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2007年12月31日 (月)

レゼンデバレー(第10章)- 死角はないのか?

レゼンデバレーの締めくくりとして、このテーマを掲げてみたいと思う。もちろん、私のような一介のファンに「どうやったらブラジルに勝てるか?」などという大それた戦略など立てられるはずもない。ただ、今大会では実に久しぶりに、目の前で(正確には、テレビの前で)ブラジルが負ける瞬間を目にするという、ある意味「貴重な」体験をすることが出来た(昨年の世界バレーでもブラジルは1次予選でフランスに敗れているが、確かその試合はスカパーでも中継がなかった)わけなので、その「貴重な」ブラジルの負けゲームとなった、今大会のアメリカ戦を分析してみたいと思う。

(第9章)で書いたとおり、この試合でのアメリカのスタートローテーションの戦術は、レセプションからスタートするセットに対してサーブからスタートするセットでスタートローテーションを「1つ回し」て、常にスタンリーのサーブから始まるようにするという、「従来の」戦術であった。これは誰でも(どこの国でも)考えることであろうが、ブラジルのあの高速立体的3Dバレーを切り崩すためには、強烈なスパイクサーブを見舞うのが最も近道であり、世界でも屈指のスパイクサーブを打てるスタンリーのサーブが回ってくる機会を最大限にしたいというヒュー・マッカーチョン監督の意図は、実に単純明快であった。そしてそれは、第1セットから見事にハマった。(第8章)で書いたとおり、セット序盤こそブラジルペースで試合が進んだが、マルセロの両サイドへのトスが「低くて早い」トスになったのに乗じて、まずダンテを潰し、続いてアンドレを潰した。それで逆転に成功したアメリカは、セット終盤に追いつかれてジュースに持ち込まれたが、その緊迫の競り合いの中でヒュー・マッカーチョン監督の「狙い通り」26-26の場面でスタンリーのサーブが回ってきて、そして彼は見事に連続サービスエースを決めたのだった。

第2セット、ブラジルはスタートローテーションを変化させてきた。もちろん、スタンリーのサーブの場面でのサイドアウト率を上げるためだったのだろうが、結局スタート早々から前セット最後の余韻を引くかのように、アメリカが連続得点を稼いで主導権を握る。しかし、ブラジルも易々とは引き下がらない。第1セットで両サイドの高速平行をアメリカのブロック陣に悉く押さえ込まれたことからわかるように、アメリカのブロック陣が「スプレッド」となっているところで、マルセロは高速パイプを多用し始め、それでブラジルが流れを掴んでセット中盤で逆転、21-17とリードしてセット終盤を向かえる。ところが、この劣勢の場面でアメリカのブロック陣は、非常に柔軟なブロックシステムを敷き始める、、、ブラジルのレセプションが返る位置(=セッターがトスアップを行う位置)によって、ブロックシステムをその都度切り替え始めたのだ。恐らくはこの日のアメリカのアナリストのはじき出した「データ」からは、ブラジルのセッター・マルセロがアタックライン付近からセンターの速攻を使おうとしていないことが十分に伺えたと推測する。実際、ブラジルのレセプションが理想的な場所に上がるとサイドブロッカーはスプレッドに構え、センターブロッカーはコミットで速攻に跳ぶ。レセプションが乱れると、バンチで構えて高速パイプか両サイドの平行をマークする、、、それが24-23とブラジルのセットポイントの場面で、アンドレのライトからのバックアタックに3枚ブロックが完成してシャット・26-25の場面の同じくブラジルのセットポイントの場面で、ジバの高速レフト平行に2枚ブロックが完成してシャット・28-28の場面で、アンドレの高速レフト平行に2枚ブロックが完成してシャットする結果を生み、最後はレセプションがきちんと入った場面でのロドリゴの速攻に、リーがコミットで1枚でシャットして、2セット連続でジュースの死闘をものにする結果を生んだ。逆にブラジルは、アメリカのセッター・ボールがアタックライン付近からセンターの速攻を多用するために、そういったブロックシステムの「瞬時の」切り替えは出来ない戦いを強いられた。

第3セット、ブラジルはまたまたスタートローテーションを変化させる。一方のアメリカはスタンリーのサーブから始まるのは同様。2セット連取した勢いも重なり、アメリカのスパイクサーブはスタンリーのそれだけに限らず、ますます勢いが出始める。追い込まれたレゼンデ監督はたまらずアンドレを「スーパーエース」のアンデルソンに交代。レセプションが乱れて高速立体的3Dバレーを繰り出せない苦しい場面を、彼が何とか切って、セット中盤までは競る展開となるが、セット終盤にはダンテもジバも高速パイプに切り込んで行けないほどにレセプションを崩され、ダンテもムーリオと交代させられる。その代わったムーリオも崩され、それで勝負あり。最後は、ブラジルとは思えないようなミスの連続で自滅。ブラジルの選手達も人の子だったんだと再確認(苦笑)。

やはり、勝敗を分けたのは第2セット終盤の攻防だったと思う。(第9章)で書いたとおり、試合中・各セット中に如何に「迅速に」アナリストが監督にデータをフィードバックできるか? そして、それを試合中・各セット中に如何に「的確に」監督が各選手に伝えることができるか?、、、この日に限っては、この点が明らかにアメリカに軍配が上がったと言える。さらには、その背景となったのが、アタックライン付近からセンターの速攻を使う能力、、、これもアメリカのセッター・ボールの方が上だった。アタックライン付近から高速立体的3Dバレーを繰り出すのがレゼンデバレーの中核となる戦術だが、このアメリカ戦を見る限りは、センターの速攻にトスアップする能力にリカルドとマルセロの差を見た気がする。今後ひょっとすると、「アタックライン付近から如何にセンターの速攻を使えるか?」が世界のトップレベルの男子バレー界にあっての大きな鍵になってくるかもしれない。この点を来年のオリンピックに向けて、注目してみていきたいと思う(rioさんの『ベリーロールな日々』でも、この点は盛んに取り上げられていた。)


さぁ、これで晴れて年明けからは頭を切り換えて、V・プレミアモードへ突入できる・・・と思ったら、天皇杯・皇后杯があるのね、、、なんて中途半端な時期に作ったんだろう(苦笑)。

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コメント

あけましておめでとうございます。初めまして!
レゼンデバレー1から10まで読ませて頂きました。
読めば読むほど、バレーの奥深さが伝わりました。
新年早々感動しました。 ありがとうございました。
強いのには必ず理由があるんですね!! 面白かった~!!

投稿: 消しゴムジャンプマン | 2008年1月 3日 (木) 00時48分

>消しゴムジャンプマンさん

初めまして。コメントありがとうございます。

>レゼンデバレー1から10まで読ませて頂きました。

ありがとうございます。そしてお疲れ様でした(笑)、あれだけを一気に読まれたら、大変だったでしょう。知り合いには「字が多すぎて読む気が失せる」と言われるブログなので(爆)。

でも、今のブラジル男子ナショナルチームのバレースタイルは、何としても多くのバレーファンに知ってもらいたい、そうすればもっともっとバレーファンも増えるはずだと確信していますので、(段々ネタが尽きてきていますが・・・)可能な限り今年もオリンピックが「テレビで見られるなら」、レゼンデバレーの連載を続けていきたいと思っています。期待していて下さい。

投稿: T.w | 2008年1月 9日 (水) 21時08分

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