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2007年12月28日 (金)

レゼンデバレー(第9章)- 続・スタートローテーションのトレンド

世界バレーで「宿題にする」と公言しながら、(第6章)でまとめきれずに終わった「現在の男子バレーの戦術のトレンド」としてのスタートローテーション。今回のワールドカップまで見終わって、ようやく見えてきたことがある。

これまで何度も書いてきたとおり、スタートローテーションに関する戦術としては、自チームがレセプションからスタートするセットとサーブからスタートするセットで、スタートローテーションを変えない戦術と1つ回す戦術がある。前者を採る場合には、自チームがレセプションからスタートするセットとサーブからスタートするセットで、自チームのサーブ順が変わる(レセプションからスタートするセットでは、スタートローテーションで前衛ライトに位置する選手が最初のサーバーとなり、サーブからスタートするセットでは、スタートローテーションで後衛ライトに位置する選手が最初のサーバーとなる)。一方レセプションに関しては、どちらのセットでも常に、スタートローテーションでのレセプションフォーメーションから始まることになるので、この戦術を採るメリットは、スタートローテーションの1つ前のローテーションでのレセプションの機会を最小限にできるという点が挙げられ、従って、6つある各ローテーションの中で極端にサイドアウト率が低いローテーションがあるチームに適した戦術と言える。(第6章)で書いたとおり、昨年のワールドリーグ頃までのブラジルは、この戦術を採用してオポジットのアンドレが前衛レフトに位置するレセプションフォーメーションが常に最後に回ってくるようにしているケースが目立った。一方、後者を採る場合には、常にスタートローテーションで前衛ライトに位置する選手が最初のサーバーとなり、自チームに群を抜いて強力なサーバーがいる、即ち、6つある各ローテーションの中で極端にブレイク率が高いローテーションがあるチームに適した戦術と言える。今大会でブラジルから唯一勝ち星を奪ったアメリカは、ブラジル戦に限ってファーストサーバーが常にスタンリーとなるような戦術を採り、それによってブラジルの頑丈なレセプションを崩すことに見事に成功した。また後者は「相手チームがスタートローテーションを変えない」という前提において、常に同じサーバーが相手の同じレセプションフォーメーションと相対することが可能となるため、ブロックシステムの戦略などで相手チームとのマッチアップを重視する場合に有利となる戦術でもある。もちろん、相手チームのスタートローテーションを想定した上での戦術と言え、これについては東レアローズ男子の小林敦コーチのブログ『排球参謀』記事の中でも取り上げられている。


相手のスタートローテーションを知った上で、自チームのスタートローテーションを決める事が出来れば良いのですが、メンバー表提出のタイミングなどを考えると不可能に近いと思います。

ですから、基本的には相手のスタートローテションを予測して、そのスタートローテーションに対応した自チームのスタートローテションを決める事になります。
結論としては「監督の駆け引き」にかかるという事です。

相手のデータが揃った段階では、この予測が当たるケースも増えますが、基本的には5/6でハズれるわけですから、あまりにもスタートローテーションに依存した戦術を組み立てる事は危険を伴います。

そのような理由から、
相手に対応したスタートローテションを組むチームより、自チームの強みを最大限に活かそうとするスタートローテションを組むチームが多いような気がします。


現在のV・プレミアリーグにあっては(特に女子で顕著だが)、(第6章)で書いた従来の「常識」である、オポジットの選手が前衛レフト(=セッターが後衛ライト)のローテーションからスタートするチームがほとんどである。『自チームの強みを最大限に活かす』とは、裏を返せば「自チームの弱点を最小限にする」という意味でもあり、即ち現在のV・プレミアリーグにあっては、セッターが前衛であるローテーションでのサイドアウト率が極端に低いということを各チームが暗に認めてしまっているわけである。従って、V・プレミアリーグにあっては、相手チームのスタートローテーションを予測することは(特に女子では)実際には比較的容易なはずだ。

一方、世界のトップレベルの男子バレー界にあっては、(第6章)で書いたとおり従来の「常識」のスタートローテーションは見られなくなっている。その理由も(第6章)で書いたとおりだが、そうなると確かに『相手のスタートローテーションを知った上で』ということにはならないので、『自チームの強みを最大限に活かし』て、常に自チームのサイドアウト率が強いローテーションからスタートする、あるいは、常に自チームのブレイク率が強いローテーションでのサーバーがファーストサーバーとなるようにスタートローテーションを「1つ回す」ということになりそうだが、今大会を見ていると実際にはそうはなっていないのだ。例えば、今大会でのブラジルは、試合毎にスタートローテーションを大きく変えており、さらに1試合の中でも各セット毎に「不規則に」スタートローテーションを変えていた。そこには「レセプションからスタートするセットに対して、サーブからスタートするセットでローテーションを1つ回す」といった「規則性」すらも存在しなかった。さらに言えば、他の強豪国、、、ブルガリアやアメリカも同様だった(今大会のアメリカが従来の「後者」の戦術を採用していたのは、ブラジル戦に限っての話だ)。

ここで思い出すのが、今大会で見事に優勝を飾った女子イタリアチームのバルボリーニ監督の採ったスタートローテーションの戦術だ。ブラジル戦で書いたように、彼は従来のスタートローテーションに関する戦術では説明ができない、「不規則な」変化をみせた。その時点では私にはよく理解できなかったが、要するに彼が採ったスタートローテーションの戦術こそが、現在の世界の男子バレー界でトレンドとなりつつある戦術なのかもしれないのだ。この戦術を理解するためには、恐らくデータも取らずにただ漠然と試合のビデオを一介のファンが眺めているだけでは不可能であろう。恐らくは試合中にリアルタイムに、アナリストが前セットでの自チーム及び相手チームのスタートローテーションから、全てのマッチアップを割り出してそこにその日の各選手の調子やトスの配分などのデータが加えられ、それが監督にフィードバックされているのだろうと推測する。あるいは、相手チームのアナリストにデータを割り出されないように、攪乱する意味合いでスタートローテーションを変化させるのかもしれない。

ということは即ち、現在のトップレベルの男子バレー界にあっては、試合中・各セット中に如何に「迅速に」アナリストが監督にデータをフィードバックできるか? そして、それを試合中・各セット中に如何に「的確に」監督が各選手に伝えることができるか? それが勝負の大きな鍵を握っていると言えるはずだ。やはりアナリストの高い能力、及びレゼンデ監督の試合中の的確な判断能力が、現在のブラジル男子ナショナルチームの黄金時代を支えていると言って過言でないであろう。

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