本対ブラジル戦の第4セットでは、日本が「7-2」とリードした段階でスコアラーが日本の【ローテーショナル・フォールト】に気づき、試合が長時間中断。日本のコートに、セット開始時から、スターティング・ラインナップ・シートに記載されていない選手が入っていたことが判明したため、日本の7点はすべて無効となり「0-3」から試合が再開された。

(※6)当該プレーが生じてから「5秒以内に」、「チャレンジ」を申請しなければならない

(※7)ワールド・カップ2015の段階では、「VIS」担当者はスコアラーから「スターティング・ラインナップ・シート」を受け取って、それを元に手入力で作業しており、「e-Scoresheet」との連携は行われていない

(※8)そうしたFIVBの目指す方向性が垣間見える1例として、試合中の全ラリーにおけるボールや選手の動きを、まるごとデータ化(トラッキング・データ)する試みが挙げられる。2014年の世界選手権では全試合でこのデータ化が試されたようで、男女の決勝戦についてはトラッキング・データがWEB上で一般公開されている

(※9)女子大会・日本対タイ戦での大事件を受けて、男子大会では柔軟な運用をする形へと変更された

(※10)従来のブザーは、①ベンチに設置され、タイムアウト等の申請をする際に鳴らすブザー、②スコアラーが【ローテーショナル・フォールト】等に気づいて鳴らすブザー、の2種類があり、②のみ、試合を中断させる権限を持っている。①と②のどちらが鳴っているのか、審判が瞬時に聞きわけられるよう、両者の音色は異なるものが採用されている。

(※11)「女子バレー五輪予選 最後まで全力で戦ったタイチームの涙」(田中 夕子)

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2016年6月11日 (土)

新しいテクノロジーがもたらす〝光と影〟(前編)

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photo by FIVB

(この記事は『バレーペディア編集室Facebookページ』に寄稿したものです。)

 

リオ五輪最終予選・兼アジア予選大会(以下、OQT)で物議を醸した「タブレット型端末(以下、タブレット)」。 

「タイムアウト」や「チャレンジ」、「サブスティテューション(選手交替)」など、試合中に各チームが要求できる権利の行使にあたり、今大会では「タブレットを通じて」申請しない限り、監督が従来のハンド・シグナルを示しても許可されない旨の通達が、事前に各チームに行われていたようです。

こうした「タブレットありきの〝特別ルール〟」をきっかけに、女子大会4日目の日本対タイ戦の第5セット終盤で、タイのキャテポン監督が2枚のレッド・カードを出され、日本の大逆転勝利につながった事実は、日本の、いや世界のバレー史に永久に刻まれるのは、恐らく間違いないことでしょう。

 

この一件に際して、FIVB関係者は「リオでは、五輪で初めてこのシステムを導入します。後戻りすることはない」とコメントしている(※1)ようで、こうした発言からは、タブレット使用を前提とした新システムの導入をFIVBが、かなりゴリ押しで進めようとしている印象も否めません。

至近距離にいる副審にハンド・シグナルを示せば済むだけの、従来から長年行われてきた簡単な手続きを、わざわざタブレットを操作して行う面倒なシステムに変更する必要性が、いったいどこにあるのだろう? ・・・ 純粋にそういう疑問を抱いた方も多かったのではないでしょうか。

 

この歴史的大事件を、テレビで目の当たりにした私は、ふと気になって白ペデの 088〜089 ページを見返してみました。そこで、何ともお恥ずかしい限りなのですが、この見開き2ページの中に、本来なら最も肝心なはずのものがすっぽり抜け落ちているという、重大な不備に気づかされました。

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これが 088〜089 ページですが、今さらながらに気づかされた不備がいったい何なのか、おわかり頂けるでしょうか? プレー経験のない方には、かなり難しい質問かもしれません。プレー経験者の方はいかがでしょうか?





正解は ・・・ 【スコアラー(記録員)】への言及が、抜け落ちている点です。

 

【スコアラー】の存在自体を知らない方に、FIVBが推進する新システム導入の必要性や重要性を理解しろと言うのは、酷な話だと思います。

決してFIVBの肩を持つつもりはありませんが、バレーの試合において【スコアラー】が果たす役割がいかに重要なものであるか ・・・ その理解がもっと一般にも浸透していたならば、今回の一件がバレー・ファンに与えた印象は、もう少し違ったものになっていたような気がしてなりません。
 
そうした意味から、白ペデで不覚にも書き漏らしてしまった【スコアラー】の役割について、バレーペディア編集委員の立場から、この場を借りて補足解説させて頂きたいと思います。

 
 

◎ 人知れず、重要な役割を担っている【スコアラー】

皆さんもご存じのとおり、6人制バレーボールにおいては他のスポーツにはない【ローテーション】というルールが存在します。セット開始時は(リベロを除く)6人のスターティング・メンバーが、あらかじめ申告した「ラインナップ(Line-up)」どおりにコート上に並び、セット開始後は自チームが新たにサーブ権を得る毎に、ラインナップが時計回りに1つずつ「ローテーション」して、コート・ポジション1(図1)の位置に来た選手がサーブを打ちます。

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≪コート上に6人が「ラインナップ」どおりに並んだ際に、各選手が位置する「ポジション(コート・ポジション)」を、上記の「数字」を用いて表現する≫


 

これは6人制バレーボールの根幹に関わるルールであり、厳守されねばなりません。 このルールに逆らって、コート・ポジション1以外の選手がサーブを打った場合は【ローテーショナル・フォールト】の反則が、ラリー開始時(=サーブが打たれた瞬間)にコート上の6人がラインナップどおりに並んでいない場合は【ポジショナル・フォールト】の反則が、それぞれ適用されます。

誰も意図的に逆らうつもりはないでしょうが、プレー経験のある方なら試合中、自チームの正しいラインナップが今どうなっているかがわからなくなるという経験をしたことは、一度や二度では決してないはずです。

ましてや、コート外から試合を眺めている第三者が、両チームの正しいラインナップを試合中に常時把握し続けるのは至難の業であり、それは主審・副審であっても然りです(※2)。では、このバレーボールの根幹に関わる【ローテーション】のルールが、試合中に正しく守られているかどうかを、誰が監視しているのでしょうか?

 

もうおわかりですね。そうです、この監視の役割を実質的に果たしているのが【スコアラー】なのです。

どんなカテゴリの試合であろうと、どんな小さな規模の大会であろうと、それが公式戦である限りは、【スコアラー】を担当する第三者が必要となります。「IF(アイ・エフ: International Formの略)」と呼ばれる、【スコアラー】が記入する記録用紙は、その試合が「正しい【ローテーション】のルールに則って執り行われた」ことを示す「証拠書類」であると同時に、その試合の唯一無二の「公式記録」となります。

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≪副審側のコート・サイドに陣取る【スコアラー】。主審に見えるように掲示している得点板こそが、その試合の「正式な」得点経過として扱われるもので、会場の電光掲示版での得点表示は正式なものとして扱われない。(photo by @ux3blust)≫



他にも、1セットあたり6回まで認められる「サブスティテューション」では、一度ベンチに下がった選手がコートに戻る場合、その選手と交替してコートに入った選手とのみ、交替が許可されますが、このルールがきちんと守られているかどうかを確認するのも、【スコアラー】の役割です。

リベロ制導入以降、1ラリー毎にリベロが後衛選手と頻繁に入れ替わりますが、それもすべて逐一チェックするのも【スコアラー】の任務です。

 

このように、【スコアラー】が担う役割というのは「ついうっかり、誌面で書き漏らしました」では済まされないくらいに、極めて重大な任務であるだけでなく、大変労力を要する仕事なのです。

 
 

◎ タブレットありきの〝特別ルール〟が採用されるまでの経緯

【スコアラー】に関してご理解頂いたところで、ここからが本題です。

私も実は知らなかったのですが、2012年の白ペデ発刊以降に起こった出来事として、【スコアラー】が記入する「IF」がFIVB主催の国際大会に限り(※3)、デジタル化されていたようです。

「Data Volley」で有名な、イタリアのDataProject社が開発した「e-Scoresheet」というWindowsソフトが、昨年ヨーロッパで開催された国際大会で試験的に導入され、日本で開催されたワールド・カップ2015でも正式に導入されていた事実が、関係者への取材で明らかとなりました。

メディアから情報が発信されることはほぼ皆無でしたが、昨年のワールド・カップで既に、タブレットは会場内に設置されていたのです。

操作に慣れる必要はあるとは言え、煩雑な作業が要求される【スコアラー】にとって、手書き入力がデジタル入力になるだけでも、作業負担はかなり軽減されます。たとえば、リベロの後衛選手との入れ替わりなどは自動入力が可能になり、手間が随分と省けます。

セット開始時のラインナップについても、従来どおり紙ベースで「スターティング・ラインナップ・シート(通称「目玉」)」を提出しますが、同時にタブレットを通じて入力することが義務づけられており、入力されたデータは「e-Scoresheet」の画面上に、ダイレクトに反映されます。


ここまで説明すれば、タブレットによる入力が「サブスティテューション」において、非常に大きな効果を発揮することは容易にご想像頂けるでしょう。もちろん、目視による確認が【スコアラー】の大切な作業として残りますが、入力ミスは理論的にゼロにすることが可能です。

「IF」をデジタル化させるにあたり、作業効率や正確性の追求する意味で、タブレット入力を導入するのは、必然の流れと言えるでしょう。



タブレット自体は設置されていたにも関わらず、この目新しいシステム導入の件がメディアで採り上げられなかった理由は、タブレットを使用しても構わない一方で、従来どおりのハンド・シグナルでの運用も認められていたからです。

「タブレット」と「【スコアラー】が入力するパソコン」との通信を、無線LANで試みたところエラーが頻発したため、従来どおりの運用も許可せざるを得なかったというのが、事の真相でした。

ハンド・シグナルで「チャレンジ」の申請が許可される(※4)シーンが、テレビ中継で頻繁に映し出されたこともあり、タブレット使用を前提とした新システムが導入されたことなど、メディア関係者ですら、知る由もなかったかもしれません。

通信エラーが頻発したワールド・カップ2015での反省を踏まえ、今回のOQTでは「タブレット」と「【スコアラー】が入力するパソコン」を有線接続することで万全を期し、ハンド・シグナルは許可しない「タブレットありきの〝特別ルール〟」が、本格導入されるに至ったという経緯でした。





こうして見てくると、FIVBが新システム導入を推進するのは、スコアラーの作業負担を減らすという「運営側の都合」だけが理由であるかのように、感じられるかもしれません。事実、新システムについてのマイナス面ばかりが取り沙汰された今回のOQTでしたが、そんな中で唯一「タブレットが導入されていたから」こそ、早い段階で気づくことが可能となり、混乱を最小限に食い止めることができたシーンがありました。

  (後編につづく)

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(※1)「バレーの新システムはなぜ“今”か? タブレットとチャレンジの問題点。」(米虫紀子『Number Web』より)

(※2)ルール運用上は、主審がサーブ側チームのラインナップを、副審がレセプション側チームのラインナップを監視することになっているが、過去には主審・副審がそれを見逃してしまい、試合が進行してからその事実が判明して大混乱に陥ったケースが、国際大会(ワールド・カップ2007男子大会・日本対ブラジル戦)や国内トップ・カテゴリの大会(2009年の第58回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会・女子準決勝の久光製薬スプリングス対NECレッドロケッツ戦)でも、実際に生じている

(※3)Vリーグ含め日本の国内大会においては、2016年6月時点で『e-Scoresheet』は導入されていない

(※4)ワールド・カップ2015では、タブレットで申請できる項目に「チャレンジ」自体が、含まれていなかった

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2014年6月28日 (土)

『ミーハー排球道場』第5回ブロック(その3)こぼれ話

前回の「第4回ブロック(その2)」から、実に1年ぶりの連載記事更新となってしましました m(_ _)m

「ミーハー排球道場」第5回ブロック(その3)『バレーボールワールド(vbw)』より)

DVDの準備に時間を取られていたのも事実ですが、それ以上に、日本のバレー界における「デディケート・シフトの誤解」を、どうやったら明解に解説できるのか? という点で、頭の中の整理がつかなかったから、というのが事の真相です。

現に、DVDに使用したスライドでは、DVD発売時にはすでに第5回を掲載しているという前提で、引用元として「ミーハー排球道場 第5回」と、フライングして書いてしまっています^^;;

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というわけで、かなり苦労した第5回でしたが、ようやく、自分の頭の中にあったもやもやがスッキリして、カタルシスを覚えています。

記事本文にも書いているように、日本のバレー界ではバレー専門誌(要は『月バレ』)や研究機関誌(要は日本バレー学会の機関誌『バレーボール研究』)において、デディケート・シフトに対する不正確な記述が頻発します。

http://jsvr.org/archives/pdf/issue/15/pp01-07.pdfより)

しかも不思議なのは、上記のような図を提示しておきながら、論文記述の文章中では「デディケートブロックは,セッターがトスを上げる瞬間に,3人のブロッカーが極端にいずれかのサイドに寄っているポジショニングで」と表現している点です。

つまりデディケート・シフトの定義自体を、誤解していらっしゃるわけではないようなのです。

それなのにどうして、ブロック陣形(=シフト)を上記のような図で分類しようとしたのか???


この図による分類に従えば、下記のような陣形は【デディケート・シフト】に分類されてしまいます。

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これを「3人のブロッカーが極端にいずれかのサイドに寄っているポジショニング」とは呼びませんよね。どう見ても、レフト・ブロッカーは他のブロッカーとは逆サイドに寄っています。

この論文における判定手法に従えば、ブラジルのこのデディケート・シフトは、バンチ・シフトに分類されてしまいます。


要するに、この論文において「分析対象となっているゲーム」が、研究目的である「ブロック陣形がディフェンス戦術に及ぼす効果を調べる」ことに合致するような戦術意図のもとでは、残念ながら行われていないのでしょう。

ゾーンブロック戦術を暗黙の前提にして研究目的を立てたのに、マン・ツー・マンブロック戦術のもとで繰り広げられているゲームを研究対象に選んでしまったがゆえに、ブロック陣形を分類しようとすると、上記のような図で「無理矢理」分類せざるを得なくなって、自己矛盾してしまっているのだと想像します。

そうした意味からも『バレーペディア』の次回改訂時には、CHAPTER 2(ブロック)をまず、戦術意図「ゾーンマン・ツー・マンか?」に従って分類した上で、解説していく必要があると考えています。

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2013年8月11日 (日)

『バレーペディア改訂版 Ver 1.2』に書き切れなかった【スロット】の解説

スロットとは?・・・ネットに平行な水平座標軸を設定して1m刻みにコートを9分割し、数字や記号を用いて呼称するコート上の空間位置。主として、アタッカーがボール・ヒットする位置を呼称するのに用いられる(『バレーペディア改訂版 Ver 1.2』(日本文化出版)より)。


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言わずと知れた(はずの?!)スロット図。

たくさんのバレーファンの要望に応える形で、改訂版の『バレーペディア』では1ページを割く堂々とした見出し語として採用されたわけですが、残念ながら私がそのページで解説したい内容の全てを網羅することは、時間的にも誌面スペース的にも不可能でした。


スロットのキモは、「ネット際からアタック・ライン付近までを含む"空間"である」という点にあります。これが「世界標準のバレーボール」おいて、サーブ・レシーブ返球目標位置を柔軟に扱える土台となっています。


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日本では、セッターの定位置を「セッターのコート上での立ち位置(=点)として」とらえるため、レセプション返球位置がネット際からアタック・ラインへ近づいてしまって、セッターがコート上でネットに垂直方向にエンド・ライン方向に動かされた場合、いわゆるAパス→Bパス→Cパスというように、「想定外のところへ返球された緊急避難的状況」という扱いになりがちです。

一方海外では、セッターの定位置を「スロット0(=空間)として」とらえるため、レセプション返球位置がアタック・ライン付近になったとしても「スロット0」つまり、返球目標位置にきちんと返球されたという扱いになります。


具体例で考えてみましょう。

相手のサーブが打たれる直前、前衛のMBが「11(=スロット1にファースト・テンポの助走動作で入って打つアタック、いわゆるAクイック)」を打つ場面を想定してみて下さい。

サーブ・レシーブ返球位置がアタック・ライン付近になり、セッターがコート上でネットに垂直方向にエンド・ライン方向に動いた場合、日本では前衛のMBはサーブ・レシーブ返球位置に関わらず、Aパスが返球された場合と同じようにスロット1のネット際の位置で踏み切って、結果的にいわゆる「縦のB(クイック)」を繰り出す形になりがちです。「縦のB(クイック)」は、トップ・レベルの選手であっても高度な技術と一般的に認識されているプレーです。

一方海外では、前衛のMBはスロット1の「空間」の中で、セッターとの相対関係を保ったまま、つまり、まるでアタック・ライン付近にネットがあるかのような感覚で、ネットから離れた位置で踏み切ります。


当然ですが、ネットから離れて打ちますから、日本でよく指導されるような「先に跳んで空中で待って、ボールの上がりばなを叩く」打ち方はできません。その代わりに、どのような状況下でも、クイックを繰り出すことが可能になります。

『バレーペディア改訂版 Ver 1.2』では、「レセプション返球目標位置に対する考え方に、日本と海外で、象徴的な違いが見られます」というところまでしか、誌面の制約上、触れることができませんでした。


さらに、本来の原稿はもっともっと続きます。


次に、レセプション返球位置が左右にズレて、セッターがコート上でネットに平行に動かされた場合は、どうすればよいのでしょうか?


これに対する答えの1つは、『セリンジャーのパワーバレーボール』(ベースボールマガジン社)に登場する【流動スロット・システム】です。


流動スロット・システム】なんて聞くと、何だか難しそうな印象ですが、これはスロットの概念が浸透してこなかった日本においても、言われたら「あぁ、自分も無意識のうちに、そうプレーしてたよ」と答えが返ってきそうな、実は非常にポピュラーな方法です。


例えば、レセプション返球位置が自コート上でライト寄りに1mズレた場面では、「11」すなわちAクイックを打とうとする前衛MBは、セッターについてライト寄りに移動することが多いですね。しかし、レフトから攻撃する前衛WSは、当初のサイン通り、レフトのアンテナ付近でボールを打とうとすることが多いはずです。


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つまり【流動スロット・システム】では、レセプション返球位置が左右に動いた場合には、レセプションが返球されたスロットを新たな「スロット0」に読み替え、それに従って各スロットの番号も相対的な位置関係に従って書き換えるのですが、但しスロット5とスロットCだけは固定したまま、なのです。ですから、図1-1のように、本来「スロット4」であった空間は番号のない空間となり、一方「スロットB」という空間は存在しないことになります。

同じように、今度はレセプション返球位置が自コート上でレフト寄りに2mズレた場面を想定して下さい。

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今度は図1-2のように、本来「スロットA」「スロットB」であった空間は番号のない空間となり、一方「スロット3」「スロット4」という空間は存在しないことになるのです。

実は、ここまでが元々の、改訂案の文章でした。【流動スロット・システム】に関しては、誌面上の制約もさることながら、残念ながら上述の内容をイラストレーターの方にきちんと理解してもらった上で単純明快に図示して頂くだけの、十分な時間が取れなかったため、直前で断念した内容でした。


こうやって解説していくと、【流動スロット・システム】というのは非常にポピュラーな方法でありながら、実はかなり複雑なシステムであることがおわかり頂けるでしょう。アタッカーにとってもセッターにとっても、システムに慣れるのにはある程度の訓練を要する結果になります。

こうした複雑なシステムを用いないシステムとしては、単純にレセプション返球位置に関わらずスロットを固定したまま対応する【絶対スロット・システム】があります。しかしこれを用いる場合、セッターがレセプション返球位置に関わらず、決まったスロットに向かってセットしなければなりません。ですから、【絶対スロット・システム】は単純明快である一方で、セッターにはかなりの技量を要求するシステムとなります。


このように、【流動スロット・システム】【絶対スロット・システム】いずれも、初心者段階にはハードルが高いシステムと言えます。そこで、これをもっと単純化して、初心者段階においても「世界標準のバレーボール」が繰り出せる方法として提案したいのが、【相対スロット・システム】です。


相対スロット・システム】では、【流動スロット・システム】同様に、レセプション返球されたスロットを新たな「スロット0」に読み替え、それに従って各スロットの番号も相対的な位置関係に従って書き換えます。それだけです! 従って、場合によっては「スロット6」や「スロットD」「スロットE」といったスロットが出現しますが、アタッカーもセッターも、当初のサイン通りのスロットでアタックを繰り出す前提でプレーしますので、実際に「スロット6」や「スロットD」「スロットE」で攻撃を仕掛けることはありません。

3

4


こうしたシステムであれば、レセプション返球位置が左右にズレた場合でも、ネットから垂直方向にセッターが動かされた場合と全く同様に、アタッカーとセッターが相対的な位置関係を保ったまま、プレーすることが可能になります。非常に簡単で、オススメです(*^^)v

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2012年6月11日 (月)

【告知】『排球塾』が課外授業となって帰ってきます!

『Volleypedia(バレーペディア)改訂版 Ver 1.2』、お陰様で初版に続いて販売は好調のようです。
ありがとうございます m(_ _)m
今回はAmazonでの売り上げ以外にも、会場販売も健闘しているようで、発売直後の黒鷲では当初の予定冊数が大会途中で早々完売し、OQTも最終日の時点で残り2冊(?)だったようで、恐らく今後行われるワールドグランプリの会場でも販売されると思います。ご購入がまだの方は、バレー観戦のお供に是非どうぞ♪

発売までの期待感の大きさから、発売までのツイートで占められてしまっている感がありますが、初版同様このようなまとめもあります。

バレーペディア改訂版への期待と反響 #vabotter #ばれぺで(togettered by @kaz10000)

発売後には、読者の方々から今回の改訂箇所に関する率直な質問を頂き、そこから生まれた有意義な議論のまとめがこちらです。皆様、本当にありがとうございます!

2012 5/15 テンポに関するツイートをまとめました。(togettered by @sideattackeryui)

新しい「ばれぺで」にいろんな付箋を貼ってみた。(togettered by @456kyoto)

こうしたまとめからもおわかり頂けるように、『バレーペディア 改訂版 Ver 1.2』で提示した【テンポ】の新しい定義は、初版に比べ随分と前進したのは間違いないとは言え、【テンポ】の概念を日本のバレー界に広く浸透させるには、まだまだ課題が多いという事実も改めて痛感させられました。






2年前に初版の『バレーペディア』が発刊されて以降、twitter を通じて【テンポ】に関する議論が #vabotter で盛んとなり、それがきっかけとなって『月バレ』で『深層真相排球塾』という連載が始まりました。一般のファンや底辺の指導者の議論から、唯一の専門誌でそのような連載が生まれること自体が画期的なことでしたが、日本のバレー界がめまぐるしいスピードで変遷していく世界トップレベルの潮流を追いかけるには、まだまだ進歩のスピードは十分とは言えません。

そう、今までのような活動だけでは、限界があるのです。
これからは、一般のファンや底辺の指導者の皆さんの力だけでなく、トップレベルの選手・指導者の皆さんの力も必要なのです!!!

ここから【告知】です!

来る7月21日(土)、静岡県三島市の東レアローズ(男子)体育館ならびに研修センターにて、「【テンポ】の観点から理解・実践する世界標準のバレーボール」というテーマで「2012 バレーボールミーティング」が開催され、今回そのメインの講師役を私が務めさせて頂くこととなりました。"ファースト・テンポ女子中学生"のYouTube動画で一躍有名となった手川勝太朗先生にもご協力頂き、東レアローズの選手の方々をモデルに『深層真相排球塾』の課外授業版的なものが展開できたら・・・と考えております。

午前中の講義においては、これまで当ブログや『バレーペディア』ならびに、『深層真相排球塾』の誌面を使っても様々な制約ゆえに十分伝えきれなかった部分についても、今回は思う存分、出し惜しみなく、お伝えしたいと思います。一方、午後のオンコートレクチャーでは、昨シーズンV・チャレンジリーグのトヨタ自動車でキャプテンとして活躍された太田有紀選手にも、ご協力頂く予定となっています。

詳細についてはこちらをご覧下さい。7月7日が事前締め切りとなっておりますが、当日飛び入り参加も(会場が満員にならない限り)可能です(但しその場合は、昼食のみご自身でご準備下さい)。

今のところ、東レアローズはもちろん、V・プレミアならびにチャレンジ、地域リーグに属する複数のチームの選手・スタッフの方々や、その他関係者の方々からご参加の意思表示を頂いております。

「学会」という堅苦しい名前がついておりますが、特に午後はオンコートで、皆様にも実際に簡単な形で【テンポ】を体感して頂けるような工夫を凝らす予定ですので、軽く汗をかいても大丈夫な服装で(もしくは着替えを持って)、できればバレーシューズ持参の上で、気軽にご参加下さい。

学会員に限らず、どなたでも自由にご参加頂けるうえに、普段なかなか接することができない関係者の方々とも対等に議論しあえるチャンスです。当日は、十分に質疑応答の時間を設けるつもりでおりますので、是非この機会をお見逃しなく!

三島から、新しい日本のバレーボールを、是非ご一緒に発信していきましょう!

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2012年4月25日 (水)

お待たせしました! 『バレーペディア 改訂版 Ver 1.2』発売です!!!

初版発刊から、約2年の歳月が経ちました。

その間にたくさんの方から、どうすれば手に入るのか? 需要がこれだけあるのに、どうして増刷されないのか?・・・というご意見を色々な形で頂きました。私自身も心苦しい状況でしたが、出版社の中の方々や、日本バレーボール学会会長並びに理事の方々の粘り強いご尽力により、このたびようやく、 「改訂版 Ver 1.2」の出版に至りました。

『Volleypedia(バレーペディア)改訂版 Ver 1.2』が4月28日、日本文化出版より発売されます。

Volleypediaver12_2


当初の予定は、あくまで「初版の明らかな間違い箇所の修正や文字校正と、内容があまりに現状にそぐわなくなった部分のアップデートのみ」で、わずか2ヶ月ほどの作業時間しか私たちには残されていませんでしたが、初版の『バレーペディア』をご愛好頂いた読者の皆さまにも色々な形で、積極的にご協力頂けたお陰で、マイナーヴァージョンアップではありますが、その制約の中で可能な限り完成度やわかりやすさを追求し、皆さまのご期待に添えるものになったのではないかと考えております。


私が担当したアタック編前半(P009-028)戦術に関わる用語について言えば、初版の発刊をきっかけにテンポファースト・テンポという言葉が一般にも浸透した一方で、テンポの概念の正しい理解となると、残念ながら関係者の間でも、理解が浸透したとは言えない現状があります。初版でテンポを「セット・アップからアタック・ヒット(スパイク・ヒット)までの"時間の長さ"」と定義してしまったがために、ナショナルチームレベルも含め、日本のバレー界で蔓延するテンポに関する誤解を、さらに助長させてしまったのではないか・・・という自責の念を日を追う毎に強く感じていましたので、今回の改訂では同じ過ちは二度と繰り返すまいと、気合いを込めました。

それでも、テンポを再定義するにあたっての編集作業は、予想以上に困難な険しい道のりでした。一時は暗礁に乗り上げ、より明確でわかりやすい定義を提示するのは、今回の改訂作業に与えられた時間的制約の中では不可能ではないか・・・と諦めかけた瞬間もありましたが、終わってみれば少なくとも現状では最も納得のいく、しかもプレー経験のない方でもわかりやすい、定義づけができたと考えています。

実際、以前当ブログでも採り上げ、嬉しいことに好評を得て『少年ジャンプ』の連載となった「ハイキュー!!」の内容ともリンクしたものになっており、「ハイキュー!!」を読んでバレーボールに興味を持った小中学生の皆さまにもオススメです♪

個人的には、テンポの概念をきちんと理解していても、周りの方にうまく言葉で伝えることができずに歯がゆい思いをされてきた、全国の底辺指導者の方々にとって、今回の改訂版が突破口になれることを期待しています。


嬉しいことに今回、リブロ池袋本店の方で発売より一足早く(26日夕方頃〜)、店頭に並べて頂けるそうです! 他の人より早く手に入れたい方は、リブロ池袋本店へGO♪

日本バレーボール学会の公式サイトや某サイトでも、人知れずそっとアナウンスされています。
http://jsvr.org/2012/04/post-27.html
http://ameblo.jp/yoichi-kato/


是非とも『Volleypedia(バレーペディア)改訂版 Ver 1.2』の中身を、実際にご覧頂いた上で、率直なご意見をお聞かせ願いたいと存じます。

全てを実現できるわけではありませんが、頂いたご意見は必ず次回の改訂作業で検討課題に挙げて、検討していきたいと思っております。「Ver 2.0」へのメジャーアップデートが実現するためにも、「Ver 1.2」のご購入を宜しくお願いします。

コメントでも結構ですし、ツイッターで「#vabotter」ないしは「#ばれぺで」のハッシュタグをつけて、つぶやいて下さい!





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2012年1月22日 (日)

【深層真相排球塾(1学期2限目)】「テンポ」はアタッカーの助走開始のタイミングで決まる

【テーマ】〜テンポは"何秒"ではない!〜
アタッカーの助走開始のタイミングで決まる

まずは前回の復習から・・・

2限目を始めるにあたって、まずは前回の要点をおさらいしましょう。

テンポとは「セット・アップからスパイク・ヒットまでの経過時間」であり、「リード・ブロックで対応するブロッカーの反応時間よりも、テンポを短くするにはどうすればよいか?」が、ファースト・テンポにたどり着くためのカギでした。

それを達成する具体的な方法は

★セット・アップより相当前から助走を開始し、セット・アップの瞬間に踏み切って、空中で最高点に達したところでボールをヒットする

方法であり、そうすれば

★リード・ブロックで対応するブロッカーが空中で最高点に達するよりも前に、ブロッカーの上からスパイク・ヒットできる

ことを、アキンラデウォ選手のAクイックの連続写真を見ながら確認しました。

この要点を踏まえると、テンポは「セット・アップからアタッカーが踏み切るタイミングまでの経過時間によって決まる」というとらえ方ができ、その経過時間がほぼゼロとなる攻撃こそがファースト・テンポの攻撃だと考えることができます。従って、テンポは本来「アタッカーの助走開始のタイミングによって決まる」ものなのです。

ところが日本のバレー界には、「セッターのトスの"はやさ"にアタッカーが合わせないといけない」という、まるでテンポが「セッターのトスで決まる」かのような意識が根強く存在します。その意識が一体どこから生まれるのか?・・・その鍵を解くため今回は、全日本女子の"速い"バック・アタックの連続写真を見ながら、検証を進めたいと思います(写真をクリックすれば、大きくなります)。

(写真1)
Ebata1

(写真2 - セット・アップ直前 - )
Ebata2

(写真3 - セット・アップ直後 - )
Ebata3

(写真4)
Ebata4

(写真5)
Ebata5

(写真6)
Ebata6


◎日本の女子バレー界でよく見られる、テンポを短くする方法

まず写真1~2ですが、これはセット・アップ前~直前の状況で、江畑選手は前傾姿勢をとり、写真1で浮かせた左足を写真2で床面に着いて前進していますが、その歩幅は極めて小さく、いわば"足踏み"状態で、助走を開始するタイミングを見計らっている状態と言えます。写真3はセット・アップ直後で、両腕を大きく後方へ振り上げる動作が見られ、さらに写真4では両足がともに空中にあることから、写真3で着いている左足で床面を蹴って、勢いよく助走を開始したことが伺えます。そして写真5で踏み切り動作を行っており、この一連の連続写真から、江畑選手はほぼ"1歩助走"でスパイク動作を行っていることがわかります。

スパイク動作は前回説明したように、踏み切ってからスパイク・ヒットを完了するまでの時間がほぼ一定であるため、スパイク動作にかかる全経過時間の中で意識的に変えられるのは、助走開始から踏み切るまでの時間です。この連続写真から、江畑選手は助走距離を縮めることで、助走開始から踏み切るまでの時間を短縮しようとしていることが伺えます。

これを前回同様、図で考えてみましょう。江畑選手は図4のように、助走開始から踏み切るまでの時間を短縮することで、テンポの"絶対的な"短さを達成しています。

Photo

この方法は実は江畑選手に限らず、日本の特に女子バレー界でよく見られる一般的な方法なのですが、江畑選手はじめ全日本女子の選手達は、その高い技術力によって、最小限の助走距離で効率よくスパイクを打っていると言えるでしょう。しかし、助走距離が短いため助走スピードを十分に高めることが難しく、踏み切ってから空中で到達できる"高さを犠牲に"している方法とも言えます。

では今度は、最初におさらいした要点に立ち返って考えてみましょう。そもそもテンポとは「セット・アップ」からスパイク・ヒットまでの経過時間でしたよね? 決して「助走開始」からスパイク・ヒットまでの経過時間、すなわちスパイク動作にかかる全経過時間のことではありません。いくら助走距離を削ってテンポを短くしても、写真3から伺えるように助走開始のタイミングがセット・アップよりも後では、踏み切りのタイミングをセット・アップの瞬間に合わせることは不可能です。この方法でいくら助走距離を削っても、相手のブロッカーがセット・アップを確認してから踏み切るまでの経過時間(ブロッカーの反応時間の①+②に相当)が短くなれば、図5のようにブロッカーの反応時間より早くスパイク・ヒットを完了できるとは限りません(1限目で解説した、ファースト・テンポの攻撃を達成する具体的方法(図2)と比較して下さい)。

Photo_2

Photo_3

ですからこの方法は、リード・ブロックで対応するブロッカーに対して効果を発揮するファースト・テンポの攻撃とは、決して呼べないのです。

◎なぜこのような方法が、日本で一般化してしまったのか?

数年前、メディアで"1秒の壁"や"1.1秒"という言葉がもてはやされました。こうした"何秒"という数値に象徴されるように、日本のバレー界でテンポと言えば、それ自体の"絶対的な"短さばかりが注目される傾向にあります。しかし、ここに実は大きな落とし穴があるのです。攻撃を組み立てる上で、相手のブロッカーがどう反応するのか? という意識が希薄で、もっぱらセッターとアタッカーの息を合わせることばかりに重点が置かれるため、テンポの"絶対的な"短さを追求しようと、セッターは"はやい"トスを上げ、アタッカーはその経過時間内にスパイク動作を完了させよう、という意識が生まれるのだろうと推測されます。さらに、攻撃を組み立てる主導権はセッターにある、という潜在的意識が日本では強いため、トスの軌道を見てからでないとアタッカーが助走を開始できず、テンポを短くしようと"低い"トスが上がると、助走開始から踏み切るまでの時間的余裕がなくなり、「間に合わない」という意識がアタッカーの心理の中に生まれるのでしょう。テンポを短くすることは本来、敵のブロッカーとの勝負に勝つための「手段」であるはずなのに、いつの間にかテンポを短くすること自体が「目的」にすり替わり、セッターが"はやい"トスを上げようとすればするほど、味方のアタッカーが全力でジャンプするだけの十分な助走距離が取れない、という状況に陥ったのです。

真のファースト・テンポの攻撃との決定的な違いは、アタッカーの助走開始のタイミングがセット・アップより後にあることです。相手のブロッカーがリード・ブロックで対応してくることをきちんと意識していれば、ブロッカーがセット・アップを確認するまで動けないことを逆手にとって、セット・アップより相当前から全力で助走を開始してこそ、アタッカーに勝機が生まれることは容易に想像がつくはずです。攻撃の「目的」は相手のブロッカーに勝つことであって、テンポの"絶対的な"短さを達成することではありません。テンポを"何秒以内"にするかが重要なのではなく、セット・アップより相当前から全力で助走を開始し、セット・アップの瞬間に踏み切ることが、結果的にファースト・テンポにつながるのです。

テンポに関する誤解が招いた"悲劇"

日本のバレー界に蔓延するテンポに関するこうした誤解は、長身で最高到達点の高い選手は"速い"攻撃が苦手だ、という神話を生み出しました。長身選手が一般的に、低身長の選手より動作が緩慢なのは事実でしょうから、助走開始から踏み切るまでに相対的に時間がかかることが多いでしょう。しかし、それに見合うだけ助走開始のタイミングを十分に早くすれば、いくら動作が緩慢であろうとも、セット・アップの瞬間に踏み切りのタイミングを合わせることは可能です。日本の長身選手が"速い"攻撃を苦手にしているように見えるのは、助走開始から踏み切るまでの時間を短縮してスパイクを打つのが苦手だからであり、そもそもせっかくの最高到達点の"高さを犠牲に"してしまうそのようなプレースタイル自体が、実は無意味なのです。リード・ブロックで対応するブロッカーにとって最も効果を発揮するファースト・テンポの攻撃は、その本質さえきちんと理解できていれば、身長や動作の俊敏性とは無関係に、普通にスパイクが打てる選手なら誰でも打つことができるプレーなのです。

【参考動画】(踏み切るタイミングは、両足が床面から離れる瞬間として計測)

☆日本の女子バレー界で一般的な、助走開始踏み切るまでの時間を短縮する方法

(谷口 雅美選手・2009全日本女子)

・・・実況解説陣が「すっごい速いですねー」と言っていますが、実際に計測してみれば、助走開始から踏み切るまでの時間が0.73秒、踏み切ってからスパイク・ヒットまでの時間が0.30秒で、肝心のテンポ0.97秒。これらの数字を以下の動画と比較下さい。

☆真のファースト・テンポ

(江口 理代選手・2007パイオニア)

・・・ゆったり助走しているように見えるので、実況解説は「速い」などと一言も言いませんが、実際には助走開始から踏み切るまでの時間が1.07秒、踏み切ってからスパイク・ヒットまでの時間が0.30秒で、肝心のテンポ0.87秒であり、上の動画のテンポよりも圧倒的に短い!!!

(加藤 陽一選手・1999全日本男子)

・・・実況解説陣は「人間は浮くんですね−」とか「日本人離れしたジャンプ力」とか、打点の高さばかり強調していますが、助走開始から踏み切るまでの時間が0.94秒、踏み切ってからスパイク・ヒットまでの時間が0.40秒で、肝心のテンポ0.81秒であり、確かに谷口・江口両選手よりも圧倒的にジャンプ力が高いために踏み切ってからスパイク・ヒットまでの時間が0.1秒余計にかかっているにもかかわらず、江口選手よりもさらにテンポが短い!!!

*****

セッターの"はやい"トスに合わせようと、最小限の助走距離で踏み切った江畑選手のこの"速い"バック・アタックがどういう結末を迎えるかは、世界トップレベルの男子選手のファースト・テンポのパイプ攻撃とともに、次回お見せすることにしましょう。

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2012年1月 9日 (月)

【深層真相排球塾(1学期1限目)】バレーボールにおける「テンポ」とは?

【テーマ】バレーボールのテンポとは?

☆日本のバレー界に蔓延するテンポに関する誤解

テンポを理解するにあたっては、その概念が生まれた背景をまず理解する必要があります。テンポはアタック戦術に関わる概念ですので、真っ向から対決するブロック戦術が関わってきます。ブロックに跳ぶ「反応の仕方」には大きく分けて、アタッカーの助走に合わせて跳ぶ「コミット・ブロック」と、トスの行方を確認してから跳ぶ「リード・ブロック」がありますが、世界トップレベルのブロック戦術の主流は、コミット・ブロックからリード・ブロックへと移り変わってきたという歴史的背景があります。こうしたブロック戦術の変化が、攻撃側にテンポを強く意識させる要因となっているのです。リード・ブロックではトスの行方を確認してブロックに跳ぶので、「トスが上がる(=セット・アップ)瞬間からアタッカーがボールを打つ(=スパイク・ヒット)瞬間までの経過時間」が短いほど、スパイク・ヒットに対してブロッカーが間に合わない可能性が高くなります。この「セット・アップからスパイク・ヒットまでの経過時間」が一般に、テンポと呼ばれています。その経過時間が最も短い攻撃がファースト・テンポ(1st tempo)、それより少し長い攻撃がセカンド・テンポ(2nd tempo)、最も長い攻撃がサード・テンポ(3rd tempo)と呼ばれます。サード・テンポの攻撃は、いわゆるオープン攻撃などに相当します。一方、リード・ブロックに対して最も効果を発揮する攻撃がファースト・テンポの攻撃だというわけです。


ここまではそれほど難しくないのですが、ここから先に進もうとした時に誤解がしばしば生じます。陥りやすいのは「ファースト・テンポの攻撃とは一体"何秒以内"の攻撃なのか?」という考え方です。テンポはそれ自体の"絶対的な"短さが重要なのではなく、相手のブロッカーの反応時間よりも"相対的に"短いことが重要なのです。ですから、ファースト・テンポの攻撃が「何秒なのか?」を考えることには意味はなく、「どうすればリード・ブロックで対応するブロッカーの反応時間よりも早いタイミングで、スパイク・ヒットを完了できるか?」を考えていけば、自ずとファースト・テンポの攻撃にたどり着くのです。


☆どうやってブロック反応時間よりテンポを短くするか?

では、ブロッカーの動作から考えてみましょう。リード・ブロックで対応するブロッカーは、セット・アップを確認した後、トスの上がったアタッカーのスパイク・ヒット位置に向かってネットに沿って移動し、踏み切ってブロックを完成させます。ですからブロッカーの反応時間は、セット・アップを確認してから実際に体を動かし始めるまでの反応時間(①)、ネットに沿って移動する移動時間(②)、踏み切ってから空中でブロックが完成するまでの時間(③)、の合計となります(図1)。

Photo

①〜③のうち①と②は、ブロッカーのセット・アップを見極める能力や身体能力、セッターの能力やセット・アップ位置とスパイク・ヒット位置との間の水平距離などの影響を受けます。一方③は、ブロッカーがジャンプして空中で最高点に達するまでの時間であり、これはジャンプ力によほどの差がない限りは、ほとんどの場合一定となります(※)。

次に、アタッカーの動作を考えてみます。アタッカーは、助走を開始した後、踏み切って空中でボールを打ちますが、この中で助走開始から踏み切るまでの時間はアタッカーによって、また同じアタッカーでも状況によって、かなり違いが出ます。一方、踏み切ってからスパイク・ヒットを完了するまでの時間は、スイングがどうあれ空中で最高点に達したところでスパイク・ヒットを行う以上、ジャンプ力によほどの差がない限りはほぼ一定であり、かつ、ブロッカーにおける③とほぼ同じと考えられます。


ここまでの理解を前提に、どうすればブロッカーの反応時間よりもテンポを短くできるか? を考えてみましょう。①・②がどんなに短くなったとしても、助走開始のタイミングをセット・アップよりも相当前にして、セット・アップの瞬間に踏み切ってしまえば、アタッカーがスパイク・ヒットを完了するまでにブロッカーが空中で最高点に達するのは理論的に不可能となります(図2)。従って、リード・ブロックで対応するブロッカーに対して最も効果を発揮するファースト・テンポの攻撃とは、「セット・アップの瞬間に踏み切る攻撃」だと理論的に考えることができます。

Photo_2


☆本当のファースト・テンポの攻撃とは?

では今度は、ファースト・テンポの攻撃を打つアタッカーが、実際にどのタイミングで踏み切っているのか? を見てみましょう。

Quick

プルームジット・薛明両選手のクイックをご覧下さい。クイックがリード・ブロックにとって有効な攻撃であることに関しては、恐らく異論がないでしょう。セット・アップの瞬間に注目してもらうと、ほぼその瞬間に両選手とも踏み切っています

さらに、アキンラデウォ選手のクイックをご覧下さい。

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キューバの13番の選手がリード・ブロックで対応しており、写真4がブロック反応時間の①に、写真5が②に、写真6〜9が③に相当します。写真9でブロッカーの体が曲がっていますが、腰の位置を見ればこのタイミングでブロッカーが、空中で最高点に達しているのがわかります。一方、アキンラデウォ選手はセット・アップより相当前から助走を開始し、セット・アップの瞬間に踏み切って、写真7のタイミングで既に最高点に達しており、これがいわゆる「ブロックの完成する前に打てる」状態です。このように「ブロッカーの上から打てる」攻撃こそがファースト・テンポの攻撃であり、これは、全力で助走しセット・アップの瞬間に踏み切って全力でジャンプしない限り、達成されることはないのです。


この理解に基づいてテンポの概念を整理すると、各テンポの違いは図3のように、セット・アップの瞬間からアタッカーが踏み切るタイミングまでの時間の違いだと理解できます。因みに、セット・アップよりも前に踏み切る場合は、マイナス・テンポの攻撃というとらえ方ができますが、これについては次回以降で触れたいと思います。

Photo_4


テンポを規定するのは"はやい"トス?!

図3のように理解すればテンポを規定しているのはトスではなく、実はアタッカーの助走開始のタイミングだという真実が見えてくるはずです。「トスが"はやい"から、ブロックの完成する前に打てる」とよく言われますが、「トスが"はやい"から」ではなく、「早い助走開始のタイミングに見合うようなトスを供給できたから」というのが適切な表現だと言えます。ところが例えば、『月刊バレーボール』2011年1月号p016の木村沙織選手のインタビューを引用すると、彼女は現在の全日本女子の"速い"バック・アタックに関して「・・・テンポが速いから・・・トスを上げるところに先に寄ってまっすぐ入らないと間に合わない」と述べています。この発言からは、「アタッカーがトスの"はやさ"に合わせないと"間に合わない"」という意識が伺えますが、これは一体、どう理解すればよいのでしょうか?


そこで次回2限目からは、全日本女子の"速い"バック・アタックと、世界トップレベルの男子選手が打つファースト・テンポのパイプ攻撃とを、連続写真で比較検討してみたいと思います。


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(※)ブロッカーやアタッカーが踏み切ってからt(秒)後に空中で最高点に到達し、その高さをh(m)、重力加速度をgとすれば、t=√(2h/g)と計算され、60cmしかジャンプしない選手と1mジャンプする選手を比べても空中で最高点に到達するまでの時間は、0.1秒しか変わりません。

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2010年6月13日 (日)

スパイク・スイングの分類(p36-37)

久々に更新された! と思ったら、『Volleypedia(バレーペディア)』に関するエントリーでした。本当に本当に有り難いです。

『千酔亭日乗』より引用


もう1つ強く感じたことは「写真が見づらい」ということ。例えば19ページ上の連続写真では、まず写真ごとの境が分かりづらく、かつボールが背景に溶け込んでしまって、よく見ないとわかりません。ボールの描く放物線軌道の頂点位置に関する説明写真で、ボールが見えにくいというのは正直いかがなものかと思います。45ページのリードブロックの連続写真もそう。ブロッカーがどのタイミングで反応しているか確認するには、ボールがはっきり見えていることが重要です。



編集委員があれこれ言うよりも、読者の率直な感想の方が恐らく、出版社には迅速に伝わるだろうということを、今回の編集作業の中で実感しました。何より、私たちが今回の出版で伝えたかった内容を、まず出版社が理解することこそが日本のバレー界に変革が訪れるための、第一歩なのです。


『Volleypedia(バレーペディア)』のp36-37に掲載されているコラム『スパイクスイングの分類』の連続写真ですが、コラム執筆者が書いているように本質は、バック・スイング(テイク・バック)での腕の動き方にあるのではなく、体幹の使い方にあります。ただ、その本質の理解に至るためには、現場に蔓延する様々な誤解や偏見を一つ一つ解いていった、その先にあります。同じように、例えば私が書かせて頂いた『"スピード"ではなく"テンポ"(攻撃における"テンポ"の概念)』も、当ブログで書いてきた『"スピード"ではなく"テンポ"』の内容のうちの、ほんの障りの部分しか説明できていません。日本代表チームが、練習中にストップウォッチを使ってテンポを計測することの愚かさに気づく日がやってくるためには、まずはストップウォッチを使わなくてもセカンド・テンポのパイプ攻撃 "pipe" と、ファースト・テンポのパイプ攻撃 "bick(back-row quick)" とを見分けられるようになる必要があります。それをどうやって見分ければいいか? その一つの観点として今回の『Volleypedia(バレーペディア)』でファースト・テンポを「セット・アップとほぼ同時に踏み切って打つ」と定義しました。『スパイクスイングの分類』の本質を理解するにあたって、編集部にもみられた誤解が解消された結果が、今月号(7月号)の『月バレ』の「一撃必殺奥義傳」のコーナーに繋がったわけです。『月バレ』に掲載される、プレーのテクニックに関するコーナーでの解説を、過去の有名選手や指導者でない人間が担当したことって、果たしてこれまでにあったでしょうか?



『バボちゃんネット』より引用


僕らスタッフやアナウンサーもただ今熟読中!


まあ一気には頭に入りませんけど…



『バボちゃんネット』、情報発信も早いし、幅広い情報(日本代表だけでなく、Vリーグ・・・チャレンジリーグの情報も)が発信されている様子です。
少しずつですが、何かが変わり始めているのかもしれません。
前回のエントリーでも書いたように、諦めることに慣れきってしまっている日本のバレーボールファンも、諦めることを少しずつ止めていくべきでしょう。

その第一歩として、どんどん『Volleypedia(バレーペディア)』に関する意見・異論・反論を、遠慮なくお願いします! 必ず出版者側に伝わります、いや、伝えていきます!

http://www.herikutu.com/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=672&forum=1&post_id=7563

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2010年5月15日 (土)

『Volleypedia(バレーペディア)』正誤表

本日発売となりました、バレーボール百科事典『Volleypedia(バレーペディア)』ですが、昨日発行元の日本文化出版より連絡があり、印刷完了後の冊子にミスが見つかったようです。申し訳ございません。

大きな2箇所のミスに関して、正誤表を提示させて頂きます。

(p102)
(誤)【スコアリング・スキル】・【ノンスコアリング・スキル】
・・・いずれもp100にも掲載されており、p102の当該箇所に記載すべきは下記の用語でした。
(正)こちらをクリック(PDF)

(p117)
(誤)『優れた「組織的戦術」のための「分業システム」という本質がブラジルバレーに受け継がれている』というキャプションのついた右下の写真
・・・本来は本文中にある注釈(※)で参照させる下記の表が入るはずでした。
(正)こちらをクリック(PDF)

私も他に、細かい要修正部分を確認中ですが、大きな上記2箇所につき、ひとまずこちらでもご報告申し上げます。

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より以前の記事一覧