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2007年5月 8日 (火)

黒鷲旗女子3位決定戦〜パイオニア-東レ(その1)

もう一つ、今シーズンのパイオニアのバレーが昨シーズンまでのそれと大きく変わった点は、相手チームに「常に両サイドを意識させる」攻撃を心がけていた点である。これは、昨シーズンのVリーグ決勝2戦目からである。それはもちろん、相手チームのバンチ・リードブロックシステムを意識するからこその戦略である。

パイオニアのバレーと言えばレフトオープン一辺倒のバレーだと勘違いしている方は、まだまだ世間的には沢山いらっしゃるかもしれない。確かに、日本の女子バレー界にあっては、ハイセット(2段トス)を打ち切れる数少ない選手がレギュラーの両レフトに配されていることで、そのようなイメージが強いのは仕方のないことであろう。しかし現実には、日本の女子バレー界でいち早く「コンビネーションシステムとしての」パイプ攻撃を採り入れたことからも明らかなように、実はパイオニアは「コンビバレー」を信条とするチームなのである。但し、「コンビバレー」を組み立てるために不可欠な「安定したレセプション」を展開できるとは言い難いチームカラーゆえ、レセプションが乱れる苦しい場面を何とか凌ぐ戦略を持ち合わせていなければならない。男子バレーの世界では既に、安定したレセプションを「常に」展開するのはほぼ絶望的なほど、スパイクサーブは強力となっており、ここ10年程はレセプションが乱れた苦しい場面を、オポジットに配されたスーパーエースの圧倒的な攻撃力で何とか凌ぐことが必要不可欠である(イヤ、「あった」と言うのが、現在のブラジル男子ナショナルチームを見る限り、正確な表現だが)。今シーズンのJTにあっては、寺廻監督自身が目指す「両サイドの高速バレー」のために、もともと難があったレセプションの安定化を図るべく(もともとセンタープレーヤーであった)高木選手を中心としたチームを組み立て、それでもレセプションが乱れて高速バレーを組み立てられない場面を想定して、スーパーエースのケニー選手を助っ人として監督自ら獲得に動いたわけである。昨シーズンのVリーグのレポで度々褒めた武富士もそうであった。足立・吉澤両選手の高速レフト平行を基軸にしつつ、それが組み立てられない場面のためにハニーフ選手がライトもしくはセンターにいたのである。その意味で、昨シーズンまでのパイオニアには、「コンビバレー」を組み立てられない場面を凌ぐべく、両レフトにハイセット(2段トス)を上げるという「単純な」バレーも戦術の「一つの選択肢」として歴然と存在していたのである。だからこそ、パイオニアと相対する各チームは、パイオニアをサーブで揺さぶって、両レフトのオープンバレーに持ち込んで・・・と企てるわけであり、一方パイオニアはそういう展開に持ち込まれても、両レフト(さらにはフランシー)の攻撃力ではねのけてきたはずなのだ。

しかし、今シーズンのパイオニアはそうではなかった。レセプションが少々乱れても、相手の強打に対するディグからのトランジションの場面でも、積極的にライト側の攻撃やセンター線を多用した。アサコ・ユウの両センター陣及び、オポジットのリーがアタックランキングの上位に揃って入る活躍を見せたことで、その戦略は成功したと言えるだろうし、何より、今シーズンのV・プレミアリーグの4強が全て、バンチ・リードブロックシステムを採るチームであることからも、理に適った戦略だったと言えるだろう(もちろん、マンツーマン・コミットブロックを敷くチームと相対する場合には、適宜「両サイド」ではなく「センター付近での時間差攻撃」を多用するという、「相手のブロックシステムを見て、組み立てを柔軟に変える」ということを当たり前のようにやってのけた)。ただ、それにこだわり過ぎる余り、ユキは「いざ困った場面」で両レフトにハイセット(2段トス)を上げるという「選択肢」を「忘れてしまった」かのようにも思えた。前日の準決勝でのJT戦、レセプションがあれだけどうしようもないほど乱されていながら、それでもほとんどハイセット(2段トス)を上げようとしなかった彼女を見て、それを強く感じた。2セット目にユミに2枚替えでセッターが代わってからが唯一、この試合で少し「試合らしい」展開になったのも、ある意味納得がいった。ユミの方が、ハイセット(2段トス)を上げる「選択肢」を忘れていなかったからだ。

そして、この日の東レ戦。コートエンド一番奥から打たれる、東レの各選手の落ちるフローターサーブに対して、前日のJT戦の再現を見ているかのような、レセプションの乱れよう・・・しかし、この日のユキはきちんと両レフトにハイセット(2段トス)を上げる「選択肢」を「思い出して」くれていた!

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