2012年1月22日 (日)

【深層真相排球塾(1学期2限目)】「テンポ」はアタッカーの助走開始のタイミングで決まる

【テーマ】〜テンポは"何秒"ではない!〜
アタッカーの助走開始のタイミングで決まる


まずは前回の復習から・・・

2限目を始めるにあたって、まずは前回の要点をおさらいしましょう。

テンポとは「セット・アップからスパイク・ヒットまでの経過時間」であり、「リード・ブロックで対応するブロッカーの反応時間よりも、テンポを短くするにはどうすればよいか?」が、ファースト・テンポにたどり着くためのカギでした。

それを達成する具体的な方法は

★セット・アップより相当前から助走を開始し、セット・アップの瞬間に踏み切って、空中で最高点に達したところでボールをヒットする

方法であり、そうすれば

★リード・ブロックで対応するブロッカーが空中で最高点に達するよりも前に、ブロッカーの上からスパイク・ヒットできる

ことを、アキンラデウォ選手のAクイックの連続写真を見ながら確認しました。


この要点を踏まえると、テンポは「セット・アップからアタッカーが踏み切るタイミングまでの経過時間によって決まる」というとらえ方ができ、その経過時間がほぼゼロとなる攻撃こそがファースト・テンポの攻撃だと考えることができます。従って、テンポは本来「アタッカーの助走開始のタイミングによって決まる」ものなのです。

ところが日本のバレー界には、「セッターのトスの"はやさ"にアタッカーが合わせないといけない」という、まるでテンポが「セッターのトスで決まる」かのような意識が根強く存在します。その意識が一体どこから生まれるのか?・・・その鍵を解くため今回は、全日本女子の"速い"バック・アタックの連続写真を見ながら、検証を進めたいと思います(写真をクリックすれば、大きくなります)。


(写真1)
Ebata1

(写真2 - セット・アップ直前 - )
Ebata2

(写真3 - セット・アップ直後 - )
Ebata3

(写真4)
Ebata4

(写真5)
Ebata5

(写真6)
Ebata6



◎日本の女子バレー界でよく見られる、テンポを短くする方法

まず写真1~2ですが、これはセット・アップ前~直前の状況で、江畑選手は前傾姿勢をとり、写真1で浮かせた左足を写真2で床面に着いて前進していますが、その歩幅は極めて小さく、いわば"足踏み"状態で、助走を開始するタイミングを見計らっている状態と言えます。写真3はセット・アップ直後で、両腕を大きく後方へ振り上げる動作が見られ、さらに写真4では両足がともに空中にあることから、写真3で着いている左足で床面を蹴って、勢いよく助走を開始したことが伺えます。そして写真5で踏み切り動作を行っており、この一連の連続写真から、江畑選手はほぼ"1歩助走"でスパイク動作を行っていることがわかります。


スパイク動作は前回説明したように、踏み切ってからスパイク・ヒットを完了するまでの時間がほぼ一定であるため、スパイク動作にかかる全経過時間の中で意識的に変えられるのは、助走開始から踏み切るまでの時間です。この連続写真から、江畑選手は助走距離を縮めることで、助走開始から踏み切るまでの時間を短縮しようとしていることが伺えます。

これを前回同様、図で考えてみましょう。江畑選手は図4のように、助走開始から踏み切るまでの時間を短縮することで、テンポの"絶対的な"短さを達成しています。

Photo


この方法は実は江畑選手に限らず、日本の特に女子バレー界でよく見られる一般的な方法なのですが、江畑選手はじめ全日本女子の選手達は、その高い技術力によって、最小限の助走距離で効率よくスパイクを打っていると言えるでしょう。しかし、助走距離が短いため助走スピードを十分に高めることが難しく、踏み切ってから空中で到達できる"高さを犠牲に"している方法とも言えます。


では今度は、最初におさらいした要点に立ち返って考えてみましょう。そもそもテンポとは「セット・アップ」からスパイク・ヒットまでの経過時間でしたよね? 決して「助走開始」からスパイク・ヒットまでの経過時間、すなわちスパイク動作にかかる全経過時間のことではありません。いくら助走距離を削ってテンポを短くしても、写真3から伺えるように助走開始のタイミングがセット・アップよりも後では、踏み切りのタイミングをセット・アップの瞬間に合わせることは不可能です。この方法でいくら助走距離を削っても、相手のブロッカーがセット・アップを確認してから踏み切るまでの経過時間(ブロッカーの反応時間の①+②に相当)が短くなれば、図5のようにブロッカーの反応時間より早くスパイク・ヒットを完了できるとは限りません(1限目で解説した、ファースト・テンポの攻撃を達成する具体的方法(図2)と比較して下さい)。

Photo_2

Photo_3

ですからこの方法は、リード・ブロックで対応するブロッカーに対して効果を発揮するファースト・テンポの攻撃とは、決して呼べないのです。


◎なぜこのような方法が、日本で一般化してしまったのか?

数年前、メディアで"1秒の壁"や"1.1秒"という言葉がもてはやされました。こうした"何秒"という数値に象徴されるように、日本のバレー界でテンポと言えば、それ自体の"絶対的な"短さばかりが注目される傾向にあります。しかし、ここに実は大きな落とし穴があるのです。攻撃を組み立てる上で、相手のブロッカーがどう反応するのか? という意識が希薄で、もっぱらセッターとアタッカーの息を合わせることばかりに重点が置かれるため、テンポの"絶対的な"短さを追求しようと、セッターは"はやい"トスを上げ、アタッカーはその経過時間内にスパイク動作を完了させよう、という意識が生まれるのだろうと推測されます。さらに、攻撃を組み立てる主導権はセッターにある、という潜在的意識が日本では強いため、トスの軌道を見てからでないとアタッカーが助走を開始できず、テンポを短くしようと"低い"トスが上がると、助走開始から踏み切るまでの時間的余裕がなくなり、「間に合わない」という意識がアタッカーの心理の中に生まれるのでしょう。テンポを短くすることは本来、敵のブロッカーとの勝負に勝つための「手段」であるはずなのに、いつの間にかテンポを短くすること自体が「目的」にすり替わり、セッターが"はやい"トスを上げようとすればするほど、味方のアタッカーが全力でジャンプするだけの十分な助走距離が取れない、という状況に陥ったのです。


真のファースト・テンポの攻撃との決定的な違いは、アタッカーの助走開始のタイミングがセット・アップより後にあることです。相手のブロッカーがリード・ブロックで対応してくることをきちんと意識していれば、ブロッカーがセット・アップを確認するまで動けないことを逆手にとって、セット・アップより相当前から全力で助走を開始してこそ、アタッカーに勝機が生まれることは容易に想像がつくはずです。攻撃の「目的」は相手のブロッカーに勝つことであって、テンポの"絶対的な"短さを達成することではありません。テンポを"何秒以内"にするかが重要なのではなく、セット・アップより相当前から全力で助走を開始し、セット・アップの瞬間に踏み切ることが、結果的にファースト・テンポにつながるのです。


テンポに関する誤解が招いた"悲劇"

日本のバレー界に蔓延するテンポに関するこうした誤解は、長身で最高到達点の高い選手は"速い"攻撃が苦手だ、という神話を生み出しました。長身選手が一般的に、低身長の選手より動作が緩慢なのは事実でしょうから、助走開始から踏み切るまでに相対的に時間がかかることが多いでしょう。しかし、それに見合うだけ助走開始のタイミングを十分に早くすれば、いくら動作が緩慢であろうとも、セット・アップの瞬間に踏み切りのタイミングを合わせることは可能です。日本の長身選手が"速い"攻撃を苦手にしているように見えるのは、助走開始から踏み切るまでの時間を短縮してスパイクを打つのが苦手だからであり、そもそもせっかくの最高到達点の"高さを犠牲に"してしまうそのようなプレースタイル自体が、実は無意味なのです。リード・ブロックで対応するブロッカーにとって最も効果を発揮するファースト・テンポの攻撃は、その本質さえきちんと理解できていれば、身長や動作の俊敏性とは無関係に、普通にスパイクが打てる選手なら誰でも打つことができるプレーなのです。

【参考動画】(踏み切るタイミングは、両足が床面から離れる瞬間として計測)

☆日本の女子バレー界で一般的な、助走開始踏み切るまでの時間を短縮する方法

(谷口 雅美選手・2009全日本女子)


・・・実況解説陣が「すっごい速いですねー」と言っていますが、実際に計測してみれば、助走開始から踏み切るまでの時間が0.73秒、踏み切ってからスパイク・ヒットまでの時間が0.30秒で、肝心のテンポ0.97秒。これらの数字を以下の動画と比較下さい。

☆真のファースト・テンポ

(江口 理代選手・2007パイオニア)


・・・ゆったり助走しているように見えるので、実況解説は「速い」などと一言も言いませんが、実際には助走開始から踏み切るまでの時間が1.07秒、踏み切ってからスパイク・ヒットまでの時間が0.30秒で、肝心のテンポ0.87秒であり、上の動画のテンポよりも圧倒的に短い!!!

(加藤 陽一選手・1999全日本男子)


・・・実況解説陣は「人間は浮くんですね−」とか「日本人離れしたジャンプ力」とか、打点の高さばかり強調していますが、助走開始から踏み切るまでの時間が0.94秒、踏み切ってからスパイク・ヒットまでの時間が0.40秒で、肝心のテンポ0.81秒であり、確かに谷口・江口両選手よりも圧倒的にジャンプ力が高いために踏み切ってからスパイク・ヒットまでの時間が0.1秒余計にかかっているにもかかわらず、江口選手よりもさらにテンポが短い!!!

*****

セッターの"はやい"トスに合わせようと、最小限の助走距離で踏み切った江畑選手のこの"速い"バック・アタックがどういう結末を迎えるかは、世界トップレベルの男子選手のファースト・テンポのパイプ攻撃とともに、次回お見せすることにしましょう。

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2012年1月 9日 (月)

【深層真相排球塾(1学期1限目)】バレーボールにおける「テンポ」とは?

【テーマ】バレーボールのテンポとは?

☆日本のバレー界に蔓延するテンポに関する誤解

テンポを理解するにあたっては、その概念が生まれた背景をまず理解する必要があります。テンポはアタック戦術に関わる概念ですので、真っ向から対決するブロック戦術が関わってきます。ブロックに跳ぶ「反応の仕方」には大きく分けて、アタッカーの助走に合わせて跳ぶ「コミット・ブロック」と、トスの行方を確認してから跳ぶ「リード・ブロック」がありますが、世界トップレベルのブロック戦術の主流は、コミット・ブロックからリード・ブロックへと移り変わってきたという歴史的背景があります。こうしたブロック戦術の変化が、攻撃側にテンポを強く意識させる要因となっているのです。リード・ブロックではトスの行方を確認してブロックに跳ぶので、「トスが上がる(=セット・アップ)瞬間からアタッカーがボールを打つ(=スパイク・ヒット)瞬間までの経過時間」が短いほど、スパイク・ヒットに対してブロッカーが間に合わない可能性が高くなります。この「セット・アップからスパイク・ヒットまでの経過時間」が一般に、テンポと呼ばれています。その経過時間が最も短い攻撃がファースト・テンポ(1st tempo)、それより少し長い攻撃がセカンド・テンポ(2nd tempo)、最も長い攻撃がサード・テンポ(3rd tempo)と呼ばれます。サード・テンポの攻撃は、いわゆるオープン攻撃などに相当します。一方、リード・ブロックに対して最も効果を発揮する攻撃がファースト・テンポの攻撃だというわけです。


ここまではそれほど難しくないのですが、ここから先に進もうとした時に誤解がしばしば生じます。陥りやすいのは「ファースト・テンポの攻撃とは一体"何秒以内"の攻撃なのか?」という考え方です。テンポはそれ自体の"絶対的な"短さが重要なのではなく、相手のブロッカーの反応時間よりも"相対的に"短いことが重要なのです。ですから、ファースト・テンポの攻撃が「何秒なのか?」を考えることには意味はなく、「どうすればリード・ブロックで対応するブロッカーの反応時間よりも早いタイミングで、スパイク・ヒットを完了できるか?」を考えていけば、自ずとファースト・テンポの攻撃にたどり着くのです。


☆どうやってブロック反応時間よりテンポを短くするか?

では、ブロッカーの動作から考えてみましょう。リード・ブロックで対応するブロッカーは、セット・アップを確認した後、トスの上がったアタッカーのスパイク・ヒット位置に向かってネットに沿って移動し、踏み切ってブロックを完成させます。ですからブロッカーの反応時間は、セット・アップを確認してから実際に体を動かし始めるまでの反応時間(①)、ネットに沿って移動する移動時間(②)、踏み切ってから空中でブロックが完成するまでの時間(③)、の合計となります(図1)。

Photo

①〜③のうち①と②は、ブロッカーのセット・アップを見極める能力や身体能力、セッターの能力やセット・アップ位置とスパイク・ヒット位置との間の水平距離などの影響を受けます。一方③は、ブロッカーがジャンプして空中で最高点に達するまでの時間であり、これはジャンプ力によほどの差がない限りは、ほとんどの場合一定となります(※)。

次に、アタッカーの動作を考えてみます。アタッカーは、助走を開始した後、踏み切って空中でボールを打ちますが、この中で助走開始から踏み切るまでの時間はアタッカーによって、また同じアタッカーでも状況によって、かなり違いが出ます。一方、踏み切ってからスパイク・ヒットを完了するまでの時間は、スイングがどうあれ空中で最高点に達したところでスパイク・ヒットを行う以上、ジャンプ力によほどの差がない限りはほぼ一定であり、かつ、ブロッカーにおける③とほぼ同じと考えられます。


ここまでの理解を前提に、どうすればブロッカーの反応時間よりもテンポを短くできるか? を考えてみましょう。①・②がどんなに短くなったとしても、助走開始のタイミングをセット・アップよりも相当前にして、セット・アップの瞬間に踏み切ってしまえば、アタッカーがスパイク・ヒットを完了するまでにブロッカーが空中で最高点に達するのは理論的に不可能となります(図2)。従って、リード・ブロックで対応するブロッカーに対して最も効果を発揮するファースト・テンポの攻撃とは、「セット・アップの瞬間に踏み切る攻撃」だと理論的に考えることができます。

Photo_2


☆本当のファースト・テンポの攻撃とは?

では今度は、ファースト・テンポの攻撃を打つアタッカーが、実際にどのタイミングで踏み切っているのか? を見てみましょう。

Quick

プルームジット・薛明両選手のクイックをご覧下さい。クイックがリード・ブロックにとって有効な攻撃であることに関しては、恐らく異論がないでしょう。セット・アップの瞬間に注目してもらうと、ほぼその瞬間に両選手とも踏み切っています

さらに、アキンラデウォ選手のクイックをご覧下さい。

Photo_3

キューバの13番の選手がリード・ブロックで対応しており、写真4がブロック反応時間の①に、写真5が②に、写真6〜9が③に相当します。写真9でブロッカーの体が曲がっていますが、腰の位置を見ればこのタイミングでブロッカーが、空中で最高点に達しているのがわかります。一方、アキンラデウォ選手はセット・アップより相当前から助走を開始し、セット・アップの瞬間に踏み切って、写真7のタイミングで既に最高点に達しており、これがいわゆる「ブロックの完成する前に打てる」状態です。このように「ブロッカーの上から打てる」攻撃こそがファースト・テンポの攻撃であり、これは、全力で助走しセット・アップの瞬間に踏み切って全力でジャンプしない限り、達成されることはないのです。


この理解に基づいてテンポの概念を整理すると、各テンポの違いは図3のように、セット・アップの瞬間からアタッカーが踏み切るタイミングまでの時間の違いだと理解できます。因みに、セット・アップよりも前に踏み切る場合は、マイナス・テンポの攻撃というとらえ方ができますが、これについては次回以降で触れたいと思います。

Photo_4


テンポを規定するのは"はやい"トス?!

図3のように理解すればテンポを規定しているのはトスではなく、実はアタッカーの助走開始のタイミングだという真実が見えてくるはずです。「トスが"はやい"から、ブロックの完成する前に打てる」とよく言われますが、「トスが"はやい"から」ではなく、「早い助走開始のタイミングに見合うようなトスを供給できたから」というのが適切な表現だと言えます。ところが例えば、『月刊バレーボール』2011年1月号p016の木村沙織選手のインタビューを引用すると、彼女は現在の全日本女子の"速い"バック・アタックに関して「・・・テンポが速いから・・・トスを上げるところに先に寄ってまっすぐ入らないと間に合わない」と述べています。この発言からは、「アタッカーがトスの"はやさ"に合わせないと"間に合わない"」という意識が伺えますが、これは一体、どう理解すればよいのでしょうか?


そこで次回2限目からは、全日本女子の"速い"バック・アタックと、世界トップレベルの男子選手が打つファースト・テンポのパイプ攻撃とを、連続写真で比較検討してみたいと思います。


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(※)ブロッカーやアタッカーが踏み切ってからt(秒)後に空中で最高点に到達し、その高さをh(m)、重力加速度をgとすれば、t=√(2h/g)と計算され、60cmしかジャンプしない選手と1mジャンプする選手を比べても空中で最高点に到達するまでの時間は、0.1秒しか変わりません。

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2011年7月14日 (木)

コヨミちゃん養成講座(1限目):ファーストタッチはとにかく「高くゆっくり」

先日、笠岡で開催されたサマーリーグ。本当に『バレーペディア』の効果かどうか? はさておき、相変わらずコヨミのセット軌道は、試合前のプロトコルでは素晴らしく、新人のアカリとの差は歴然としていたが、試合中の特にトランジションになると、残念ながらそれを活かすことが十分できていない状況は、昨シーズンのV・プレミアと同様だった。

最近、パイオニアのことを話題にするのがご無沙汰だったが、思い返せば、シドニーオリンピックの出場権を寺廻JAPANが逃して、一度はバレーボールから離れかけた私を、こうしてもう一度、この世界に引き戻してくれたのは他でもないパイオニアレッドウイングスなのだから、1人の「サポーターとして」、今度は私がチームに何か? できることなら何でもしてあげたいと、真剣に思っている。

ちょうど運良く、サマーリーグの様子がYouTubeに上がっていた(同じくパイオニアレッドウイングスのサポーターと言っていい hatsuharuya24543さん の撮影)ので、この映像を基にしながら、不定期に始めてみることにしたこのコーナー(笑)。

まずはざっと通して、パイオニアの戦いぶりをご覧あれ。

通常の映像とは趣が異なり、ボールの場所に関わらず常に(ほぼ)パイオニアコートだけを映している映像なので、一般の「見るだけ」のファンの方にとっても恐らく、ボールに触っていない選手の動きを見る目を養うには絶好の素材になると思う。




これを見てみなさんは、どういう感想を抱かれるだろう・・・?

一生懸命頑張ってるけど、拾い負けしてるなー、とか?

レセプションがもうちょっと安定したらなー、とか?

アタッカーにもうちょっと決定力があったらなー、とか?


確かに、一見そういう風に見えなくもないが、果たしてそれは本当だろうか?


動画の序盤にあるラリーを、2つほど抜き出してみた。どちらも、コヨミがファーストタッチを行い、ガッツがセットするシーン。



恐らくどちらも、コヨミは必死にディグをしているだけで、「自分がファーストタッチをしたら、リベロ(のガッツ)にセットさせる」という戦術意図はあるにせよ、多分それ以上にはあまり意識してプレーしていないと思う。もちろん、どちらも一生懸命やっているのだが、結果が180°違う。前者でなぜ、良い結果(ショウのライトからのスパイク決定)が得られたのか? 後者でなぜ、悪い結果(スーのレフトからのスパイクが決まらず)につながったのか? 単なる偶然で済ませていては、いくら個々人が一生懸命練習しても、チーム力のアップに効率よくつながらないはずだ。

前者はガッツがオーバーハンドでセッティング、後者はアンダーハンドでセッティングしているわけだが、その違い(オーバーハンドかアンダーハンドか?)そのものが問題なのではない。一番のカギは、コヨミがファーストタッチを、どう返球したか? であり、前者はネット際に落ちそうなボールをすくい上げようとディグしたため、「結果的に」高くゆっくりとした返球となっており、一方後者は、顔のあたりに飛んで来たボールに慌てて触れたため、「結果的に」低い返球となっているのだ。

高くゆっくりとした返球となった前者では、ガッツがオーバーハンドでセッティングできる時間的余裕が生まれているだけではなく、前衛両サイドのアタッカーのスーとショウが、十分なスパイク助走を取るための時間的余裕も生まれている。極めつけは、ガッツがセットアップするギリギリまで前衛レフトに正対して、当然レフトのスーにセットするのだろうと思わせておいて、セットアップの瞬間に体を回転させてライトのショウにセットした点である。相手のブロッカー陣が見事にゲスしてしまっているだけでなく、味方であるコヨミさえも「欺いて」いる(コヨミは、前衛レフトからの攻撃を想定して、スパイクカバーに入ろうとしている)。こうした素晴らしい連係プレーが何と、レセプションが相手コートに直接返ってしまうという危機一髪の状況から生み出せているという点は、絶対に見逃してはならない事実である。

これを、間違っても「ガッツのセットがはやかったから、相手のブロックが完成する前に打てた」などと表現しては、決してならない!!!




ということは・・・後者のラリーにおいて、何を反省すべきなのか? どこを改善すれば、前者と同じような結果を高い確率でたぐり寄せることができるのか? その答えは、決して難しいことではないだろうし、それを実現させるのも、比較的容易なのは理解してもらえるだろう。
決して、スーはじめとする、アタッカー陣の決定力の問題だけではないはずで、V・プレミアの昨シーズン終盤に、スタイレンスが失速した理由もここにあるはずなのだ。


もう一つ、別の場面。




コヨミはこのラリーで、アキにBクイックのセットを上げた直後、相手のブロックに当たって跳ね返ってきたボールをファーストタッチし、直後のトランジションで自身が前衛ライトから攻撃を仕掛けている。自身がディグを行ったら、その直後から自身の役割はアタッカーに切り替わる・・・この意識は、相手の組織的リードブロック戦術に現状として最も効果的な戦術である、同時多発位置差攻撃を仕掛ける上で欠かすことのできない戦術意識である。

セッターでありながら、前衛でファーストタッチを行ったら、直後のトランジションでアタッカーの役割をあたりまえのように果たすというのを戦術化すると、自然と無意識に、ファーストタッチを高くゆっくり返球しようとするのがわかる。

『TORUの海外バレー挑戦日記』より引用


佛大では、First ballをリベロ以外の後衛の選手が触った時に、その選手がその後のTransition attackでBack row attackに入らないケースが多いと感じます。


・・・(中略)・・・

相手が攻撃してくる時点では、ブロックに飛ぶ選手以外は皆Diggerになりますが、味方の誰かがDigした時点でリベロ以外の選手はattackerに変わります。

言葉にすると簡単なことなのですが、これを選手に理解してもらい実際にTransition attackの中でリベロ以外の選手全てがattackerとしての意識を持ち他のattackerと同調性を保って組織的に攻撃することを個人的には目指していますが、残念ながらチームとしてはまだまだそれが浸透していません。



コヨミの攻撃力を最大限に活かそうと、前衛で彼女がファーストタッチを行った場合に、彼女が直後に攻撃参加するという戦術をせっかく採用しているのなら、自分自身が万全の体勢で全力助走するための大事なカギが何なのか? 無意識でなく、意識してプレーしてみて欲しい。そうすれば逆に、自分自身が「セッターとして」アタッカーにプロトコルで上げるような理想に近い「高くて早い」攻撃をさせるために、他の選手たちに何を要求するべきか? も、自ずと見えてくるはず。

コヨミちゃん、がんばって!

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2011年6月16日 (木)

「独りよがり」なトスは、誰のせい?

本日、少しだけサイズが小さくなった『月バレ』7月号が発売されました。

連載させて頂いている『深層真相排球塾』の方では、世界標準の攻撃戦術である、同時多発位置差攻撃に関して詳しく解説しておりますが、この戦術を繰り出すために極めて重要なカギでありながら、見落とされがちなのは、ファーストタッチを「高くゆっくり、アタックライン付近に返球する」というプレーです。





以前提示したこの動画も、やはりファーストタッチは「高くゆっくり、アタックライン付近に返球」されています。そうやってセットアップまでに時間を稼ぐことで、両サイドのアタッカーがセットアップ前に全力で助走を開始し、セットアップの瞬間に踏み切るという、真のファーストテンポの助走を行うだけの時間的余裕を持たせることに成功しているのです。その結果として、日本のブロッカー陣がものの見事に振られているのです。






そうした本質を見落として、「うわべだけ」セット軌道を真似ればいい、という発想に陥った結果が、この動画。





セット軌道だけ真似ればいい、なら別にアンダーハンドパスでセットしても構わないでしょ? ってか!?

続きを読む "「独りよがり」なトスは、誰のせい?"

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2011年5月 1日 (日)

ハイキュー!!(少年ジャンプ 2011/20・21合併号)が凄い件

twitter で話題になっていたので、元来は漫画を買って読むような人間じゃないんですが、生まれて初めて購入しました『少年ジャンプ』(2011/20・21合併号)。

決して漫画・アニメが嫌いとかじゃないんですよ。タッチとかYAWARA!とかもちろん、再放送ですが見てましたし。小学生の頃、野球を見始めた時に、ルールとか防御率の計算式とか、向かい風でなぜ? 変化球がよく曲がるのか? とか覚えたのも、漫画で書かれた入門書でした。

でも、バレーボール関連のものは、見たことがありませんでした。いや、見たことはあるな・・・アタック No. 1の再放送・・・深夜にテレビつけていたらたまたま流れ始めて、見た気がします。

そんな私が、ちょっとバレーボール関連の漫画が気になり出したきっかけがこれ。



これも twitter でにわかに話題になって、「少女ファイト」の載っている『イブニング』を買いました。読んでみてビックリ!? そこには『バレーペディア』で書いた "スピードではなくテンポ" の内容が、図を交えて実に簡潔に、登場人物の発言を通じて語られていたのです!!!

聞くところによると、作者の日本橋ヨヲコ先生は『バレーペディア』を愛読して下さっているのだそうで・・・後日、文庫本も全部買ってしまいました。




・・・くつひもをかたくかたく結ぶ・・・

・・・どこまでも走れるように、跳べるように、そして・・・

・・・ボールにこの手が届くように。・・・



この言葉で始まる「ハイキュー!!」ですが、最初この文字を見ても、その意味するところまでは深く意識しませんでしたが、読み進めていくうちに、この言葉の重さがヒシヒシと伝わってきました。

な、なんと!? この「ハイキュー!!」は、『月バレ』での連載コーナー・・・ちまたでは、何だか難しそうなことが書いてあるコーナーだな、などと言われている(苦笑)『深層真相排球塾』を通じて、私が伝えたいと思っていることが漫画化された内容だと言っても、過言じゃないのです!!!

『TORUの海外バレー挑戦日記』より引用

「時間差から位置差へ」

先日から取り組んでいるBick。

まだまだ完成度は低いですが、やっている自分達も、周りで応援してくれる人たちも、そして相手までもがわくわくするようなバレーがしたいですね。





『月バレ4月号』で紹介され、同号での読者アンケートで巻頭の木村沙織選手のインタビューコーナーに僅差の2位に選ばれ話題となっている、神戸市立上野中学校女子バレーボール部。



同校の選手が魅せる、全日本女子よりテンポが短くかつパワフルなファースト・テンポの攻撃がこちら。







底辺からは着実に、変革の動きは起こり始めています。漫画の世界で、当たり前に展開されるようになってきたのですから!

そうです。

トス(セット)に「はやい」も「遅い」もないのです!!!

トス(セット)には「アタッカーが最高打点で打てるか、そうでないか?」の違いしかないのです!!!

自分の最高打点に正確にトス(セット)を送り込んでくれるとセッターを信じ切って、アタッカーがセット・アップ前の早いタイミングで、全力で助走に跳び込めるかどうか?

真実はただ、それだけなのです!!!


今回の「ハイキュー!!」は1回読み切りもののようですが、是非とも連載されることを期待します。読者アンケートにもその希望を書き込んで、投函しました。

p.s.: この真実に、Sun GAIAの和井田と高橋寛記が、早く気づいてくれることを信じて・・・

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2011年1月12日 (水)

『月刊バレーボール』1月号を読んで・・・(その2)

随分と遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
本年も、当ブログを宜しくお願いします。


さて、前回の続き。
コメント頂いたS2HARAさん、kaz10000さん、そしてakikomizさん、ありがとうございました!

そう、皆さんお気づきの通り、男子の世界トップレベルにおけるブロック戦術の変遷の中で、リードブロックに有効な真の「はやさ」というのは「ファースト・テンポ」を単に意味するのではない、ということを、前回の動画は雄弁に物語っている。「個人技術」としてのリードブロックに対する有効性を追求して20年以上も前に生まれたファースト・テンポのパイプ攻撃(bic(k))だったが、その後ブロック戦術が「組織化」するにつれ(=バンチ・リードブロックシステム)、「単独の」ファースト・テンポでは残念ながら効果は乏しいといったん判断された。しかし、その誕生から約10年の歳月を経て、組織的リードブロックシステムに対して最も効果を発揮する「はやさ」が実は、ファースト・テンポの攻撃を複数のアタッカーが同時に仕掛けるという「シンクロ性」にこそあるという真実が、導き出されたのだ。





昨年のイタリアで開催された世界選手権男子大会での映像。日本で間違いなく1・2を争うブロック技術を持つ富松選手がゲスブロックに陥り、アルゼンチンのセッター・デセッコに見事なまでに振られている。これを見て、日本のバレー関係者は十中八九、「相手アルゼンチンのセッターの、速いトス回しに振られた」と表現することだろう。しかし、組織的リードブロックシステムを敷く日本のブロック陣が、ゲスブロックに追い込まれた時点すなわち、セットアップよりも前に相手の前衛レフトの選手にトスが上がるとゲスして動き始めた時点で、既に「振られて」いると言えるはずだ。ポイントは、組織的リードブロックシステムを敷くブロッカー陣が「リードブロックでは対応しきれない」となぜ判断したか? にある。セットアップ前にそう判断させられたのだから、「速いトス回し」に振られた訳では決してない。そういう判断に追い込んだのはセッターではなく、セットアップ前に全力で助走し、打つ気満々でセットアップの瞬間に踏み切って空中に飛びあがらんとする、アルゼンチンの前衛レフトのアタッカーなのだ。そしてその前衛レフトのアタッカーとほぼ「シンクロ」して、前衛ライトのアタッカーがセットアップ前に助走を開始し、セットアップの瞬間に踏み切ろうとしている。アタッカーが「シンクロ」して「踏み切って」いるからこそ、ブロッカーがセットアップを確認してから「踏み切った」のでは「二兎を追う者一兎も得ず」状態に陥るのだ。ファーストタッチがアタックライン付近に上がった、いわゆる「Cパス」であるにも関わらず、ブロッカーがこれだけ見事に振られてしまうような攻撃を組み立てられる、これこそが真に「はやい」攻撃と呼ぶべきだろう。更にこの「シンクロ」を、セッターとリベロを除いたコート上の4人のアタッカーで繰り出せば、3人が最大数のブロッカーでは数の上で絶対に対応できなくなる。「どこにトスが上がっても2~3枚ブロックを揃えられる」ことが、最大のメリットであるはずの組織的リードブロックシステムが、その根本から崩れ去ってしまうような「はやい」攻撃・・・それは「4人のアタッカー」が、「同時多発(=シンクロ)」で、ファースト・テンポのタイミングで「助走し」、時間差でなく「位置差で」攻撃を仕掛ける組織的攻撃戦術であり、それを「速いトス回し」と捉えるのは本末転倒なのだ。





こうした本末転倒な認識が、とどのつまり「リベロがラリー中にアンダーハンドでセットアップを行う」という「決めごと」を「日本のオリジナル」戦術として堂々と認めてしまうという、素人でもちょっと考えればわかるような、矛盾した戦術に行き着いてしまうわけだ。そしてそれが地上波中継を通じて軽々しく連呼され、何も知らないにわかファンや世界のトップレベルのバレーボールを見る環境にない中高生プレーヤーにまで、さも「アンダーハンドでのセットアップにメリットがある」かのような誤解を招く、そういう悲劇に繋がってしまいかねない。これは何としても避けなければならない!


既にネット上では、今回の『月バレ』1月号を読んでの感想が、あちらこちらで語られている。まずは、前回のエントリーにトラックバック頂いた『てっぺー's EYE』からご紹介。

『てっぺー's EYE』より引用

リベロは、アンダーでやっていればよい。
アンダーの精度が何よりも重要だ・・・。
そんな間違った情報を子どもたちに植えつけられてしまいそうで、いかがなものかと考えてしまいます。
選手のバレーボール人生の過程においても、戦術の発展においても、「リベロのアンダーでのトスアップ」は、積極的な採用ではなく、やむなしの緊急事態回避の手段であるはずです。

・・・(中略)・・・

末端や底辺・・・ジュニアや中高校生バレーボーラーたちに、リベロはオーバーをやらなくてもよい、という間違ったとらえ方をしてほしくないという願いただひとつです。
全日本には、その影響力の大きさに自覚と、日本のバレーボーラーに果たせる貢献を知ってもらいたいです。


続いてはこちら。

『MAMIANA☆Miracle Memories』より引用


佐野選手のアンダーセット(トス)についても、書こうかと思ったけど・・・
アタックライン後ろから、オーバーよりも、ネットに近いとこから、ネットに平行気味にアンダーのほうが・・・とか、そんな感じのことが書いてあったような感じだったけど・・・とにかく、それ以前の問題ですよね
全くシンクロの概念がないですよね・・・結局、サイドのシングル、せいぜい意味のないレフト時間差のダブル(コンビ)に、なってしまうってことですよね? 

・・・(中略)・・・

一言で表現すれば、シンクロするには、オーバーじゃなきゃ無理では?ということです。


そして最後に、Twitterでの白熱の議論。

リベロのセットの話(togettered by @P206RC)


『月バレ』1月号を読んで、同じ思いを抱いた方々がこうして、声を上げてくれたお陰で白熱した議論は、間違いなく『月バレ』編集部にも届きました。今月15日発売の2月号より、「日本のオリジナル」を科学的に検証する連載コーナー『深層真相排球塾』がスタートします!

最近全くレス出来ていなくて恐縮ですが、、、当ブログに頂いているコメント含め、Twitterでの有意義な議論、先ほどご紹介した『てっぺー's EYE』のような現場からの貴重なご意見などなど、ファンの方々のバレーボールに対する熱い思いを、少しずつですが地道に着実に、還元していくことのお手伝いができたら・・・と思い、編集部からの今回の依頼を引き受けました。




是非ご覧頂き、質問・感想頂ければ嬉しいです。まずは『月刊バレーボール』2月号、ご購入よろしくお願いします!

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2010年12月19日 (日)

『月刊バレーボール』1月号を読んで・・・(その1)

「日本のオリジナル」って何だろう? それを突き詰めるべく、今月号(1月号)の月バレを読み込んでみた・・・p144〜147の眞鍋監督のインタビュー。

世界トップレベルのバレー戦術の変遷の振り返ると、何度か革新的変化をもたらしたチームがある。もちろん(目にしたことはないが)ミュンヘンの日本男子ナショナルチームもそうだろう。一番最近なら言うまでもなく、ブラジル男子ナショナルチーム(=レゼンデバレー)だし、その原点はロサンゼルス・ソウルと五輪2連覇を果たしたアメリカ男子ナショナルチームにあると言っていい。

革新的変化に繋がる戦術はもちろん、その当時はその国「オリジナル」であったはずだ。しかし、それが世界のトップレベルのバレー戦術を進化させるだけの「妥当性」があるからこそ、あっという間にそれは「世界標準」へと切り替わる。同じ戦術で戦えば、残念ながら高さがものをいうのがバレーボールというスポーツ。だからこそ、身長で劣る国がそれぞれの「オリジナル」を模索し、そして新たな革新的変化がもたらされる・・・その繰り返しの歴史なのだ。たくさんの「オリジナル」の中で「妥当性」のないものは、自然淘汰されていく、それが自然の摂理。

そう、だから「オリジナルの戦術を編み出すこと」=「世界で勝てる」ではない。それまでのバレー戦術の変遷から見て「妥当性」がない「オリジナル」は、淘汰されて決して「世界標準」の戦術には発展しない。森田淳悟氏が練習中に「偶然」開発した「一人時間差攻撃」は、直後に「世界標準」のプレーになったが、アトランタオリンピックに向けて日本女子ナショナルチームが開発した「ゼロ・クイック」や、アテネオリンピックに向けて同じく日本女子ナショナルチームが開発した「バック・ブロード」は、その後「世界標準」にはなっていないのだ。

一つ、動画をお見せしたい。(なお、発見して下さったのは吉田清司さんです m(_ _)m)

1988年のソウルオリンピックで、セリンジャー(父)監督時代のオランダ男子ナショナルチームが披露した、ファースト・テンポのパイプ攻撃(bic(k))。打っているのはWSのズベルヘル。テンポは0.67秒。

これが、恐らく世界最初のファースト・テンポのパイプ攻撃だというのは、私の記憶(「オランダ男子ナショナルチームがセリンジャー監督の下、世界で初めてバックアタックの速攻を開発した」というメディアの記載を見た記憶)及び、『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』の中の記載(p91のレゼンデ監督のインタビュー記事)から、恐らく間違いないだろうと思う。ご覧の通り、リードブロックの意識が全く欠如している当時の日本男子ナショナルチームにとっては、驚愕のプレーであったのだろうと容易に推測できるほどに、見事にノーマークで気持ちよくズベルヘルに打たれている。間違いなく、当時オランダ「オリジナル」であり、これほど見事に相手に通用しているのであれば、このあとすぐに「世界標準」となったはずであろう。ところが・・・

その4年後のバルセロナオリンピックで、同じくセリンジャー監督の下でオランダ男子ナショナルチームが見せたパイプ攻撃。打っているのも同じくズベルヘルだが、何とこれは、セカンドテンポ!! であり、テンポは0.90秒。

「オリジナル」を開発した国、それも、開発した監督と選手が同じでありながら、その「オリジナル」戦術を用いなくなったという現実・・・この歴史的事実から、当時のトップレベルのバレー戦術の変遷にあって、ファースト・テンポのパイプ攻撃は「妥当性」がなかった、と解釈できるのだ。では、そのまま消え去ってしまったのか? と言えば、それは違う。世界最初の披露から実に、10年以上もの時間を経て、ブラジル男子ナショナルチームがそれを採用し、今度はそれは「世界標準」へと発展した。


一体、オランダのファースト・テンポのパイプ攻撃と、ブラジルのファースト・テンポのパイプ攻撃の違いは何だったのだろうか?

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2010年12月 6日 (月)

NHKにだまされるな!

久々の更新です。
更新をサボっていた間に、世界選手権は終わってしまい、ご存じの通り見事に日本女子代表チームは、32年振りのメダルを獲得しました! 「奇跡でも大金星でもなく」というのは、真実でしたね。

息つく間もなく、Vリーグもチャレンジ男子を除いて、早くも開幕。あっ、忘れてはいけません。広州アジア大会で日本男子代表チームの16年振りの優勝もありました。

ブログだけをご覧頂いてる方は、前回の更新からこんなに色々なニュースがあったのに、一体何をしていたのだ?! と思ってらっしゃるかもしれませんが、その間私はtwitterで #vabotter の皆さんと、実に有意義な議論をさせて頂きました。せっかくですので、その有意義な議論のいくつかを、ここでご紹介したいと存じます。とぅぎゃって下さった方々に感謝感謝です。

TBS・新タ悦男アナによるバレーボール世界選手権(男子)総括(togettered by @dhalmel)
「アインシュタインの眼」で放送された、竹下から栗原への"セカンド・テンポ"のパイプ攻撃。を考える(togettered by @619decibel)
バレーボールとメディア(togettered by @dhalmel
平日の代々木がガラガラだったんです・・・ (togettered by @619decibel)
アンダーで上げるトスって、打ちやすいの?はやいの?(togetterd by @taknuno55)
バレーの放送について、ばぼったーはこんなにも熱い思いを持っている(togetterd by @taknuno55)
「また来たくなったよ」と思うバレーボール会場とは?(togettered by @kotonosamurai)


明日(12/7)の午後7時から、NHK BSハイビジョンでバレーボール日本女子代表チームを特集した『アインシュタインの眼』が、32年振りのメダル獲得という結果を受けて、アンコール放送(本放送は10月10日)されるようです。ええ、そうです。ここ数回のエントリーで繰り返し書いてきたとおり、「奇跡でも大金星でもない」メダル獲得という素晴らしい結果を目の前にした今こそ、それをもたらした科学的根拠及び、更なる飛躍のための課題が果たして何なのか? きちんと議論していくことが必須です。安易な国営放送公共放送の煽りに決して騙されることなく、是非上述の『「アインシュタインの眼」で放送された、竹下から栗原への"セカンド・テンポ"のパイプ攻撃。を考える』を同時に見て、大きな声を上げていきましょう! 真にバレーボールを愛する皆さん!


p.s.: 今月15日に発売される『月バレ』、必ず買って、じーーっくり内容を読み込んで下さいね〜〜〜

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2010年4月17日 (土)

テンポの実測値

アンドレ・エレルの31(ロングBクイック)。テンポは0.7秒。
アナウンサーが思わず「高くて早い!」と叫んでいるところが、本質を見事に突いている。
従って、ファースト・テンポの目安は0.7秒以内が妥当なところ。


ジバのファースト・テンポのパイプ攻撃。テンポは0.64秒。


ダンテのファースト・テンポのパイプ攻撃。テンポは0.66秒。


ポーランドだって負けてません。シフィデルスキーのファースト・テンポのパイプ攻撃。テンポは0.7秒。


ユキからリーへの51。テンポは0.87秒。これは、ほぼファースト・テンポでしょう、どう見ても。
「はやくてブロックの完成前に打てる」攻撃は、決してブロックの横(ストレート側)をボールが抜けていくのではなくて、あくまでブロックの「上を抜けていく」高さが必要だということが実感できる映像。


ユキからメグ(栗原)への32。テンポは0.86秒。ユキが決して高くないセットアップ位置から、ゲスしてしまっている東レの荒木選手を嘲笑うかのような、見事なセットを上げている。ボールはセットの描く放物線軌道の頂点を通過して明らかに落ちてきているので、これはセカンド・テンポ。


ウラズリーのC1。テンポは0.87秒。これはファースト・テンポ。


こうして見てくると、0.8秒台のテンポが、ファースト・テンポとみるかセカンド・テンポとみるかが微妙な範囲。従って、セカンド・テンポの目安は0.9秒以上。


但し、何より大事なことは、"テンポ"の本質は「何秒か?」ではないということ。本質は「セットの描く放物線軌道の頂点位置」にある。

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2009年5月 4日 (月)

"スピード"ではなく"テンポ"(その4)

(その3)では、セットアップ位置の高さが高くなることで、アタッカーとセッターが近接するスロットで行うマイナステンポの攻撃において、メリットが生じ得ることを説明した。

では、アタッカーとセッターが近接しないスロットで行う攻撃においては、セットアップ位置が高いことのメリットがないのか?


答えはそうではない。アタッカーのスパイクヒットポイントが決まっているとして、セットアップ位置が高いほど、トス(set)の軌道(=セットアップ位置からトス(set)の頂点までの垂直方向の距離)は短くなり、感覚的に「低く」見える。何度も言うが「低い」こととテンポが早いこととは無関係であるから、それだけではセットアップ位置が高い方が有利と言えない。しかし、ブロックする側からすれば、マンツーマンでの対応をするケースを除けば、相手チームの1人のアタッカーに対して対応するのではなく、複数のアタッカーを相手にするわけであり、特にリードブロックを採る場合においては、各スロットで同じファースト・テンポの攻撃を打とうとして複数のアタッカーが助走に入る場面を想定すると、相手セッターのセットアップ位置が高いほど、各スロットでのファースト・テンポの攻撃に対してのトス(set)の軌道が、見分けがつきにくくなる効果が生まれる(例えば、Bクイックとレフト平行を想定してもらえばわかるだろう)。

『月刊バレーボール 2009年1月号』に丁度いい写真が載っていたので、無断転載にて大変申し訳ないが・・・(クリックで大きくなります)



Set00

セットアップの瞬間。パナソニックは前衛センターの6番が11攻撃・前衛レフトの3番が51攻撃、さらに見えてはいないが前衛ライトの5番がC1攻撃・後衛レフトの8番がパイプ攻撃の助走に入っている。このタイミングでパナソニックの6番はジャンプを踏み切っているが、一方、相手堺のセンターブロッカーは、セッターのセットアップ動作を凝視していてまだブロックジャンプを始めていないことから、コミットブロックでなくリードブロックを採っていると判断できる。


Set01

トス(set)はセッターの身体の向きの前方向に上がっている。このタイミングでパナソニックの後衛レフトの8番はまだ助走動作が完了していないが、堺のセンターブロッカーはこのタイミングでブロックしに跳び上がろうとしている。リードで対応したブロッカーが跳び上がろうとしているということは、堺のセンターブロッカーはトス(set)がAクイック(11攻撃)に上がったと判断したことになる。


Set02

さぁ、この写真をご覧になって、このトス(set)がどのアタッカーに対して上がったものか? 皆さんわかりますか?



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