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2008年8月31日 (日)

(北京オリンピック男子決勝)ブラジル - アメリカ(その2)

第2セットのアメリカの勝因の一つは、誰の目にも明らかなようにスタンリーのスパイクサーブにあった。第1セットのスタートの瞬間はテレビ中継が間に合っていなかったので確認できないが、解説を当てにする限りは(その解説が事実に反することはしばしばあるのだが・・・)、第1セットの最初のサーバーはスタンリーではなかったと受け取れるので、ヒュー・マッカーチョン監督がスタートローテーションの戦略を第2セットから変えて、ワールドカップ2007でブラジルを倒した際と同じく、レセプションからスタートするセットに対してサーブからスタートするセットでスタートローテーションを「1つ回し」て、常にスタンリーのサーブから始まるようにしたというのが成功した形と言える。さらに言えば、そのスタンリーのサーブの際のブラジルのローテーションが、レセプションフォーメーションを組む3人のうちの中央を、リベロのセルジオでなく後衛レフトのジバが務めるローテーションであったこともアメリカに有利に傾く要因であったと言え、実際レゼンデ監督は第3セット、ヒュー・マッカーチョン監督が恐らくはスタートローテーションを一つ回して、スタンリーのサーブから始めるだろうと予想した上で、スタートローテーションを逆に一つ戻して、リベロのセルジオが中央を務めるローテーションが当たるようにずらしてきた。それが功を奏し、セット序盤での連続失点を免れたブラジル。更には、第2セット終盤にアメリカのデディケートブロックを崩すことに成功し、スタメンもオポジットにアンドレを戻してきたレゼンデ監督。ここまではブラジルの勝ちだった。

しかし、1-1の場面で、アメリカのブロック陣がデディケートでなくなった状況で「待ってました」とマルセロが上げたジバのファーストテンポ・パイプ攻撃に、リーが見事にリードで対応してシャット。実は、第3セットに入り、アメリカはまたブロックシステムを変えてきたのだ。1・2セットでのマルセロのトス回しから、アメリカベンチには、マルセロがネットから離れた位置でのセットアップでは速攻をほとんど使っていないことがデータとしてはじき出されていたはずだ。そう、ワールドカップ2007での対戦と同じく、第3セットに入ってアメリカのブロック陣は、ブラジルのレセプション・ディグがネット際の理想的な位置に上がると、サイドブロッカーはスプレッドに構えてセンターブロッカーは速攻にコミットで対応、レセプション・ディグが乱れるとバンチで構えてファーストテンポ・パイプ攻撃か両サイドのファーストテンポの平行をマークするという、瞬時のブロックシステムの切り替えを採り始めた。1-1の場面でのジバのファーストテンポ・パイプ攻撃に対しては、レセプションが少しネットから離れてしまったために、アメリカのブロック陣は速攻はほぼ無視して、ファーストテンポ・パイプ攻撃に対応できたわけだ。これで、ブラジルのセッター・マルセロが迷い始める。せっかく狙い通りに、アメリカのブロック陣の敷くデディケートを崩したのに、肝心のファーストテンポ・パイプ攻撃が決まらないわけだから。続く3-2の場面では、パスがネット際にきちんと上がって、リーはグスタボの速攻にコミットで跳び、結果はブロックアウトにはなったものの、シャットされていてもおかしくないプレーであった。その後も数本マルセロは速攻を使うが、いずれもアメリカのブロック陣がコミットでプレッシャーをかけていて決まらず。中央の攻撃が通用しないため、マルセロはネットから離れた位置での速攻をますます選択しなくなり、両サイドの一辺倒のトス回しとなる。ダンテのファーストテンポ・レフト平行(51攻撃)でセット中盤を何とか凌ぐが、11-9のアメリカリードの場面で、やはりネットから離れた位置からのセットアップとなったところで、マルセロが選択したアンドレのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)に、アメリカのブロック陣は2枚ブロックが完成してシャット。これで、アンドレは完全に潰された。じりじりアメリカのリードが広がりはじめ、14-11。ここで、久々にダンテのファーストテンポ・パイプ攻撃を選択するが、やはりネットから離れた位置でのセットアップのため、グスタボの速攻はほぼ無視してリーがリードでダンテに遅れながらも対応しており、結果はブロックアウトでブラジルのポイントとなるが、マルセロとしては決まった気がしないプレーだったはずだ。一方、アメリカは前セットのサーブから乗ってきたスタンリーの攻撃が勢いを増す。デディケートではスタンリーのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)を止められず、20-15の劣勢の場面でレゼンデ監督は、潰されたアンドレに代えてブルーノ、マルセロに代えてサムエルという2枚替えを選択するとともに、それまでセット中盤を攻撃面で活躍していたダンテをムーリオへ代えてまで何とか、スタンリーを止めようという策に出る。これが成功し、ブルーノのサービスエースで20-16とした直後、代わったムーリオ・グスタボの2枚で見事にスタンリーをシャット。20-17と追い上げムードに入る。長いラリーをグスタボが速攻で決めて、21-19の2点差。しかし、ムーリオがサーブミスで22-19。直後、レセプションが乱れたところで、ムーリオのファーストテンポ・パイプ攻撃をブルーノが選択、アメリカのブロック陣は当然、バンチで構えて速攻をほぼ無視しており、見事に2枚ブロックが完成して、そのプレッシャーに負けてムーリオがスパイクミス。最後は、サムエルのサーブミスで25-21。アメリカがセットカウント2-1と、王手をかける。

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2008年8月28日 (木)

(北京オリンピック男子決勝)ブラジル - アメリカ(その1)

現在のブラジル男子ナショナルチームの戦術は、レゼンデバレーとしてまとめたとおりであり、世界各国がここ数年、常に追いかけ続けてきた戦術である。しかし、各国がその戦術を採り入れた頃には、もう既にブラジルは先へ一歩進歩しているのがこれまでの現状だった。

中でも(その3)で書いたとおり、世界の強豪国を相手にブラジルが常に徹底してデディケートブロックを敷いているのに対して、相対する各国はブラジルを相手にデディケートブロックがなかなか使えないという点については、ブラジル優位の図式が長年崩れない大きな要因となっていた。昨年のワールドカップでブラジルに唯一土を付けたアメリカをしても、ブラジル相手にはデディケートは使えなかった。

ところが、北京オリンピック決勝という大舞台において、第1セットで王者ブラジルに序盤からリードを許す沈滞ムードの中、アメリカはセット終盤から、何とデディケートを敷き始めたのだ! 22-17のブラジルリードの場面で、ダンテがファーストテンポ・パイプ攻撃を打つ際にペネトレーション(アタックラインの踏み越し)を犯すシーンが、体育館天井からのカメラアングルでリプレイされるのでビデオを撮っている方は確認して頂きたい。ヒュー・マッカーチョン監督によるこの指示は、残念ながら第1セットでは功を奏さなかった。実際、先ほどの22-17の場面で言えば、せっかくブラジルのレフト側の攻撃に対してデディケートしているにも関わらず、レフトブロッカーのサーモンがゲスブロックしてしまって2枚替えで入っていたムーリオのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)のブロックに跳びに行ってしまっていた。これではデディケートブロックを敷く意義・・・相手のファーストテンポ・パイプ攻撃の決定率を下げるという目的が果たせなくなってしまうからだ。第1セットは終始ブラジルペースで、25-20。

しかし、セット間でヒュー・マッカーチョン監督の意図がアメリカの選手達にきちんと伝わったのか? 第2セットに入り、1-0で回ってきたスタンリーのサーブでの場面で早速、ブラジルのレフト側の攻撃に対してデディケートしているレフトブロッカーのサーモンとセンターブロッカーのミラーが、アンドレのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)に対して、ゲスブロックでなくきちんとリードブロックで2枚ブロックが見事に完成してシャット。これまで、世界各国がブラジル相手にデディケートできない根拠に、ブラジルのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)のテンポが早すぎて、デディケートブロックでは間に合わないということがあった。ところが、第2セットのこの場面は、レフト側にデディケートしていてもブラジルの繰り出すファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)に対して、リードできっちり空中で間に合うレベルにまで、アメリカのブロック技術が追いついてきたことが証明された瞬間だった。自信を深めたアメリカのブロック陣は、以降もデディケートを崩さない。スタンリーの強力なスパイクサーブもどんどん勢いを増し、サービスエースを含めて何と5連続得点で6-0。たまらずレゼンデ監督は前衛ライトにいたオポジットのアンドレをムーリオへと交代させる。中継での解説で述べられていたように、オポジットのアンドレを本来レフトプレーヤーであるムーリオへ交代させることで、4枚レセプションを敷いてスタンリーの強力なスパイクサーブに対抗しようとした意図も確かにあっただろうが、恐らくレゼンデ監督の本当の意図は、アメリカがデディケートブロックを敷いてくるのを崩すことにあったと想像する。この日のアンドレでは、アメリカは自信を持ってデディケートブロックを続けるであろうから、誰か別の選手、それもスーパーエースタイプの選手(アンデルソン・サムエル両選手など)ではなくて、ファーストテンポの攻撃を得意とする選手をオポジットに配して、ライト側のテンポの早い攻撃を意識させたかったのだろう。案の定デディケートを続けたアメリカは、7-1のリードの場面でグスタボの速攻にレフトブロッカーのプリディーがコミットし、センターブロッカーのミラーとライトブロッカーのボールがジバのファーストテンポ・パイプ攻撃に対してリードブロックで跳ぶ形でセッターのマルセロにプレッシャーをかけ、結果的にジバが再びペネトレーションのミスを犯す結果に繋がって、8-1のアメリカ大量リードでの最初のテクニカルタイムアウト。しかし、この直後からブラジルは、予想通りムーリオのファーストテンポ・ライト平行(C1攻撃)を多用。それに対してはアメリカのブロック陣も捕らえきれない。徐々にアメリカのデディケートブロックが崩れ出す。逆に今度はブラジルのデディケートブロックが機能し始め、3連続ブロックポイントで、気づけば17-15と2点差。ここから一進一退の攻防となり、セット終盤へ。21-19から、ブラジルはピンチサーバーのブルーノがアメリカのレセプションを崩して、ワンタッチを取ったボールをトランジションでジバがバックアタックで決めて、遂に21-20の1点差。続くブルーノのサーブも、狙いどおりアメリカのレセプションを乱すが、ミラーが何とか決めて22-20。そしてここでアメリカは、スタンリーのサーブが回ってきて、見事なサービスエースで23-20。このセットはスタンリーのサーブ力がものを言い、25-22でアメリカが取り返して、セットカウント1-1。

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2008年8月25日 (月)

北京オリンピック・・・もう少しお待ち下さい

やはりオリンピックは面白いですね。男子が久々に出場権を獲得してくれたお陰で、毎日のようにバレーが見られたのが幸せでした。なかなか生では見られずに寝ぼけ眼で夜中に見る毎日でしたが。

さて、書きたいことが山ほど溜まってしまっていますが、、、『スピードではなくテンポ』もまだ続きがあるのですが、やっぱり男子決勝を目の当たりにすると、それから書いてしまう予感がします。王者ブラジルが3大大会で敗れる日が遂に訪れましたね。この決勝戦、アメリカに勝機があることは第1セットから伺えました。それが第2セットで、レゼンデ監督がアンドレをムーリオへ交代させる伏線となりました。さて、そのアメリカの勝機は何だったでしょうか? レゼンデバレーをすべて読んで頂いている方なら、恐らくわかってもらえると思います。そうです、遂にアメリカ男子ナショナルチームは、戦術的にブラジル男子に追いついたのです。答えは、次回のエントリーで。

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