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2008年3月20日 (木)

今年のトヨタ車体

今シーズン大躍進を遂げたと言っていいトヨタ車体。昨シーズンこちらで書いたとおり、あまり上背のない下位チーム(失礼)としては珍しくバンチ・リードブロックシステムを採り入れている点が目を惹いたが、昨シーズンでのパイオニア戦を見る限り、両サイドの「高くて早い」トスには翻弄されており、さらにはバックアタックを打てる選手が少ないため、3枚ブロックに跳んだ後のトランジションでの攻撃の選択肢に限界があり、正直言うとバンチ・リードブロックを採り続けるのは限界があるのでは? と個人的に思っていた。

滋賀でのJT戦では、試合前の練習風景もじっくりと見られたので、その点を注目しながら見ていたが、今シーズンにおいてはやはりブロックシステムは少し手直しをしたようで、スプレッド気味で構えるのが基本となっているようだった。これは、Vリーグの各チームに多い高速レフト平行やライト側のワン・レッグ攻撃に対応しやすくするためであろう。ただ、スプレッドの状態からパイプにトスが上がれば、素早く両サイドのブロッカーがセンターブロッカーの横まで寄って3枚ブロックを完成させる(この日はJT戦であったので、ケニー選手のパイプ攻撃を想定していたはず)ことを念入りに練習しており、バンチ・リードの意識を失っていないのは間違いなかった。そして、明らかに強化していたのがトランジションでの攻撃。3枚ブロックの直後も(バックアタックを使わなくても困らないように)果敢に前衛アタッカーが攻撃に参加し、ウイングスパイカー陣はとにかく(低くて)早い両サイドのトスを打とうと努めていた。それは、今シーズンの開幕でのパイオニア戦の公式プロトコル練習を見ているだけで容易に受け取れた。細かいところは違うとしても、イメージ的にはPFUのバレースタイルに少し近く、若干自分たちの技術レベルの限界に近いかそれを超えたプレーをやろうとしている感じだ(PFUの場合はそれがスパイクミスの多さに繋がり、トヨタ車体の場合は被ブロック率の高さに繋がっているように思える)。だが、結果的にその戦術は着実に今シーズンのチームスパイク決定率を上げる(昨シーズン34.9%・今シーズン39.4%)要因となり、チーム成績の躍進にも繋がったと言えよう。

ただ、4強入り争いを終盤までしていながら、リーグ後半で失速してしまった要因として、私は助っ人外国人のジョインズ選手が、結果的に上述のトヨタ車体のバレースタイルに必ずしも合わなかった点があるように思う・・・リーグ序盤、日本人選手だけで首位争いに加わっていたチーム状態にあって、そこにさらに助っ人外国人が加われば、さらにチーム状態は良くなるだろうと予想したファンの方も多かったと思う。ジョインズ選手と言えばそう、昨年のワールドカップでアメリカが何年ぶり(?!)かで上げた対ブラジル戦での勝利の立役者であり、ブロックの名手であるからして、その予想は尤もだったと思う。

しかし、現在のトップレベルのバレー界において、やはりブロックは個人技ではないのだ。上述の通り、バンチ・リードからスプレッドぎみに修正された今シーズンのトヨタ車体のブロックシステムだが、それによって露わになったのは、実は各選手の採っているブロックスタイルが「えせリードブロック」だという事実である。これを私は、滋賀でのJT戦の試合前の練習風景をじっくり見ていて確信した(ブロック練習で、相手コートにいるセッターがセットアップする前にmiddle blockerが動き出して、2枚ブロックを揃えていることが多く、きちんと「リード」で対応すると、動き出しが遅れて2枚ブロックの間が空いてしまう不完全なブロックになっていた)。システム化を狙っている一方で、各ブロッカーが実際の試合の各局面ではバラバラに判断を下しているので、リードブロックを採る本来のメリットである「相手のどのような攻撃に対しても2〜3枚ブロックを揃える着実性」が損なわれている。その中にきっちり組織ブロックが染みついた選手が一人入っても、機能しないのは当然であろう。

各選手が闘志むき出しにプレーし、見ていてある種の爽快感を感じさせるチームカラーは、葛和総監督が監督を務めていた頃の全日本女子と相通じるものがあるし、新人の今西選手はスパイクフォームなどがまるでその頃の大懸選手(現・成田選手)を思い起こさせるものがあるが、せっかく一生懸命ディグを鍛えている割に、ブロックとレシーブ(ディグ)の連携が取れないという、現在の全日本女子にまで脈々と続くある種の「歴史」の原点を見るような気がした、今シーズンのトヨタ車体であった。

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