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2007年11月30日 (金)

ワールドカップ2007(女子)最終総括(その1)

まず、全勝優勝を達成したイタリア。アメリカ戦の最後に書いたように、期待通りの巻き返しを見事に果たしてくれて、うれしい限りだ。ボニッタ監督からバルボリーニ監督へと変わって、一体何が変わったのか?・・・明らかに変わったのはブロックシステムだった。

ボニッタ時代は、基本的にはバンチ・リードブロックシステムを主体にしつつ、上背のない(172cm)セッター・ロビアンコのだけが場合によってバンチからリリース(release)される、という形であった。今大会のイタリアにおけるメンバーでの大きな変化としては勿論、アゲロが加わったことが挙げられるわけだが、これまでずっとキューバのナショナルチームでプレーしてきた彼女が、果たしてイタリアの組織的ブロックシステムにどう順応できるのか? というのが私の中での大きな興味としてあった。もちろん彼女はキューバの黄金時代を担った主力メンバーだったわけであり、イタリアにとっては「キャリア」という意味では申し分のない戦力補強だったわけだが、キューバのチームカラーを考えればお世辞にも「組織的」とは言えないスタイルの中で長年戦ってきた彼女だけに、彼女がイタリアに加わることが逆に「組織プレー」にとって足を引っ張る形になりかねないという危惧も感じたからだ。

で、蓋を開けてみると、今大会のイタリアのブロックシステムは、比較的「スプレッド・リード」システムを敷いていることが多かった。最初はアゲロだけが「バンチ・リード」に加わっていないのか? と思ったが、そうではなかった。対角の長身セッター・フェレッティも基本的には「スプレッド」で構えつつ、そこから相手の例えばBクイックなどに対しては素早くセンターブロッカー横へ移動して、ブロックに参加していた。相手チームのパイプ攻撃には、両レフト(ピッチニーニ・デルコーレ・セーコロ各選手)が素早くセンターブロッカー横へ移動して、2枚ブロックを完成させていた。

このブロックシステムの意図するところは、相手のウイングスパイカー陣に「ストレートに打たせない」ことを徹底させたかったのではなかったか? と思う。そうやって、相手チームの両サイドの高速平行トスを徹底してクロスに打たせて、そのコースには鉄壁のレシーブ陣を配する・・・レフト平行に対してはリベロのカルドゥロが、ライト平行に対してはセッターとオポジットのアゲロが担当する・・・男子バレーの世界では、相手チームのブロックシステムをこのようにさせておいて、センターの「高くて早い」速攻で勝負するのが「現在の」セオリーである。男子バレーの高さでは、センターの速攻を1枚ブロックで「リード」でワンタッチを取ることは至難の業だからだ。しかし、現在の女子バレーの世界では、「コミット」でなければ手も足も出ないというような「高くて早い」速攻を打てる選手は数えるほどしかいないと言ってよい・・・そのような選手の大半を占めるロシア・中国が参加していない今大会にあって、この戦略は見事に機能した。もちろん、その戦略の下で各チームの主力センター陣を次から次へと粉砕していったイタリアのセンター陣(ジョーリ・バラッザ)が素晴らしかったことは間違いない。今大会のMVPはジョーリだったが(確か、ワールドカップのMVPはベストスコアラーが獲得する、という決まりじゃなかったっけ? これって昨年の世界バレーのMVPの一件の反省?!)、これは「納得の」MVPだ。

さらには、アゲロの加入・・・上述したとおり、決して彼女の加入がブロックシステムで欠点となることなく、逆に苦しい場面で322cmの打点から相手の3枚ブロックをものともせずに、ハイセットを打ちこなせるスーパーエースでありながら、ラリー中のディグもトスも難なくこなせるユーティリティープレーヤーでもあり、そして時には相手の強力なスパイクサーブに対してはレセプションフォーメーションにも参加できる(但しセッターがセンター後衛、即ち自身がセンター前衛のローテーションでは「絶対に」レセプションには参加しない)彼女の加入は、ヨーロッパバレーの象徴であったはずのイタリアのバレースタイルを、実に「アジア的な」バレースタイルへと変身させた。今大会のイタリアを見ていると、まるでシドニーオリンピックの時の韓国女子ナショナルチームを彷彿とさせるものがある・・・リベロを除いたスタメンの平均身長だけを見ると、わずかに2cmしか変わらない日本が今大会のイタリアに全く歯が立たなかったことも、当時の日本が韓国にまるで歯が立たなかった姿にダブって見える。

但し、今大会のイタリアが現在の世界一の実力かと言われると、正直疑問である。今大会のブラジル戦、私には理解不能だったスタートローテーションを含めて、バルボリーニ監督の戦略勝ちだと思うが、次に対戦した場合にも同じようにストレートでイタリアが勝てるかというと、それは難しいと思う。レポしたとおり、第1セット・第2セットとも、序盤はどう見てもブラジルの方が試合内容では勝っていた。スプレッドであったイタリアのブロック陣は、ブラジルの高速パイプ攻撃には全く対応できていなかった。「アジア的な」バレースタイルへと変身し、堅実なバレーを展開しても、昨年の世界バレーでのドイツがそうであったように、ロシアのような絶対的な高さを前には為す術がないという可能性もある。今回のワールドカップ・・・「3大大会」の一つであり、他の大会と違って「総当たり戦」であるが故に全チーム同士の対決が見られる醍醐味があった一方で、世界ランク1位・2位(当時)チームが出場しないという、前代未聞の中で行われた、ただ単なる「オリンピック出場権争いのためだけの」大会に成り下がってしまった感が強く残った、今大会だった。

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