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2007年11月15日 (木)

(ワールドカップ2007女子)日本 - イタリア

イタリアのIDバレーは、当然のことながら日本の弱点を容赦なく突いてくる・・・。それは、試合早々スタートローテーションを見た瞬間に感じられた。

日本の弱点と言えばそう、随分以前説明したとおり、レセプションの要である木村沙織選手がオポジットに配されている現在の全日本では、セッターが後衛センターのローテーションにおいて「女子型」のレセプションフォーメーションを敷くことになり、そのローテーションが盲点となる。「女子型」とは何か? それは下記の過去の記事を参照のこと。

バックオーダーにおけるレセプションフォーメーション

当然のことながら、イタリアは日本のこのローテーションに、アゲロのスパイクサーブが当たるようにスタートローテーションを決めてきたのだ! (だからこそ、レセプションから始まった第1セットに対して、第2セットではイタリアは1つローテーションを回してスタートしている。)象徴的なのが、アゲロのサーブ。他国との試合では実はジャンピングフローターを打っていることが多いのだが、この日本戦では強烈なスパイクサーブをコート中央付近を目がけて打ち込んできた。理由は勿論、オポジットの木村沙織選手をレセプションで釘付けにして彼女の攻撃をなくしつつ、セッターの竹下選手がセットアップ位置へ向かうまでの時間的余裕をなくさせるためである。これにより日本の攻撃は、前衛アタッカーが3枚の場面でも、実質ほとんど2枚の状況に追い込まれた。

そうやって攻撃を「実質2枚」に追い込んだ上で、この日のイタリアはブロックシステムを普段のバンチ・リードブロックシステムではなく、マンツーマン・コミットを多用する形を採った。象徴的だったのが高橋みゆき選手が前衛の場面。彼女にはバンチからリリース(release)されて構えるライトブロッカーがマンツーマン・コミットでマークにつき、ストレートコースを完全に押さえ込んで、彼女にブロックアウトをさせないようにした。彼女と杉山選手のアタッカー2枚が前衛の場面では、杉山選手の動きに合わせてレフト・センターブロッカー2枚がコミットで対応してプレッシャーをかけ、困った竹下選手が高橋みゆき選手の高速レフト平行に頼れば、上述のとおりにストレートコースは押さえ込んだ上でブロックアウトを防いで、クロスに打たざるを得なくしておいてそのコースにきっちりレシーバーを配置するというフォーメーションを敷いた。1セット目で荒木選手の速攻が1枚ブロックで潰され、2セット目には2-4の劣勢から杉山選手のBクイックも1枚ブロックで潰されて、そこで勝負あった。あとは両サイドの攻撃しかなくなるのは誰の目にも明らかであり、マンツーマン・コミットで1枚ブロックとの勝負故にある程度栗原選手は決められても、現在の全日本の「真の」大黒柱の高橋みゆき選手は決まらない。11-17から回ってきた高橋みゆき選手のサーブで一気に18-17と逆転する見せ場を「会場全体を巻き込んで」作り上げただけ(この場面で、会場の「異様な雰囲気」に呑み込まれかけたイタリアを立ち直らせたのが、バルボリーニ監督の冷静で的確な指示にあったことは、『ベリーロールな日々』こちらの記事を参照のこと)で、結局そこからは1点しか奪えず。

そして第3セット、序盤から栗原選手が孤軍奮闘でスパイクを打ち込むも、打ち込んだコースには悉くレシーバーが配置されており、難なくディグで繋がれてしまう。徐々に彼女に疲れが見え始め、ネットにかけるスパイクミスで2-6。以降は連続でブロックシャットを食らって、5-14で勝負あり。

柳本監督は試合後に「コンビも研究されていて、逆に(日本がしなければならないはずの)繋いで取るという展開を相手にされてしまったので、毎セット苦しい展開になってしまった」とコメントしている。この「繋いで」という言葉に、恐らく日本のバレー界と世界のバレー界の間に解釈の大きな違いがあると思う。現在の全日本女子が目指そうとしている「拾って繋いでバレー」というのは、ブロックシステムの概念もないまま、相手がどこへスパイクを打ち込んでくるかもわからない状況の中で、素人受けのする「奇跡的な」ディグを期待し、そして期待通りに「奇跡的に」繋がったボールを「ただ相手コートに返している」だけのバレーである。「奇跡的な」ディグはいつどのように誰の手で起こるか想定も出来ないから、そのあと誰がどのようにシステマティックに動いて、どのような攻撃システムを組み立てるかまで考えられない。要するに、守備から攻撃へと連続的に展開する「トランジション」の概念がどこかへ消え去っているのだ。一方、世界のバレーでは、そのような「奇跡的な」ディグなど最初から期待されていない。守備の最前線は「ブロックシステム」であり、それをきちんと構築した上で、ボールが必ず飛んでくる場所にレシーバーを配置し、そしてその想定通りに飛んでくるボールを「当たり前のように」ディグする・・・それこそが本当のファインディグなのだ。「当たり前のように」ディグを行うから、そのあとトランジションで誰がトスアップを行い、誰がどのように動いて攻撃システムを作り上げるかは簡単なことだ。

『Number PLUS〜全日本女子バレー完全読本〜』に書かれている、佐野選手の記事の中に次のような内容があった。

フランス南東部、地中海に臨む映画と観光の街・カンヌ。そこで出会った中国人監督ヤン・ファン(現フランス代表監督)の言葉が、ぼやけていた佐野のリベロ像に光を当てた。

「日本人は、すぐそうやってファインプレーに見せたがる。そんなファインプレーはいらないんだ」

佐野がボールに飛び込むのを見て、軽くあしらうように発せられた一言。佐野にも理解できるよう、簡単な単語を並べただけのフランス語だったが、そこに皮肉がこめられていることは感じ取れた。



同じアジアの中国人監督がわかっているのに・・・どうして日本のバレー界は、いつまでも同じ過ちを犯し続けるのだろうか?
佐野選手は今、どういう想いで全日本のコートに立っているのだろうか?



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コメント

こんにちは。

記事から拾ってくださりありがとうございます。

なるほど、第3セットで柳本監督がローテを裏表にしてきたのにはそういう事情もあったんですね。試合中にベンチから上がってきたあまりにもひどいコメント(「高橋の前のブロックが低いから」)にぶち切れて、勢いで記事を書いてしまいました。

レセプションの弱点に関してはキューバ戦では栗原を参加させることで補っていましたが、ますます「守り」のチームになってましたね。。。

「繋ぐ」ことに関して、まだブロックのワンタッチが1回と数えられていた時代の古いバレー映像(日ソ戦、たぶん日紡貝塚)をテレビで見たことがあります。当時の日本は、ワンタッチで飛んでくる方向に必ずレシーバーがいて、華麗な回転レシーブできちんとアタッカーに上げ、切り返していました。

当時と今では技術もスピードもルールも全然違いますが、トランジションという概念は今よりしっかりしていたのでは、と思わせる映像でした。

そういえば、”回転レシーブ”そのものがトランジションの発想で生み出されたプレーですよね。欧米チームは今でも当たり前のように使っているのに、”お家元”の日本はフライングレシーブが目立つばかりで、ディグの後はへたり込む始末。。。ディガー部門ベスト10に4人、だそうですが、なんだかなあと思ってしまいます。


投稿: rio | 2007年11月15日 (木) 13時16分

追伸

そういえば、菅山選手は「フライングレシーブが目立つ時はチームの状態が悪い時なので、ほめられてもうれしくない」とどこかで語っていました。「コンプリートガイド」のインタビューで成田選手が「企業秘密」にしている挑戦の内容も、「つなぎ」に関係あることなのかも!?

投稿: rio | 2007年11月15日 (木) 13時38分

「ブロックシステムの概念がない」これに尽きますね。これがないから、相手のブロックに対してどう攻めるのかという組み立てもまるっきり無いように見えるのでしょう。

「奇跡のレシーブ」は盛り上がりますし、どんなボールも簡単に諦めてほしくはないですけどね、勝つためのシナリオにはなりませんね。勝つためのシナリオを作って、それを実現するための練習をさせるのが監督の役目でしょう。

結局この大会の最大の勝利に最も貢献したのは「だって、勝ちたかったんだもん」だったような・・・。
これで、「あと少し本気になればメダルに絡める」なんていう結論にならないことを祈るばかりです。

投稿: T | 2007年11月16日 (金) 00時02分

 今日は『ブラジル戦』ってサ!

 日暮蝉が如くに「加奈加奈加奈加奈…」と五月蠅かった「凍結」監督(於/5輪!)が、『ライト』位置には遂ぞ大山先発をサセズ終いだった事で、『鬼畜米英』列強には却って「K,オーヤマ」は遣われ得ないと認知させて了った丈な大会で終演を迎え伯剌西爾戦?翁

投稿: 勝魂⇒№。 | 2007年11月16日 (金) 07時54分

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