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2008年8月28日 (木)

(北京オリンピック男子決勝)ブラジル - アメリカ(その1)

現在のブラジル男子ナショナルチームの戦術は、レゼンデバレーとしてまとめたとおりであり、世界各国がここ数年、常に追いかけ続けてきた戦術である。しかし、各国がその戦術を採り入れた頃には、もう既にブラジルは先へ一歩進歩しているのがこれまでの現状だった。

中でも(その3)で書いたとおり、世界の強豪国を相手にブラジルが常に徹底してデディケートブロックを敷いているのに対して、相対する各国はブラジルを相手にデディケートブロックがなかなか使えないという点については、ブラジル優位の図式が長年崩れない大きな要因となっていた。昨年のワールドカップでブラジルに唯一土を付けたアメリカをしても、ブラジル相手にはデディケートは使えなかった。

ところが、北京オリンピック決勝という大舞台において、第1セットで王者ブラジルに序盤からリードを許す沈滞ムードの中、アメリカはセット終盤から、何とデディケートを敷き始めたのだ! 22-17のブラジルリードの場面で、ダンテがファーストテンポ・パイプ攻撃を打つ際にペネトレーション(アタックラインの踏み越し)を犯すシーンが、体育館天井からのカメラアングルでリプレイされるのでビデオを撮っている方は確認して頂きたい。ヒュー・マッカーチョン監督によるこの指示は、残念ながら第1セットでは功を奏さなかった。実際、先ほどの22-17の場面で言えば、せっかくブラジルのレフト側の攻撃に対してデディケートしているにも関わらず、レフトブロッカーのサーモンがゲスブロックしてしまって2枚替えで入っていたムーリオのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)のブロックに跳びに行ってしまっていた。これではデディケートブロックを敷く意義・・・相手のファーストテンポ・パイプ攻撃の決定率を下げるという目的が果たせなくなってしまうからだ。第1セットは終始ブラジルペースで、25-20。

しかし、セット間でヒュー・マッカーチョン監督の意図がアメリカの選手達にきちんと伝わったのか? 第2セットに入り、1-0で回ってきたスタンリーのサーブでの場面で早速、ブラジルのレフト側の攻撃に対してデディケートしているレフトブロッカーのサーモンとセンターブロッカーのミラーが、アンドレのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)に対して、ゲスブロックでなくきちんとリードブロックで2枚ブロックが見事に完成してシャット。これまで、世界各国がブラジル相手にデディケートできない根拠に、ブラジルのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)のテンポが早すぎて、デディケートブロックでは間に合わないということがあった。ところが、第2セットのこの場面は、レフト側にデディケートしていてもブラジルの繰り出すファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)に対して、リードできっちり空中で間に合うレベルにまで、アメリカのブロック技術が追いついてきたことが証明された瞬間だった。自信を深めたアメリカのブロック陣は、以降もデディケートを崩さない。スタンリーの強力なスパイクサーブもどんどん勢いを増し、サービスエースを含めて何と5連続得点で6-0。たまらずレゼンデ監督は前衛ライトにいたオポジットのアンドレをムーリオへと交代させる。中継での解説で述べられていたように、オポジットのアンドレを本来レフトプレーヤーであるムーリオへ交代させることで、4枚レセプションを敷いてスタンリーの強力なスパイクサーブに対抗しようとした意図も確かにあっただろうが、恐らくレゼンデ監督の本当の意図は、アメリカがデディケートブロックを敷いてくるのを崩すことにあったと想像する。この日のアンドレでは、アメリカは自信を持ってデディケートブロックを続けるであろうから、誰か別の選手、それもスーパーエースタイプの選手(アンデルソン・サムエル両選手など)ではなくて、ファーストテンポの攻撃を得意とする選手をオポジットに配して、ライト側のテンポの早い攻撃を意識させたかったのだろう。案の定デディケートを続けたアメリカは、7-1のリードの場面でグスタボの速攻にレフトブロッカーのプリディーがコミットし、センターブロッカーのミラーとライトブロッカーのボールがジバのファーストテンポ・パイプ攻撃に対してリードブロックで跳ぶ形でセッターのマルセロにプレッシャーをかけ、結果的にジバが再びペネトレーションのミスを犯す結果に繋がって、8-1のアメリカ大量リードでの最初のテクニカルタイムアウト。しかし、この直後からブラジルは、予想通りムーリオのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)を多用。それに対してはアメリカのブロック陣も捕らえきれない。徐々にアメリカのデディケートブロックが崩れ出す。逆に今度はブラジルのデディケートブロックが機能し始め、3連続ブロックポイントで、気づけば17-15と2点差。ここから一進一退の攻防となり、セット終盤へ。21-19から、ブラジルはピンチサーバーのブルーノがアメリカのレセプションを崩して、ワンタッチを取ったボールをトランジションでジバがバックアタックで決めて、遂に21-20の1点差。続くブルーノのサーブも、狙いどおりアメリカのレセプションを乱すが、ミラーが何とか決めて22-20。そしてここでアメリカは、スタンリーのサーブが回ってきて、見事なサービスエースで23-20。このセットはスタンリーのサーブ力がものを言い、25-22でアメリカが取り返して、セットカウント1-1。

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コメント

首を長くして待っておりました。
いつも思うのですが、ゲームを観て頭の中では理解しているはずの戦術がどうも整理しようとすると言葉になりません。
このように正確に書いていただくと非常に判りやすくありがたいです。
多分、全体的なゲームの流れより選手個々の動作などを観察してしまうのに重きをおく癖が抜けないからだと思っていますが、ここがあるので安心です。
続きも楽しみです。

投稿: ナゾノヒデヨシ | 2008年8月28日 (木) 13時57分

こんばんは。おじゃまします。
最近このサイト知りました。
自分はアテネ以来リカルドのファンになってしまいました。

とうとうブラジル負けてしまいましたねぇ・・・
確かに戦術的にアメリカが追いついたというのは最もだと思います。今更ですが、やはりその原因はリカルド不在だと思います。
なんだかんだいって彼は欠かせない存在だと思います。技術的にも素晴らしいですが、精神的な部分でも非常に大きな役割を果たしていた、そう感じたのが今回の北京五輪です。

結局なにを言いたいのかというとリカルドのいるブラジルをもう一度!と誰かと共感したいと思って書きました。


投稿: リカルド大好き | 2008年8月28日 (木) 23時59分

今回のオリンピック中継(アメリカ)で解説者(アメリカ元代表ケビン・バーネット)がブラジルチームとリカルド選手について話していました。

ブラジルのリカルド選手、確か07年のWC直前(?)に代表チームから外されましたよね。僕自身もあのリカルドというセッターはどこにいったのだろうと思ってました。(もしかしたら日本では報道されていたのかもしれませんが)

今はイタリアリーグで活躍?してるのでしょうか?この「代表チーム外し」はブラジル国内では一般新聞のトップ記事で1週間ほど続いたそうです。真相は明らかではありません(だからまた話題になったのでしょうが)が、確かなことはレゼンデ監督との確執です。公になっているところでは「チームの最低限のルールを破った」とかなんとか。それが監督との問題なのか、チーム内での問題だったのかは今でも明らかではないようです。でも監督のこの決定をほかのチームメンバーも全面支持したということで、真相はわからないにせよ、ある程度彼自身がチームワークを乱すことになっていたということはあるようです。じゃなければ、チーム全体が支持とかにはならないような気がします。ブラジルチームは監督が恐れられているという感じではない気がするので、ある程度の納得する理由をリカルド自身が原因を作ってしまったと。

そして、その代わりに入った控えセッターがレゼンデ監督の息子(北京でも登場)ということでこれまた凄い話ですが。

なのでレゼンデ監督である限りは戻ってこないでしょうね。イタリア代表になりたいだかなんとかリカルド本人は言ったとか。また、それにいろんな方面から反感をかったとかなんとか。

個人的にはリカルド選手がいるから世界一というバレーは結局その選手と代表チームが心中してしまうことにもなり、それよりも戦略的(システム)、技術的に世界一でそれにそのときどきの代表選手を対応させたほうが良いように思います。

バレーはかなりのチームワークを要するチームスポーツなので、技術が世界一であっても、世界トップのチームであってもこんなことがあるんだな、と驚きました。

それと、そんなゴタゴタ(ま、少し前に起こった事ですが)があっても、ブラジルチームのチームワーク凄かったですよね。ピンサでジバがレゼンデJRに代えられる時も、ジバは耳元でいろいろとレゼンデJRに話していました。カッコ良かった!ほかの選手も代えられる時にその選手にやっぱりそうやって耳元で話をしてました。ラテン文化ということもあるでしょうが、あのくらいのチームワークがあって世界のトップになれるのかな、と思わされました。

ブラジルチームの練習は本当に凄いらしいです。厳しいといううよりも、瞬間瞬間が真剣そのもの。何かを確実に学んでいる、うまくなっているというのが周りから見てもわかるそうです。


投稿: duggo | 2008年8月29日 (金) 01時02分

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