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2007年12月16日 (日)

レゼンデバレー(第7章)- 新ツーセッターシステム

遅ればせながら、いよいよ今日からワールドカップ男子編に入りたいと思う。勿論のことだが、きちんと(第1章)〜(第6章)までを頭に入れてから読んで頂きたい。

ブラジルはいきなり初戦でアメリカにストレート負けを喫するという、最悪の形でのスタートだったが(そのためか? ジバは2戦目のスペイン戦から、蓄えていた髭をバッサリと剃り落とした)、その後はライバル視されていたブルガリア・ロシアをいずれもストレートではねのけ、大会2連覇を見事に達成した。今大会においても、ブラジル優位の立場が揺るがなかったのはなぜなのか? さらには、そのブラジルを倒すことに成功したアメリカは、どのような戦いぶりを見せたのか? そこに注目して見ていきたいと思う。

アテネオリンピック本番以降、ブラジルはセッターがファーストタッチを行う場合に、セッターはコート中央付近にパスを出して、それをリベロのセルジオがトスアップを行うシステムを採るようになったと(第2章)で既に書いた。これが、ラリー中のトランジションの場面で確率高く高速立体的3Dバレーを繰り出すための鍵であることも、既に書いたとおりなのだが、今大会のブラジルはさらに一歩先に進化していた。実は、セッターがファーストタッチを行う場合に「限った」戦術ではどうやらなくなったようなのだ。

今大会のブラジルの正セッターを務めたマルセロは、特に前衛でブロックに跳んだ直後のトランジションの場面で、トスアップをするために無理にコートの中を走り回ることはあまり見られなかった。リベロのセルジオがファーストタッチを行った場合には、無理にでもトスアップを行いにコートの中を走り回っていたが、それ以外の選手がファーストタッチを行った場合には、むしろ積極的にリベロのセルジオがトスアップを行いにコートの中を走り回っていた。要するに、コート上に常にセッターを務める選手が「2人いる」システム、いわば「ツーセッターシステム」のような形となっていたのだ。しかし、従来の「ツーセッターシステム」がキューバ女子ナショナルチームが伝統的に採っているシステムに代表されるような「6−2システム」であるのに対して、ブラジル男子ナショナルチームの「ツーセッターシステム」は、アタッカーは「5人」でセッターは「2人」であって、「5−2システム」とでも言うべきシステムだ。しかもセッターを務める選手が、ローテーション上の配列において対角には位置していない「2人」となっている。従来の「ツーセッターシステム」である「6−2システム」ではどのローテーションでも常に、セッターを務める選手が1人前衛にいる形となり、このシステムにおいてはセッターを務める選手が攻撃力にも優れていなければならないという点がデメリットとなるのに対して、「5−2システム」ではセッターを務める2人のうちの1人はリベロの選手であって、当たり前だが攻撃力は一切要求されない。それでいて、この "新ツーセッター" システムとも言うべき「5ー2システム」のメリットは何かと言えば、リベロでない方のセッターが前衛の場面で、後衛にもう1人セッターを務める選手がいることによって、ブロックに跳んだ後のトランジションでディグが乱れた場合に、必ずしも自身が無理にセットアップを行いに走らなくても良いのである。無理にランニングセットを上げて、もちろんそれをアタッカーが決めてくれればよいが、(第4章)で書いたとおり、苦しい場面で相手の3枚ブロックをぶち抜ける「スーパーエース」の攻撃力を捨ててまで高速立体的3Dバレーを追求している現在のブラジルにあって、そういった状況では必ずしもアタッカーの決定率が高いとは言えないはずであり、ラリーとなれば今度は素早く相手チームの攻撃に対してブロックシステムを完成させなければならない。前衛のセッターが本来の居場所である前衛ライト側から大きくずれた場所までセットアップのために走り込んでしまえば、当然その直後のブロック参加が遅れてしまう。高速立体的3Dバレーが当たり前となった、現在の世界トップレベルの男子バレー界において、僅かな時間であっても「ブロック参加が遅れる」ことは致命的となりうる。

(第3章)で書いたとおり、ブラジルが高速立体的3Dバレーを確率高く繰り出せる秘訣に、デディケートブロックシステムがある。今大会でもブラジルの徹底したデディケートブロックを崩すことに成功したチームは表れなかった。徹底したデディケートブロックシステムが機能するために、"新ツーセッター" システムは理に適っていたのだ。

さらに、対角に位置していない「2人」にセッターを務めさせる「5−2システム」では、その「2人」ともが後衛のローテーションが存在する。そのローテーションにおいては、「2人」が後衛レフトと後衛ライトを守る。ブラジルが追求する高速立体的3Dバレーにおいては、「スーパーエース」は存在しない。ライトから攻撃を仕掛けるオポジットに配された選手に託された役割は、レフトの選手とちょうど「左右対称」の攻撃を仕掛けることである。相手チームにデディケートブロックをさせないために、攻撃システムを「左右対称」にする以上、「2人」のセッターも「左右対称」に位置するべきであり、従来のセッターの定位置である「後衛ライト」とともに、「後衛レフト」にもセッターを務める選手を守らせる必要があるのだ。(第5章)で書いたとおり、現在のブラジルでは理想的なレセプション・ディグの目標点が、ネット近くの位置ではなく、ネットからやや離れてアタックライン付近にあると想定して各選手がプレーしている(ように見える)。コート中央アタックライン付近にあがった「理想的な」ディグから「左右対称」に高速立体的3Dバレーを展開する、、、そのためにセッターを務める選手が守るべき場所は「後衛ライト」「後衛レフト」と「前衛センター」なのだ。

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