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2009年5月24日 (日)

黒鷲旗雑感(その2)


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今年の黒鷲旗女子準決勝の久光製薬対NEC戦でのワンシーン。写真がぶれていて大変もうしわけないのだが・・・この写真をなぜ撮ったのか? おわかりになる方はいらっしゃるだろうか?







この写真のシーンがそうであるように、最近の女子バレー界においては、センターブロッカーとして低身長のセッターが跳ぶ形になるシーンが目立つのだ。


なぜ? このような状況が生じるのだろうか? 一つの理由として、日本の女子バレー界ではセンタープレーヤーのワンレッグ攻撃の出現頻度が極めて高いことが挙がる。特に、セッターが前衛の場面では、センタープレーヤーはワンレッグ攻撃のオンパレードということも珍しくない(スーパーエース的なオポジットが少ない日本の女子バレー界では、セッターが前衛の場面で後衛のオポジットの選手のライトからのバックアタックの出現頻度が極めて少ないためである)。その攻撃が決まらなかった場合、トランジションでの相手チームの攻撃に対して、ワンレッグ攻撃を打ったがためにセンタープレーヤーがライト側に、そしてセッターがセンター側に位置することになり、結果的に写真のような状況が生じやすいのだ。

で、相手チームのブロック陣型がこのような形となった場合、どう攻めるべきであろうか? そう、当たり前だが、センターから速攻で切り返すべきである。ところが、ほとんどの場面でそのようなトランジションの攻撃は見られない・・・、ほとんどの場面でセッターの手からは、両サイドへの平行トス(やワンレッグ攻撃へのトス)が繰り出される・・・。本来なら、低身長のセッターがセンターブロッカーを務める形になるのは、ブロックシステム上で極めて不都合であるはずなのだが、実際に出現する相手チームの攻撃がほとんど両サイドの攻撃であるために、セッターがセンターに「取り残され」て、両サイドのブロッカーが「スプレッドで構える」方が、むしろ好都合とも呼べる状況なのだ。そのため、ブロック陣型がこの写真のシーンの様になっても、すぐにセッターとセンタープレーヤーが入れ替わって、本来のブロック陣型へ戻そうと積極的に行動したりは決してしない。実際、トヨタ車体やNEC・JTなどは、上述のようにセンタープレーヤーがワンレッグ攻撃を行った直後だからという理由でなく、戦略として敢えて低身長のセッターにセンターブロッカーを務めさせてスプレッドで構えるという場面がしばしば見受けられる。こうした傾向は、特に昨シーズンあたりから顕著になってきた気がする・・・日本の女子バレー界における、センタープレーヤーの人材不足と連動する問題点という気がしてならない。


世界のトップレベルのバレー戦術の潮流は、男子がそうであるように「相手チームにバンチ・リードブロックを採らせないために、両サイドのファーストテンポ攻撃を多用して相手ブロッカー陣をスプレッドで構えさせておいて、そしてセンターからの速攻やファーストテンポ・パイプ攻撃で点数を稼ぐ」というものであり、「スプレッドで構えさせられる」というのは「相手の術中にハマってしまった」ことを意味する。ところが、日本の女子バレー界では、「スプレッドで構えさせられ」たとしても相手チームはその弱点を突くことも出来ず、逆に「弱点を突けない」からこそ、敢えて「スプレッドで構える」という戦略が採られる位に、攻撃が両サイドの「はやい」攻撃しかない状況なのである。日本国内のトップレベルであるはずのV・プレミアチーム同士の対決ですらこのような状況であり、そこで半年間も戦って、そのままの感覚で世界の舞台に行って戦おうものなら、当然のことながら嘲笑うかのように「高くて早い」速攻を決められて終わるだけだ。

今年の黒鷲旗のスタンドでボーッと女子の試合を見ていて一番感じたのが、上述の日本の女子バレー界の問題点であり、そのいい縮図が東九州龍谷高校の近年の活躍ぶりだと感じる。確かに高校生レベルで、ディグを中心としてあれだけの高い技術レベルをものにしているのは、とてもすばらしいことだと思う。しかし、ああいう戦略を採れば今の日本の女子バレー界では「手っ取り早く」通用する、ということが露わになっているだけという気もする。そう言えば、『ベリーロールな日々』でも、今年の春高の決勝を見ての、同じような感想が書かれていた。

『ベリーロールな日々』より引用

そんなわけで、東龍の強さが目立った試合だったのですが、リベンジに燃える古川のアドバンテージを探すとすれば、その第1は「体格」だと思います。東龍は典型的な”日本人タイプ”を集めている印象で、速い・うまい・細い。東龍の監督いわく「故障している選手も多い」のだとか。一方、古川の選手たちはみんな、よりアスリート体型に近い印象。とくに上半身がしっかりしていました。

なので、春高の枠を超えて考えた場合、どっちの選手がのびていくのかは、なんとも言えないように思います。

東九州龍谷高校(東龍)があのような両サイドの「低くて早い」攻撃をバレースタイルとして採用しているのには間違いなく、ここ10数年来の全日本女子のバレースタイル、ひいてはここ最近の日本国内での女子バレー界におけるバレースタイルが影響していると言っていい。そして今度は、日本全国の中高生そしてその指導者達が、東龍のバレースタイルを模範として日々練習に励んでいくはずだ・・・。近年、日本の男子バレー界が、特に大学勢が率先して世界のトップレベルの戦術を採り入れ(リベロがセカンドセッターとしてアタックラインを見つつその手前で踏み切ってオーバーパスを上げる戦術は、大学勢からV・プレミアチームに浸透していった)、トップレベルに限らず下位レベルにまで渡って、世界の潮流に乗っていこうとしているのとは対照的に、日本の女子バレー界が「女子バレーの男子化」という潮流に大きく乗り遅れつつある状況を目にして、(パイオニアの吉田監督の迷走ぶりも相俟って・・・そう言えば、パイオニアが東龍戦で1セットを奪われる主要因となってしまったスタメンセッターのサツキも東龍出身だ・・・)絶望的な気分になりそうな今年の黒鷲旗だった・・・。

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2009年5月17日 (日)

黒鷲旗雑感(その1)


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何年か前にも書いたことがあったはずだが、黒鷲と言えば「大阪の長い長い夏の始まり」の風物詩でもある。Vリーグは見に行かなくとも黒鷲だけは毎年見に行っている、という風な大阪のおっちゃん・おばちゃん達がいて、スタンドで一人でヤジっているのを見るのが結構面白い。

会場である大阪府立体育館近くにある、名物風景をいくつか・・・
「来年こそ黒鷲行こう!」と思ってらっしゃる方のご参考になれば。


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地下鉄および南海のなんば駅から会場へ向かう際の目印になる「『130円』キャベツ焼」。
・・・長く100円だったと思うのだが年々値上がり・・・



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よく見ると「3」の数字のみ書き換えられているのがわかる。



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キャベツ焼を目印に道を進むと、有名な「551」の本社ビルが人知れず立っている。
今年はなぜか閉まっていた・・・が、普段は中国本土から直輸入されたと思われる中華食材が豊富に取り揃えられている。因みにここでは「551」の豚まん・アイスキャン「デー」は売っていないのであしからず。



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その向かい、少し戻るとラーメンの有名店「博多 一風堂」がある。
大学生は試合後に食べていそう・・・(未確認)。



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「博多 一風堂」とは反対側に進むと、体育館から一番近いコンビニ(ファミマ)がある。
体育館内にかつてはあった売店がなくなったため、観客もチーム関係者もここを利用する方が多い。
実際今年は、アナリスト含めたチーム関係者(ビデオ係)が観客席に場所確保として使用する、ビニールのガムテープが「売り切れ」と書かれていた。



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ファミマの隣の隣にある(数年前に出来た?)ピラフ屋さん。
久光の関係者一人がふらふらと入っていった・・・。



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そのピラフ屋さんのすぐそばにある看板。
体育館の「東隣」というのが一目瞭然・・・
因みに、体育館すぐそばのホテルに各チームが宿泊しているのが見られるのも、黒鷲旗の醍醐味の一つ。日立佐和が以前宿泊していた「ホテル南海なんば」は現在改修工事中?




観戦後の夕食は・・・

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体育館真向かいにあるトルコ料理屋さん。
因みに私自身は食べたことはないので、味は保証しかねるのであしからず。



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なんば駅へ戻る道中、「博多 一風堂」を越えると、関西で有名なラーメン屋「天下一品(通称・天一)」も一応ある。



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大阪球場跡地の再開発で作られた「なんばPARKS」。豊田合成の北川選手が喜びそうな(笑)、氷見直送の魚を扱う飲み屋さんなどが入っている。



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なんば駅にある高級ホテル「スイスホテル南海」。
大会中は毎晩(かどうかは不明だが)、協会関係者が優雅に会食を開いている・・・

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2009年5月 5日 (火)

黒鷲旗女子準決勝(久光製薬 - NEC)〜第2セット・問題の"ローテーションミス"について〜

パイオニアも含めて、今大会の雑感はあらためて書くつもりなのだが、、、何より今日一番の見所(爆)とも言えた、NECの第2セットの"ローテーションミス"について、解説しておこう。

GAORAでの中継でどのように説明されていたのか? 後で確認したいと思うが、恐らく会場でご覧になっていた方も、中継をご覧になっていた方もよく事態が呑み込めていなかったと思われ、実際いろいろなブログでのエントリーを見ていても、やはり予想されたとおりに誤解があるようなので、是非解説しておこうと思う。

この第2セットでまず最初にミスを犯したのは、NECの山田監督である。両チームのベンチから各セット毎に、ラインアップシート(通称"目玉")と言われる、スタメン選手の配列を記したメモを、副審に提出する必要がある(但し、前セットと同じ場合には「前セットと同じ」と申告すれば、提出しなくても良い)のだが、どうやらこのセットでNECベンチから提出されたラインアップシートには、コート内の選手たちは勿論、監督含めたスタッフも想定していなかったような、とんでもない配列が記入されていたのだ。

このセットのNECのスタートローテーションは、サーブ順に本来は9番(有田選手)→ 1番(高橋選手)→ 2番(杉山選手)→ 10番(秋山選手)→ 5番(フォフィーニャ選手)→ 4番(松﨑選手)となっていたはずなのだが、山田監督ないし誰かが間違えて、1番と2番を逆に書いてしまい、それを山田監督が確認を怠ったまま、北村副審に提出してしまったのだ。公式記録員はサーブ順を、その間違えて記入されたラインアップシートを元にして確認しているため、9番(有田選手)の次のサーバーとして1番(高橋選手)が打った瞬間に、ブザーを鳴らした。ラインアップシート上からは、9番(有田選手)の次のサーバーは2番(杉山選手)でなければならなかったのである。ブザーが鳴って、北村副審が公式記録員のところへ行き、「サーブ順が違う」ことを記録表を見て確認し、「ローテーションミス」のシグナルを出した。その時点で北村副審は「サーブ順が違っていて2番が打つはずのところで1番が打った」ことを確認し、「その次に回ってくるサーバーこそが1番であること」を確認して、その旨を、NECの選手たちに伝えた。つまり、この時点では、北村副審もNECの選手たちも、「何が間違っていたのか?」という本質には気づかなかった・・・本質は「ラインアップシートの記入間違い」にあるのだが、ただ単なる「サーブ順間違い」と思い込んだのだ(実際、会場でも「サーブ順間違い」とアナウンスされた)。そのため、「ローテーションミス」直後の久光のサーブをNECがサイドアウトすると、その直後にNECは再び1番の高橋選手がサーブを打ち、前衛には「2番(杉山選手)・10番(秋山選手)・5番(フォフィーニャ選手)」の3人が位置していたが、何度も言うように本質は「ラインアップシートの記入間違い」にあり、サーブ順は1番の高橋選手で正しくても、その場面で前衛に位置すべきなのは「10番(秋山選手)・5番(フォフィーニャ選手)・4番(松﨑選手)」の3人であって、2番(杉山選手)は後衛にいなければならないのだ。それなのに、その後衛にいるべき2番の杉山選手がブロード攻撃を決めて得点したものだから、ここで混乱が生じた・・・。勿論、公式記録員の指摘は正しく、この時点になってようやく、北村副審も本質に気づいたのだ。そのため、ラインアップシートを取り出してコート内にいたNECの選手たちに見せて確認させ、そこで初めて、NECの選手たちも事の重大性に気づかされる羽目になった。コート上の選手たちも、まさかそんなミスが、自分たちの知らないところで犯されていたなどとは想像もしていなかったであろうから、困惑は隠せない様子であり、結果的に試合が何分も中断する結果に繋がってしまった。

もう一度整理しよう。NECが当初予定したサーブ順は「9→1→2→10→5→4」であったが、ベンチから提出されたラインアップシートには「9→2→1→10→5→4」と記入されていた。即ち、本来は1番の高橋選手と5番のフォフィーニャ選手が対角レフト・2番の杉山選手と4番の松﨑選手が対角センターとして配されるはずなのだが、ベンチから提出されたラインアップシートには、2番の杉山選手と5番のフォフィーニャ選手が対角・1番の高橋選手と4番の松﨑選手が対角、と記入されていたのだ。これは完全にNECベンチの凡ミスである。そのため、セット途中からフォーメーション上の混乱を避けるため、1番の高橋選手をセンターの竹内選手と、2番の杉山選手をレフトの内田選手に代えて、対角にレフト同士・センター同士が配列されるように修正を図ったのだった。


実は本来なら、北村副審自身も、公式記録員に指摘されて気づくのではなくて、そもそもセット開始時の、ラインアップ確認時に気づいてNECの選手たちに伝える必要があった。しかし、現実にはなかなか難しい面があるのは否めないと思う。なぜなら、このセットは久光のサーブから始まるセットであり、即ちNECのレセプションから始まるセットであったわけだが、その場面でNECのレセプションフォーメーションは、以前【フロントオーダー・バックオーダー】として特集的に解説した際に取り上げた、セッターが後衛レフトに位置するフォーメーションであったのだ(因みにこの日のNECはバックオーダーを採用している)。


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以前この写真を見てもらって、瞬時に前衛3選手の背番号を当ててもらう問題を出したわけだが、同じ課題が副審にも課せられるわけである。この写真での8番・10番・11番が、この日のNECにおいてそれぞれ2番・10番・1番に相当し、2番と1番の位置関係がこのセット開始時点から、本来ならポジショナルフォルトのミスに相当していたわけである。また、実際に以前のエントリーでも明らかなポジショナルフォルトのミスが見逃されているのを、会場で見ていて気づいたケースもある。勿論、副審としてはミスであるので、何とかしてもらいたいとは思うのだが・・・審判もバレー戦術の変遷をよく理解していなければならないとも言えるだろう。


p.s.: 試合終了後に、山田監督が成田選手からどのような「お目玉」を食らっているのか? にすごく興味津々(爆)

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2009年5月 4日 (月)

"スピード"ではなく"テンポ"(その4)

(その3)では、セットアップ位置の高さが高くなることで、アタッカーとセッターが近接するスロットで行うマイナステンポの攻撃において、メリットが生じ得ることを説明した。

では、アタッカーとセッターが近接しないスロットで行う攻撃においては、セットアップ位置が高いことのメリットがないのか?


答えはそうではない。アタッカーのスパイクヒットポイントが決まっているとして、セットアップ位置が高いほど、トス(set)の軌道(=セットアップ位置からトス(set)の頂点までの垂直方向の距離)は短くなり、感覚的に「低く」見える。何度も言うが「低い」こととテンポが早いこととは無関係であるから、それだけではセットアップ位置が高い方が有利と言えない。しかし、ブロックする側からすれば、マンツーマンでの対応をするケースを除けば、相手チームの1人のアタッカーに対して対応するのではなく、複数のアタッカーを相手にするわけであり、特にリードブロックを採る場合においては、各スロットで同じファースト・テンポの攻撃を打とうとして複数のアタッカーが助走に入る場面を想定すると、相手セッターのセットアップ位置が高いほど、各スロットでのファースト・テンポの攻撃に対してのトス(set)の軌道が、見分けがつきにくくなる効果が生まれる(例えば、Bクイックとレフト平行を想定してもらえばわかるだろう)。

『月刊バレーボール 2009年1月号』に丁度いい写真が載っていたので、無断転載にて大変申し訳ないが・・・(クリックで大きくなります)



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セットアップの瞬間。パナソニックは前衛センターの6番が11攻撃・前衛レフトの3番が51攻撃、さらに見えてはいないが前衛ライトの5番がC1攻撃・後衛レフトの8番がパイプ攻撃の助走に入っている。このタイミングでパナソニックの6番はジャンプを踏み切っているが、一方、相手堺のセンターブロッカーは、セッターのセットアップ動作を凝視していてまだブロックジャンプを始めていないことから、コミットブロックでなくリードブロックを採っていると判断できる。


Set01

トス(set)はセッターの身体の向きの前方向に上がっている。このタイミングでパナソニックの後衛レフトの8番はまだ助走動作が完了していないが、堺のセンターブロッカーはこのタイミングでブロックしに跳び上がろうとしている。リードで対応したブロッカーが跳び上がろうとしているということは、堺のセンターブロッカーはトス(set)がAクイック(11攻撃)に上がったと判断したことになる。


Set02

さぁ、この写真をご覧になって、このトス(set)がどのアタッカーに対して上がったものか? 皆さんわかりますか?



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