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2007年12月31日 (月)

日本の男子バレーに未来はあるのか?

本年も、当サイト・ブログにお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
年内最後のアップとなりますので、出来れば暗い話題は避けたかったのですが、、、


29日に昨年同様、高校のOB会でバレーをしてきました。今回はバレーだけでなく夜の飲み会の方にも久々に参加することができ、楽しいひとときを過ごしましたが、そこで現・顧問の先生から思いがけない一言が、、、


・・・今回(の春高バレー)はくじ運も良くて、うまく行けば決勝まで行ける可能性もあるんで、そうしたらテレビに映りますから(期待していて下さい)・・・


えぇぇぇ、マジですか?! まぁ、もし本当にそうなったら、「OBとしては」喜ばしい限りなんですけど、確かに。

でも、ち、ちょっと待って下さいよ。あの程度で春高バレーの県予選決勝まで行けちゃうんですか? OB会でのバレーで現役生達とも一緒にプレーさせてもらいましたけど、ゲーム始める前に現役生とOBとの間でのサイン確認をやってみたら、「えーっと、サインですか? A(クイック)がこれ、Bがこれ、Cがこれ、オープンがこれ、(レフト)平行がこれ、前セミがこれ、バックセミがこれ、ですけど。」って現役生に言われて、「えっ?! じゃあ、バック平行(のサイン)は?」と聞くと、、、


・・・そんなものはありません・・・


「じゃあ、流れ(AクイックからCクイックへの一人時間差)は? パイプは?」と、ちょっと意地悪に聞いてみると、、、


・・・(無言)・・・


ま、最初からその程度だろうとは予想はしてましたけど、、、私が現役だった15年以上も前の時代と比べても、サインの数も圧倒的に減ってます。スパイク練習をしていても、レフト平行のトスを要求したら(何も特別な注文をしなければ)オープントスが上がってきます。残念ですが、それが現実です。


この15年の間に、世界のバレー戦術はどれ程に進化を遂げたのでしょうか? 「レゼンデバレー」からわかるとおり、世界のトップレベルのバレー戦術は1年1年ですら着実に進化を遂げているわけですから、15年もの年月が経てば、大人と子供ほどに違ってくることは想像に難くないでしょう。なのに、なのに、日本の高校男子バレーの世界はと言えば、、、そんなものなのです。15年以上前の高校生が当時やっていたバレーの方が、よっぽど高度なことをやっていたのです。


それが、「うまく行けば決勝まで行ける」かも、ですって?!


現在、奈良市で男子バレー部のある(大会に出場する)中学は、何と8校を切っているそうです。奈良県全体でも20校もないと。私が高校生の頃から、確かに奈良県は全国的に見てもレベルが低いです。中学は菟田野・上牧の奈良県2中学で全国大会での優勝を争ったこともある位にレベルが高かったですが、(現在もV・プレミアで活躍する、パナソニックの川村選手や久保選手がそうであるように)有望な人材はこぞって、高校からは他府県へと流出してしまいました。そして今は、レベルがどうのこうのという前に、そもそもバレーをやっている男子高校生がほとんどいない、ということです。さらには、15年以上前の高校生が当時やっていたバレーよりも低いレベルで、それで県の決勝まで行けるかもしれないという状況は、「OBとしては」喜ばしくても「一人のバレーファンとしては」憂うべき事態としか言いようがありません。

本当に、いい加減真剣に何かを変えなければ、日本の男子バレーは終わってしまいます。
いい加減「富士山方式」( → 詳細は『千酔亭日乗』こちらの記事を参照下さい)などというバカげた発想は捨てて、地に足をつけて動き出してもらいたい。イヤ、そうやってバレー狂会に任せているようではそもそもダメで、ファンの一人一人が具体的に行動を起こさなければいけないのかもしれない。私も来年は、何か具体的に、今の日本のバレー界に出来ることがないか? それを真剣に考えていきたいと思っています。

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レゼンデバレー(第10章)- 死角はないのか?

レゼンデバレーの締めくくりとして、このテーマを掲げてみたいと思う。もちろん、私のような一介のファンに「どうやったらブラジルに勝てるか?」などという大それた戦略など立てられるはずもない。ただ、今大会では実に久しぶりに、目の前で(正確には、テレビの前で)ブラジルが負ける瞬間を目にするという、ある意味「貴重な」体験をすることが出来た(昨年の世界バレーでもブラジルは1次予選でフランスに敗れているが、確かその試合はスカパーでも中継がなかった)わけなので、その「貴重な」ブラジルの負けゲームとなった、今大会のアメリカ戦を分析してみたいと思う。

(第9章)で書いたとおり、この試合でのアメリカのスタートローテーションの戦術は、レセプションからスタートするセットに対してサーブからスタートするセットでスタートローテーションを「1つ回し」て、常にスタンリーのサーブから始まるようにするという、「従来の」戦術であった。これは誰でも(どこの国でも)考えることであろうが、ブラジルのあの高速立体的3Dバレーを切り崩すためには、強烈なスパイクサーブを見舞うのが最も近道であり、世界でも屈指のスパイクサーブを打てるスタンリーのサーブが回ってくる機会を最大限にしたいというヒュー・マッカーチョン監督の意図は、実に単純明快であった。そしてそれは、第1セットから見事にハマった。(第8章)で書いたとおり、セット序盤こそブラジルペースで試合が進んだが、マルセロの両サイドへのトスが「低くて早い」トスになったのに乗じて、まずダンテを潰し、続いてアンドレを潰した。それで逆転に成功したアメリカは、セット終盤に追いつかれてジュースに持ち込まれたが、その緊迫の競り合いの中でヒュー・マッカーチョン監督の「狙い通り」26-26の場面でスタンリーのサーブが回ってきて、そして彼は見事に連続サービスエースを決めたのだった。

第2セット、ブラジルはスタートローテーションを変化させてきた。もちろん、スタンリーのサーブの場面でのサイドアウト率を上げるためだったのだろうが、結局スタート早々から前セット最後の余韻を引くかのように、アメリカが連続得点を稼いで主導権を握る。しかし、ブラジルも易々とは引き下がらない。第1セットで両サイドの高速平行をアメリカのブロック陣に悉く押さえ込まれたことからわかるように、アメリカのブロック陣が「スプレッド」となっているところで、マルセロは高速パイプを多用し始め、それでブラジルが流れを掴んでセット中盤で逆転、21-17とリードしてセット終盤を向かえる。ところが、この劣勢の場面でアメリカのブロック陣は、非常に柔軟なブロックシステムを敷き始める、、、ブラジルのレセプションが返る位置(=セッターがトスアップを行う位置)によって、ブロックシステムをその都度切り替え始めたのだ。恐らくはこの日のアメリカのアナリストのはじき出した「データ」からは、ブラジルのセッター・マルセロがアタックライン付近からセンターの速攻を使おうとしていないことが十分に伺えたと推測する。実際、ブラジルのレセプションが理想的な場所に上がるとサイドブロッカーはスプレッドに構え、センターブロッカーはコミットで速攻に跳ぶ。レセプションが乱れると、バンチで構えて高速パイプか両サイドの平行をマークする、、、それが24-23とブラジルのセットポイントの場面で、アンドレのライトからのバックアタックに3枚ブロックが完成してシャット・26-25の場面の同じくブラジルのセットポイントの場面で、ジバの高速レフト平行に2枚ブロックが完成してシャット・28-28の場面で、アンドレの高速レフト平行に2枚ブロックが完成してシャットする結果を生み、最後はレセプションがきちんと入った場面でのロドリゴの速攻に、リーがコミットで1枚でシャットして、2セット連続でジュースの死闘をものにする結果を生んだ。逆にブラジルは、アメリカのセッター・ボールがアタックライン付近からセンターの速攻を多用するために、そういったブロックシステムの「瞬時の」切り替えは出来ない戦いを強いられた。

第3セット、ブラジルはまたまたスタートローテーションを変化させる。一方のアメリカはスタンリーのサーブから始まるのは同様。2セット連取した勢いも重なり、アメリカのスパイクサーブはスタンリーのそれだけに限らず、ますます勢いが出始める。追い込まれたレゼンデ監督はたまらずアンドレを「スーパーエース」のアンデルソンに交代。レセプションが乱れて高速立体的3Dバレーを繰り出せない苦しい場面を、彼が何とか切って、セット中盤までは競る展開となるが、セット終盤にはダンテもジバも高速パイプに切り込んで行けないほどにレセプションを崩され、ダンテもムーリオと交代させられる。その代わったムーリオも崩され、それで勝負あり。最後は、ブラジルとは思えないようなミスの連続で自滅。ブラジルの選手達も人の子だったんだと再確認(苦笑)。

やはり、勝敗を分けたのは第2セット終盤の攻防だったと思う。(第9章)で書いたとおり、試合中・各セット中に如何に「迅速に」アナリストが監督にデータをフィードバックできるか? そして、それを試合中・各セット中に如何に「的確に」監督が各選手に伝えることができるか?、、、この日に限っては、この点が明らかにアメリカに軍配が上がったと言える。さらには、その背景となったのが、アタックライン付近からセンターの速攻を使う能力、、、これもアメリカのセッター・ボールの方が上だった。アタックライン付近から高速立体的3Dバレーを繰り出すのがレゼンデバレーの中核となる戦術だが、このアメリカ戦を見る限りは、センターの速攻にトスアップする能力にリカルドとマルセロの差を見た気がする。今後ひょっとすると、「アタックライン付近から如何にセンターの速攻を使えるか?」が世界のトップレベルの男子バレー界にあっての大きな鍵になってくるかもしれない。この点を来年のオリンピックに向けて、注目してみていきたいと思う(rioさんの『ベリーロールな日々』でも、この点は盛んに取り上げられていた。)


さぁ、これで晴れて年明けからは頭を切り換えて、V・プレミアモードへ突入できる・・・と思ったら、天皇杯・皇后杯があるのね、、、なんて中途半端な時期に作ったんだろう(苦笑)。

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2007年12月28日 (金)

レゼンデバレー(第9章)- 続・スタートローテーションのトレンド

世界バレーで「宿題にする」と公言しながら、(第6章)でまとめきれずに終わった「現在の男子バレーの戦術のトレンド」としてのスタートローテーション。今回のワールドカップまで見終わって、ようやく見えてきたことがある。

これまで何度も書いてきたとおり、スタートローテーションに関する戦術としては、自チームがレセプションからスタートするセットとサーブからスタートするセットで、スタートローテーションを変えない戦術と1つ回す戦術がある。前者を採る場合には、自チームがレセプションからスタートするセットとサーブからスタートするセットで、自チームのサーブ順が変わる(レセプションからスタートするセットでは、スタートローテーションで前衛ライトに位置する選手が最初のサーバーとなり、サーブからスタートするセットでは、スタートローテーションで後衛ライトに位置する選手が最初のサーバーとなる)。一方レセプションに関しては、どちらのセットでも常に、スタートローテーションでのレセプションフォーメーションから始まることになるので、この戦術を採るメリットは、スタートローテーションの1つ前のローテーションでのレセプションの機会を最小限にできるという点が挙げられ、従って、6つある各ローテーションの中で極端にサイドアウト率が低いローテーションがあるチームに適した戦術と言える。(第6章)で書いたとおり、昨年のワールドリーグ頃までのブラジルは、この戦術を採用してオポジットのアンドレが前衛レフトに位置するレセプションフォーメーションが常に最後に回ってくるようにしているケースが目立った。一方、後者を採る場合には、常にスタートローテーションで前衛ライトに位置する選手が最初のサーバーとなり、自チームに群を抜いて強力なサーバーがいる、即ち、6つある各ローテーションの中で極端にブレイク率が高いローテーションがあるチームに適した戦術と言える。今大会でブラジルから唯一勝ち星を奪ったアメリカは、ブラジル戦に限ってファーストサーバーが常にスタンリーとなるような戦術を採り、それによってブラジルの頑丈なレセプションを崩すことに見事に成功した。また後者は「相手チームがスタートローテーションを変えない」という前提において、常に同じサーバーが相手の同じレセプションフォーメーションと相対することが可能となるため、ブロックシステムの戦略などで相手チームとのマッチアップを重視する場合に有利となる戦術でもある。もちろん、相手チームのスタートローテーションを想定した上での戦術と言え、これについては東レアローズ男子の小林敦コーチのブログ『排球参謀』記事の中でも取り上げられている。


相手のスタートローテーションを知った上で、自チームのスタートローテーションを決める事が出来れば良いのですが、メンバー表提出のタイミングなどを考えると不可能に近いと思います。

ですから、基本的には相手のスタートローテションを予測して、そのスタートローテーションに対応した自チームのスタートローテションを決める事になります。
結論としては「監督の駆け引き」にかかるという事です。

相手のデータが揃った段階では、この予測が当たるケースも増えますが、基本的には5/6でハズれるわけですから、あまりにもスタートローテーションに依存した戦術を組み立てる事は危険を伴います。

そのような理由から、
相手に対応したスタートローテションを組むチームより、自チームの強みを最大限に活かそうとするスタートローテションを組むチームが多いような気がします。


現在のV・プレミアリーグにあっては(特に女子で顕著だが)、(第6章)で書いた従来の「常識」である、オポジットの選手が前衛レフト(=セッターが後衛ライト)のローテーションからスタートするチームがほとんどである。『自チームの強みを最大限に活かす』とは、裏を返せば「自チームの弱点を最小限にする」という意味でもあり、即ち現在のV・プレミアリーグにあっては、セッターが前衛であるローテーションでのサイドアウト率が極端に低いということを各チームが暗に認めてしまっているわけである。従って、V・プレミアリーグにあっては、相手チームのスタートローテーションを予測することは(特に女子では)実際には比較的容易なはずだ。

一方、世界のトップレベルの男子バレー界にあっては、(第6章)で書いたとおり従来の「常識」のスタートローテーションは見られなくなっている。その理由も(第6章)で書いたとおりだが、そうなると確かに『相手のスタートローテーションを知った上で』ということにはならないので、『自チームの強みを最大限に活かし』て、常に自チームのサイドアウト率が強いローテーションからスタートする、あるいは、常に自チームのブレイク率が強いローテーションでのサーバーがファーストサーバーとなるようにスタートローテーションを「1つ回す」ということになりそうだが、今大会を見ていると実際にはそうはなっていないのだ。例えば、今大会でのブラジルは、試合毎にスタートローテーションを大きく変えており、さらに1試合の中でも各セット毎に「不規則に」スタートローテーションを変えていた。そこには「レセプションからスタートするセットに対して、サーブからスタートするセットでローテーションを1つ回す」といった「規則性」すらも存在しなかった。さらに言えば、他の強豪国、、、ブルガリアやアメリカも同様だった(今大会のアメリカが従来の「後者」の戦術を採用していたのは、ブラジル戦に限っての話だ)。

ここで思い出すのが、今大会で見事に優勝を飾った女子イタリアチームのバルボリーニ監督の採ったスタートローテーションの戦術だ。ブラジル戦で書いたように、彼は従来のスタートローテーションに関する戦術では説明ができない、「不規則な」変化をみせた。その時点では私にはよく理解できなかったが、要するに彼が採ったスタートローテーションの戦術こそが、現在の世界の男子バレー界でトレンドとなりつつある戦術なのかもしれないのだ。この戦術を理解するためには、恐らくデータも取らずにただ漠然と試合のビデオを一介のファンが眺めているだけでは不可能であろう。恐らくは試合中にリアルタイムに、アナリストが前セットでの自チーム及び相手チームのスタートローテーションから、全てのマッチアップを割り出してそこにその日の各選手の調子やトスの配分などのデータが加えられ、それが監督にフィードバックされているのだろうと推測する。あるいは、相手チームのアナリストにデータを割り出されないように、攪乱する意味合いでスタートローテーションを変化させるのかもしれない。

ということは即ち、現在のトップレベルの男子バレー界にあっては、試合中・各セット中に如何に「迅速に」アナリストが監督にデータをフィードバックできるか? そして、それを試合中・各セット中に如何に「的確に」監督が各選手に伝えることができるか? それが勝負の大きな鍵を握っていると言えるはずだ。やはりアナリストの高い能力、及びレゼンデ監督の試合中の的確な判断能力が、現在のブラジル男子ナショナルチームの黄金時代を支えていると言って過言でないであろう。

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2007年12月24日 (月)

レゼンデバレー(第8章)- リカルド抜きで戦う術

(第5章)で私は、ブラジルの現在の高速立体的3Dバレーになくてはならないのがセッターのリカルドのセットアップ能力であると書いた。彼がアタックライン付近から両サイド及びパイプへ寸分狂いなく「高くて早い」トスを上げる能力を持っていることこそが、ここ最近のブラジルの黄金時代を支えている最大の要因であると恐らく誰もが思っていただろう。その意味で、今大会リカルドが来日しなかったことが、ブラジルのバレーにとってどう影響するのか? バレーファン誰もが注目していたと思う。

その注目の中、開幕した今大会初戦でアメリカと対戦したブラジル。第1セット中盤まではアメリカに付け入る隙を全くみせなかったが、セット中盤に今大会での正セッターを務めたマルセロの両サイドへのトスが、悉く「低くて早い」トスとなったところを、アメリカのブロック陣にまともに捕まえられた、、、まずダンテが潰され、続いてアンドレが潰された。これがアメリカに付け入る隙を与える契機となってしまった。

結局ストレートで敗戦を喫したブラジルを見て、やはりリカルドがいなければ、ブラジルの高速立体的3Dバレーの質は低下してしまうのか? と感じた私だったが、この時点で私は、レゼンデ監督が今大会(第7章)で書いた「新ツーセッターシステム」とも言える「5−2システム」を採ろうとしていることにまだ気がついていなかった。そう、恐らくレゼンデ監督は、リカルドが最も資質を備えたセッターであることをよくよく理解していながら、必ずしも彼がいなくても現在のブラジルのバレースタイルが維持できる方法を模索していたのだ。コートの中9m×9mすべてを1人のセッターがカバーするのではなく、アタックラインよりネットよりの限られた範囲をマルセロに任せ、アタックラインよりエンドラインよりの範囲についてはリベロのセルジオとマルセロの2人でカバーする・・・もちろん、リベロのセルジオの高い身体能力があるからこそと言えるわけだが、レゼンデ監督は遂に、リカルドという "唯一無二の" セッター抜きでも(100%ではなくとも)ある程度の質の高速立体的3Dバレーを繰り出せるという戦術を編み出したと言えるだろう。それが、今大会での2連覇達成という形で結実した。特に、2戦目以降はブルガリアやロシアといったライバルの強豪国を全く寄せ付けない戦いぶりだった。コート中央付近から高速立体的3Dバレーを繰り出すという極めて高度な戦術も、コート内に「ある程度」高い能力を備えたセッターが2人いれば容易になる。逆にセッターが2人いるからこそ、理想的なレセプション・ディグの目標点は必ずしもネット際の狭い範囲ではなく、コート中央付近で構わない。コート中央付近にレセプション・ディグを上げれば十分であるから、各レシーバーの精神的負担は軽くなり、レセプション・ディグ直後の攻撃参加も容易となる。そうすれば、レセプションの場面であれトランジションの場面であれ、確率高く「常にアタッカー4枚での」高速立体的3Dバレーを展開できる。高速立体的3Dバレーを展開できないような苦しい場面では、前衛セッターが無理にコート中央付近まで走り込んでランニングセットを上げることはせずに、後衛にいるリベロがトスアップを行う。それで自チームの攻撃が決まらなくとも、直後の相手チームのトランジションでの攻撃に備えて前衛セッターにブロックに集中させることで、ブロックシャットあるいはワンタッチを確率高く取って、そして次のトランジションで高速立体的3Dバレーを繰り出せば良い。そうすれば、苦しい場面で相手の3枚ブロックをぶち破るスーパーエースは必要なくなるし、各アタッカーも「自分がここで決めなければ・・・」という精神的プレッシャーも軽くなる・・・これらは全て好循環に繋がるのだ。

自動車はハンドル操作に「あそび」をもたせることで、安定した高速走行を可能にしている。常に100%を追求して練習することは必要なことだが、敢えて「100%でなくても構わない」ための戦術を採ることは、チームプレーに「余裕」を与える。ロシアやブルガリアやアメリカといった、今大会ブラジルのライバルと思われた強豪国を見ていると、確かに各国とも着実にブラジルの戦術を採り入れ、一つ一つのプレーでは例えばカジースキの高速パイプ攻撃や高速レフト平行などは、ダンテやジバのそれよりも高さもパワーも勝っていると思える位なのだが、それがブラジルを相手にすると、なぜかチーム全体にプレーの「余裕」がなくなって、ミスで自滅してしまうのだ。それに対して、"唯一無二の" セッターであるリカルド抜きでも(100%でなくとも)ある程度の質の高いバレーを繰り出す術を見いだした今大会のブラジルを見ていると、資質を備えた選手が揃った中で敢えて「100%でなくても構わない」ための戦術を採ることが、チームプレーにいわば「あそび」をもたらしているように思える。だからこそ、世界3大大会5連覇という安定した「高速走行」を可能にしたと言えるだろう。

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2007年12月16日 (日)

レゼンデバレー(第7章)- 新ツーセッターシステム

遅ればせながら、いよいよ今日からワールドカップ男子編に入りたいと思う。勿論のことだが、きちんと(第1章)〜(第6章)までを頭に入れてから読んで頂きたい。

ブラジルはいきなり初戦でアメリカにストレート負けを喫するという、最悪の形でのスタートだったが(そのためか? ジバは2戦目のスペイン戦から、蓄えていた髭をバッサリと剃り落とした)、その後はライバル視されていたブルガリア・ロシアをいずれもストレートではねのけ、大会2連覇を見事に達成した。今大会においても、ブラジル優位の立場が揺るがなかったのはなぜなのか? さらには、そのブラジルを倒すことに成功したアメリカは、どのような戦いぶりを見せたのか? そこに注目して見ていきたいと思う。

アテネオリンピック本番以降、ブラジルはセッターがファーストタッチを行う場合に、セッターはコート中央付近にパスを出して、それをリベロのセルジオがトスアップを行うシステムを採るようになったと(第2章)で既に書いた。これが、ラリー中のトランジションの場面で確率高く高速立体的3Dバレーを繰り出すための鍵であることも、既に書いたとおりなのだが、今大会のブラジルはさらに一歩先に進化していた。実は、セッターがファーストタッチを行う場合に「限った」戦術ではどうやらなくなったようなのだ。

今大会のブラジルの正セッターを務めたマルセロは、特に前衛でブロックに跳んだ直後のトランジションの場面で、トスアップをするために無理にコートの中を走り回ることはあまり見られなかった。リベロのセルジオがファーストタッチを行った場合には、無理にでもトスアップを行いにコートの中を走り回っていたが、それ以外の選手がファーストタッチを行った場合には、むしろ積極的にリベロのセルジオがトスアップを行いにコートの中を走り回っていた。要するに、コート上に常にセッターを務める選手が「2人いる」システム、いわば「ツーセッターシステム」のような形となっていたのだ。しかし、従来の「ツーセッターシステム」がキューバ女子ナショナルチームが伝統的に採っているシステムに代表されるような「6−2システム」であるのに対して、ブラジル男子ナショナルチームの「ツーセッターシステム」は、アタッカーは「5人」でセッターは「2人」であって、「5−2システム」とでも言うべきシステムだ。しかもセッターを務める選手が、ローテーション上の配列において対角には位置していない「2人」となっている。従来の「ツーセッターシステム」である「6−2システム」ではどのローテーションでも常に、セッターを務める選手が1人前衛にいる形となり、このシステムにおいてはセッターを務める選手が攻撃力にも優れていなければならないという点がデメリットとなるのに対して、「5−2システム」ではセッターを務める2人のうちの1人はリベロの選手であって、当たり前だが攻撃力は一切要求されない。それでいて、この "新ツーセッター" システムとも言うべき「5ー2システム」のメリットは何かと言えば、リベロでない方のセッターが前衛の場面で、後衛にもう1人セッターを務める選手がいることによって、ブロックに跳んだ後のトランジションでディグが乱れた場合に、必ずしも自身が無理にセットアップを行いに走らなくても良いのである。無理にランニングセットを上げて、もちろんそれをアタッカーが決めてくれればよいが、(第4章)で書いたとおり、苦しい場面で相手の3枚ブロックをぶち抜ける「スーパーエース」の攻撃力を捨ててまで高速立体的3Dバレーを追求している現在のブラジルにあって、そういった状況では必ずしもアタッカーの決定率が高いとは言えないはずであり、ラリーとなれば今度は素早く相手チームの攻撃に対してブロックシステムを完成させなければならない。前衛のセッターが本来の居場所である前衛ライト側から大きくずれた場所までセットアップのために走り込んでしまえば、当然その直後のブロック参加が遅れてしまう。高速立体的3Dバレーが当たり前となった、現在の世界トップレベルの男子バレー界において、僅かな時間であっても「ブロック参加が遅れる」ことは致命的となりうる。

(第3章)で書いたとおり、ブラジルが高速立体的3Dバレーを確率高く繰り出せる秘訣に、デディケートブロックシステムがある。今大会でもブラジルの徹底したデディケートブロックを崩すことに成功したチームは表れなかった。徹底したデディケートブロックシステムが機能するために、"新ツーセッター" システムは理に適っていたのだ。

さらに、対角に位置していない「2人」にセッターを務めさせる「5−2システム」では、その「2人」ともが後衛のローテーションが存在する。そのローテーションにおいては、「2人」が後衛レフトと後衛ライトを守る。ブラジルが追求する高速立体的3Dバレーにおいては、「スーパーエース」は存在しない。ライトから攻撃を仕掛けるオポジットに配された選手に託された役割は、レフトの選手とちょうど「左右対称」の攻撃を仕掛けることである。相手チームにデディケートブロックをさせないために、攻撃システムを「左右対称」にする以上、「2人」のセッターも「左右対称」に位置するべきであり、従来のセッターの定位置である「後衛ライト」とともに、「後衛レフト」にもセッターを務める選手を守らせる必要があるのだ。(第5章)で書いたとおり、現在のブラジルでは理想的なレセプション・ディグの目標点が、ネット近くの位置ではなく、ネットからやや離れてアタックライン付近にあると想定して各選手がプレーしている(ように見える)。コート中央アタックライン付近にあがった「理想的な」ディグから「左右対称」に高速立体的3Dバレーを展開する、、、そのためにセッターを務める選手が守るべき場所は「後衛ライト」「後衛レフト」と「前衛センター」なのだ。

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2007年12月15日 (土)

"5−1システム"とは?

5−1システムとは?・・・バレーボールにおける「チーム構成」を表現する言葉で、帰する所チーム内の「アタッカーの数」と「セッターの数」である。最初の数字が「アタッカーの数」、2番目の数字が「セッターの数」を表しており、即ち5−1システムとは、世界の男女ナショナルチームのほとんどが採用している「アタッカーが5人・セッターが1人」というチーム構成を意味する。世界の男女ナショナルチームの中で、5−1システム以外のシステムを採用している例は、キューバ女子ナショナルチームの6−2システム、即ちコート内に6人のアタッカーと2人のセッターがいる、いわゆるツーセッターシステムである。6−2システムにおいては、コート内の6人全員がアタッカーの役割を果たすわけであり、前衛のセッターはアタッカーとして攻撃に参加する。そのため、セッターの役割を果たす2人はローテーション上の配列において対角に位置するように配され、常にどのローテーションであっても後衛に1人セッターがいる状態を作りだし、その後衛のセッターがセットアップを行う。6−2システムの最大のメリットは、常にどのローテーションであっても前衛に3枚のアタッカーが揃うことであるが、現在の世界の男子バレー界にあっては、バックアタックが前衛からのアタックと何ら遜色ない攻撃となっており、5−1システムの下でも前衛レフトのレフト攻撃・前衛センターの速攻・オポジットのライト攻撃あるいはライトからのバックアタック・後衛レフトのパイプ攻撃の「4枚」攻撃が当たり前の戦術となっているため、6−2システムを用いた場合に生じる、セッターの役割を果たす選手が攻撃やレセプション等のセットアップ以外の技術を覚えなければならないというデメリットの方が、上述のメリットを上回ってしまう。そのため、6−2システムは目にすることがない。

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2007年12月10日 (月)

神戸・姫路観戦こぼれ話

(その1)開幕2試合、観戦した会場はもちろん、「例の」兵庫県バレー協会が運営する大会だ。

昨年散々文句を言ったが、今年も相変わらず・・・。まず、会場の酷いアナウンス。昨年神戸では、パイオニアのチーム名を紹介するところで、一言目には「NECレッドロケッツ」とアナウンスし、会場からのブーイングを受けた後の二言目には「失礼しました、パイオニア『レッドロケッツ』の間違いでした。大変申し訳ございません。」と・・・、二言目に対してはみんな呆れてブーイングすらできない状況だったわけで、今年もまた間違えてアナウンスされるのでは? と疑心暗鬼になっていたところ、さすがにチーム名の間違いはなし。しかし、「V・『プレミアム』リーグ」と何度も間違えてアナウンス。さらに、姫路では、選手交代のアナウンスが滅茶苦茶で、かみまくるわ間違えまくるわ・・・。もう、誰かファンの方々から公募でもして、やってもらった方がいいんじゃないの? 多分ノーギャラでも、コートサイドから試合見られるならやってくれるコアなファンはいると思うけど。

さらには、会場アクセス・・・。姫路は一昨年に観戦に行ったことがあり、その時は時間に余裕があって、のんびりと駅から歩いて向かったが、それなりに距離はあったので、今回は公式にアクセスとして書かれている「姫路駅南口1番乗り場姫路市バス、姫路駅北口行き、中央体育館前下車」の指示に従って向かおうとしたら、な、なんと





バスの本数がぜーーーんぜんなーーーーい!!!



帰りは臨時バス出してるんだから、行きも臨時バス出せよ!!!




(因みに、メグのご両親と思われる(人違いだったらごめんなさい)お二方に、姫路駅で遭遇しました。南口のバス乗り場に向かう途中で、お二方は逆向きに歩いてこられました。後から思えば、私と同じで、時刻表を見てバスの本数がないことに気づいて、途方に暮れていたのかも・・・。)

やっぱり、兵庫県バレー協会は酷すぎる。
今大会のパイオニアの会場は、関西地区は兵庫ばかり(滋賀も2試合はあるが)なので、憂鬱だ・・・。



(その2)神戸・姫路それぞれの会場で、客層に随分違いがあった様子。

ネット上でのコアなバレーファンの間では、リベロの菅山選手が「オーバーハンドパス」を使わない、というのが有名事実として散々に貶されているが(っていうか、私もその世論を作り上げるのに一役買ったかも(爆))、神戸でのデンソー戦・姫路でのNEC戦で、それぞれ1回ずつではあるが、彼女が「オーバーハンドパス」を使ってトスアップを行った場面が実はあり、その場面で神戸の会場では、ものすごいどよめきが起こったが、姫路では全くのスルーだった。

以前に比べて、ネット上で(選手批判や選手選考批判でなく)「戦術に関して」あれこれと議論がなされるようになったように思えるが、所詮はまだまだそういった「ネット上での議論」を見ているのは、都会のファンだけのようだ・・・。




p.s.: レッピイって2匹(2羽?)いたんですね!? 姫路のアリーナに一瞬ですが2匹(2羽?)いました。

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吉田敏明監督の描く新しいバレースタイル(パイオニア - トヨタ車体・パイオニア - デンソー(その2))

8753さんに頂いたコメントに対するレスで書いたが、やはり今年のパイオニアは、昨年までとは大きくバレースタイルを変えようとしているのが伺えた。

まず、レセプションフォーメーション。これは一言で言えば「ドイツ方式」。即ち、昨年の世界バレーで書いたとおり、リベロに加えて両レフトとオポジットの4人全員がレセプションをこなせる選手であって、試合の各局面において、両レフト・オポジットの3人のうちの誰か1人がレセプションフォーメーションから外れて、バックアタックに備える形である。昨年まではオポジットにはリーが配されており、彼女もレセプションフォーメーションには参加するものの、両レフトのレオ・メグと攻撃面で同じ役割を果たすわけではなかった。しかし、今年の基本となるスタメンでは両レフトにレオ・メグ、オポジットに新外国人のセナが配され、両レフトとオポジットのセナとは、攻撃面では何ら変わらない役割を果たす形であり、だからこそ初戦のトヨタ車体戦では、試合途中でセナがレオと変わってレフトに入ったり、という場面も当たり前のように出てくる。控えにリーがいて、スタメンの誰かが崩れるとレフトであろうとオポジットであろうと彼女が交代で出る(今日のデンソー戦では、途中レオに代わってレフトに配されたため、昨年まででは見られなかった、彼女のパイプ攻撃も見られた)。さらにいざとなれば、同じく控えとしてスーが登場する。彼女だけはレセプションの能力が劣ると見込まれるが、「両レフト・オポジットの3人のうちの誰か1人がレセプションフォーメーションからその都度外れる」方式ならば、彼女がたとえ出ても、バレースタイルは全く変える必要がない(彼女がレセプションフォーメーションから常に外れればいいだけである)。ある意味、レオ・メグ・セナ・リー・スーが「ただのコマ」として扱われる形だ。これこそが、吉田敏明監督が今年のテーマとして掲げた「ある個人に頼ったバレーではなく、全員が勝利に貢献するチーム」の本質の一つであるはずだ。だからこそ、トヨタ車体戦での勝負のかかった第5セットの最後の場面で、監督はレオをスーに代えるという、これまでのパイオニアでは考えられない戦略ですら、採って見せたのだ。

さらにはブロックシステム、及びその後のトランジションの展開。これも劇的なスタイル変更を見せている。ファーストタッチをセッターが行った場面で、今年のパイオニアは、リベロのガッツがトスアップを行うシステムを遂に導入しようとしている。イヤ、実はもっと正確に言えば、「リベロが」ではなく「後衛レフトのポジションを守っている選手が」トスアップを行うシステム、というのが正しいだろう。「後衛レフトのポジション」を守るのが、リベロのガッツであるケースが多いだけで、リベロがコート上にいないケースでは、センターの選手がそのポジションを守っているので、センターの選手がトスアップを行う形となる。トヨタ車体戦を見ていても、それは充分に伺えたのだが、如何せんセッターのユミがテンパりすぎで、上手くシステムが機能していなかった。しかし、ユミに落ち着きが戻ったデンソー戦では、この形が何度となく機能した。もちろん、ガッツはアタックラインを確認しつつ、オーバーハンドパスを用いてトスを上げていた! 基本はライトへの攻撃へトスアップすることが多いものの、時にはパイプ攻撃へ、さらにデンソー戦の第4セットでは(これはアンダーハンドパスだったが)体をトスアップの瞬間に回転させて、レオへ向かってレフトオープンのトスを上げる場面があり、これには私も見ていて不意をつかれた。このシステムがきちんと機能するならば、ラリー中に後衛ライトにいるセッターは、思い切って相手のフェイント攻撃や、ブロックのワンタッチのこぼれ球に飛び込んでいける。第4セット序盤、デンソーにフェイントを散々決められていた場面で、ユミは思いきり飛び込んでいくのを躊躇していたが、監督の指示通りにセット終盤にはトスアップのことは気にせず、思い切り飛び込み、そしてそれをガッツ・ユウ・アサコが見事にトスアップへと繋げた。

もちろん、このトランジションの展開を機能させるためには、ブロックシステムが機能していなければ意味がない。そのために、吉田敏明監督が今年こだわったのは、「両サイドのブロッカーの高さを上げる」ことだったはずだ。パイオニアの場合は、両レフトは高さがあるので問題はライトブロッカーだけ。だからこそ、新外国人選手は上背があって、(レセプションはもちろん)ライトブロッカーをこなせる選手である必要があり、セッターは171cmのユミである必要があったのだ。彼女たちを前にすれば、日本のアタッカーでそうそうストレートを打ち抜く高さがある選手はいないはず。実際、開幕2試合で、相手チームにストレートを打ち抜かれたり、ストレート側にブロックアウトを取られた場面は、悉くライトブロッカーがリーの場面であった(デンソーの細田選手だけには、巧く打ち抜かれていたが・・・どこを抜けていたのか? エンド側で観戦できなかったので、確認できなかった)。その結果が、客観的な数字にも如実に表れた! 開幕2試合で、チーム総ブロック数45本! セット平均5本! しかもセンターブロッカーのアサコ・ユウがそれぞれ12本と15本! 如何に相手チームのウイングスパイカー陣が、ストレートへ打ちあぐねていたかを示すデータと言える。

あぁ・・・ビデオでもう一度見たかったなぁ・・・(涙)
ユウ、この日8本もブロックシャット見せてるのに・・・(大涙)

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2007年12月 9日 (日)

お前は島崎みゆきか!?(パイオニア - トヨタ車体・パイオニア - デンソー(その1))

えっ!? ワールドカップ男子編じゃないのかって!?

実は・・・NHK BSのビデオ録画に失敗したわけで・・・(涙)
昨日・今日と神戸・姫路での開幕2連戦を観戦し、今書いてしまわないと忘れそうなので、ワールドカップより先にレポ。


まず、神戸でのトヨタ車体戦。

ユミの正セッターとしてのお披露目となったわけだが、結果的には彼女で負けた。第5セットを14-10とリードして、誰もが勝ちを信じて疑わなかった場面から、トヨタ車体にサイドアウトを取られて、その後のレセプションの場面で、ひたすらワンパターンにレフトにオープンを上げ、そのトスが悉くトスミス。レオが決めきれず、吉田敏明監督はその大事な場面でレオをスーに代える大胆采配を見せたが、最後もユミはスーへオープントスを上げて、そしてトスミスで終了・・・。試合終了直後、監督は大衆の前でユミを叱り飛ばした。私は見逃したが、その直後にアサコがすかさず彼女のところに駆け寄っていた様子。

確かに、この試合はユミで負けた。彼女のテンパりぶりは相当なものだったが、試合前の練習を見た瞬間からイヤな予感はしていた。昨シーズンまで2枚替えで毎試合・毎セット必ずと言っていいほど出場し、リーグ終盤にはすっかり「高くて早い」トスをマスターしていた彼女が、試合前のスパイク練習で見せたトスは、「高くて早い」トスには程遠い「ただのオープントス」になっていた。そのため、レオ・メグ・スー誰一人として、まともに助走を取ってスパイクを打ち込めない状態のまま、試合本番に突入したのだった。案の定、試合が始まってもレフトからの攻撃はさっぱり決まらない。それでも何とか試合の形になったのは、昨シーズンに引き続いて強化してきた組織ブロックに他ならない。何とこの試合、パイオニアは実に29本(セットあたり5.8本)のブロックシャットを見せた。実際には、ほとんどシャットに近い状態のブロックを、相当な本数トヨタ車体の粘り強い、奇跡的なディグで繋がれていたので、体感的にはもっと決まっていた印象もある位で、要するに「ブロックしか決まった印象がない」試合だった。29本もブロックシャットを決めたその中には、実は5本も(!)ユミが決めたブロックシャットがあり、まるでトスミスをした分をすべて、自身のブロックで取り返しているような感じで、、、


・・・お前は島崎みゆきか!?・・・


と思わず、心の中でつぶやいてしまった。

ともかく、ブロックで何とか勝てるところまでは持って行けた試合ではあったが、最終的にユミにとっては何とも辛い形の幕切れでの大逆転負けとなった。しかし、私としては(若干負け惜しみが入っているのは認めるが)「負けて良かった」と思った試合でもあった。なぜならば、もしこのままこの日勝ってしまっていたら、今日のデンソー戦で、果たしてユミが立ち直れていたかどうか? 疑問に思うからである。ファンサイトの掲示板などを見ていると、試合直後に大衆の前でユミを「晒し者」にした吉田敏明監督への非難の声も上がっていた。しかし、それはユミへの「期待の裏返し」以外の何物でもないと思う。「自分で負けた」という「経験」を肥やしにしなければ、弱冠21歳の彼女がこれまでベテラン中心で保ってきたこのチームの正セッターの座に就くなどということが、簡単にできるはずがない。

そして今日、ユミは昨日とは見違えるようなトス裁きを見せた。まだまだトスミスは多かったが、セットを重ねる毎に、レフトへは「高くて早い」トスが上がるようになっていった。さらに、試合中盤には、昨日には全く見られなかった、センター陣(アサコ・ユウ)へトスを集めるトス回しを見せた。まるで昨日とは別人であった。

これで今シーズン、彼女は立派にパイオニアの正セッターを勤め上げることができると確信した。技術的には前セッター・ユキにはまだまだ及ばないが、何より彼女には上述の通り1試合で5本(!)のブロックシャットを決められるだけのブロック力が備わっている。このブロック力こそが、今年の吉田敏明監督が描く、パイオニアの新しいバレースタイル "トータル(全員)バレーボール" には必要不可欠なのだ。

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2007年12月 7日 (金)

焦ってます&唖然・絶句

焦ってます・・・何でかって? だって、やっとワールドカップ男子モードに入ろうとビデオを見始めているのに、よく考えたら今週からもうV・プレミア始まっちゃうやん! うぅぅぅ、集中力が・・・。

何だかんだ言って、去年の世界バレーで「レゼンデバレー」を書き上げるのに、大会終了後約1ヶ月を要しました。ってことは、その間に1レグの半分ぐらいが終わってしまうかも・・・。

ともかく、始めます。今日はまだ、前置きということで・・・


『ブルガリア対ロシア』のフジテレビ721での放送中の1コマ(4コマ?)。いずれも、解説をされていた、まだ引退して2年程しか経ってらっしゃらない、元Vリーガーのお言葉でございます。


(第1セット序盤に、カジースキが高速パイプ攻撃を鮮やかに決めた場面で)

・・・ブルガリアもこんな早い攻撃をするなんて珍しいですねぇ・・・

(同じく第1セット序盤に、カジースキが高速レフト平行を決めた場面で)

・・・意外と早いですねぇ・・・


V・プレミアの試合の解説をよくされてますが、ブルガリアのバレーを見るのは、どうやら初めてのご様子です。


(第2セットに、ロシアのベレジコがCセミ/バックセミの位置から高速パイプ攻撃を決めた場面で)

・・・あぁ、面白い位置からパイプ仕掛けましたねぇ・・・


どうやら「高速パイプ攻撃」の本質をご存じないようです。


(同じく第2セットに、カジースキがまたまた高速パイプ攻撃を決めた場面で)

・・・ひょっとしてブルガリアがこれだけ早いバレーをするようになったのって、ニコロフが東レに来てたからかもしれませんねぇ・・・


唖然・・・絶句。
ニコロフは昨年の世界バレーの頃と比して、確かに「はやい」攻撃に参加するようになっています。その理由はもちろん、「脱・スーパーエース」というキーワードのためです。昨年は控えのヨルダノフの方が「はやい」攻撃に参加できるため、しばしば彼はヨルダノフに交代させられていた、という現実があるのです。


日本のトップレベルでプレーしていて、引退してまだ1〜2年しか経っていないというのに、そのわずかな時間の間にも、日本のプレーヤーは世界のバレー戦術の進化について行けなくなるようです。地上波の解説をするような、何年も前の元全日本プレーヤー達が現代のバレー戦術を知らないのは当然ですね。ましてや、一般のプレー経験者が世界のバレーを見ないのは、言うまでもありません・・・。

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2007年12月 2日 (日)

ワールドカップ2007(女子)最終総括(その3)

2大会連続での銅メダルを獲得したアメリカ。男子同様にオリンピック本番が近づくときちんと帳尻を合わせてくる印象が強いが、今大会のアメリカについては、何と言ってもローガン・トムとシコラの復帰によるところが大きかっただろう。何か気がつけば、結局は世界ランク1位であった吉田敏明前監督(現・パイオニアレッドウイングス監督)時代のスタメンにほぼ戻った形であり、要するに当時のレフトのフィップスの「代わりの駒」だけをまだ決めかねている状態、と言ってよい状況だ。その「代わりの駒」を今大会では、ナマニとグラスが入れ替わり立ち替わり務めていたが、2人ともまだまだ好不調の波が大きく見えた。特に2人ともレセプションが不安定で、そこを相手チームには徹底して狙われ、レセプションをするのに精一杯で、そのあとの攻撃参加が難しい様子だった。吉田敏明監督から郎平監督へと代わり、昨年の世界バレーに引き続いてオポジットに配された選手(昨年はメトカフ・今年はハニーフ)をレセプションに参加させる「4人(枚)レセプションシステム」を敷くことで、アジア的なバレースタイルへを持ち込もうとしているのは伺えるが、そのためにはオポジットの選手がレセプションに参加する弊害を克服するだけの攻撃システムを、きちんと構築していなければ意味がない。残念ながら、レセプション直後の場面およびトランジションで安定してパイプ攻撃に参加できるのは、ローガン・トムただ一人しかいない。きちんと帳尻を合わせてきたことは評価に値するが、正直まだまだ吉田敏明監督時代の「遺産」で戦っているにすぎないと言っていい、今大会のアメリカだった。一応の目標であった五輪切符を手にして、本番にどのようなバレースタイルを確立することができるか? ここからが郎平監督にとって本当の意味での真価が問われることになるだろう。

4位以下のチーム・・・キューバ・セルビア・ポーランドについては、いずれも「相変わらず」だった。ミスが多く、力と力の真っ向勝負で終盤の競り合いまで持ち込んでも、その状況で渾身のスパイクサーブを打ち込めずに弱気にミスを犯してしまうキューバ。個々には力を発揮し、攻撃システムは男子のそれを踏襲していても、ブロックシステムが稚拙なセルビア。日本での大きな国際大会では、会場の異様な雰囲気にいつまでも慣れることが出来ずに、日本に負け続けるポーランド・・・但し、いずれのチームにとっても、今大会の最終結果は最悪の事態は避けられたと言ってよい結果だっただろう。なぜなら、メダル獲得はほぼ間違いないと考えられたブラジルを除いて、残り2チームが北京の切符を今大会で獲得するわけだが、その2チームを「ヨーロッパのチーム」と「北中米のチーム」が「仲良く」1チームずつで分け合った形に終わったからである。これがもしもどちらか一方で2チームとも占められていたなら、例えば、アメリカとキューバの「北中米の2チーム」が占めてしまっていたなら、ヨーロッパに属する各国で今後争われる北京の切符「ヨーロッパ代表枠」は熾烈極まりない争いになる恐れがあったわけである。その意味では、各国ともある意味あっさりと頭を切り換えて、今後行われる各大陸予選に集中してくるはずだ。その各大陸予選でどこが勝ち上がってくるのか? 言い換えれば、どこが最終予選(0QT)に回ってくるのか? 目が離せないところだ。

そして、日本・・・ていうか、もうこれ以上私が今の全日本女子に対して書く必要などないだろう。お陰様で(?)ネット上ではすっかり当たり前のように「バックオーダー」とか「フロントオーダー」とかファンの方々が書くようになり、プレー経験があろうとなかろうと戦術についてあれこれうんちくを語り合う雰囲気が色々なブログで見られるようになってきた。ほんの数年前までは考えられなかったことだ! あとは、前々から何度も書いているように、むしろプレー経験のある方ほど世界のバレーを見ようとしないこと、が日本のバレー界が抱える大きな問題だろう。

あと、もう一つ・・・以前からずっと気になっていることだが、「アナリスト」が日本では本当の意味で機能しているのだろうか?

今大会のコートサイドでのとある光景として、このような記事が紹介されている。

以前にも書いたことだが、「データバレー」といっても世界中でデータ解析に用いられているソフトはたった一つ、『DATA VOLLEY』しかないと言ってよい。データの元となるゲーム自体も世界各国共通であるし、データ入力に使用するソフトも同じなら入力する方法自体も同じ。実は、FIVBのサイトには以下のようなコーナーがあるのをご存じだろうか?

2006世界バレー(男子)
2006世界バレー(女子)

かなり重い動画データなので、全てをダウンロードするのは大変だが・・・ご覧戴ければわかるとおり、これは昨年の世界バレー男女それぞれベスト8入りを果たした各国の、各レセプションフォーメーション毎の攻撃パターンなどのビデオ映像が公開されているのだ。つまり、「データ」自体は世界各国「誰に対しても」共有されている状況なのだ! そんな中で「アナリスト」という肩書きを課せられた人間に要求される能力は、果たしてどのような能力なのだろうか?
上述の「コートサイドでのとある光景」の記事やこちらをご覧になって、皆さん是非考えて頂きたいと思う。(この件については、いずれ改めてアップしたいと思う。)


さぁ、これでやっと男子に頭を切り換えてっ・・・て、もう今日で終わっちゃうやん!?
(男子ファンの方々、もう少しお待ち下さい・・・)

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2007年12月 1日 (土)

ワールドカップ2007(女子)最終総括(その2)

(当直業務の合間に・・・な、なんと! 当直室が停電してるやないか!? という思わぬトラブルにも負けず、アップします)

続いてブラジル。銀メダルを獲得してなお、ギマラエス監督の更迭という話が沸き起こっているとのことだが、それもわからなくもない。自他共に実力世界No.1と認めていながら3大大会の優勝を未だに達成できないことに、それだけブラジル国内での苛立ちも大きいのであろう。しかも、ロシア・中国が参加しない今大会では、優勝は間違いないと思われていたはずだし、それだけをブラジルチームスタッフ・選手ともに狙って来日したであろうから。

今大会でブラジルが喫した2敗については、既にレポしたとおり、いずれも両センター(ファビアナ・バレウスカ)の速攻が相手ブロッカー陣に潰されて、お家芸である高速立体的3Dバレーが展開できずに両サイド一辺倒のトス回しとなって、ウイングスパイカー陣が相手チームのブロックのプレッシャーに負けて、悉くスパイクミスを連発した形だった。これに関しては、今大会のブラジルが昨年の世界バレーとは違って、スタメンを固定して戦っていたことが災いしたかもしれない。

昨年の世界バレーでロシアに決勝で敗れた要因として、私は当時のブラジルが「サッサのチームになってしまっていること」を挙げた。

世界バレー(女子)最終総括(その1)

今大会のブラジルは、サッサよりも上背のあるパウラが完全復帰を果たし、しかも現在の女子バレー界で恐らくは最高レベルの「高くて早い」レフト平行をマスターしており、遂にサッサが「スーパーサブに回れる」状況を作り上げることが出来ており、序盤戦を見て私はブラジルの優勝は間違いないだろうと思った。ギマラエス監督自身も「サッサをスーパーサブに回せる」ことで、これが現状でのベストのスタメンだと強く確信を持ったからこそ、昨年の世界バレーとはうってかわって、スタメンを固定して戦ったのだろう。しかし結果的には、こぞって20歳代前半の今大会のブラジルのウイングスパイカー陣(パウラ・ジャケリネ・シェイラ)には、百戦錬磨のイタリア・アメリカのベテラン選手達に敵うだけの「キャリア」が絶対的に不足していたようだ。ジャケリネについてはサッサが「スーパーサブ」として度々登場したが、シェイラに代われる選手が今大会はブラジルのメンバー12人にはいなかった・・・。これまでならレナタやマリがいたはずだし、フォフォンに代われるカロウもいたはずだが、今大会のブラジルの12人からはそろって外れていた。彼女たちの体調の問題なのか、それともギマラエス監督の北京本番を見据えた戦略なのか? はたまたただ単なる「余裕」だったのか?! そこまでは私にはわからない。イタリアが大事な最終3連戦を前に正セッターのロビアンコが故障し、代わって出場したフェレッティが(何度かトスミスはあったものの)卒なくプレーして全勝優勝に貢献した様子や、アメリカが今大会直前に正セッターのオーモーサントスがやはり故障して、前半戦特に控えセッターのバーグがずっとトスを上げ続けて、全勝街道を走り続けた様子と、今大会のブラジルは対照的であった。

しかし、またまた優勝を逃したブラジルではあったが、やはり着実に進化を見せていた。初戦のポーランド戦で書いたとおり、パウラのレフト平行は男子のそれにほぼ近づいており、恐らく来年の北京本番では、ジャケリネは当然、ひょっとすればマリあたりも同じくらいに「早い」平行をマスターしてくるに違いない。サーブも進化しており、今大会の勝ちゲームは大抵、試合序盤からシェイラ・ファビアナ・パウラ・ジャケリネのサーブで相手のレセプションを崩しまくっているケースがほとんどだったし、ピンチサーバーで出場することも多かったサッサも、これまで通りの強力なスパイクサーブを見せてくれていた。やはり総合的に見ると、現在の女子バレー界の勢力地図において、ロシア・ブラジルが頭一つ抜けていることを状況はまだ変わっていないと私は思う。

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