2009年9月27日 (日)

"レセプション"と"ディグ"改め、"レセプション"より"ディグ"

前々回のエントリーで、「サーブレシーブ」をレセプションへと言い換えることには本質的意味がない、と述べた。むしろディグ "dig" という用語を浸透させるべきだと考えているのだが、そう考えるに至ったきっかけが実はある。

レゼンデバレー(第2章)- アメリカ型分業システムの進化版

'84年ロサンゼルス・'88年ソウルとオリンピック2連覇を成し遂げた、アメリカ男子ナショナルチームが編み出した2人レセプションシステムによって、'90年代前半に「レフト=レセプション専門・センター=ブロック専門・オポジット=攻撃専門(=スーパーエース)」という、究極的な「分業システム」が加速したわけだが、その「分業システム」がレフト以外に配される選手に与えた免罪符は、「レセプションをしなくてよい」というものであったはずである。ところが、なぜか? 日本では「レセプションだけでなく、ディグをも含めたレシーブ全般を免除された」かのように扱われた歴史的事実があり、その象徴として'90年代後半に全日本男子が「バンチ・リードブロックシステム」を採り入れる課程で、そのブロック戦術と切り離せないはずの「トランジションのシステム」即ち、セッターがファーストタッチを行った場面で前衛のセンタープレーヤー(middle blocker)がセットアップを行う、というシステム作りに年単位の時間を要する結果に繋がり、それが世界のトップレベルから更に置いて行かれる契機となってしまったのを、当時私は、黙って見ている他なかった。

あの時、もし「レシーブ」という概念が、レセプションディグの2つに分けて認識されていたなら、、、あるいは、単に「レシーブ」と言えばそれだけでサーブレシーブないしレセプションの意味と理解され、それ以外の守備に関わるプレー、即ちディグのことは意味しないと理解されていたならば、アメリカ型「分業システム」を採り入れる課程で、レフト以外に配される選手が「レシーブ全般を免除された」かのように扱われることは防げたのではないか? という気がしてならないのである。

「レシーブ "receive"」という、本来はサーブ "serve/service" と対をなすが故に「相手のサーブを『レシーブ』する」というプレーしか表現しえないはずの言葉が、守備に関わるプレー「全般」を意味する言葉(用語)として定着してしまっている日本の現状としては、「サーブレシーブ(レセプション)偏重主義」がまかり通ってしまう傾向が強いのも無理はない。だからこそ、ディグという用語を如何に浸透させていくか? がレセプションという用語を用いることよりも、はるかに重要だと思う。全日本女子が「バンチ・リードブロックシステム」を本格的に採り入れようとし始めた今だからこそ、男子の時と同じ過ちは繰り返してはならないと真剣に思っているのだ。

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2009年5月 4日 (月)

"スピード"ではなく"テンポ"(その4)

(その3)では、セットアップ位置の高さが高くなることで、アタッカーとセッターが近接するスロットで行うマイナステンポの攻撃において、メリットが生じ得ることを説明した。

では、アタッカーとセッターが近接しないスロットで行う攻撃においては、セットアップ位置が高いことのメリットがないのか?


答えはそうではない。アタッカーのスパイクヒットポイントが決まっているとして、セットアップ位置が高いほど、トス(set)の軌道(=セットアップ位置からトス(set)の頂点までの垂直方向の距離)は短くなり、感覚的に「低く」見える。何度も言うが「低い」こととテンポが早いこととは無関係であるから、それだけではセットアップ位置が高い方が有利と言えない。しかし、ブロックする側からすれば、マンツーマンでの対応をするケースを除けば、相手チームの1人のアタッカーに対して対応するのではなく、複数のアタッカーを相手にするわけであり、特にリードブロックを採る場合においては、各スロットで同じファースト・テンポの攻撃を打とうとして複数のアタッカーが助走に入る場面を想定すると、相手セッターのセットアップ位置が高いほど、各スロットでのファースト・テンポの攻撃に対してのトス(set)の軌道が、見分けがつきにくくなる効果が生まれる(例えば、Bクイックとレフト平行を想定してもらえばわかるだろう)。

『月刊バレーボール 2009年1月号』に丁度いい写真が載っていたので、無断転載にて大変申し訳ないが・・・(クリックで大きくなります)



Set00

セットアップの瞬間。パナソニックは前衛センターの6番が11攻撃・前衛レフトの3番が51攻撃、さらに見えてはいないが前衛ライトの5番がC1攻撃・後衛レフトの8番がパイプ攻撃の助走に入っている。このタイミングでパナソニックの6番はジャンプを踏み切っているが、一方、相手堺のセンターブロッカーは、セッターのセットアップ動作を凝視していてまだブロックジャンプを始めていないことから、コミットブロックでなくリードブロックを採っていると判断できる。


Set01

トス(set)はセッターの身体の向きの前方向に上がっている。このタイミングでパナソニックの後衛レフトの8番はまだ助走動作が完了していないが、堺のセンターブロッカーはこのタイミングでブロックしに跳び上がろうとしている。リードで対応したブロッカーが跳び上がろうとしているということは、堺のセンターブロッカーはトス(set)がAクイック(11攻撃)に上がったと判断したことになる。


Set02

さぁ、この写真をご覧になって、このトス(set)がどのアタッカーに対して上がったものか? 皆さんわかりますか?





















Set04

この写真で、皆さんもおわかりですね。そう、このトス(set)は、前衛レフトの3番へ上がったレフト平行(51攻撃)のトス(set)である。後衛レフトの8番が助走をやめてしまっているのを見ても、この瞬間誰もがそのことに気づいていると思われるのに、ただ一人、堺のセンターブロッカーだけが、まだそのことに気づいていない。現に彼は、両手を右側に傾け、トス(set)されたボールが自身の身体の右肩の上を通り過ぎようとしているのに反応して、相手パナソニックのセンター6番が、ターン方向に速攻を打ってくるのに対応しようとしているのだ。



Set05

次の瞬間にようやく彼も、自分が「振られた」ことに気づいたようだ。結果的に、彼はリードブロックを跳んだつもりが、その実はゲスブロックになってしまった、ということになってしまったわけだ。ではなぜ? このような結果になってしまったのだろうか?




もう一度、冷静に写真を見返してみよう。

Set01

2枚目のこの写真。セッターのセットアップから0.1秒の瞬間のものだが、よく見れば、セッターの両腕が身体の前方方向へ勢いよく投げ出されており、自身が位置するスロットと近接するスロットにいるアタッカーへのトス(set)ではあり得ないことはわかるはずである。なのに、どうして堺のセンターブロッカーは、見誤ってしまったのか?



Set02

それは、この写真のボールの位置にあると思う。最初に皆さんに「このトス(set)がどのアタッカーに対して上がったものか?」と問いかけたように、この一瞬の、この写真だけを断片的に見ると、次の瞬間にパナソニックのセンター6番が速攻を打っていてもおかしくないように見えるはずだ。なぜなら、バックスイングを終えている6番の選手が、次の瞬間にフォワードスイングを行った(と想定した)場合に、手が通過する(であろう)場所の近くを、ボールが通過しているからだ。


即ち、違うスロットに位置するそれぞれのアタッカーに対してセッターがセットアップする際に、自身の位置するスロットに近接するスロットのアタッカーへのトス(set)の軌道と、離れたスロットのアタッカーへのトス(set)の軌道が重なっていると、リードブロックで対応している相手センターブロッカーを欺くことが可能になりうる、ということである。さらに言えばそれは、セッターのセットアップ位置が高くなることによって、初めて可能になることなのである。


今回転載させてもらったケースのように、190cm以下の身長のセッターですら、リードブロックで対応しているはずのブロッカーを欺くような状況が生じ得るわけで、ましてや2mを超える身長のアメリカ男子ナショナルチームのセッターのロイ・ボールがセットアップすれば、例えば北京オリンピックの男子決勝で、レフト平行(51攻撃)に対して上げたつもりのトス(set)を、速攻の助走に入っていたセンターの選手が間違って打ってしまうというような、極端なケースも生じ得る程に、複数の攻撃に対するトス(set)の軌道が重なってくるわけである。


なお、この話題は『Tのブログ』このエントリーの中のコメント欄で既に展開されていた内容を、わかりやすく図解したつもりである。

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2009年3月29日 (日)

パイオニア - JT via "GAORA"("トス" or "セット")

GAORAでディレイ中継されたこの日の試合。後日ビデオで確認して驚かされたのが、実況を務めた金山泉アナウンサーの言葉遣いだ。

GAORAと言えば、関西ローカルのMBS毎日放送(TBS系列)の関連会社による、スポーツ中継がメインのCS放送であり、V・プレミアリーグの中継については、長年黒鷲旗の実況を務めてきた馬野雅行・森本栄浩の2人のMBSのアナウンサー(馬野アナは因みに、MBSの夕方のニュース番組のメインキャスターも務めている)が主に実況を務めていて、中でも馬野アナのバレー通は関西のバレヲタならご存じのはず。ミーハー路線炸裂で、協会と談合しているフジテレビとは違い、玄人好みのマニアック路線での中継で、協会とも明らかに一線を画している(その点は、番組として加藤陽一選手贔屓である点からも明らかだ)。

そのGAORAのV・プレミアリーグ中継ではあまり聞いたことのない実況の声で、第1セット序盤に「番平守さんの解説でお送りしている『パナソニック』対JT」という言葉を聞いた時には、「このアナウンサー、バレーの中継は素人なのか? 随分GAORAもレベルが落ちたもんだ」と一瞬思ったのだが(一応すぐに気づいて訂正していたので、純粋に言い間違えただけのようだったが)しばらくして、、、



(第1セット、17-12とJTがリードしている場面でのラリーで、セッターの竹下選手がバックライトのタチアーナ選手へのバックアタックのトスを上げた瞬間)


・・・竹下のバックセット。(タチアーナの)バックアタック・・・


この時はまだ、私の聞き間違い?! と半信半疑だったのだが、、、


(同じく第1セット、21-15の場面でのラリーで、竹下選手が前衛ライトにいた坂下選手にハイセットを上げた瞬間)

・・・バックセット。坂下が・・・


(さらに、同じく第1セット22-19の場面でのラリーで、リベロの井上琴絵選手が、真骨頂とも言える、アタックラインを確認しつつその手前で踏み切ってジャンプトスを上げた瞬間)

・・・ランニングセット!・・・


(さらにさらに、第1セット終盤、JTのセットポイントの場面でパイオニアのレセプションが乱れた瞬間)

・・・ちょっとここはランニングセット、アンダーで(ユキが)上げた、ハニーフ・・・



もうわかって頂けたと思うが、そう、日本で「トス」と言われるプレーについて、金山泉アナはセット "set"という言葉を躊躇なく使って実況していたのだ。3月31日に再放送もあるので、見逃した方は是非ご覧あれ!


海外(英語圏)では確かに「トス」のことはセット "set"と言われる。考えてみれば、セット "set"を専門に行うポジションだからこそ、セッター "setter"なのだ。日本でもかつて、トサー "tosser"という用語が用いられていた頃があったようだが、それがいつの頃からかセッター "setter"とポジションの用語は変わったのに、プレーそのものは「トス」という用語が残ったままという、不可思議な状況なのである。


最初に書いたとおり、GAORAのV・プレミアリーグ中継は、馬野雅行・森本栄浩の2人のMBSのアナウンサーがメインだが、この2人に以前はMBSを定年退職した水谷勝海アナウンサーなどが加わっていた。しかし最近はスポーツ実況専門のフリーアナウンサーなどが加わっているようなので、金山泉アナもてっきり、CS専門のフリーアナウンサーなのかと思いきや、放送終了時に「実況担当『MBS』金山泉でお伝えしました」という言葉が聞こえてきた。

気になって、この金山泉アナウンサーをネットで調べてみると・・・もともとは中京テレビのアナウンサーで、2009年2月に確かに毎日放送に入社しているようだ。Wikipediaによる解説では「中京テレビを退社して毎日放送に入社した理由は『野球中継を担当したいから』(中京テレビでは中日ドラゴンズのホームゲーム中継権を持っていない)」とのこと。要するに、野球が一番にしろ、スポーツ中継がしたいという志が強いのだろう。バレーボール中継の経験がどれ程あるのか? そもそもバレーというスポーツが好きなのか? まではわからないが、最初に入社した中京テレビを退社してまで入社したのがあの"GAORA"である以上、バレーに全く興味がない、ということは考えにくい。経験や興味もあまりなかったとしても、恐らくかなり勉強しているはずだ。

では果たして、彼はどこでバックセット・ランニングセットという用語を覚えたのだろう? という興味が湧いてくると同時に、テレビの中継でセット "set"という用語が聞こえてきても、別に決して思ったほど変な違和感は感じないということが確認できた。


試合終了直後に、ユウのヒロインインタビューを担当したのは、満を持して登場の馬野アナ。多分、ユウにインタビューしたかったのは、彼自身じゃないかと思う。「最後にファンの皆さんに(一言)お願いします」という言葉にユウが応えて、それでインタビューが終わるのが普通だと思うが、その後に馬野アナ自身がユウへ叱咤激励のエールを送ってインタビューを終えたのを見て、「あぁ、馬野アナ、それをユウに直接伝えたかったから、彼女を(ヒロインインタビューに)選んだのね」と妙に納得してしまった(笑)。そう、GAORAは、ユウがスタメンに定着した頃からずっと、試合終了後にずーーっとユウをカメラが追い続けるなど、フジテレビでは考えられないカメラワークを平気でするような、実はユウ贔屓のテレビ局であって、だからこそ「玄人好みのマニアック路線での中継」と言えるのだ(笑)。

その"GAORA"だからこそ、今年から新規採用したスポーツアナウンサーが、セット "set"という用語を使い始めたことは、注目に値すると言っていい。あぁ、『バボCHANNEL』はここ数年すっかり、見る価値のない番組に堕落してしまったし、新たにGAORAでバレーボール専門番組やってくれないかなぁ・・・。バレー番組のソフトを売り込みたいと思ってらっしゃる制作会社の方々、どうですか? GAORAなら買ってくれるかもしれませんよ〜、特に馬野アナに直接売り込んでみては(笑)。

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2009年1月25日 (日)

"コンビバレー"という言葉は消し去ろう!

日本のバレー界では、よくこの言葉を耳にする。


・・・コンビバレー・・・


これは一体全体、何なのだろう???


確かにわかる、言いたいことはだいたい。センタープレーヤー(middle blocker)のAクイックをおとりにして、ライトにいるプレーヤーがセンタープレーヤーの後ろから回り込んで、近接するスロットで時間差攻撃を決めたりすると、アナウンサーの口から「コンビ(バレー)を使ってきましたね」とか「見事なコンビ(バレー)ですね」とかいう言葉が発せられる。しかし、それが発せられるのは、その攻撃が「決まった(=得点した)」からこそ、である。決まら(=得点し)なければ、「コンビバレー・・・」という言葉は出てこないのだ。当たり前である。コンビとは「コンビネーション "combination"」の略であるから、セッターとアタッカーの両者で作り出される、その決まった(=得点した)攻撃を「ナイス・コンビ(ネーション)!」と褒めているわけであるから。いや違う、「複数のアタッカーがコンビネーションを作り上げる」からこそコンビバレーなのだ、と言うかもしれない。しかし、残念ながらこれも真実ではない。ソフトバレー(ボール)という競技をご存じだろうか? ご存じない方はこちらを参照頂ければと思うが、要は子供から大人まで、生涯にわたってバレーボールを親しめることを意図して考案された競技であり、従って競技者全員が均等にボールに触る機会が与えられるように意図して、1チームの競技人数は「最少人数」に設定されているのだが、3回のボールタッチで相手へ返すバレーという競技において、「最少人数」は当然「3人」と思いがちだが、実は「4人」と設定されている。この意味を最近になって知ったのだが、「レセプション/ディグ」「トス(セット)」の次にくる「アタック」を担う競技者が少なくとも「2人」必要だと考えられているからだそうだ。つまりは、ソフトバレーのようにバレー界において最も「底辺」に位置する競技レベルにおいてすら、攻撃(アタック)は最低「2人」でコンビネーションを組み立てることが当然と見なされているのだ。つまりは、複数のアタッカーがコンビネーションを作り上げるのは、バレーという競技の本質であり、確かに6人制バレーにおいては、どんな状況であれ常に前衛に2人〜3人のアタッカーが存在するわけであるから、複数のアタッカーでコンビネーションが作り上げられない状況自体があり得ないのだ。従って、「複数のアタッカーがコンビネーションを作り上げる」ことをコンビバレーというのなら、すべての攻撃はコンビバレーになってしまい、この言葉自体が意味を為さない。

こうやって突き詰めていくと、「コンビバレーを展開する」とは、要するに「相手チームから攻撃で得点をものにする」という、シンプルな意味でしかないのではないか?! という結論に達する。そこには「華麗な速攻を披露する」とか「アタッカー同士が時間差攻撃を繰り広げる」とか、そういった意味は存在しない。その攻撃が相手チームにとって、いや、さらに厳密に言えば、相手チームのブロックシステムにとって、有効なのかどうか? が一番の鍵なのだ。複数のアタッカー同士がいかに複雑なコンビネーションを構築しても、それが相手チームのブロックシステムにとってカモとなるコンビネーションであれば、それは「コンビバレーを展開した」とは言えなくなってくる。バンチ・リードブロックシステムを敷いてくるチームに対して、中央からの時間差攻撃をいかに複雑に繰り広げても、それをコンビバレーと言えるはずがないのだ。逆に極端な話、ウイングスパイカーのレフトオープン一辺倒の攻撃であっても、相手チームのブロック陣の遙か上から打ち下ろして決め続け(=得点し続け)られるのなら、それは「コンビバレーを展開している」ことになってしまうはずだ。B級レベルならそういうケースが生じ得るだろうが、トップレベルではそれは通常はあり得ない。試合序盤にそのようにレフトオープンを立て続けに決められたら、3枚ブロックを採るなり、ライト側に長身選手をブロッカーとして配するなどの対抗策を採るはずであって、すなわちブロックシステムを試合の局面局面で変えてくるはずだ。従って、最後まで「コンビバレーを展開し続ける」というのは、「試合の各局面で相手チームのブロックシステムを逆手にとって、それに対して最も有効な攻撃システムを選択する」という意味になってくる。要するに、「相手のブロックシステムにあわせて、複数ある攻撃システムを柔軟に使い分けることが出来る」ことこそが、コンビバレーの本質と言えるわけである。これは極めて高度な戦術であるはずだ。B級レベルにおいては「うちのチームの特徴はセッターの○○を中心としたコンビバレー・・・」などということは簡単に口に出来るはずがないし、トップレベルのおいては全てのチームがコンビバレーを目指しているはずなのだ。

結局何が言いたいのかというと・・・上述の内容を理解せずに不用意にコンビバレーなどという言葉は用いるべきではない、ということである。日本のバレー界においては、すぐに「日本のお家芸のコンビバレー」などと言って、あたかも時間差攻撃などで攻めることが「レベルが高い」とでも言わんばかりだが、結局は女子では「単調な」オープントスしかないロシアに全く歯が立たないし、男子では素人目にはこれこそが究極のコンビバレーと映るかもしれないブラジル男子のバレースタイルも、その実は「51・11・C1と31のパイプ攻撃」という「ワンパターン」である。「試合の各局面で相手チームのブロックシステムを逆手にとって、それに対して最も有効な攻撃システムを選択する」ことこそが、本当に「レベルが高い」ことなのであるから、コンビバレーなどという曖昧な言葉を使うのではなく、バンチ・リードブロックシステムを敷いている相手には、両サイドのファーストテンポ攻撃を多用する「スプレッド攻撃」とか、マンツーマン・コミットブロックシステムを敷いている相手には中央で複数のアタッカーが絡む(交差する)「タンデム攻撃」とか、もっと具体的に攻撃のコンビネーションの種類を一つ一つ名付けた方がいいと思う。それが、日本のバレーが世界に追いつくための大事な下準備に繋がると思う。

今後(というか、これまでも出来るだけ使ってこなかったつもりだが)、当ブログではコンビバレーという言葉は一切使わないように心がけたいと思う。

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2008年12月14日 (日)

"スピード"ではなく"テンポ"(その3)

(その1)・(その2)は、「バレーボール用語集」のカテゴリからご覧下さい。


以前から何度も説明してきた「高くて早いトス」。

本質はセッターのセットアップ位置の高さによるのではなく、「トスの頂点」と「アタッカーのスパイクヒットポイント」が「一致すること」であり、要するにトスが描く放物線軌道の問題である。この本質を理解していなければ、セットアップ位置がただ高くなっただけでは決して「高くて早い」攻撃は構築されない。

では、セットアップ位置が高くなった場合に、"スピード"ではなく"テンポ"という面で、果たしてどんなメリットがあるのか?

ここで誤解されやすいのは「セットアップ位置が高い方がアタッカーのスパイクヒット位置に近くなる」という考え方である。これまで説明してきた両サイドの平行トス、すなわちセッターとアタッカーのスロット位置が大きく離れている(=水平距離がかなりある)場合には、セットアップ位置が垂直方向に20〜30cmほど離れていても、スパイクヒット位置までの距離は誤差範囲となる。セットアップ位置が高くなることでアタッカーのスパイクヒット位置に有意に近くなりうるのは、Aクイック(11攻撃)のようにセッターとアタッカーとのスロット位置が近接する(=水平距離がほとんどない)攻撃においてであるが、この場合もトスが描く放物線軌道の頂点でアタッカーがスパイクヒットを行う場合には、(その1)で書いた物理学の数式から導き出される「トスの高さはセットアップされるトスの垂直方向の速度の2乗に比例する」という事実により、セットアップ位置が低いほど必然的にトスの垂直方向のスピードは速くなるため、セットアップ位置が高いほどスパイクヒット位置まで到達する時間が早いとは言えない。

ここで「高くて早い」トスとは?(その1)で書いた前提をおさらいする。両サイドの平行トスにおいて、「セットアップ位置」と「スパイクヒット位置」の2点を結ぶ「直線」に限りなく近い軌道を描くトスを上げようと思えば、トスの描く放物線軌道の「頂点」を限りなくコート外遠方に設定しなければならず、そのようなトスを実際に上げれば、アタッカーは間違いなくスパイクを上手くヒットできない。要するに、スパイクヒットの瞬間にボールに垂直方向上向きの速度が存在する場合、平行トスではスパイクヒットは困難であり、従って理想的なファースト・テンポの平行トスは、スパイクヒットの瞬間はボールが垂直方向の速度がゼロとなるように、即ち放物線軌道の頂点を通過することになる。しかし、Aクイック(11攻撃)のようにセッターとアタッカーのスロット位置が近接する場合は、トスが放物線軌道の頂点に達するよりも前にスパイクヒットを行うことが可能である(だから私は(その2)でファースト・テンポを「トスされたボールが、『放物線軌道の頂点に到達する前か』、頂点付近を通過するところでスパイクヒットを行う攻撃」と定義した)。そうなると「セットアップ位置が高いほどスパイクヒット位置まで到達する時間が早いとは言えない」という大前提が、初めてここで崩れ去る。

ここで新たな用語を定義したい。『セリンジャーのパワーバレーボール』に登場し、その概念の解釈に時間を要している用語としてマイナス・テンポがある。area71さんがご覧になっていたら、ひょっとしたら「間違ってる!」と言われてしまうかもしれないが、、、敢えて思い切って私なりに到達した解釈を書かせてもらう。マイナス・テンポの攻撃とは「トスされたボールが『放物線軌道の頂点に到達する前に』スパイクヒットを行う攻撃」と定義できるのではないかと思う。このようにマイナス・テンポの攻撃を定義する以上、ファースト・テンポの攻撃は「トスされたボールが『放物線軌道の頂点付近を通過するところで』スパイクヒットを行う攻撃」と定義しなおしておく必要があるだろう。マイナス・テンポの攻撃においては、トスがスパイクされなければ描くはずの放物線軌道の頂点を意識しなくてよいため、単純明快に、セットアップ位置とスパイクヒット位置が近いほど、テンポが早くなる。

ところが、マイナス・テンポの攻撃には、別の問題が生じる。トスされたボールが「放物線軌道の頂点に到達する前に」スパイクヒットを行うため、「放物線軌道の頂点に達する前の『どのタイミング』で」スパイクヒットするか? アタッカーにゆだねられる。ファースト・テンポの攻撃は、トスの描く放物線軌道の頂点付近でスパイクヒットを行うために、スパイクヒット位置の垂直方向の高さはトスに100%左右される。しかし、マイナス・テンポの攻撃では、スパイクヒット位置の垂直方向の高さをアタッカー自身が(100%ではないにせよ)多少なりとも変えることが出来るわけである。ここで「セットアップ位置とスパイクヒット位置が近いほど、テンポが早くなる」という直感的感覚が災いすると、時にアタッカーが、自身の最高到達点よりも随分低い高さでスパイクヒットを行ってしまうケースが考えられる(V・プレミアなどでも、速攻がネットに引っかかるシーンをよく見かけるはずだ)。そのケースではセットアップ位置とスパイクヒット位置は確かに近くなるため、テンポは早くなるが、当然スパイクヒットの高さがそのアタッカーの本来の高さでなくなる分、相手ブロッカーにとっても、より少ない時間でそのスパイクヒットの高さまで手が上がる可能性を与えてしまう。

ある1人のアタッカーがセッターと近接するスロットで速攻を打つ場合に、セッターのセットアップ位置が高くなることで短くなるのは、その「セットアップ位置」とそのアタッカーの「スパイクヒット位置」との距離ではなく、そのアタッカーの「最高到達点」との距離である。「スパイクヒット位置」を多少アタッカー自身が変える余地が残されているマイナス・テンポの攻撃においては、「セットアップ位置」が高いほど、そのアタッカーが変えることの出来る「スパイクヒット位置」の最低位置を押し上げることになるため、同じテンポ、即ち「セットアップ位置」と「スパイクヒット位置」との差が同じであっても、そのスパイクヒット位置の絶対値はより高値であり、かつそのアタッカーの「最高到達点」に、より近くなり、結果的に相手ブロッカーにとって、そのスパイクヒットの高さまで手が上がるまでの時間を、より必要とさせることになる。


従って、セッターのセットアップ位置が高いことによって生じるメリットの1点目は「アタッカーとセッターが近接するスロットで行うマイナス・テンポの攻撃」にある、と言っていい。これが「高くて早い」速攻である。

・参考記事(その1):『area71』単脚背快 中国の王怡選手のアタック
・参考記事(その2):『area71』全日本女子 対 ドイツ 第2戦目

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2008年7月31日 (木)

"スピード"ではなく"テンポ"(その2)

ここからは私独自の解釈である。

ファースト・テンポの攻撃とは、「トスされたボールが、放物線軌道の頂点に到達する前か、頂点付近を通過するところでスパイクヒットを行う攻撃」と定義してはどうかと思う。トスの描く放物線軌道の頂点が、アタッカーの最高到達点に一致した場合に、そのアタッカーにとって最も理想的に早いテンポのトスとなる。同じファースト・テンポであっても、アタッカーが違えば(即ち最高到達点が違えば)トスの軌道は異なって当然である。一方、セカンド・テンポサード・テンポの攻撃は「トスされたボールが、放物線軌道の頂点を通過し、ボールが落ちてきてからスパイクヒットを行う攻撃」であり、その中でセカンド・テンポの攻撃とは、「ファースト・テンポの攻撃に対してコミットで跳んだブロッカーが、ブロックジャンプを終えて地面に足がついた直後に、もう一度ブロックに跳ぼうとしても(=二度跳びでは)間に合わないタイミングでスパイクヒットを行う攻撃」と定義すれば良いのではないかと思う。近接するスロットでファースト・テンポの攻撃とセカンド・テンポの攻撃を組み合わせれば、それは即ち、いわゆる時間差攻撃となる。サード・テンポの攻撃は「ファースト・テンポの攻撃に対してコミットで跳んだブロッカーが、二度跳びでも間に合うタイミングでスパイクヒットを行う攻撃」であって、ファースト・テンポの攻撃と組み合わせても時間差攻撃にはならない。

ここで(その1)に載せた図をもう一度参照して欲しい。1mきざみに9等分された各スロットは、センターラインからアタックラインまでを含んだ空間である。スロットの場所とテンポの2つで表される海外の攻撃システムは、実はバックアタックにもそのまま使用できるという利点がある。即ち、バックプレーヤーへの「12トス」が従来のパイプ攻撃であり、これは前衛センタープレーヤーの速攻、即ちファースト・テンポの攻撃と絡める、セカンド・テンポのバックアタックである。一方、ブラジル男子ナショナルチームが開発した高速パイプ攻撃は「31トス」や「A1トス」と表現できる。即ち、これはファースト・テンポのバックアタックである。(その1)で書いたように、本質はスピードではない。そのことをわかっていながら、私自身も「『高速』パイプ攻撃」という表現を用いてることに、矛盾を感じていた。テンポという言葉を使えば、すっきりと表現が可能なのだ。

レゼンデバレー(その1)- 高速パイプ攻撃

日本のバレーファン・マスコミの間では、未だにいわゆる時間差攻撃がもてはやされている傾向にある。しかし、バンチ・リードブロックシステムが基本の、現在の世界のトップレベルのバレーにおいて、最も有効な攻撃システムの基本形は「51(前衛レフトのレフト平行)・11(前衛センターの速攻)・C1(オポジットのライト側の攻撃)・31(後衛レフトの高速パイプ攻撃)」、即ち、セッターとリベロを除いた4人のアタッカー全員がファースト・テンポの攻撃、即ち4人全員が同じテンポの攻撃を行う形である。この本質に気づかなければ、いつまで経っても高さで敵わない日本が海外勢に立ち向かえる時はやってこないはずだ。

・関連記事その1:『area71』世界一速い攻撃は、キューバのストレートフォーワードアタック?
・関連記事その2:『ベリーロールな日々』目指せ!シンクロナイズド・縦バレー!

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2008年7月28日 (月)

"スピード"ではなく"テンポ"(その1)

以前こちら5−1システムの解説をした。これはチーム構成の話であるが、それと間違えないで頂きたいのだが、今回は攻撃の種類、すなわちトス(set)の話である。

海外では、攻撃の種類すなわちトス(set)は、次のような座標軸に基づいて呼称される(クリックで大きくなります)。


Photo


以下に『セリンジャーのパワーバレーボール』での解説を引用する。

1973年にジム・コールマン博士は、各々のトスの種類と高さと場所を示す数字システムを提案した。私はこのコールマン氏のシステムを修正し・・・(中略)・・・場所を明確にするために、ネットは9等分、あるいはスロットに分割する。各スロットは1mの幅で、センターラインからアタックラインまで伸びている。


図に示されるとおり、セッターのセットアップ位置を0として、ネットに平行な水平座標軸で自チームでのレフト側を1〜5で設定、逆にライト側をA〜Cで設定する。アタッカーがスパイクヒットを行うスロット位置と、トスの高さとテンポを表す数字を1〜3で設定して、この両者を用いて「11トス」「31トス」「A1トス」「53トス」などと呼称される。日本で言えばそれぞれ、「Aクイック」「Bクイック」「Cクイック」「レフトオープントス」に相当する。

ここで2番目に並ぶ数字がテンポを表す数字であり、ファースト・テンポセカンド・テンポサード・テンポの3段階に分けられる。このそれぞれのテンポについては、恐らくプレー経験のない方でもある程度直感的には理解できるはずだ。要するにファースト・テンポは速攻だし、2段トスのような攻撃はサード・テンポである。しかし、ではファースト・テンポセカンド・テンポあるいはセカンド・テンポサード・テンポの境界線は? と言われると、非常に曖昧となる。高さのように客観的に数値化できるもので定義できれば明確だが、テンポは "tempo" であって、決して高さ "height" ではない。図ではネットより上方向に座標軸を設定しているが、これは概念的なものである。これは例えば、同じアタッカーが「51トス」「52トス」「53トス」をそれぞれ打ちわけるとしても、スパイクヒットの高さは決して変わるわけではないことを考えれば、理解して頂ける思う。

実際、テンポについて、同じく『セリンジャーのパワーバレーボール』での解説を引用すると

コーチやプレーヤーは、スパイカーによる接触とトスの間の経過時間“テンポ”を思い出すべきである。テンポは低さを意味するのではなく、また当然ボールのスピードを指すのでもない。

と明記されている。テンポはそれ自体、トスされるボールの頂点の高さともスピードとも無関係なパラメータである。だからこそ、「高くて(テンポの)早い」トスと「低くて(テンポの)早い」トスがあると、これまで何度も書いてきたとおりである。

「高くて早い」トスとは?(その1)
「高くて早い」トスとは?(その2)
(再掲載)「高くて早い」トスとは?

さらには、ボールのスピードなどは、ひょっとすると「51トス」よりも頂点が恐ろしく高いサード・テンポの2段トスの方が、ボールのスピードは速い可能性がある。物理学的に考えると、セッターのセットアップ位置(床からの垂直方向の高さ)をh(0)(メートル)・その位置からセットアップされるトスの垂直方向の速度をv(0)(メートル毎時)とし、セットアップの瞬間からt秒後のボールの位置(床からの垂直方向の高さ)をh(t)(メートル)・その瞬間のボールの垂直方向の速度をv(t)(メートル毎時)、重力加速度をgとすると、空気抵抗を無視すれば、、、

・v(t)=v(0)-g*t
・h(t)=h(0)+v(0)*tー1/2*g*t^2

となる。トスの放物線軌道において頂点を通過する瞬間にはv(t)=0となるので、この2式からtを消去すれば、「h(t)-h(0)=v(0)^2/2g」と計算され、トスの高さ(=h(t)-h(0))はセットアップされるトスの垂直方向の速度(=v(0))の2乗に比例することがわかる。ボールのスピードはトスの垂直方向の速度と水平方向の速度の合成で決まるので、水平方向の速度が速い「51トス」よりも垂直方向の速度が恐ろしく速いサード・テンポの2段トスの方が、ボールのスピードは速くなりうる。


日本のバレー界(特に女子)では、「変化とスピード」とか「日本のお家芸のスピードバレー」など、"スピード"という言葉がよく使われる。しかし、上述の事実から見て「スピード」などという言葉に何の意味もないことがわかるであろう。

最近になってようやくというか今更というか、「1秒の壁」などとマスコミは騒ぎ始め、本質がスピードではなくテンポであることに気づき始めたようだが、それだけでは理解は不充分である。何度も言うが、テンポとトスの高さは無関係であり、同じテンポでも「高い」トスと「低い」トスがある。高橋みゆき選手が打つ高速レフト平行も、キューバのルイザ選手が打つレフト平行も、実はテンポはほぼ同じ1.0秒であるが、スパイクヒットの高さは少なくとも40cm程も違う。2人のそれぞれの攻撃に対してブロックに跳ぶ場合、同じタイミングでブロックに跳んだとして、ブロックの上がり端で高橋みゆき選手の攻撃は止めることが出来ても、ルイザ選手の攻撃には間に合わないはずだ。テンポがすべてではなく、高さもやはり重要なのだ。

その点を踏まえてファースト・テンポセカンド・テンポサード・テンポの3段階を定義するとすれば、私は単にテンポの持つ意味以上に、高さの概念も含まれるべきだと思う。

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2008年7月 2日 (水)

"えせリードブロック"改め"ゲスブロック"

こちらで解説したえせリードブロックだが、東レアローズ男子の小林敦コーチのスポーツナビでのコラムでも登場し、本日届いていた『Coaching & Playing Volleyball(CPV)』の56号でも、米山一朋(嘉悦大)監督の記事中で登場しているゲスブロック "guess block" という言葉が、これと同じ概念を表す用語と考えられる。ゲス "guess" とはまさに「当てずっぽう」の意味である。

ところで、リードブロックの説明として時折、「トスの上がる場所を『読んで』跳ぶブロック」という表現を目にする。リード "read" の訳語が『読む』であることから、このような表現が出てくるものと推測するのだが(何を隠そう、私自身も'99年ワールドカップレポの際には、同じような表現を一部使っていた)、この表現はよく考えると誤解を非常に招きやすい表現である。日本語の『読む』には、単純に「書かれている文字を字面通りに『読む』」という意味もあるが、同時に「行間を『読む』」という表現に代表されるように「書かれていないもの、見えないものを心の目で『読む』」という意味がある。そのため「トスの上がる場所を『読む』」というと、「トスがどこに上がるのかを『予想する』」という意味にとられかねない。そのように誤解するとまさにえせリードブロック改めゲスブロック "guess block" となってしまう。恐らく日本人にとっては、リード "read" という言葉よりも、『セリンジャーのパワーバレーボール』で採用されているシー アンド レスポンド "see and respond" という言葉の方が、スムーズに概念を理解しやすいだろう。

日本人は外国語を理解する際に、いったん日本語の訳語に置き換えないと、意味を理解できないという悪い癖がある。言葉は文化に根ざしたものであり、それぞれの国で文化背景も全く異なるわけなので、訳語といっても必ずピタッと一致するものではない。従って、いったん訳語に置き換えるのではなく、出来れば原文のまま意味を理解しようとした方がいい。今説明したリードブロックの例は、まさにその日本人の悪い癖が災いする好例だと思う。以前何度か解説したデディケートなどは、確かに日本人には馴染みがない英語なので、意味が理解しにくいと思われるが、だからといってそれを無理に訳語を当てるとますます意味がわからない(しばしば『捧げる』という解説がなされているのを見るが、英語の "dedicate" と日本語の『捧げる』は、概念が必ずしも一致しない、、、あくまで「(何かに対して)(自分の神経などを)集中させる」というのが "dedicate" であって、(自分の神経などを)の部分に(自分の人生や一生を)が入った場合に『捧げる』という日本語が当てはまるだけである)。無理に訳語などに置き換えずにデディケートという新しい言葉として理解した方がいい。

例えば "libero" はもともとイタリア語で『自由』を意味する言葉だが、バレーにおけるリベロは実際には『自由』どころかプレー上たくさんの制約で縛られている。 "libero" が日本で『自由』という言葉として馴染みがある言葉であったならば、リベロ制導入時に多くの人が違和感を覚えて、ルールとしても浸透しなかったはずだ。ところが、実際には違和感どころか、すっかり当たり前のルールとして定着した。 "libero" がイタリア語でどういう意味なのか? など知らなくても、リベロという新しい言葉として、日本のバレーファンに定着したのだ。

本当は、日本人誰もが意味を「すぐに」「正しく」理解できる言葉を当てはめられたら一番いいのだろうが、バレーボールというスポーツにおける戦術用語に限っては、その概念自体が日本のバレーボール界に存在しないことも多いという現実があるため、実際には困難であろう。「戦術面で日本が世界から遅れを取っている」という現実を直視するためにも、ある程度英語の戦術用語を採り入れて行くべきだろうと個人的には思う。

えせリードという言葉は個人的にはすごく気に入っているのだが、この言葉だけでは "guess" の概念の全てを表現できてはいない。従って、これからはゲスブロック "guess block" で統一したいと思う。

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2008年3月23日 (日)

"キルブロック"と"ソフトブロック"

キルブロック "kill block"とは?・・・ブロックを行う際の手の構え方の一つで、ブロックシャットを狙って手のひらを下に向けて、手をネットから相手コートエリア内に出すブロックの手法のこと。一方、ブロックシャットを敢えて狙わずに、有効なワンタッチを取ることを狙って手のひらを上に向けて、手をネットから相手コートエリア内に出さないブロック手法をソフトブロック "soft block"と呼ぶ。通常ソフトブロック "soft block"は、B級レベルなどで低身長の選手が多いチームなどで活用されるブロック技術であり、トップレベルのバレーにおいてはブロックといえば、キルブロック "kill block"を用いるのが通常だが、トップレベルでも例えばリードブロックを採っていて、ブロックに跳ぶのが遅れた場合に、ブロックシャットは諦めて、ワンタッチ狙いでソフトブロック "soft block"に手の出し方を切り替える、という場面がある。

(追記)トラックバック頂いた、area71さんのブログをご覧頂ければ、具体的にソフトブロック "soft block"の手の出し方がわかりますので、是非ご覧下さい。

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2008年2月27日 (水)

"えせリードブロック"とは?

えせリードブロックとは?・・・『へりくつバレーボール』管理人のたれいらんさんが提唱されている概念で、一見リードブロックをやっているように見える(あるいは、それをやろうとプレーヤー自身も努めている)が、その実セッターのセットアップまでの動作やアタッカーの助走などに影響されて、トスアップが実際に行われるまでにトスの上がる位置を先読みしてしまうブロックの跳び方のこと。たれいらんさんの言葉を借りると『読みが当たりまくるとあたかもリードブロックをやっているかのように見える』から、このように名付けたとのこと。詳しくは、こちらを参照。

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2007年12月15日 (土)

"5−1システム"とは?

5−1システムとは?・・・バレーボールにおける「チーム構成」を表現する言葉で、帰する所チーム内の「アタッカーの数」と「セッターの数」である。最初の数字が「アタッカーの数」、2番目の数字が「セッターの数」を表しており、即ち5−1システムとは、世界の男女ナショナルチームのほとんどが採用している「アタッカーが5人・セッターが1人」というチーム構成を意味する。世界の男女ナショナルチームの中で、5−1システム以外のシステムを採用している例は、キューバ女子ナショナルチームの6−2システム、即ちコート内に6人のアタッカーと2人のセッターがいる、いわゆるツーセッターシステムである。6−2システムにおいては、コート内の6人全員がアタッカーの役割を果たすわけであり、前衛のセッターはアタッカーとして攻撃に参加する。そのため、セッターの役割を果たす2人はローテーション上の配列において対角に位置するように配され、常にどのローテーションであっても後衛に1人セッターがいる状態を作りだし、その後衛のセッターがセットアップを行う。6−2システムの最大のメリットは、常にどのローテーションであっても前衛に3枚のアタッカーが揃うことであるが、現在の世界の男子バレー界にあっては、バックアタックが前衛からのアタックと何ら遜色ない攻撃となっており、5−1システムの下でも前衛レフトのレフト攻撃・前衛センターの速攻・オポジットのライト攻撃あるいはライトからのバックアタック・後衛レフトのパイプ攻撃の「4枚」攻撃が当たり前の戦術となっているため、6−2システムを用いた場合に生じる、セッターの役割を果たす選手が攻撃やレセプション等のセットアップ以外の技術を覚えなければならないというデメリットの方が、上述のメリットを上回ってしまう。そのため、6−2システムは目にすることがない。

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2007年11月 2日 (金)

"ハイセット"とは?

ハイセット "high set" とは?・・・"set" はトスのことであり、字面からは「(軌道の)高いトス」という意味になるが、いわゆる「2段トス」の意味で使用される。即ち、ファーストタッチのディグが乱れてしまって、セッターがトスを上げられない状況や、セッターがトスを上げられる状況でも非常に苦しい体勢で上げなければならない状況で、前衛両サイドのアタッカーへ上げる「(軌道の)高いトス」のことである。 ハイセット "high set" を打ち切れるだけのアタッカーがなかなか出てこないことが、長らくの日本女子バレー界の最大の課題である。

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2007年7月 6日 (金)

"サイドアウト"と"ブレイク"

サイドアウト "side-out"とは?・・・レセプション側のチームが得点すること。「ラリーポイント制」以前の「サイドアウト制」のルールの下では、サーブ権を持つチームが入れ替わること、とも言える。世界レベルのバレーボールにおいては、一般にサーブ権を持つチームが得点する確率よりも、レセプション側のチームが得点する確率、すなわちサイドアウト "side-out"の確率が高率である(特に男子バレーでその傾向が顕著である)。これは、バレーボールと同じくサーブ権の存在する、例えばテニスの場合などとは全く逆の傾向であり、テニスでは、サーブ権を持つ選手が得点する確率が高く、すなわちサーブ権を持つ選手が「サービスキープ(=ゲームをものに)」する確率が高率である。従って、サーブ権を持たない選手がゲームをものにすることをブレイク "break"と呼ぶ。
テニスとは全く逆に、サーブ権を持たないレセプション側のチームが得点する、すなわちサイドアウト "side-out"の確率が高いバレーボールにおいては、ブレイク "break"とはサーブ権を持つチームが得点することを指す。

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2007年1月17日 (水)

"デディケート"とは?

デディケート "dedicate" とは?・・・組織的なブロックシステム戦術においては、ブロッカー3枚がどのような「位置取り」で相手チームの攻撃システムに対して対抗するのか? が重要となる。その「位置取り」を表す用語にバンチ "bunch" スプレッド "spread" スタック "stack" などがあり、それらについては既に説明済みだが、同じ範疇の用語としてデディケート "dedicate" がある。デディケート "dedicate" とは「(何かに対して)(自分の神経などを)集中させる」といった意味であり、ブロックの場面においては「相手チームの攻撃」に対して「マークを集中させる」という意味となる。具体的には、相手の繰り出す「全ての攻撃」に対して「均等に」マークするのではなく、相手の繰り出す攻撃のうちの「特定の攻撃」に対して「マークを集中させ」る(逆に、それ以外の攻撃に対してはマークを甘くする)ような「位置取り」を取ることを表す。

現在の世界最先端の戦術を繰り出すブラジル男子ナショナルチームが、このデディケート "dedicate" を徹底して採っていることについては、レゼンデバレー(その3)を参照のこと。

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2007年1月16日 (火)

"トランジション"とは?

トランジション "transition" とは?・・・いわゆる「切り返し」のこと。バレーボールは連続的に攻守が切り替わるスポーツであり、スパイク攻撃(オフェンス)を行う前には(特殊なケースを除いて)必ず守備(ディフェンス)の場面がある。守備の場面は2種類あって、相手チームのサーブに対するレセプションの場面と、相手チームの攻撃に対するディグの場面である。ディグの直後に攻守が切り替わって自チームの攻撃に繋げるまでの展開をトランジション "transition" と言う。

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2006年12月 3日 (日)

カテゴリーに「用語集」作りました(その2)

世界バレーも遂に今日で終了、、、またまた、ビデオを酷使してしまったわけだが(また壊れたらどうしよう、、、)如何せん男子バレーはレベルが高いため、まだまだビデオを見るのも追いついていない。というわけで、女子ほどにはなかなかリアルタイムでアップできません。申し訳ありません。

そもそも男子について語るには、まず戦術の変遷の整理が欠かせない、ということで、先日設けた「バレーボール用語集」の方で、ブロックシステム・レセプションシステムの変遷についてまとめましたので、'99年ワールドカップレポを読んで頂いてない方は、一度目を通しておいて下さい。

また、以下に参考書籍を挙げておきます。

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2006年11月26日 (日)

カテゴリーに「用語集」を作りました

男子モードに入るにあたって、用語の統一を図る意味からも、カテゴリーに「バレーボール用語集」を設けてみました。

これまでの投稿でも私の使っている用語がその都度変わっていたり、併記して書いているようなものを、今後出来る限り、この「用語集」のカテゴリーに入れた投稿の中で説明したものに統一したいと思います。
また、特にブロックシステムの戦術に代表されるような、専門性の高いバレーボール用語についても、気づいた時に随時説明したいと思いますので、投稿の中にわからない「専門用語」が含まれていた場合には、「バレーボール用語集」のカテゴリーで探してみて下さい。

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2006年10月28日 (土)

"リベロ"についてルール確認(その2)

ところが、導入から8年の時間が経ち、リベロに要求される能力は大きく変わった。

リベロはオーバーハンドパスを用いてトスを上げてはいけない」のではない。あくまで「フロントゾーンでは」上げてはいけない、だけである。後衛プレーヤーはスパイクを打ってはいけない、のではなく、「アタックラインを踏み越えて」スパイクを打ってはいけない、だけである。同じことである。そう、リベロは「アタックラインを踏み越えなければ」オーバーハンドパスを用いてトスを上げても構わないのである。

従来のサイドアウト制から、ラリーポイント制にルール改正されることが決まった1998年。日本のバレー関係者の間では「サーブミスを恐れて、サーブは弱くなるのではないか?」とまことしやかに囁かれていた。ところが、実際にラリーポイント制が導入された1999年のワールドカップでは、外国チーム勢が各セット20点以降の緊迫の競り合いの中で見せたスパイクサーブの迫力は、前年にサイドアウト制の下で開かれていた世界選手権と比して明らかに増していた。ミスの出来ない緊迫した場面でこそ渾身のスパイクサーブを打つ、それが出来るかどうか? その精神力の差が外国勢と全日本との実力差として如実に表れた。あれから7年が経ち、ようやく全日本にも越川選手はじめとして、外国勢にも引けを取らないスパイクサーブを打つ能力を持った選手が現れた。しかし、如何せんそれに7年も要してしまった。

リベロに関しても同じことが言えるような気がする。いまだに「アンダーハンドパス」に固執する日本と、「アタックラインを確認しつつ、その後ろで踏み切ってジャンプトスを上げる」外国勢、、、。これが追いつくのには、いったい何年かかるのだろうか?

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"リベロ"についてルール確認(その1)

いよいよ世界バレー開幕が迫ってきた。日本シリーズも終わって、バレー観戦に専念できる状況も整った、といった感じだ。

いきなり話が変わるが、最近実に6年ぶりぐらいに、とある有名掲示板に書き込みをした。ネットサーフィンを始めた10年程前とインターネットの環境がガラッと変わり始めた6年程前からは、覗いてはいても書き込みをするのは控えていた。しかも私が今回書き込んだ場面は、明らかに「荒らし」的意図で書き込まれたメッセージに対して反応する形になるものだったため、本来のネチケットから言えば絶対に避けるべき場面なのだが、「ルールの誤解」に基づいて「荒らされて」いる状態であったため、あえて「釘を刺す」意味合いで書き込みをした。

以前「配列」に関する投稿を何回にもわたって行ったが、本来ならばその前に「ポジショナルフォルト」のルールについて、きちんと説明をするべきだったと反省している。実際、「ポジショナルフォルト」のルールについては、選手やコーチですらも誤解していることがあると『セリンジャーのパワーバレーボール』にも書かれている。「ポジショナルフォルト」については長年改正されていないルールであり、そういったルールですら誤解があり得る以上、ましてや最近改正されたルールについては、プレー経験者でも誤解している可能性が極めて高いと考えられる。その意味で、非常に誤解の多い、1998年に導入されたリベロについてのルールを、世界バレーの開幕前に確認しておこう。

リベロとは1998年に導入された、守備専門プレーヤーであり、チームで1名のみ登録可能(高校や大学では、大会によって2人まで登録可能という独自ルールを採用している場合もある)。他のプレーヤーとは異なるユニフォームを着用してリベロであることを明確にする必要がある(ユニフォームが1着しかないチームでは、"リベロゼッケン" を上から着用することで代用も可)。後衛のプレーヤーならば自由に何回でも交代可能だが、サーブは打てない。
ここまでは恐らく誰もがご存じと思われるが、さらに、(ここからが誤解しやすい部分だが)以下の場合に反則となる。

A)フロントゾーン(センターラインとアタックライン、及びそれぞれの延長線上で挟まれる範囲)でリベロがオーバーハンドパスを用いて上げたボールを、アタッカーがネットの高さよりも高い位置でボールをヒットしてそれが相手コートに返った場合
B)フロントゾーンであれバックゾーンであれ、リベロがネットの高さよりも高い位置でボールに触って、そのボールが直接相手コートに返った場合

である。

よく誤解されているのは、「リベロはフロントゾーンではオーバーハンドパスを用いてトスを上げてはいけない」というものであり、実際にはリベロがトスを上げても、アタッカーが「ネットより高いところでボールをヒットして相手コートに返さ」なければ、反則にはならない。

ただ、反則にはならないとは言っても、現実的にはリベロがフロントゾーンでトスを上げてしまったら、アタッカーはスパイクを打てないわけなので、リベロ制度が導入された当初は、リベロは「いかにしてオーバーハンドパスを使わないでプレーするか?」が重要とされていた感があった。

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2006年6月28日 (水)

【フロントオーダー・バックオーダー】バックオーダーにおけるサーブレシーブフォーメーション

さて、今のこの時期(黒鷲の後)になぜこの話題(フロントオーダーバックオーダー)について、書き始めたのか?

もちろん、前からいつか書こうと思っていたのは間違いないのだが、なぜこのタイミングだったのか? と言えば、実は黒鷲旗で久々に男子のトップレベルでフロントオーダーを採用しているチームをみたからである。
それは、準優勝に輝いた東海大学である。それについては、また後日詳しく(修理したてのビデオで撮った映像を確認の後)アップする。

まぁ、その東海大学のことは別にして、前に書いたように現在のトップレベルのバレーでは男子も女子もバックオーダーを採用しているチームがほとんどである。極端な言い方をすれば、どのチームも戦術的に似通っていると言えるわけで、今年の黒鷲旗で、特に男子で大学勢の活躍が目立った要因の一つには、そのことが影響していると思う。以前なら、4年間という限られた時間のためにレギュラー陣がめまぐるしく変わらざるを得ない大学勢は、なかなか2人・3人でのサーブレシーブフォーメーションを敷くことすら難しい様子だったが、今やVリーグチーム勢と大学勢との間での戦術面での違いを探そうにも、組織的なブロック力でVリーグチーム勢の方が少しキャリアの分だけ勝っている、という程度の違いしかないように見える。この光景をたとえるなら、それまでアメリカ・ソ連などの一部の国だけが独占していた世界最先端のバレー戦術が、イタリアを筆頭とする新鋭国から全世界に一気に広まり、戦国時代に突入した10数年前の世界の男子バレーの光景に似ている。

さて、前置きはこのくらいにして本題に入ろう。
現在のトップレベルのバレーで常識のバックオーダーでの配列では、本来ならば6通りある全サーブレシーブフォーメーションの中で最も弱点となりうるローテーションである、セッターが後衛レフトに位置するローテーションが弱点とならない(というか、弱点にしないためにバックオーダーを採用する)。となると、バックオーダーが常識の現在のバレー戦術の下で最も弱点になるローテーションは?? 答えは2つあると思う。
①男子バレーでは、特に「弱点となるようなローテーションは存在しない」であろう。
②女子バレーでは、「セッターが後衛センターに位置するローテーション」であろう。

これについては、今年のVリーグ女子の決勝戦で露呈した、と思う。決勝戦直後に書いたとおり、今年のVリーグ女子決勝戦の勝敗を分けたのは、久光製薬のこのサーブレシーブフォーメーションにあった。

Dsc00362オポジット/ライトの2番成田選手がサーブレシーブの要である久光では、ご覧の通りセッター(10番鶴田選手)が後衛センターのローテーションにおいても、かなりコート後方に構えざるを得ないため、ポジショナルフォルトのルール上セッターは彼女より前に出られず、結果的にコートかなり後方からセットアップ位置に向かう必要があるのである(それが、決勝戦の勝敗を分けたことは説明済みですね)。日本のVリーグにあっても女子の場合は、このように久光同様にオポジット/ライトに攻撃力もさることながらサーブレシーブの巧い、いわゆる「ユーティリティプレーヤー」が配されることが多く(東レ・JTが代表)、この写真にあるようなサーブレシーブフォーメーションを「女子型(オポジット/ライト=ユーティリティプレーヤー型)」とでも呼ぶことにしよう。

一方、男子ではオポジット/ライトにはチームで最も攻撃力のある「スーパーエース」を配することが多く、従ってオポジット/ライトの選手は基本的にはサーブレシーブは行わない。そのため、同じセッターが後衛センターのローテーションでは、このようなフォーメーションとなる。(写真が少し悪く、オポジット/ライトに配されている江口選手の背番号が確認できないが、、、一応全選手の中でもっとも前に位置して、半身になっているのが江口選手であり、当然16番の内田選手がセッター。)

Dsc00363女子のVリーグチームでこのスタイルをとるのは、写真のパイオニアや武富士が代表である。これを「男子型(オポジット/ライト=スーパーエース型)」とでも呼ぶことにしよう。
このサーブレシーブフォーメーションでは、当然セッターが後衛センターのローテーションも、写真でわかるとおり特に弱点とはなり得ない。

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2006年6月11日 (日)

【フロントオーダー・バックオーダー】フロントオーダー/バックオーダー

フロントオーダーよりバックオーダーが優れている理由は他にもある。

フロントオーダーでは、セッターが後衛ライトのフォーメーションで、前衛は「レフトにオポジット/ライトプレーヤー・センターにレフトプレーヤー(裏レフト)・ライトにセンタープレーヤー/ミドルブロッカー」と並ぶ。この際のサーブレシーブフォーメーションで、当然オポジット/ライトプレーヤーはレフト側から、裏レフトプレーヤーはライト側から攻撃を仕掛けることになる。その次のローテーションでのサーブレシーブフォーメーションでも、両者の関係は変わらないので、やはりオポジット/ライトプレーヤーがレフト側から、裏レフトプレーヤーがライト側から攻撃を仕掛けざるを得ない。即ち、本来レフトからの攻撃が得意なはずのレフトプレーヤーが前衛3回のローテーションのうちで2回はライト側から攻撃しなければならず、逆にライトからの攻撃な得意なはずのオポジット/ライトプレーヤーが前衛3回のローテーションのうちで2回はレフト側から攻撃しなければならないのである。これは、各ポジションの専門性という意味から見て、非常に不都合である。この点において、トップレベルに限らず、スパイクサーブなどの強烈なサーブのほとんどないB級レベルにおいても、フロントオーダーは採用すべきでないと私は昔から考えている。

しかし、敢えて上述の「フロントオーダーの欠点」を逆手に取るならば、時にフロントオーダーを採用する意味が出る場合がある。最近のトップレベルの試合で、うまくフロントオーダーを採用して成功していた例として印象に強く残っているのは、アテネオリンピック最終予選(OQT)の時の全日本女子である。あのときの全日本女子は、レフトからの攻撃が得意な高橋みゆき選手をオポジット/ライトプレーヤーに配し、一方ライトからの攻撃が得意な木村沙織選手を裏レフトに配していた。あの大会の初戦のイタリア戦で、当時まだ高校生だった木村沙織選手がスタメンであったことを、「イタリアのデータバレーの裏をかくための奇襲」と考えた方もいたようだが、私は「フロントオーダーを採用していたこと」から考えて、あのときの柳本監督の頭の中であくまでスタメンは木村沙織選手で固定されていたことを確信した。(実際、ゲーム途中でよく見られた木村沙織選手と佐々木選手との選手交代が行われると、フロントオーダーを採用しているがために、オポジット/ライトプレーヤーの高橋みゆき選手と裏レフトの佐々木選手が上述の関係に陥り、佐々木選手にしかトスが上がらない、単調なトスまわしになっていた、、、結果的にはそれで彼女が大活躍したわけだが。)そしてオリンピック本番では、バックオーダーに戻っていた。オリンピック本番では木村選手をスタメンで使うつもりは最初からなかったのであろうと、そこから受け取れる。

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2006年6月10日 (土)

【フロントオーダー・バックオーダー】前回の解答(その4)

もしも、このローテーションで、フロントオーダーを採用しているチームはどうなるのか? 考えてみる。

フロントオーダーでは、セッターが後衛レフトの位置に配置されているローテーションの際に、セッターの真ん前に配置されるのはレフトのプレーヤーとなる。現代バレーでは、レフトプレーヤーはサーブレシーブの要であり、従ってサーブレシーブフォーメーション上、コート中央からやや後方に構えざるを得ない。そうするとそのレフトプレーヤーより後方に位置しなければならないセッターは、コートかなり後方からセットアップ位置に向かわなければならなくなるのである。現代バレーではサーブは強力なスパイクサーブが主流となってきており、特に男子バレーではその傾向が顕著のため、フロントオーダーではセッターが後衛レフトの位置のローテーションの際、サーブを打たれてからセットアップまでの時間的余裕がほとんどないのである。そのため、現在の男子バレーでフロントオーダーを採用しているチームを見ることは、トップレベルではほとんどないのである。

ということで、前回の問題の解答が、どのようにして瞬時に導きだされるのかというと、、、
即ち、ここまで書いてきたフロントオーダーバックオーダーの違いをよく理解している方ならば、例のサーブレシーブフォーメーションを見て、瞬時にセッターの位置を確認するだけで、バックオーダーのチームと判断して、前衛は「8番・11番・2番」とわかるのである。さらに言えば、バックオーダーの特徴をよくご存知の方なら、この次のフォーメーションも6人の位置関係がほとんど変わらないことをご存知のはずである。

Dsc00361

これが、前回の問題にしたローテーションの次のローテーションでのサーブレシーブフォーメーションである。10番の鶴田選手と8番の大村選手の位置関係が微妙に変わっている以外には、ほとんど変わっていないのが一目瞭然であろう。当然このサーブレシーブフォーメーションでは、前衛の3選手は「10番・8番・11番」であり、2番の成田選手は後衛である。このように、サーブレシーブフォーメーションがほとんど変わらないのに、オポジット/ライトの選手が前衛か後衛かが変わるのがバックオーダーでの特徴であり、これは「知っているか知らないか?」それだけのことである。プレーヤーでも知らないことが多く、実際私はB級レベルの試合で、このことを逆手に取って、前回問題にしたローテーションから試合を始めて、相手チームにオポジット/ライトの選手を「後衛」だと勘違いさせて、相手ブロッカーをノーマークにすることに何回か成功した経験がある。(ちなみに、私はチームを作るとき、バックオーダーでしかチームを作ったことがない。)

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【フロントオーダー・バックオーダー】前回の解答(その3)

何回も言うが、配列には2種類あり、フロントオーダーバックオーダーである。プレー経験者でこのことを知っている方でも、この両者に決定的違いがあることに気づいていない方は多いはずである。なぜならば、実際B級レベルの試合を見ていると、フロントオーダーのチームが意外に多いことに気づくからである、、、。

はっきり断言する。現代のバレー戦術において、両者のうちで明らかに戦術的に優れているのは、バックオーダーの方である。実際今年のVリーグ男女18チーム中で、両者の内訳を見れば一目瞭然である。

男女18チーム中、フロントオーダーを採用しているチームは、たったの1チーム(NEC女子)しかない!
さらに言えば、吉田清司さんによれば、アテネオリンピックに出場した男子チームのすべてがバックオーダーを採用していたとのことである。

では、なぜ? バックオーダーが優れているのか? それにはいくつかの理由があるのだが、もっとも大きな理由が例の問題に出したフォーメーションにある。

自チームがサーブレシーブの場面で、セッターが相手チームのサーブが打たれた瞬間から、セッターの定位置(セットアップ位置)へ向かうのが最も技術的に難しいローテーションはどこかわかるだろうか? (セッターを一度でも経験したことのあるプレーヤーならわかるはずだが、セッターの経験が全くないプレーヤーはひょっとするとわからない方もいるかもしれない。)それは、セッターが後衛レフトのポジションにいるローテーションである。なぜならば、セッターは普通自チームのレフト側に顔を向けてトスアップを行う。セッターが後衛レフトからセットアップ位置へ向かう際には、物理的に移動距離が長いだけでなく、その移動中に相手チームのサーブの軌道から目を離さずに体を270°ほど右回りに回転させなければならないのである。(移動距離的には後衛ライトの際も長いのだが、体はほとんど回転させなくてよい。)

それを前提として、例の久光製薬のフォーメーションを見てみる。実は例の写真のフォーメーションは、その問題の「セッターが後衛レフト」のローテーションでのサーブレシーブフォーメーションである。このとき、バックオーダーを採用している久光製薬では、セッターの10番鶴田選手の真ん前に配列される前衛選手は、センター/ミドルブロッカーである8番の大村選手となる。前衛のセンター/ミドルブロッカーがサーブレシーブをすることは現代バレーではあり得ず、サーブレシーブフォーメーションでその選手(8番大村選手)はネットに張り付いた状態で構えることができる。そのためその選手よりポジショナルフォルトのルール上後ろにいないといけないセッターの10番鶴田選手も、写真のとおり、ネット際に近い位置で構えることが可能となり、セッターの定位置までの移動距離はかなり短くなるため、セットアップが容易になるのである。

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2006年5月22日 (月)

【フロントオーダー・バックオーダー】前回の解答(その2)

前回指摘したとおり、「配列」には2種類あり、フロントオーダーととバックオーダーである。実は、6種類ある久光製薬のサーブレシーブフォーメーションのうちで、「なぜわざわざ私が問題のローテーションを選んだのか??」この意図まで把握できた方は、ここから先は恐らく読む必要がない。

実を言えば、解答(その1)で先ほど説明したものは、私の頭の中での思考回路を正確に書き出したものではない。後から論理的になぞっているだけである。実は、あの写真のサーブレシーブフォーメーションを見た瞬間に(もちろんセッターが10番であることは瞬時に判断するとして)、このチームがバックオーダーであり、当該ローテーションはセッターが後衛レフトのローテーションであるとわからなければならない。そして一番右側に位置する2番がオポジットの選手で、当該ローテーションでは前衛ライトである、と次の瞬間に機械的に判断される。

なぜそれが可能なのかは、次回説明する。

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【フロントオーダー・バックオーダー】前回の解答(その1)

まずお礼から。
サブさん、ディーラーさん、コメント及びご回答頂き、ありがとうございました。

さて、解答だが、せっかくお二方に貴重な意見を頂いたので、それに則って書いてみる。

実は、この問題を考える段階で期待された「典型的間違い」が、ディーラーさんの回答のとおりの「8番(大村選手)・10番(鶴田選手)・11番(ケニア選手)」である。恐らく、プレー経験のない方はほとんどはこの回答を思い浮かべるであろうし、プレー経験者でもこの回答をする方が多いと思う。
ただ、ディーラーさんが奇しくも指摘してらっしゃる「写真を見ると、フロント3人の位置取りは微妙」というのが、実はかなり重要なポイントである。恐らくディーラーさんは、ご自身の回答の矛盾点に気づいてらっしゃると思う。即ち、「オポジット」の「成田(選手:2番)がバックライトにいる」ということは、当然対角のセッターである鶴田選手(10番)がフロントレフトにいるはずで、「鶴田(選手:10番)  大村(選手:8番)  ケニア(選手:11番)」がフロントの3人であるならば、鶴田選手(10番)は大村選手(8番)よりも左に位置していないとポジショナルフォルト(反則)となるため、写真から見て明らかに間違いとわかる。

なぜわざわざ「2秒以内に」答えるように指示したのかと言えば、要するに上述のように「最初から問題のチーム(久光製薬)の各選手のポジションに関する知識」を頼りに回答されるのを避けるためである。ディーラーさんは、久光製薬の各選手のポジションを恐らくもともと知っているはずで、それに基づいて冷静に時間をかけて考えれば、上述のようなことに気づくはず(実際ご自身の回答の矛盾に、後から気づかれたはず)である。更に言えば、サブさんのコメントの通り、確かに冷静に時間をかけて考えると、この久光製薬の各選手の知識が全くなくても、バレーボールのポジショナルフォルトに関するルールを正しく理解していれば、正解が5通りあるというのは「正しい」。サブさんは、それを理解したうえで「2秒で答えるのは至難の業」とコメントして頂いたはずだが、それはあくまで「ルール上での可能性の話」であって、そんなことを言っていたら試合には残念ながら勝てない。全く未知の相手チームと試合する場合に、試合開始時の相手のサーブレシーブフォーメーションがこの写真のような状態であったとしたら?? 「至難の業」と言って済まされるはずはないのである。

では、いよいよ解答。上述の通り、「最初から問題のチーム(久光製薬)の各選手のポジションに関する知識」に頼らずとも、自ずと正解には到達する。プレーヤーの視点から言えば、まず相手チームのフォーメーションを見て、瞬時にまず把握すべきは「誰がセッターか?」であり、ラリー中のセッターの定位置である、「ネット際のセンターからややライト寄りの位置(今回の写真で言えば、サーブ側のチームの前衛レフトに位置する6番の選手とネットを挟んで向かい合う位置)」に向かって、サーブが打たれた瞬間に一直線に向かおうという足の向きをしているプレーヤーがセッターであり、従って10番がセッターであると瞬時に判断できる。それと同時に、セッターが後衛であることにすぐに気づかなければならない。なぜならば、セッターが前衛であるならば、最初からネット際について自チームのコート側に体を向けている方がプレーしやすいはずであり、わざわざ相手チームに体を向けて、かつ8番の選手よりも明らかに後方に位置しているというのには、それはポジショナルフォルトのルール上の制約のためでしかあり得ない。従って、実はセッターが10番と判断できるとほぼ同時に、その10番の真ん前に「配列」上位置する選手が8番と判断でき、かつ8番は全選手の中で最も左かつ前に位置することから前衛レフト・そして自動的にセッターの10番が後衛レフトと判断できる。となると、後衛レフトの10番より左側に位置する11番は後衛ではあり得ず、前衛に決まる。

従って、ルール上で「実際的に」あり得る解答は、「8番・11番・3番」か「8番・11番・2番」の2つとなる(ユニフォームの色の違う14番はリベロであり、前衛はあり得ないので)。この2つで迷った方は「かなりいい線」と言えるが、「8番・11番・3番」と回答した方は、恐らくはプレー経験のない方であろう。前衛3人ともアタッカーであるならば、わざわざ3人ともレフト寄りに位置させることには、アタックフォーメーションを考えれば全く無意味である。従って「現実的に」あり得る解答は「8番・11番・2番」となる。これが正解である。

こうやって、言葉で書くと「ホントにこれを瞬時に見分けられるの?」と(特にプレー経験のない方は)思うかもしれない。実は、そこにもう一つのポイントがある。

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2006年5月 8日 (月)

【フロントオーダー・バックオーダー】黒鷲旗にて(初の写真アップ!)

黒鷲旗の試合の模様は、後日アップする予定、、、(GAORAでの放送が、決勝戦は生中継なのに、準決勝は録画でそれも随分と日にちがあいてから放送されるので、順番としてまず準決勝の放送を見てアップしてから、決勝戦をアップしたい)。

というわけで今日は、過去の投稿で何回か「別の機会で詳しく説明する」と書いてきた、バレーの戦術の中ではかなり根幹に近い部分というか、まずそれを決めない限りはバレーの試合自体が始まらない、各プレーヤーのサーブ順での配置の仕方(『セリンジャーのパワーバレーボール』の中では、「配列」という言葉で表現されているので、それに従って単に「配列」と書かせてもらう)について、さわりだけでも書こうかと思う。

これは当然、プレー経験のある方ならば誰でも本来は知っているはずのことなのだが、意外と知らない、というか「わかっていない」プレー経験者が多い気がする、、、。実は「配列」には、2種類の方法がある。『バレーボール100Q入魂』にも書かれている、吉田清司さんの言葉を借りるとフロントオーダーバックオーダーの2種類である。前者は、セッターが後衛レフトの位置のローテーションで、前衛(フロント)が「レフトにレフトの選手・センターにセンターの選手・ライトにオポジット(セッター対角)の選手」と、本来各プレーヤーがラリー中に専門的に務めるポジション通りに並ぶ「配列」で、後者はセッターが後衛ライトの位置のローテーションで、後衛(バック)が「レフトにレフトの選手・センターにセンターの選手・ライトにセッター」と並ぶ「配列」である。フロントオーダー・バックオーダーといった言葉自体は別に知らなくてもいいのだが、この両者に、戦術上で決定的違いがあることは重大な事実であり、そのことに気づいていないプレーヤーが実は多い。

ためしに、黒鷲旗で撮ったこの写真を見てもらいたい(クリックで大きくなります)。Dsc00360_6
これは久光製薬のあるサーブレシーブシーン(相手チームがサーブを打つ寸前)を撮影したものだが、これを見て瞬時に(2秒以内に)久光の前衛3人の背番号を当ててみて欲しい。正解できた方は、上記の「配列」のことを普段から意識しているプレーヤーの方であるはずで、恐らくあまり意識してこなかったプレーヤーの方は、間違える可能性が高いと思う。

正解は、次回の投稿にて。

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2005年10月 4日 (火)

レセプションシステムの変遷

'84年ロサンゼルス・'88年ソウルと、オリンピック2連覇を果たしたアメリカ男子ナショナルチームは、現在のバレー戦術におけるブロックシステムの基礎とも言える、バンチ・リードブロックシステムを作り上げただけでなく、レセプションシステムにおいても、現在のバレー界の戦術の基礎を作り上げた。

彼らは2人レセプションシステムを導入、それまではほとんどのチームは4・5人で行っていたレセプションを、いきなり「2人」でやってのけたのだった。これには、当時の "ミスターバレーボール" カーチ・キライをはじめ、アメリカの選手たちは大抵みんなビーチバレー出身者であるということが大きく影響している。ビーチバレーなら2人でレセプションをすることは当たり前であるからだ。そしてその2人にはカーチ・キライはもちろんのこと、両レフトの2人が担当することになる。レフトのレセプション面での負担が非常に大きくなってしまう、この戦術を採るメリットは、他のセンター・オポジットの選手の負担を減らすことにより、それぞれにレセプション以外の面で高度な戦術をマスターさせることを可能にした、ということであった。まず、センターの選手がリードブロックをマスターできる結果に繋がった。一方オポジットの選手に関しては、強力なバックアタックを打つ能力をマスターさせることを可能にした。それまではレフトの選手が "エースアタッカー" と呼ばれ、スパイクもレシーブも巧い選手が配置されており、一方のオポジットは "補助アタッカー" と呼ばれ、どんなプレーもそつなくこなす、"繋ぎ" の巧い選手が配置されていたが、レフトのレセプション面での負担が極端に増えたため、むしろオポジットに、レフトの選手以上のスパイク力が要求される結果となったのであった。オポジットはセッターの対角に位置し、セッターが前衛の時は常に後衛にいる。つまり、前衛アタッカーが2枚の攻撃力が弱いときに、オポジットの選手にバックアタックを打たせれば、常時攻撃が3枚の状態が作れるわけである。バックアタックを中心として、それまでの "エースアタッカー" 以上の攻撃力が要求されるようになったために、そのような役割でオポジットに配された選手を、スーパーエースと呼ぶようになった。

ところが時代が進み、バンチ・リードブロックシステムが完成すると、それを切り崩すための新しい攻撃システムとして、両サイドの高速平行とパイプ攻撃を絡めた攻撃システムが、ブラジル男子ナショナルチームによって編み出されることとなる。両サイドの高速平行をレフトの選手が行うためには、上述の2人レセプションシステムを維持するのが事実上不可能となる。ポジショナルフォルトのルール上、レセプションを行う人数をレフトの「2人」に限定すると、レフトの選手がレセプションの直後に行える攻撃というのは、実は非常に限られてしまい、両サイドの高速平行トスを打つのは不可能なのである。そのため、'92年のバルセロナオリンピック当時のブラジル男子ナショナルチームは、レフトのジオバーニ・サムエルに加えて、センターに配された当時のキャプテン・ゴウベイアの「3人」でレセプションを行うシステムを採ることで、高速平行・パイプ攻撃を実現させていた。このレセプションシステムが、2人レセプションシステムの発展型として、バレー界でのレセプション戦術の基本となり、その後サーブ戦術におけるスパイクサーブの重視傾向が強まったことや'98年のルール改正でリベロ制度が導入されたことも相まって、両レフトの「2人」と、後衛センターが交代するリベロプレーヤーをあわせた「3人」でレセプションを行う形が確立する(リベロが後衛センターと交代する形が一般的なのも、この経緯が理由である)。

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2005年10月 3日 (月)

ブロックシステム変遷(その2) - "パイプ攻撃"の完成

バンチ・リードブロックシステムの完成により、再びブロックシステム優位の時代を迎えつつある中で、今度はそれを切り崩す新たな「攻撃システム」が生まれることとなる。それは、'90年代前半のブラジル男子ナショナルチームによってもたらされた(当時の監督は、現在のブラジル女子ナショナルチーム監督であるギマラエス氏)。

バンチ・リードブロックシステムは、「トスが上がってから」ブロックに跳ぶシステムのため「高くて早い」速攻には弱く、また「中央にブロッカー3枚が集まっている」ため、両サイドのアンテナいっぱいまで伸びる早い平行トスにも弱い。そこで、当時のブラジル男子ナショナルチームは、当時(ひょっとすると今でも?)世界No.1セッターと呼ばれた、リマ・マウリシオの「肘をほとんど曲げずに高い位置でセットアップし、そこから左右へと自由自在に早いトス回しを出来る」という優れた資質を基軸として、両サイドのアタッカーに非常に高速の平行トスを打たせ、さらにスーパーエースとしてオポジットに配されていたネグロンには、前衛で主に速攻を打たせる戦術を採った。当時の彼の速攻には、普通のセンタープレーヤーが打つ速攻とは違う、スーパーエースならではのパワーはもちろんのこと、何よりもリードブロックをがたがたにするだけの高さとスピードがかね備わっていた。相手チームとしては、バンチ・リードブロックシステムにこだわっていたのでは、両サイドの平行にもネグロンの速攻にも対応できなくなる。そのため、仕方なくスプレッド・リードブロックシステムに切り替えざるを得ず、さらにはセンターブロッカーは要所でコミットブロックを使わざるを得なくなる。そうなった時に、次にリマ・マウリシオのトスから繰り出される攻撃が、それまでの「前衛のアタッカー同士が絡んで行う」時間差攻撃に代わって、「前衛センターの選手の速攻と後衛センターの選手のバックアタックを絡める」時間差攻撃であった。この、後衛センターの選手が打つバックアタック、それも時間差攻撃である以上は、スーパーエースが打つような高いトスのバックアタックではなく、比較的トスの低いバックアタックとなるわけで、それをパイプ攻撃と呼ぶ。このパイプ攻撃のすごいところは、前衛の両サイドのアタッカーが高速の平行を打つために、両サイドのブロッカーが"スプレッド"で相手アタッカーと同じく両サイドに釘付けの状態にしておいて、なおかつセンター中央付近での時間差攻撃を可能にしたという画期的な点であった。この画期的な武器を引き下げ、ブラジルはアメリカはじめ、イタリア・ロシア・オランダといった並みいる強豪たちを押さえて、'92年のバルセロナオリンピックでの優勝を、ノーマークでさらってしまった。

このブラジル男子ナショナルチームの画期的な攻撃システムの開発以来、男子バレーの世界では相手チームにバンチ・リードブロックシステムを採らせまいとして、両サイドの高速平行トス及びパイプ攻撃が当たり前の時代へと突入する。これは、再び攻撃システムが優位となりうることを意味するわけであり、対抗するブロックシステムとしては、如何にして相手チームの攻撃の幅を狭めるか? が重要となる。それは当然、如何にして相手チームのレセプションを乱して、攻撃の幅を狭めるか? ということを意味するわけであり、それは即ち、スパイクサーブの重要性に拍車をかける結果となった。また、相手チームのレセプションを乱せなくとも、試合の各局面において、どこにトスが上がりやすいか? ということを事前に予測して、その都度最も有効なブロックシステムを、試合中に切り替えることが要求されることにもなり、それは即ち、データバレーの重要性に拍車をかける結果にも繋がった。

以下に、参考となる書籍を挙げておく。

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ブロックシステム変遷(その1) - "バンチ・リードブロック"システムの登場

新しい戦術というのは常に、「目先の相手の優れた戦術に対して、如何に対抗するか?」とい模索の中から生まれる。
ブロックが「守備の最前線」である以上、ブロックシステムの変遷は、攻撃システム戦術の変遷と密接に絡んでいる。

速攻などの攻撃が生まれて以来、前衛の3枚のアタッカーそれぞれの多彩な攻撃に対抗すべく、基本的にアタッカーとブロッカーが「1対1」で真っ向勝負をする、コミットブロックが一般的となった。即ち、コミットブロックとは、トスが上がる前からアタッカーをマンツーマンでマークし、アタッカーの助走と同時に、つまりトスが上がる前に跳びにいくブロックを表す。相手のスパイクをシャットすることを目標にする場合、このコミットブロックは、最も優れた戦術となる。従って、コミットブロックを相手が採った場合、アタッカー3枚対ブロッカー3枚のそれぞれの「1対1」の「個人技」同士の戦いでは、素直にいけばブロックの方が有利となる。そのため、攻撃する側は策を練らなければならない。「個人技」同士の「1対1」では対抗できないため、時間差攻撃といった、アタッカー同士がセンター付近で "絡む(=交差する)" 攻撃、すなわちアタッカー3枚が「組織的に」コンビネーションを繰り出して、ブロッカー3枚に対抗するようになる。さらには前衛3枚のアタッカーでは数が足らないと、後衛のアタッカーにバックアタックを打たせることによって、「アタッカー4枚対ブロッカー3枚」という状態を作り出すことが当たり前の時代がやってくるのである。

バックアタックの普及により、アタッカーに枚数で絶対的にかなわないブロッカー(ルール上ブロッカーは3枚が上限となる)側としては、「組織的に」対抗する必要が出てくる。そこで生まれたの戦術がリードブロックである。即ち、リードブロックとは、トスが上がるのを確認してからブロックに跳びにいくブロックを表す。リードブロックを採ると、相手のトスの上がる場所を "読みとって(='read')" 跳ぶことになるため、「1対1」で対抗する必要はなく、トスが上がったアタッカー1枚に対して、ブロッカー2枚ないし3枚で対抗することが可能となり、すなわち「1対2ないし1対3」の状態が作り出せるのである。この戦術をチーム戦術としていち早く採り入れたのが'84年ロサンゼルス・'88年ソウルと、オリンピック2連覇を果たした、アメリカ男子ナショナルチームであった。
(一方、同時期にアメリカと世界一を常に争っていたロシア男子ナショナルチームは、リードブロックではなくスタックブロックを採用していた、、、。これについては、以前私が「へりくつバレーボール」に詳しく書いているので、是非こちらを参照してもらいたい。)

当時のアメリカ男子ナショナルチームが、リードブロックの採用によってオリンピック2連覇の偉業を成し遂げたのを契機に、一気にリードブロックは世界の男子バレー界に浸透することとなった。確かに、「相手のスパイクをシャットする」という観点からは、コミットブロックにかなわないリードブロックであるが、コミットブロックが、時に相手の時間差攻撃などに対して、ノーマークとなってしまいかねない「確実性の低い」戦術であるのに対して、相手のどんな攻撃に対しても確実にワンタッチを取ることが理論的に可能となるリードブロックが、より「確実性の高い」戦術として好まれた(それは即ち、ブロックシステムとディグを連携させて、両者で「守備」と考える、という考え方を意味する)わけである。そして、その「確実性の高い」という目的のためには、リードブロックという、単に1人のブロッカーが「どうブロックに跳ぶか?」というだけにとどまらず、ブロッカー3枚が「どう組織的にリードブロックを行うか?」が問題となり、そのためにはブロッカー3枚が「どのような位置取りで構えるか?」がより重要となる。そのブロッカー3枚の「位置取り」を表すバレー用語として、以下のものがある。

バンチ "bunch" ・・・語義は「束」、即ちブロッカー3枚がセンター中央に「束」の様に集まってブロックに跳ぶ、という意味であり、両サイドのブロッカーがセンターブロッカー(middle blocker)とあまり間を開けずに並んだ状態で構えるブロックシステムを表す。その状態でリードブロックを行うシステムを、バンチ・リードブロックシステムと呼ぶ。
スプレッド "spread" ・・・バンチ "bunch" と対になる用語であり、ブロッカー3枚が間を開けて構えるブロックシステムを表す。バンチ "bunch" では、両サイドのアンテナいっぱいまで届く平行トスにはついて行けないことが多く、それらのトスに備える場合に用いるシステムである。
(その他、上述のスタック "stack" も、狭義の意味ではこの範疇に入る用語である。)

もともと全盛であったコミットブロックに対抗すべく、センター付近での時間差攻撃などが多用されていた当時としては、当然バンチが理にかなっていた。アメリカ男子ナショナルチームがいち早く採用したリードブロックを、さらにブロックシステムとして洗練されたものに仕上げ、バンチ・リードブロックシステムとして完成させたのが、'90年代前半に全盛時代を迎えたイタリア男子ナショナルチームであった。

以下に、参考となる書籍を挙げておく。なお、下記書籍ではリードは、シー アンド レスポンド "see and respond" という言葉で表現されている。

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2005年10月 2日 (日)

"オポジット"とは?

オポジット "opposite"とは?・・・コート上の6人のサーブ順での並び順、即ち「配列」において、セッターと対角線上に並ぶポジションのこと。現在のトップレベルのバレーにおいては、同ポジションにスーパーエースと呼ばれる、レセプションに参加せずに攻撃に専念する、チームで最も攻撃力のあるエースを配する場合と、レセプションにも時によっては参加する、攻守の要であるユーティリティプレーヤーを配する場合がある。戦術の変遷としては後者から前者に一貫して移行しつつあったが、アテネオリンピックで金メダルを取ったブラジル男子ナショナルチームが後者に移行しつつあることもあり、再び後者が主流になる可能性もある。

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2005年10月 1日 (土)

"レセプション"と"ディグ"

レセプション "reception" とは?・・・サーブレシーブ・サーブカットのこと。最近では、特に女子バレーにおいて「キャッチ」という言葉も耳にするが、日本でしか通用しない。"reception" は "receive(レシーブする)" の名詞形であり、海外では「レシーブ」とは「サーブレシーブ」のことを指すのである。一方、サーブレシーブ以外のレシーブ、即ちスパイクレシーブや繋ぎのレシーブのことはディグ "dig" と呼んで区別する。要するに、"Best Receiver" とは「大会を通じてレセプション(サーブレシーブ)が最も上手だった選手」のことを指し、世界のバレー界で評価されるレシーブ力とは、「観客を惹きつける派手なファインレシーブ」ではなく「当たり前のように取るから目立たないレシーブ力」を指すのである。

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