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2007年12月10日 (月)

吉田敏明監督の描く新しいバレースタイル(パイオニア - トヨタ車体・パイオニア - デンソー(その2))

8753さんに頂いたコメントに対するレスで書いたが、やはり今年のパイオニアは、昨年までとは大きくバレースタイルを変えようとしているのが伺えた。

まず、レセプションフォーメーション。これは一言で言えば「ドイツ方式」。即ち、昨年の世界バレーで書いたとおり、リベロに加えて両レフトとオポジットの4人全員がレセプションをこなせる選手であって、試合の各局面において、両レフト・オポジットの3人のうちの誰か1人がレセプションフォーメーションから外れて、バックアタックに備える形である。昨年まではオポジットにはリーが配されており、彼女もレセプションフォーメーションには参加するものの、両レフトのレオ・メグと攻撃面で同じ役割を果たすわけではなかった。しかし、今年の基本となるスタメンでは両レフトにレオ・メグ、オポジットに新外国人のセナが配され、両レフトとオポジットのセナとは、攻撃面では何ら変わらない役割を果たす形であり、だからこそ初戦のトヨタ車体戦では、試合途中でセナがレオと変わってレフトに入ったり、という場面も当たり前のように出てくる。控えにリーがいて、スタメンの誰かが崩れるとレフトであろうとオポジットであろうと彼女が交代で出る(今日のデンソー戦では、途中レオに代わってレフトに配されたため、昨年まででは見られなかった、彼女のパイプ攻撃も見られた)。さらにいざとなれば、同じく控えとしてスーが登場する。彼女だけはレセプションの能力が劣ると見込まれるが、「両レフト・オポジットの3人のうちの誰か1人がレセプションフォーメーションからその都度外れる」方式ならば、彼女がたとえ出ても、バレースタイルは全く変える必要がない(彼女がレセプションフォーメーションから常に外れればいいだけである)。ある意味、レオ・メグ・セナ・リー・スーが「ただのコマ」として扱われる形だ。これこそが、吉田敏明監督が今年のテーマとして掲げた「ある個人に頼ったバレーではなく、全員が勝利に貢献するチーム」の本質の一つであるはずだ。だからこそ、トヨタ車体戦での勝負のかかった第5セットの最後の場面で、監督はレオをスーに代えるという、これまでのパイオニアでは考えられない戦略ですら、採って見せたのだ。

さらにはブロックシステム、及びその後のトランジションの展開。これも劇的なスタイル変更を見せている。ファーストタッチをセッターが行った場面で、今年のパイオニアは、リベロのガッツがトスアップを行うシステムを遂に導入しようとしている。イヤ、実はもっと正確に言えば、「リベロが」ではなく「後衛レフトのポジションを守っている選手が」トスアップを行うシステム、というのが正しいだろう。「後衛レフトのポジション」を守るのが、リベロのガッツであるケースが多いだけで、リベロがコート上にいないケースでは、センターの選手がそのポジションを守っているので、センターの選手がトスアップを行う形となる。トヨタ車体戦を見ていても、それは充分に伺えたのだが、如何せんセッターのユミがテンパりすぎで、上手くシステムが機能していなかった。しかし、ユミに落ち着きが戻ったデンソー戦では、この形が何度となく機能した。もちろん、ガッツはアタックラインを確認しつつ、オーバーハンドパスを用いてトスを上げていた! 基本はライトへの攻撃へトスアップすることが多いものの、時にはパイプ攻撃へ、さらにデンソー戦の第4セットでは(これはアンダーハンドパスだったが)体をトスアップの瞬間に回転させて、レオへ向かってレフトオープンのトスを上げる場面があり、これには私も見ていて不意をつかれた。このシステムがきちんと機能するならば、ラリー中に後衛ライトにいるセッターは、思い切って相手のフェイント攻撃や、ブロックのワンタッチのこぼれ球に飛び込んでいける。第4セット序盤、デンソーにフェイントを散々決められていた場面で、ユミは思いきり飛び込んでいくのを躊躇していたが、監督の指示通りにセット終盤にはトスアップのことは気にせず、思い切り飛び込み、そしてそれをガッツ・ユウ・アサコが見事にトスアップへと繋げた。

もちろん、このトランジションの展開を機能させるためには、ブロックシステムが機能していなければ意味がない。そのために、吉田敏明監督が今年こだわったのは、「両サイドのブロッカーの高さを上げる」ことだったはずだ。パイオニアの場合は、両レフトは高さがあるので問題はライトブロッカーだけ。だからこそ、新外国人選手は上背があって、(レセプションはもちろん)ライトブロッカーをこなせる選手である必要があり、セッターは171cmのユミである必要があったのだ。彼女たちを前にすれば、日本のアタッカーでそうそうストレートを打ち抜く高さがある選手はいないはず。実際、開幕2試合で、相手チームにストレートを打ち抜かれたり、ストレート側にブロックアウトを取られた場面は、悉くライトブロッカーがリーの場面であった(デンソーの細田選手だけには、巧く打ち抜かれていたが・・・どこを抜けていたのか? エンド側で観戦できなかったので、確認できなかった)。その結果が、客観的な数字にも如実に表れた! 開幕2試合で、チーム総ブロック数45本! セット平均5本! しかもセンターブロッカーのアサコ・ユウがそれぞれ12本と15本! 如何に相手チームのウイングスパイカー陣が、ストレートへ打ちあぐねていたかを示すデータと言える。

あぁ・・・ビデオでもう一度見たかったなぁ・・・(涙)
ユウ、この日8本もブロックシャット見せてるのに・・・(大涙)

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コメント

最近このサイトを知り毎日のように拝見させて頂いており初めてコメントさせていただきます。すごく理解しやすくしかも細かにどれも書かれており感心しています。僕はメグを応援というより彼女の将来性と彼女の意志の強さ世界的なプレーヤーになってほしい願望があります。開幕戦ニ試合を見る限りいまひとつ調子が悪いようで残念です。どんどん調子上げてもらってまた全日本へ選ばれた時には誰からも批判されずみんなが納得できるエースへ成長する事を願ってます。

投稿: 祐一 | 2007年12月10日 (月) 19時14分

>もっと正確に言えば、「リベロが」ではなく「後衛レフトのポジションを守っている選手が」トスアップを行うシステム
 あっ、そういうことなのですか。うーむ、ロジカル。

 それなりのプレイヤーを集めて個々の力量を発揮させるだけの合奏ではなく、ちゃんと楽譜と指揮者の意思が根底にあってその調和の中で各プレイヤーのイマジネーションが活かされるスタイルなのかな。完成度が上がっていくのが楽しみです。

 それにしてもブロックが凄いですよね。初戦はライヴスコアを見ていて、あんまりバンバン決まるものだから「全日本と戦っているのかしら?」と思ってしまい・・・。2戦目はテレビを見ましたけれど、いやホントに凄い。ブロック決定本数だけでなくワンタッチも相当な割合で取って。あとはアタック決定率ですかね。

投稿: one of No.33 | 2007年12月11日 (火) 00時42分

こんばんは。デンソー戦をTVで観ていて、何かこう昨年までのイメージと違うな、とおぼろげに感じていたのですが、、なるほどそういうこと(ご解説どおり)だったのですね!すっきりしました。
それにしても、多治見、庄司、栗原は長い間チームにいなくて、かつ戻って日も浅いのに実際に実践で使えるものなんですね。ただたぶんまだ完成の域にはないのでしょうから、今から精度が上がってくるのが楽しみです。&個人的には小濱さん、応援したいと思います。
他チームの戦術も解説いただけるとうれしいです。
私は素人でよく分からないのですが、NEC、JTの試合は面白みに欠けました。JTがもろかったから、というだけでなく、NECのバレーもつまらなく映りました。この2チームはどういう指向のバレーを目指していると思われますか?

投稿: okutatsu | 2007年12月12日 (水) 01時52分

>祐一さん

レスが大変遅くなり、申し訳ありません m(_ _)m

私も別に「ファン」という意味ではなく、やはり今の女子バレー界の中での貴重な存在として、メグに期待をかけて見ている一人です。開幕2戦を見る限り、彼女の疲れは相当なものに見えました。パイオニアでトレーニングをしながら、少しずつコンディションを整えていってもらいたいですね。レオも故障上がりのようですし、その意味でも今年の吉田監督の戦略は「どのスター選手にも頼らない」バレーですから、コンディションという意味では、みんなリーグ終盤に向けて揃ってくると期待しています。

投稿: T.w | 2007年12月23日 (日) 13時57分

>one of No.33さん

>あんまりバンバン決まるものだから「全日本と戦っているのかしら?」と思ってしまい・・・

ははは(笑)、いい喩えですねぇ。確かに今年のトヨタ車体は、ある意味全日本のコピーのように、両サイドの「早くて低い」トス回しを徹底していますからね。完成度は高いけれども、結局限界がある・・・国内でも被ブロック率が高い、まるで全日本です。ホントに。

投稿: T.w | 2007年12月23日 (日) 16時04分

>okutatsuさん

初めまして、本当にレスが遅くて申し訳ございません m(_ _)m

>多治見、庄司、栗原は長い間チームにいなくて、かつ戻って日も浅いのに実際に実践で使えるものなんですね。

個人的には、庄司が全日本と違ってノビノビとプレーしているように見えるのが印象的です。これは全日本ではプレッシャーがどうとかそういうことではなく、恐らく彼女の持ち味が全日本の今の戦術・スタイルでは発揮できないからだと思います。ネット際にボールが上がったりした際にはトスを上げに行きたいだろうのに、全日本だと体をよけて邪魔にならないようにと窮屈に振る舞ってますからねぇ(苦笑)。

>他チームの戦術も解説いただけるとうれしいです。
私は素人でよく分からないのですが、NEC、JTの試合は面白みに欠けました。

まだまだ頭の中がワールドカップ男子モードから抜けきれていないので、V・プレミアの各チームの戦術については、年明け1レグ終わる頃にでも一度まとめて書いてみたいと思いますので、もうすこーし首を長くして(笑)お待ちください。

投稿: T.w | 2007年12月23日 (日) 21時43分

  高く即ぃバレィ…って、北米
 型ッテよりも『中米』近似型?

  ま。何処の真似でも構わぬ故
 先ず『全勝』を…で、差当たり
 次サイクル以降は永く『勝利』
 を丈、続けて魅せて欲しい。


  …ま。他軍噺ん為るが『女子
 ・JT』も「一柳昇」を生前葬
 して寺廻に挿げ替えて苦労して
 イナカッタ訳では無い様だ…?

投稿: 湘南古里。 | 2007年12月24日 (月) 17時05分

こんばんは。初めまして。
私はまるっきりの素人なので、こちらのブログでいつも勉強させてもらっています。
もうご存じかもしれませんが、NumberWebで久光のブロックに関して興味深い記述があったので、今期の各チームの戦術をまとめる際になにか参考になればな、と思い投稿させていただきました。
http://number.goo.ne.jp/others/volleyball/20080414-1-1.html

これからも更新楽しみにしています。
のんびりと待たせていただきます(笑)

投稿: ハス | 2008年4月18日 (金) 00時11分

>ハスさん

初めまして。
NumberWebは、第3回のシンデレラ記事以来、時々見てはいますが、今回の記事は見ておりませんでした。っていうか、定期的に毎月出ているようですね、気づきませんでした(苦笑)。

恐らく記事の内容から察するに、決していわゆる「えせリードブロック」を採用したということではなく、データバレーを重視して例えば各ローテーション毎で相手チームのレセプションの返る位置によって、相手セッターがどこへトスアップする確率が高いかということを頭に入れて、バンチ・リードを採るかそれともマンツーマン・コミットに切り替えるか? といったことを試合の各局面毎に判断していた、という意味だと解釈します。実際、パイオニアとの対戦では、同じことを考える監督同士で、ブロックシステムとスパイクコンビネーションを両チームが駆け引きを行っている様子が、ものすごくうかがえました。

久光については、今年は最後にまとめはしませんでした・・・その時間的・精神的余裕がなくて、、、申し訳ありません。教えて頂いた記事を参考にして、もう一度ビデオでの今シーズンの久光の戦いぶりを見直してみたいと思います。ありがとうございました。

投稿: T.w | 2008年4月29日 (火) 23時41分

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