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2007年12月24日 (月)

レゼンデバレー(第8章)- リカルド抜きで戦う術

(第5章)で私は、ブラジルの現在の高速立体的3Dバレーになくてはならないのがセッターのリカルドのセットアップ能力であると書いた。彼がアタックライン付近から両サイド及びパイプへ寸分狂いなく「高くて早い」トスを上げる能力を持っていることこそが、ここ最近のブラジルの黄金時代を支えている最大の要因であると恐らく誰もが思っていただろう。その意味で、今大会リカルドが来日しなかったことが、ブラジルのバレーにとってどう影響するのか? バレーファン誰もが注目していたと思う。

その注目の中、開幕した今大会初戦でアメリカと対戦したブラジル。第1セット中盤まではアメリカに付け入る隙を全くみせなかったが、セット中盤に今大会での正セッターを務めたマルセロの両サイドへのトスが、悉く「低くて早い」トスとなったところを、アメリカのブロック陣にまともに捕まえられた、、、まずダンテが潰され、続いてアンドレが潰された。これがアメリカに付け入る隙を与える契機となってしまった。

結局ストレートで敗戦を喫したブラジルを見て、やはりリカルドがいなければ、ブラジルの高速立体的3Dバレーの質は低下してしまうのか? と感じた私だったが、この時点で私は、レゼンデ監督が今大会(第7章)で書いた「新ツーセッターシステム」とも言える「5−2システム」を採ろうとしていることにまだ気がついていなかった。そう、恐らくレゼンデ監督は、リカルドが最も資質を備えたセッターであることをよくよく理解していながら、必ずしも彼がいなくても現在のブラジルのバレースタイルが維持できる方法を模索していたのだ。コートの中9m×9mすべてを1人のセッターがカバーするのではなく、アタックラインよりネットよりの限られた範囲をマルセロに任せ、アタックラインよりエンドラインよりの範囲についてはリベロのセルジオとマルセロの2人でカバーする・・・もちろん、リベロのセルジオの高い身体能力があるからこそと言えるわけだが、レゼンデ監督は遂に、リカルドという "唯一無二の" セッター抜きでも(100%ではなくとも)ある程度の質の高速立体的3Dバレーを繰り出せるという戦術を編み出したと言えるだろう。それが、今大会での2連覇達成という形で結実した。特に、2戦目以降はブルガリアやロシアといったライバルの強豪国を全く寄せ付けない戦いぶりだった。コート中央付近から高速立体的3Dバレーを繰り出すという極めて高度な戦術も、コート内に「ある程度」高い能力を備えたセッターが2人いれば容易になる。逆にセッターが2人いるからこそ、理想的なレセプション・ディグの目標点は必ずしもネット際の狭い範囲ではなく、コート中央付近で構わない。コート中央付近にレセプション・ディグを上げれば十分であるから、各レシーバーの精神的負担は軽くなり、レセプション・ディグ直後の攻撃参加も容易となる。そうすれば、レセプションの場面であれトランジションの場面であれ、確率高く「常にアタッカー4枚での」高速立体的3Dバレーを展開できる。高速立体的3Dバレーを展開できないような苦しい場面では、前衛セッターが無理にコート中央付近まで走り込んでランニングセットを上げることはせずに、後衛にいるリベロがトスアップを行う。それで自チームの攻撃が決まらなくとも、直後の相手チームのトランジションでの攻撃に備えて前衛セッターにブロックに集中させることで、ブロックシャットあるいはワンタッチを確率高く取って、そして次のトランジションで高速立体的3Dバレーを繰り出せば良い。そうすれば、苦しい場面で相手の3枚ブロックをぶち破るスーパーエースは必要なくなるし、各アタッカーも「自分がここで決めなければ・・・」という精神的プレッシャーも軽くなる・・・これらは全て好循環に繋がるのだ。

自動車はハンドル操作に「あそび」をもたせることで、安定した高速走行を可能にしている。常に100%を追求して練習することは必要なことだが、敢えて「100%でなくても構わない」ための戦術を採ることは、チームプレーに「余裕」を与える。ロシアやブルガリアやアメリカといった、今大会ブラジルのライバルと思われた強豪国を見ていると、確かに各国とも着実にブラジルの戦術を採り入れ、一つ一つのプレーでは例えばカジースキの高速パイプ攻撃や高速レフト平行などは、ダンテやジバのそれよりも高さもパワーも勝っていると思える位なのだが、それがブラジルを相手にすると、なぜかチーム全体にプレーの「余裕」がなくなって、ミスで自滅してしまうのだ。それに対して、"唯一無二の" セッターであるリカルド抜きでも(100%でなくとも)ある程度の質の高いバレーを繰り出す術を見いだした今大会のブラジルを見ていると、資質を備えた選手が揃った中で敢えて「100%でなくても構わない」ための戦術を採ることが、チームプレーにいわば「あそび」をもたらしているように思える。だからこそ、世界3大大会5連覇という安定した「高速走行」を可能にしたと言えるだろう。

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コメント

  吾ヶ神国(?)日本軍は、何時
 迄『東洋の魔女』の幻影を抱く
 気ナノでショウか?…其ンな、
 陳腐な『幻影』如きで圧倒的に
 強壮なる『ソヴィエット・ロシ
 ア』やら『伯剌西爾』陣営等に
 勝ち得るンならば、「巫女」丈
 で『素人・排球軍』を組織し、
 「神官衣装」に『鈴振り』姿で
 6名を『コート』上に出せば、
 向かう処に「敵無し!」だ。翁

投稿: 勝魂⑧号。 | 2007年12月26日 (水) 10時26分

その7・8を読ませていただきました
確かに今大会でもブラジルは強さを見せていたけれど、リカルドとマルセロのトスを比べるとマルセロのトスは見劣りするところがあった気がしますし
この2セッターシステムとリカルドのトスが合わさったら・・・
といった感想です

ブルーノはどうなんでしょうね

投稿: えおのさん | 2007年12月28日 (金) 15時46分

>えおのさん さん、

初めまして。コメントありがとうございます!

マルセロのトスがリカルドより見劣りする点は、(その10)で書いたとおり、アタックライン付近から速攻を使う能力に差がある点と、やはり時々両サイドへの平行トスが「低くて早い」トスになる(=トスの軌道の頂点がアタッカーのスパイクヒットポイントより手前にあって、「お辞儀」してしまう)点だと思います。

ブルーノはまだまだ若いですし、相手のブロックシステムを見ながらトス回しを組み立てるのはリカルド・マルセロのレベルに追いつくのはまだ先のことでしょうね。

投稿: T.w | 2007年12月31日 (月) 23時48分

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