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2008年11月26日 (水)

『バレーボール 試合に強くなる戦術セミナー』

久々の更新ですが、、、まずは書籍の紹介から。




『バレーボール 試合に強くなる戦術セミナー』より引用

バレーボールにおける言葉と概念の重要性
 バレーボールの指導やプレーにおいて、言葉は非常に大切です。チームを指導したり、チーム内で約束事をつくるときに、言葉の意味を正しく理解できていなければ、同じ話をしたところで、各々が頭に思い描いていることが異なってしまいます。・・・(中略)・・・アメリカンフットボールなどでは、各攻撃に名前がつけられていて、一言で全員が意図を把握して動き始めます。
 つまり、新しい言葉をつくることで、新しい概念が生まれ、新たなプレーができるようになります。

言葉を整理して共通認識を可能にする
 現在、バレーボールのテレビ中継や雑誌などを見ていると、同じプレーの呼び名がいろいろとあることに気づくことでしょう。・・・(中略)・・・これらの正しい呼び方に統一することで、その言葉を聞いた時に全員が同じ認識ができるようになります。言葉や表現があいまいだと、認識にズレが生じ、それがプレーのズレにもつながっていくのです。
 このように言葉を統一することが、戦略・戦術の理解につながり、バレーボールのレベルアップにもつながるのです。


INTRODUCTIONとして、上記のような文章から始まっており、そこからして従来の日本の指導書とは一線を画すものであることがわかるだろう。当ブログで解説しているレセプションとディグ・ハイセットはもちろん、サイドアウトとブレイクやバンチとスプレッド、ファーストテンポ・セカンドテンポ・サードテンポなどが当たり前のように登場しながら、解説が進んでいく。


ちなみに、「ファーストテンポ」に対しては、当ブログと同じく「トスが最高点に達する前に打つ」という解釈がなされていた点が目を惹いた。

一点不満を言えば、これだけ「用語」にこだわって書かれているのならば、これらの用語に不慣れな読者のために「用語」に関して「索引」のようなものがあってしかるべきだと思うが、それがない点が不親切だと言えるだろう。しかしその点を除けば、プレーヤーはもちろん、「見るだけの」ファンにも一読の価値のある書籍だと思う。


今シーズンのV・プレミアのテレビ中継を見ても、NHK BS1ではポジションに関する用語を「ウイングスパイカー(WS)・ミドルブロッカー(MB)・オポジット(OP)」に統一しようと、わざわざ解説していたし、『月刊バレーボール2008年12月号』では「高くて速い(!?)攻撃とは?」という図解がなされていたりと、徐々にではあるが、バレーを取り巻く世界で何かが変わりつつある雰囲気は感じられる。『月バレ』の「高くて速い攻撃」の解説は、はっきり言って本質がわかっているとはとても思えない解説ぶりだが、ともかくもそういった観点にバレーファンの関心が向き始めていることに気づき始めたという点では評価できよう。

やっぱり言葉は大事だ。

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コメント

私も一冊持っておりますが、オリジナリティという点では疑問が残る本です。一つだけ、良かったのはブロックシステムの解説が写真などを用いてキッチリとしていたことで、今までの本にはなくわかりやすかったです。(しかし、内容は吉田清司氏の本からの転用だと思います)

確かに用語にこだわっている本だとは思いますが、吟味して書かれているとは思えず、一貫性に欠ける部分も散見されます。

「スパイクスイング」に関して著者に質問のメールを夏ごろに送りました。催促メールも3回ぐらいして、一度、お会いしたときは「しっかりとした文章でお答えします」と約束をいただきましたが、未だに解答を寄せて頂いたおりません。お忙しい方とは思いますが、著者の姿勢はあまり評価できません。

投稿: オリビア | 2008年11月28日 (金) 12時51分

 私も購入しています。私のような「見るだけ」ファンには、今のところ最もおすすめできる本じゃないかと思っています。特に「勝つための戦略と戦術」の章は、このくらいのわかり易さがいい感じですかね。もっと詳細なものを他の本で見た記憶がありますけれど、わかりにくくて難しすぎました。それから「戦術の幅を広げるための必要知識」の章の統計数値も興味深かったです。「個人スキル」については、よくわかりません(笑

 用語で気になったのは、コートを9分割した横位置=スロットの表し方が「セリンジャーのパワーバレーボール」では5,4,3,2,1,0,A,B,Cでしたが、この本では1,2,3,4,5,6,7,8,9だったことで、今はこっちが主流なのかな?それとも流派があるのかな?とか。
 それからアタックレシーブについて解説している「フロアディフェンスシステム」の説明で「ベースポジション→リードポジション」と表していたところ、そこは吉田敏明監督の「コロンブスの卵」では「ホームポジション→ベースポジション」と表されていました。そのくらいの違いは、言えばわかることなのかも知れませんけども、指導者によって用語が違うことがやっぱりあるんだなとあらためて思いました。まぁ「見るだけ」ファンにはあまり重要ではないかも知れませんけども。

投稿: one of No.33 | 2008年11月29日 (土) 01時28分

この本、興味深いのでこんど捜してみようかと思います。

それにしても、用語ってどうも統一の方向にいかないですね…戦術と絡むところもあるのでしょうか。

>>NHK BS1ではポジションに関する用語を「ウイングスパイカー(WS)・ミドルブロッカー(MB)・オポジット(OP)」に統一しようと、

とのことですが、月バレあたりでは「WS」ではなく「OH」になりつつありますね…
最近見ているバレーのせいでしょうか、OPに遭遇しないケースも多々あるのですが、それはそれとして…

投稿: dhalmel | 2008年11月29日 (土) 09時03分

「とのことですが、月バレあたりでは「WS」ではなく「OH」になりつつありますね…」

WSは「WING SPIKER」
OHは「OUTSIDE HITTER」
の略ですが、ともに「外側で打つ選手」という意味で大きな違いはなさそうです。ただ、SPIKERがかなり一般的な言葉であるのに対してHITTERはアメリカで主に使われるどちらかというとマイナーな言葉です。(訳すなら「打ち屋」という感じでしょうか?野球用語の転用だと思います。まあ、スラングとまでは言いませんが…)

用語に一般性や国際性を求めるのであれば、意味の分かりやすさも大差がないのでWSの方が優れていると思います。

投稿: オリビア | 2008年11月29日 (土) 09時53分

>オリビアさん・one of No.33さん、いつもコメントありがとうございます。


>オリジナリティという点では疑問が残る本です。
>吟味して書かれているとは思えず、一貫性に欠ける部分も散見されます。

オリビアさんの御指摘どおり、私も読んでいて気になるところはいっぱいありました。ただ、最後まで読んでみて思ったのは、「多分紙面が足りなかったのだろうな」ということです。one of No.33さん御指摘の「戦術の幅を広げるための必要知識」の章の統計数値にしても、当然その元データがあるでしょうけど、それを載せるだけのスペースはなかったのでしょう。色んなことを詰め込もうとして、エッセンスだけ抽出して書こうとして、結果的に一貫性がなかったり、用語にしても吟味が足らない結果になったんだろうなと、思いました。多分、時間も足りなかったのではないかな? とも。

ただ、用語に関して本気で「一貫性」や「普遍性」などを突き詰めると、『セリンジャーのパワーバレーボール』がそうであるように、具体的な説明に入る前に、誰もが当たり前のように知っているルールや言葉などについてもきっちり定義しておく必要が出てきて、説明がまどろっこしくなりがちです。そうすると「見るファン」にとっては、まさに教科書がそうであるように、この上なくつまらない本になってしまいがちです。『セリンジャーのパワーバレーボール』が「古い」というレッテルを貼られやすいのも、それが一因のように思います。


>「勝つための戦略と戦術」の章は、このくらいのわかり易さがいい感じですかね。

紹介されているレセプションフォーメーションについては、説明については言葉足らずが否めませんが、現在のバレー界で実際に目にすることが多いタイプを網羅して説明されている(男子バレーで標準の5−1システム・バックオーダーや、柳本JAPANおよび2006年黒鷲旗準優勝の東海大学男子が採用した5−1システム・フロントオーダー・表レフトレセプション不参加型など)点は、戦術などを知らない「見るファン」にも馴染みやすい解説になっていると思います。

もちろん、この書籍が完璧なわけでも何でもなく、言い意味でも悪い意味でも一つのお手本として、用語統一・検討について本気で取り組んでいくのが私たちに科せられた課題かな? なんて(笑)

投稿: T.w | 2008年12月 7日 (日) 21時36分

>dhalmelさん

私の記憶の限りでは、Outside Hitterの方がWing Spikerより「古い」印象があります。意味はオリビアさんが解説頂いているとおりですが。

オポジット "Opposite" ですが、これまで日本(だけ)で「スーパーエース」という言葉が使われてきたために、「スーパーエース」の役目を果たす人をオポジットと呼ぶと誤解されている方が多いように思います。オポジットには単に「対角」という意味しかないですから、要するに「セッター対角」であって、いわゆるスーパーエース的に、レセプションに参加せずにハイセットを中心に打つ選手もいれば、従来の女子バレーの様にレセプションの要になる選手もいるということです。逆に、B級レベルや女子バレーでは配列上はウイングスパイカー(レフト)であっても、レセプションに参加せずハイセットを中心に打つ選手もいて、その選手はオポジットではないですが「スーパーエース」と呼んでも良いかもしれません。

投稿: T.w | 2008年12月 7日 (日) 21時57分

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