2009年9月27日 (日)

"レセプション"と"ディグ"改め、"レセプション"より"ディグ"

前々回のエントリーで、「サーブレシーブ」をレセプションへと言い換えることには本質的意味がない、と述べた。むしろディグ "dig" という用語を浸透させるべきだと考えているのだが、そう考えるに至ったきっかけが実はある。

レゼンデバレー(第2章)- アメリカ型分業システムの進化版

'84年ロサンゼルス・'88年ソウルとオリンピック2連覇を成し遂げた、アメリカ男子ナショナルチームが編み出した2人レセプションシステムによって、'90年代前半に「レフト=レセプション専門・センター=ブロック専門・オポジット=攻撃専門(=スーパーエース)」という、究極的な「分業システム」が加速したわけだが、その「分業システム」がレフト以外に配される選手に与えた免罪符は、「レセプションをしなくてよい」というものであったはずである。ところが、なぜか? 日本では「レセプションだけでなく、ディグをも含めたレシーブ全般を免除された」かのように扱われた歴史的事実があり、その象徴として'90年代後半に全日本男子が「バンチ・リードブロックシステム」を採り入れる課程で、そのブロック戦術と切り離せないはずの「トランジションのシステム」即ち、セッターがファーストタッチを行った場面で前衛のセンタープレーヤー(middle blocker)がセットアップを行う、というシステム作りに年単位の時間を要する結果に繋がり、それが世界のトップレベルから更に置いて行かれる契機となってしまったのを、当時私は、黙って見ている他なかった。

あの時、もし「レシーブ」という概念が、レセプションディグの2つに分けて認識されていたなら、、、あるいは、単に「レシーブ」と言えばそれだけでサーブレシーブないしレセプションの意味と理解され、それ以外の守備に関わるプレー、即ちディグのことは意味しないと理解されていたならば、アメリカ型「分業システム」を採り入れる課程で、レフト以外に配される選手が「レシーブ全般を免除された」かのように扱われることは防げたのではないか? という気がしてならないのである。

「レシーブ "receive"」という、本来はサーブ "serve/service" と対をなすが故に「相手のサーブを『レシーブ』する」というプレーしか表現しえないはずの言葉が、守備に関わるプレー「全般」を意味する言葉(用語)として定着してしまっている日本の現状としては、「サーブレシーブ(レセプション)偏重主義」がまかり通ってしまう傾向が強いのも無理はない。だからこそ、ディグという用語を如何に浸透させていくか? がレセプションという用語を用いることよりも、はるかに重要だと思う。全日本女子が「バンチ・リードブロックシステム」を本格的に採り入れようとし始めた今だからこそ、男子の時と同じ過ちは繰り返してはならないと真剣に思っているのだ。

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2009年5月 4日 (月)

"スピード"ではなく"テンポ"(その4)

(その3)では、セットアップ位置の高さが高くなることで、アタッカーとセッターが近接するスロットで行うマイナステンポの攻撃において、メリットが生じ得ることを説明した。

では、アタッカーとセッターが近接しないスロットで行う攻撃においては、セットアップ位置が高いことのメリットがないのか?


答えはそうではない。アタッカーのスパイクヒットポイントが決まっているとして、セットアップ位置が高いほど、トス(set)の軌道(=セットアップ位置からトス(set)の頂点までの垂直方向の距離)は短くなり、感覚的に「低く」見える。何度も言うが「低い」こととテンポが早いこととは無関係であるから、それだけではセットアップ位置が高い方が有利と言えない。しかし、ブロックする側からすれば、マンツーマンでの対応をするケースを除けば、相手チームの1人のアタッカーに対して対応するのではなく、複数のアタッカーを相手にするわけであり、特にリードブロックを採る場合においては、各スロットで同じファースト・テンポの攻撃を打とうとして複数のアタッカーが助走に入る場面を想定すると、相手セッターのセットアップ位置が高いほど、各スロットでのファースト・テンポの攻撃に対してのトス(set)の軌道が、見分けがつきにくくなる効果が生まれる(例えば、Bクイックとレフト平行を想定してもらえばわかるだろう)。

『月刊バレーボール 2009年1月号』に丁度いい写真が載っていたので、無断転載にて大変申し訳ないが・・・(クリックで大きくなります)



Set00

セットアップの瞬間。パナソニックは前衛センターの6番が11攻撃・前衛レフトの3番が51攻撃、さらに見えてはいないが前衛ライトの5番がC1攻撃・後衛レフトの8番がパイプ攻撃の助走に入っている。このタイミングでパナソニックの6番はジャンプを踏み切っているが、一方、相手堺のセンターブロッカーは、セッターのセットアップ動作を凝視していてまだブロックジャンプを始めていないことから、コミットブロックでなくリードブロックを採っていると判断できる。


Set01

トス(set)はセッターの身体の向きの前方向に上がっている。このタイミングでパナソニックの後衛レフトの8番はまだ助走動作が完了していないが、堺のセンターブロッカーはこのタイミングでブロックしに跳び上がろうとしている。リードで対応したブロッカーが跳び上がろうとしているということは、堺のセンターブロッカーはトス(set)がAクイック(11攻撃)に上がったと判断したことになる。


Set02

さぁ、この写真をご覧になって、このトス(set)がどのアタッカーに対して上がったものか? 皆さんわかりますか?





















Set04

この写真で、皆さんもおわかりですね。そう、このトス(set)は、前衛レフトの3番へ上がったレフト平行(51攻撃)のトス(set)である。後衛レフトの8番が助走をやめてしまっているのを見ても、この瞬間誰もがそのことに気づいていると思われるのに、ただ一人、堺のセンターブロッカーだけが、まだそのことに気づいていない。現に彼は、両手を右側に傾け、トス(set)されたボールが自身の身体の右肩の上を通り過ぎようとしているのに反応して、相手パナソニックのセンター6番が、ターン方向に速攻を打ってくるのに対応しようとしているのだ。



Set05

次の瞬間にようやく彼も、自分が「振られた」ことに気づいたようだ。結果的に、彼はリードブロックを跳んだつもりが、その実はゲスブロックになってしまった、ということになってしまったわけだ。ではなぜ? このような結果になってしまったのだろうか?




もう一度、冷静に写真を見返してみよう。

Set01

2枚目のこの写真。セッターのセットアップから0.1秒の瞬間のものだが、よく見れば、セッターの両腕が身体の前方方向へ勢いよく投げ出されており、自身が位置するスロットと近接するスロットにいるアタッカーへのトス(set)ではあり得ないことはわかるはずである。なのに、どうして堺のセンターブロッカーは、見誤ってしまったのか?



Set02

それは、この写真のボールの位置にあると思う。最初に皆さんに「このトス(set)がどのアタッカーに対して上がったものか?」と問いかけたように、この一瞬の、この写真だけを断片的に見ると、次の瞬間にパナソニックのセンター6番が速攻を打っていてもおかしくないように見えるはずだ。なぜなら、バックスイングを終えている6番の選手が、次の瞬間にフォワードスイングを行った(と想定した)場合に、手が通過する(であろう)場所の近くを、ボールが通過しているからだ。


即ち、違うスロットに位置するそれぞれのアタッカーに対してセッターがセットアップする際に、自身の位置するスロットに近接するスロットのアタッカーへのトス(set)の軌道と、離れたスロットのアタッカーへのトス(set)の軌道が重なっていると、リードブロックで対応している相手センターブロッカーを欺くことが可能になりうる、ということである。さらに言えばそれは、セッターのセットアップ位置が高くなることによって、初めて可能になることなのである。


今回転載させてもらったケースのように、190cm以下の身長のセッターですら、リードブロックで対応しているはずのブロッカーを欺くような状況が生じ得るわけで、ましてや2mを超える身長のアメリカ男子ナショナルチームのセッターのロイ・ボールがセットアップすれば、例えば北京オリンピックの男子決勝で、レフト平行(51攻撃)に対して上げたつもりのトス(set)を、速攻の助走に入っていたセンターの選手が間違って打ってしまうというような、極端なケースも生じ得る程に、複数の攻撃に対するトス(set)の軌道が重なってくるわけである。


なお、この話題は『Tのブログ』このエントリーの中のコメント欄で既に展開されていた内容を、わかりやすく図解したつもりである。

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2009年3月29日 (日)

パイオニア - JT via "GAORA"("トス" or "セット")

GAORAでディレイ中継されたこの日の試合。後日ビデオで確認して驚かされたのが、実況を務めた金山泉アナウンサーの言葉遣いだ。

GAORAと言えば、関西ローカルのMBS毎日放送(TBS系列)の関連会社による、スポーツ中継がメインのCS放送であり、V・プレミアリーグの中継については、長年黒鷲旗の実況を務めてきた馬野雅行・森本栄浩の2人のMBSのアナウンサー(馬野アナは因みに、MBSの夕方のニュース番組のメインキャスターも務めている)が主に実況を務めていて、中でも馬野アナのバレー通は関西のバレヲタならご存じのはず。ミーハー路線炸裂で、協会と談合しているフジテレビとは違い、玄人好みのマニアック路線での中継で、協会とも明らかに一線を画している(その点は、番組として加藤陽一選手贔屓である点からも明らかだ)。

そのGAORAのV・プレミアリーグ中継ではあまり聞いたことのない実況の声で、第1セット序盤に「番平守さんの解説でお送りしている『パナソニック』対JT」という言葉を聞いた時には、「このアナウンサー、バレーの中継は素人なのか? 随分GAORAもレベルが落ちたもんだ」と一瞬思ったのだが(一応すぐに気づいて訂正していたので、純粋に言い間違えただけのようだったが)しばらくして、、、



(第1セット、17-12とJTがリードしている場面でのラリーで、セッターの竹下選手がバックライトのタチアーナ選手へのバックアタックのトスを上げた瞬間)


・・・竹下のバックセット。(タチアーナの)バックアタック・・・


この時はまだ、私の聞き間違い?! と半信半疑だったのだが、、、


(同じく第1セット、21-15の場面でのラリーで、竹下選手が前衛ライトにいた坂下選手にハイセットを上げた瞬間)

・・・バックセット。坂下が・・・


(さらに、同じく第1セット22-19の場面でのラリーで、リベロの井上琴絵選手が、真骨頂とも言える、アタックラインを確認しつつその手前で踏み切ってジャンプトスを上げた瞬間)

・・・ランニングセット!・・・


(さらにさらに、第1セット終盤、JTのセットポイントの場面でパイオニアのレセプションが乱れた瞬間)

・・・ちょっとここはランニングセット、アンダーで(ユキが)上げた、ハニーフ・・・



もうわかって頂けたと思うが、そう、日本で「トス」と言われるプレーについて、金山泉アナはセット "set"という言葉を躊躇なく使って実況していたのだ。3月31日に再放送もあるので、見逃した方は是非ご覧あれ!


海外(英語圏)では確かに「トス」のことはセット "set"と言われる。考えてみれば、セット "set"を専門に行うポジションだからこそ、セッター "setter"なのだ。日本でもかつて、トサー "tosser"という用語が用いられていた頃があったようだが、それがいつの頃からかセッター "setter"とポジションの用語は変わったのに、プレーそのものは「トス」という用語が残ったままという、不可思議な状況なのである。


最初に書いたとおり、GAORAのV・プレミアリーグ中継は、馬野雅行・森本栄浩の2人のMBSのアナウンサーがメインだが、この2人に以前はMBSを定年退職した水谷勝海アナウンサーなどが加わっていた。しかし最近はスポーツ実況専門のフリーアナウンサーなどが加わっているようなので、金山泉アナもてっきり、CS専門のフリーアナウンサーなのかと思いきや、放送終了時に「実況担当『MBS』金山泉でお伝えしました」という言葉が聞こえてきた。

気になって、この金山泉アナウンサーをネットで調べてみると・・・もともとは中京テレビのアナウンサーで、2009年2月に確かに毎日放送に入社しているようだ。Wikipediaによる解説では「中京テレビを退社して毎日放送に入社した理由は『野球中継を担当したいから』(中京テレビでは中日ドラゴンズのホームゲーム中継権を持っていない)」とのこと。要するに、野球が一番にしろ、スポーツ中継がしたいという志が強いのだろう。バレーボール中継の経験がどれ程あるのか? そもそもバレーというスポーツが好きなのか? まではわからないが、最初に入社した中京テレビを退社してまで入社したのがあの"GAORA"である以上、バレーに全く興味がない、ということは考えにくい。経験や興味もあまりなかったとしても、恐らくかなり勉強しているはずだ。

では果たして、彼はどこでバックセット・ランニングセットという用語を覚えたのだろう? という興味が湧いてくると同時に、テレビの中継でセット "set"という用語が聞こえてきても、別に決して思ったほど変な違和感は感じないということが確認できた。


試合終了直後に、ユウのヒロインインタビューを担当したのは、満を持して登場の馬野アナ。多分、ユウにインタビューしたかったのは、彼自身じゃないかと思う。「最後にファンの皆さんに(一言)お願いします」という言葉にユウが応えて、それでインタビューが終わるのが普通だと思うが、その後に馬野アナ自身がユウへ叱咤激励のエールを送ってインタビューを終えたのを見て、「あぁ、馬野アナ、それをユウに直接伝えたかったから、彼女を(ヒロインインタビューに)選んだのね」と妙に納得してしまった(笑)。そう、GAORAは、ユウがスタメンに定着した頃からずっと、試合終了後にずーーっとユウをカメラが追い続けるなど、フジテレビでは考えられないカメラワークを平気でするような、実はユウ贔屓のテレビ局であって、だからこそ「玄人好みのマニアック路線での中継」と言えるのだ(笑)。

その"GAORA"だからこそ、今年から新規採用したスポーツアナウンサーが、セット "set"という用語を使い始めたことは、注目に値すると言っていい。あぁ、『バボCHANNEL』はここ数年すっかり、見る価値のない番組に堕落してしまったし、新たにGAORAでバレーボール専門番組やってくれないかなぁ・・・。バレー番組のソフトを売り込みたいと思ってらっしゃる制作会社の方々、どうですか? GAORAなら買ってくれるかもしれませんよ〜、特に馬野アナに直接売り込んでみては(笑)。

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2009年1月25日 (日)

"コンビバレー"という言葉は消し去ろう!

日本のバレー界では、よくこの言葉を耳にする。


・・・コンビバレー・・・


これは一体全体、何なのだろう???


確かにわかる、言いたいことはだいたい。センタープレーヤー(middle blocker)のAクイックをおとりにして、ライトにいるプレーヤーがセンタープレーヤーの後ろから回り込んで、近接するスロットで時間差攻撃を決めたりすると、アナウンサーの口から「コンビ(バレー)を使ってきましたね」とか「見事なコンビ(バレー)ですね」とかいう言葉が発せられる。しかし、それが発せられるのは、その攻撃が「決まった(=得点した)」からこそ、である。決まら(=得点し)なければ、「コンビバレー・・・」という言葉は出てこないのだ。当たり前である。コンビとは「コンビネーション "combination"」の略であるから、セッターとアタッカーの両者で作り出される、その決まった(=得点した)攻撃を「ナイス・コンビ(ネーション)!」と褒めているわけであるから。いや違う、「複数のアタッカーがコンビネーションを作り上げる」からこそコンビバレーなのだ、と言うかもしれない。しかし、残念ながらこれも真実ではない。ソフトバレー(ボール)という競技をご存じだろうか? ご存じない方はこちらを参照頂ければと思うが、要は子供から大人まで、生涯にわたってバレーボールを親しめることを意図して考案された競技であり、従って競技者全員が均等にボールに触る機会が与えられるように意図して、1チームの競技人数は「最少人数」に設定されているのだが、3回のボールタッチで相手へ返すバレーという競技において、「最少人数」は当然「3人」と思いがちだが、実は「4人」と設定されている。この意味を最近になって知ったのだが、「レセプション/ディグ」「トス(セット)」の次にくる「アタック」を担う競技者が少なくとも「2人」必要だと考えられているからだそうだ。つまりは、ソフトバレーのようにバレー界において最も「底辺」に位置する競技レベルにおいてすら、攻撃(アタック)は最低「2人」でコンビネーションを組み立てることが当然と見なされているのだ。つまりは、複数のアタッカーがコンビネーションを作り上げるのは、バレーという競技の本質であり、確かに6人制バレーにおいては、どんな状況であれ常に前衛に2人〜3人のアタッカーが存在するわけであるから、複数のアタッカーでコンビネーションが作り上げられない状況自体があり得ないのだ。従って、「複数のアタッカーがコンビネーションを作り上げる」ことをコンビバレーというのなら、すべての攻撃はコンビバレーになってしまい、この言葉自体が意味を為さない。

こうやって突き詰めていくと、「コンビバレーを展開する」とは、要するに「相手チームから攻撃で得点をものにする」という、シンプルな意味でしかないのではないか?! という結論に達する。そこには「華麗な速攻を披露する」とか「アタッカー同士が時間差攻撃を繰り広げる」とか、そういった意味は存在しない。その攻撃が相手チームにとって、いや、さらに厳密に言えば、相手チームのブロックシステムにとって、有効なのかどうか? が一番の鍵なのだ。複数のアタッカー同士がいかに複雑なコンビネーションを構築しても、それが相手チームのブロックシステムにとってカモとなるコンビネーションであれば、それは「コンビバレーを展開した」とは言えなくなってくる。バンチ・リードブロックシステムを敷いてくるチームに対して、中央からの時間差攻撃をいかに複雑に繰り広げても、それをコンビバレーと言えるはずがないのだ。逆に極端な話、ウイングスパイカーのレフトオープン一辺倒の攻撃であっても、相手チームのブロック陣の遙か上から打ち下ろして決め続け(=得点し続け)られるのなら、それは「コンビバレーを展開している」ことになってしまうはずだ。B級レベルならそういうケースが生じ得るだろうが、トップレベルではそれは通常はあり得ない。試合序盤にそのようにレフトオープンを立て続けに決められたら、3枚ブロックを採るなり、ライト側に長身選手をブロッカーとして配するなどの対抗策を採るはずであって、すなわちブロックシステムを試合の局面局面で変えてくるはずだ。従って、最後まで「コンビバレーを展開し続ける」というのは、「試合の各局面で相手チームのブロックシステムを逆手にとって、それに対して最も有効な攻撃システムを選択する」という意味になってくる。要するに、「相手のブロックシステムにあわせて、複数ある攻撃システムを柔軟に使い分けることが出来る」ことこそが、コンビバレーの本質と言えるわけである。これは極めて高度な戦術であるはずだ。B級レベルにおいては「うちのチームの特徴はセッターの○○を中心としたコンビバレー・・・」などということは簡単に口に出来るはずがないし、トップレベルのおいては全てのチームがコンビバレーを目指しているはずなのだ。

結局何が言いたいのかというと・・・上述の内容を理解せずに不用意にコンビバレーなどという言葉は用いるべきではない、ということである。日本のバレー界においては、すぐに「日本のお家芸のコンビバレー」などと言って、あたかも時間差攻撃などで攻めることが「レベルが高い」とでも言わんばかりだが、結局は女子では「単調な」オープントスしかないロシアに全く歯が立たないし、男子では素人目にはこれこそが究極のコンビバレーと映るかもしれないブラジル男子のバレースタイルも、その実は「51・11・C1と31のパイプ攻撃」という「ワンパターン」である。「試合の各局面で相手チームのブロックシステムを逆手にとって、それに対して最も有効な攻撃システムを選択する」ことこそが、本当に「レベルが高い」ことなのであるから、コンビバレーなどという曖昧な言葉を使うのではなく、バンチ・リードブロックシステムを敷いている相手には、両サイドのファーストテンポ攻撃を多用する「スプレッド攻撃」とか、マンツーマン・コミットブロックシステムを敷いている相手には中央で複数のアタッカーが絡む(交差する)「タンデム攻撃」とか、もっと具体的に攻撃のコンビネーションの種類を一つ一つ名付けた方がいいと思う。それが、日本のバレーが世界に追いつくための大事な下準備に繋がると思う。

今後(というか、これまでも出来るだけ使ってこなかったつもりだが)、当ブログではコンビバレーという言葉は一切使わないように心がけたいと思う。

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2008年12月14日 (日)

"スピード"ではなく"テンポ"(その3)

(その1)・(その2)は、「バレーボール用語集」のカテゴリからご覧下さい。


以前から何度も説明してきた「高くて早いトス」。

本質はセッターのセットアップ位置の高さによるのではなく、「トスの頂点」と「アタッカーのスパイクヒットポイント」が「一致すること」であり、要するにトスが描く放物線軌道の問題である。この本質を理解していなければ、セットアップ位置がただ高くなっただけでは決して「高くて早い」攻撃は構築されない。

では、セットアップ位置が高くなった場合に、"スピード"ではなく"テンポ"という面で、果たしてどんなメリットがあるのか?

ここで誤解されやすいのは「セットアップ位置が高い方がアタッカーのスパイクヒット位置に近くなる」という考え方である。これまで説明してきた両サイドの平行トス、すなわちセッターとアタッカーのスロット位置が大きく離れている(=水平距離がかなりある)場合には、セットアップ位置が垂直方向に20〜30cmほど離れていても、スパイクヒット位置までの距離は誤差範囲となる。セットアップ位置が高くなることでアタッカーのスパイクヒット位置に有意に近くなりうるのは、Aクイック(11攻撃)のようにセッターとアタッカーとのスロット位置が近接する(=水平距離がほとんどない)攻撃においてであるが、この場合もトスが描く放物線軌道の頂点でアタッカーがスパイクヒットを行う場合には、(その1)で書いた物理学の数式から導き出される「トスの高さはセットアップされるトスの垂直方向の速度の2乗に比例する」という事実により、セットアップ位置が低いほど必然的にトスの垂直方向のスピードは速くなるため、セットアップ位置が高いほどスパイクヒット位置まで到達する時間が早いとは言えない。

ここで「高くて早い」トスとは?(その1)で書いた前提をおさらいする。両サイドの平行トスにおいて、「セットアップ位置」と「スパイクヒット位置」の2点を結ぶ「直線」に限りなく近い軌道を描くトスを上げようと思えば、トスの描く放物線軌道の「頂点」を限りなくコート外遠方に設定しなければならず、そのようなトスを実際に上げれば、アタッカーは間違いなくスパイクを上手くヒットできない。要するに、スパイクヒットの瞬間にボールに垂直方向上向きの速度が存在する場合、平行トスではスパイクヒットは困難であり、従って理想的なファースト・テンポの平行トスは、スパイクヒットの瞬間はボールが垂直方向の速度がゼロとなるように、即ち放物線軌道の頂点を通過することになる。しかし、Aクイック(11攻撃)のようにセッターとアタッカーのスロット位置が近接する場合は、トスが放物線軌道の頂点に達するよりも前にスパイクヒットを行うことが可能である(だから私は(その2)でファースト・テンポを「トスされたボールが、『放物線軌道の頂点に到達する前か』、頂点付近を通過するところでスパイクヒットを行う攻撃」と定義した)。そうなると「セットアップ位置が高いほどスパイクヒット位置まで到達する時間が早いとは言えない」という大前提が、初めてここで崩れ去る。

ここで新たな用語を定義したい。『セリンジャーのパワーバレーボール』に登場し、その概念の解釈に時間を要している用語としてマイナス・テンポがある。area71さんがご覧になっていたら、ひょっとしたら「間違ってる!」と言われてしまうかもしれないが、、、敢えて思い切って私なりに到達した解釈を書かせてもらう。マイナス・テンポの攻撃とは「トスされたボールが『放物線軌道の頂点に到達する前に』スパイクヒットを行う攻撃」と定義できるのではないかと思う。このようにマイナス・テンポの攻撃を定義する以上、ファースト・テンポの攻撃は「トスされたボールが『放物線軌道の頂点付近を通過するところで』スパイクヒットを行う攻撃」と定義しなおしておく必要があるだろう。マイナス・テンポの攻撃においては、トスがスパイクされなければ描くはずの放物線軌道の頂点を意識しなくてよいため、単純明快に、セットアップ位置とスパイクヒット位置が近いほど、テンポが早くなる。

ところが、マイナス・テンポの攻撃には、別の問題が生じる。トスされたボールが「放物線軌道の頂点に到達する前に」スパイクヒットを行うため、「放物線軌道の頂点に達する前の『どのタイミング』で」スパイクヒットするか? アタッカーにゆだねられる。ファースト・テンポの攻撃は、トスの描く放物線軌道の頂点付近でスパイクヒットを行うために、スパイクヒット位置の垂直方向の高さはトスに100%左右される。しかし、マイナス・テンポの攻撃では、スパイクヒット位置の垂直方向の高さをアタッカー自身が(100%ではないにせよ)多少なりとも変えることが出来るわけである。ここで「セットアップ位置とスパイクヒット位置が近いほど、テンポが早くなる」という直感的感覚が災いすると、時にアタッカーが、自身の最高到達点よりも随分低い高さでスパイクヒットを行ってしまうケースが考えられる(V・プレミアなどでも、速攻がネットに引っかかるシーンをよく見かけるはずだ)。そのケースではセットアップ位置とスパイクヒット位置は確かに近くなるため、テンポは早くなるが、当然スパイクヒットの高さがそのアタッカーの本来の高さでなくなる分、相手ブロッカーにとっても、より少ない時間でそのスパイクヒットの高さまで手が上がる可能性を与えてしまう。

ある1人のアタッカーがセッターと近接するスロットで速攻を打つ場合に、セッターのセットアップ位置が高くなることで短くなるのは、その「セットアップ位置」とそのアタッカーの「スパイクヒット位置」との距離ではなく、そのアタッカーの「最高到達点」との距離である。「スパイクヒット位置」を多少アタッカー自身が変える余地が残されているマイナス・テンポの攻撃においては、「セットアップ位置」が高いほど、そのアタッカーが変えることの出来る「スパイクヒット位置」の最低位置を押し上げることになるため、同じテンポ、即ち「セットアップ位置」と「スパイクヒット位置」との差が同じであっても、そのスパイクヒット位置の絶対値はより高値であり、かつそのアタッカーの「最高到達点」に、より近くなり、結果的に相手ブロッカーにとって、そのスパイクヒットの高さまで手が上がるまでの時間を、より必要とさせることになる。


従って、セッターのセットアップ位置が高いことによって生じるメリットの1点目は「アタッカーとセッターが近接するスロットで行うマイナス・テンポの攻撃」にある、と言っていい。これが「高くて早い」速攻である。

・参考記事(その1):『area71』単脚背快 中国の王怡選手のアタック
・参考記事(その2):『area71』全日本女子 対 ドイツ 第2戦目

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2008年7月31日 (木)

"スピード"ではなく"テンポ"(その2)

ここからは私独自の解釈である。

ファースト・テンポの攻撃とは、「トスされたボールが、放物線軌道の頂点に到達する前か、頂点付近を通過するところでスパイクヒットを行う攻撃」と定義してはどうかと思う。トスの描く放物線軌道の頂点が、アタッカーの最高到達点に一致した場合に、そのアタッカーにとって最も理想的に早いテンポのトスとなる。同じファースト・テンポであっても、アタッカーが違えば(即ち最高到達点が違えば)トスの軌道は異なって当然である。一方、セカンド・テンポサード・テンポの攻撃は「トスされたボールが、放物線軌道の頂点を通過し、ボールが落ちてきてからスパイクヒットを行う攻撃」であり、その中でセカンド・テンポの攻撃とは、「ファースト・テンポの攻撃に対してコミットで跳んだブロッカーが、ブロックジャンプを終えて地面に足がついた直後に、もう一度ブロックに跳ぼうとしても(=二度跳びでは)間に合わないタイミングでスパイクヒットを行う攻撃」と定義すれば良いのではないかと思う。近接するスロットでファースト・テンポの攻撃とセカンド・テンポの攻撃を組み合わせれば、それは即ち、いわゆる時間差攻撃となる。サード・テンポの攻撃は「ファースト・テンポの攻撃に対してコミットで跳んだブロッカーが、二度跳びでも間に合うタイミングでスパイクヒットを行う攻撃」であって、ファースト・テンポの攻撃と組み合わせても時間差攻撃にはならない。

ここで(その1)に載せた図をもう一度参照して欲しい。1mきざみに9等分された各スロットは、センターラインからアタックラインまでを含んだ空間である。スロットの場所とテンポの2つで表される海外の攻撃システムは、実はバックアタックにもそのまま使用できるという利点がある。即ち、バックプレーヤーへの「12トス」が従来のパイプ攻撃であり、これは前衛センタープレーヤーの速攻、即ちファースト・テンポの攻撃と絡める、セカンド・テンポのバックアタックである。一方、ブラジル男子ナショナルチームが開発した高速パイプ攻撃は「31トス」や「A1トス」と表現できる。即ち、これはファースト・テンポのバックアタックである。(その1)で書いたように、本質はスピードではない。そのことをわかっていながら、私自身も「『高速』パイプ攻撃」という表現を用いてることに、矛盾を感じていた。テンポという言葉を使えば、すっきりと表現が可能なのだ。

レゼンデバレー(その1)- 高速パイプ攻撃

日本のバレーファン・マスコミの間では、未だにいわゆる時間差攻撃がもてはやされている傾向にある。しかし、バンチ・リードブロックシステムが基本の、現在の世界のトップレベルのバレーにおいて、最も有効な攻撃システムの基本形は「51(前衛レフトのレフト平行)・11(前衛センターの速攻)・C1(オポジットのライト側の攻撃)・31(後衛レフトの高速パイプ攻撃)」、即ち、セッターとリベロを除いた4人のアタッカー全員がファースト・テンポの攻撃、即ち4人全員が同じテンポの攻撃を行う形である。この本質に気づかなければ、いつまで経っても高さで敵わない日本が海外勢に立ち向かえる時はやってこないはずだ。

・関連記事その1:『area71』世界一速い攻撃は、キューバのストレートフォーワードアタック?
・関連記事その2:『ベリーロールな日々』目指せ!シンクロナイズド・縦バレー!

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2008年7月28日 (月)

"スピード"ではなく"テンポ"(その1)

以前こちら5−1システムの解説をした。これはチーム構成の話であるが、それと間違えないで頂きたいのだが、今回は攻撃の種類、すなわちトス(set)の話である。

海外では、攻撃の種類すなわちトス(set)は、次のような座標軸に基づいて呼称される(クリックで大きくなります)。


Photo


以下に『セリンジャーのパワーバレーボール』での解説を引用する。

1973年にジム・コールマン博士は、各々のトスの種類と高さと場所を示す数字システムを提案した。私はこのコールマン氏のシステムを修正し・・・(中略)・・・場所を明確にするために、ネットは9等分、あるいはスロットに分割する。各スロットは1mの幅で、センターラインからアタックラインまで伸びている。


図に示されるとおり、セッターのセットアップ位置を0として、ネットに平行な水平座標軸で自チームでのレフト側を1〜5で設定、逆にライト側をA〜Cで設定する。アタッカーがスパイクヒットを行うスロット位置と、トスの高さとテンポを表す数字を1〜3で設定して、この両者を用いて「11トス」「31トス」「A1トス」「53トス」などと呼称される。日本で言えばそれぞれ、「Aクイック」「Bクイック」「Cクイック」「レフトオープントス」に相当する。

ここで2番目に並ぶ数字がテンポを表す数字であり、ファースト・テンポセカンド・テンポサード・テンポの3段階に分けられる。このそれぞれのテンポについては、恐らくプレー経験のない方でもある程度直感的には理解できるはずだ。要するにファースト・テンポは速攻だし、2段トスのような攻撃はサード・テンポである。しかし、ではファースト・テンポセカンド・テンポあるいはセカンド・テンポサード・テンポの境界線は? と言われると、非常に曖昧となる。高さのように客観的に数値化できるもので定義できれば明確だが、テンポは "tempo" であって、決して高さ "height" ではない。図ではネットより上方向に座標軸を設定しているが、これは概念的なものである。これは例えば、同じアタッカーが「51トス」「52トス」「53トス」をそれぞれ打ちわけるとしても、スパイクヒットの高さは決して変わるわけではないことを考えれば、理解して頂ける思う。

実際、テンポについて、同じく『セリンジャーのパワーバレーボール』での解説を引用すると

コーチやプレーヤーは、スパイカーによる接触とトスの間の経過時間“テンポ”を思い出すべきである。テンポは低さを意味するのではなく、また当然ボールのスピードを指すのでもない。

と明記されている。テンポはそれ自体、トスされるボールの頂点の高さともスピードとも無関係なパラメータである。だからこそ、「高くて(テンポの)早い」トスと「低くて(テンポの)早い」トスがあると、これまで何度も書いてきたとおりである。

「高くて早い」トスとは?(その1)
「高くて早い」トスとは?(その2)
(再掲載)「高くて早い」トスとは?

さらには、ボールのスピードなどは、ひょっとすると「51トス」よりも頂点が恐ろしく高いサード・テンポの2段トスの方が、ボールのスピードは速い可能性がある。物理学的に考えると、セッターのセットアップ位置(床からの垂直方向の高さ)をh(0)(メートル)・その位置からセットアップされるトスの垂直方向の速度をv(0)(メートル毎時)とし、セットアップの瞬間からt秒後のボールの位置(床からの垂直方向の高さ)をh(t)(メートル)・その瞬間のボールの垂直方向の速度をv(t)(メートル毎時)、重力加速度をgとすると、空気抵抗を無視すれば、、、

・v(t)=v(0)-g*t
・h(t)=h(0)+v(0)*tー1/2*g*t^2

となる。トスの放物線軌道において頂点を通過する瞬間にはv(t)=0となるので、この2式からtを消去すれば、「h(t)-h(0)=v(0)^2/2g」と計算され、トスの高さ(=h(t)-h(0))はセットアップされるトスの垂直方向の速度(=v(0))の2乗に比例することがわかる。ボールのスピードはトスの垂直方向の速度と水平方向の速度の合成で決まるので、水平方向の速度が速い「51トス」よりも垂直方向の速度が恐ろしく速いサード・テンポの2段トスの方が、ボールのスピードは速くなりうる。


日本のバレー界(特に女子)では、「変化とスピード」とか「日本のお家芸のスピードバレー」など、"スピード"という言葉がよく使われる。しかし、上述の事実から見て「スピード」などという言葉に何の意味もないことがわかるであろう。

最近になってようやくというか今更というか、「1秒の壁」などとマスコミは騒ぎ始め、本質がスピードではなくテンポであることに気づき始めたようだが、それだけでは理解は不充分である。何度も言うが、テンポとトスの高さは無関係であり、同じテンポでも「高い」トスと「低い」トスがある。高橋みゆき選手が打つ高速レフト平行も、キューバのルイザ選手が打つレフト平行も、実はテンポはほぼ同じ1.0秒であるが、スパイクヒットの高さは少なくとも40cm程も違う。2人のそれぞれの攻撃に対してブロックに跳ぶ場合、同じタイミングでブロックに跳んだとして、ブロックの上がり端で高橋みゆき選手の攻撃は止めることが出来ても、ルイザ選手の攻撃には間に合わないはずだ。テンポがすべてではなく、高さもやはり重要なのだ。

その点を踏まえてファースト・テンポセカンド・テンポサード・テンポの3段階を定義するとすれば、私は単にテンポの持つ意味以上に、高さの概念も含まれるべきだと思う。

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2008年7月 2日 (水)

"えせリードブロック"改め"ゲスブロック"

こちらで解説したえせリードブロックだが、東レアローズ男子の小林敦コーチのスポーツナビでのコラムでも登場し、本日届いていた『Coaching & Playing Volleyball(CPV)』の56号でも、米山一朋(嘉悦大)監督の記事中で登場しているゲスブロック "guess block" という言葉が、これと同じ概念を表す用語と考えられる。ゲス "guess" とはまさに「当てずっぽう」の意味である。

ところで、リードブロックの説明として時折、「トスの上がる場所を『読んで』跳ぶブロック」という表現を目にする。リード "read" の訳語が『読む』であることから、このような表現が出てくるものと推測するのだが(何を隠そう、私自身も'99年ワールドカップレポの際には、同じような表現を一部使っていた)、この表現はよく考えると誤解を非常に招きやすい表現である。日本語の『読む』には、単純に「書かれている文字を字面通りに『読む』」という意味もあるが、同時に「行間を『読む』」という表現に代表されるように「書かれていないもの、見えないものを心の目で『読む』」という意味がある。そのため「トスの上がる場所を『読む』」というと、「トスがどこに上がるのかを『予想する』」という意味にとられかねない。そのように誤解するとまさにえせリードブロック改めゲスブロック "guess block" となってしまう。恐らく日本人にとっては、リード "read" という言葉よりも、『セリンジャーのパワーバレーボール』で採用されているシー アンド レスポンド "see and respond" という言葉の方が、スムーズに概念を理解しやすいだろう。

日本人は外国語を理解する際に、いったん日本語の訳語に置き換えないと、意味を理解できないという悪い癖がある。言葉は文化に根ざしたものであり、それぞれの国で文化背景も全く異なるわけなので、訳語といっても必ずピタッと一致するものではない。従って、いったん訳語に置き換えるのではなく、出来れば原文のまま意味を理解しようとした方がいい。今説明したリードブロックの例は、まさにその日本人の悪い癖が災いする好例だと思う。以前何度か解説したデディケートなどは、確かに日本人には馴染みがない英語なので、意味が理解しにくいと思われるが、だからといってそれを無理に訳語を当てるとますます意味がわからない(しばしば『捧げる』という解説がなされているのを見るが、英語の "dedicate" と日本語の『捧げる』は、概念が必ずしも一致しない、、、あくまで「(何かに対して)(自分の神経などを)集中させる」というのが "dedicate" であって、(自分の神経などを)の部分に(自分の人生や一生を)が入った場合に『捧げる』という日本語が当てはまるだけである)。無理に訳語などに置き換えずにデディケートという新しい言葉として理解した方がいい。

例えば "libero" はもともとイタリア語で『自由』を意味する言葉だが、バレーにおけるリベロは実際には『自由』どころかプレー上たくさんの制約で縛られている。 "libero" が日本で『自由』という言葉として馴染みがある言葉であったならば、リベロ制導入時に多くの人が違和感を覚えて、ルールとしても浸透しなかったはずだ。ところが、実際には違和感どころか、すっかり当たり前のルールとして定着した。 "libero" がイタリア語でどういう意味なのか? など知らなくても、リベロという新しい言葉として、日本のバレーファンに定着したのだ。

本当は、日本人誰もが意味を「すぐに」「正しく」理解できる言葉を当てはめられたら一番いいのだろうが、バレーボールというスポーツにおける戦術用語に限っては、その概念自体が日本のバレーボール界に存在しないことも多いという現実があるため、実際には困難であろう。「戦術面で日本が世界から遅れを取っている」という現実を直視するためにも、ある程度英語の戦術用語を採り入れて行くべきだろうと個人的には思う。

えせリードという言葉は個人的にはすごく気に入っているのだが、この言葉だけでは "guess" の概念の全てを表現できてはいない。従って、これからはゲスブロック "guess block" で統一したいと思う。

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2008年3月23日 (日)

"キルブロック"と"ソフトブロック"

キルブロック "kill block"とは?・・・ブロックを行う際の手の構え方の一つで、ブロックシャットを狙って手のひらを下に向けて、手をネットから相手コートエリア内に出すブロックの手法のこと。一方、ブロックシャットを敢えて狙わずに、有効なワンタッチを取ることを狙って手のひらを上に向けて、手をネットから相手コートエリア内に出さないブロック手法をソフトブロック "soft block"と呼ぶ。通常ソフトブロック "soft block"は、B級レベルなどで低身長の選手が多いチームなどで活用されるブロック技術であり、トップレベルのバレーにおいてはブロックといえば、キルブロック "kill block"を用いるのが通常だが、トップレベルでも例えばリードブロックを採っていて、ブロックに跳ぶのが遅れた場合に、ブロックシャットは諦めて、ワンタッチ狙いでソフトブロック "soft block"に手の出し方を切り替える、という場面がある。

(追記)トラックバック頂いた、area71さんのブログをご覧頂ければ、具体的にソフトブロック "soft block"の手の出し方がわかりますので、是非ご覧下さい。

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2008年2月27日 (水)

"えせリードブロック"とは?

えせリードブロックとは?・・・『へりくつバレーボール』管理人のたれいらんさんが提唱されている概念で、一見リードブロックをやっているように見える(あるいは、それをやろうとプレーヤー自身も努めている)が、その実セッターのセットアップまでの動作やアタッカーの助走などに影響されて、トスアップが実際に行われるまでにトスの上がる位置を先読みしてしまうブロックの跳び方のこと。たれいらんさんの言葉を借りると『読みが当たりまくるとあたかもリードブロックをやっているかのように見える』から、このように名付けたとのこと。詳しくは、こちらを参照。

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