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2007年2月12日 (月)

東京体育館(テレビ)観戦記(その2)

続いて、久光と併走する武富士。

開幕当初、配列について恐らく試行錯誤の段階だろうと書いたが、第2Legに入り、石原監督はやはり配列を変えてきた。エステス選手と足立選手の表裏を入れ替えたのだ。

この意図するところは、本当のところまではもちろん私にはわからない。戦術論的に推測すれば、以前にも説明したとおり、バックオーダーが主流の現在のバレー戦術では、両レフトのうちライトからの攻撃が得意な選手を表レフトに配することが多い。さらに、両レフトのタイプが明らかに異なる、即ち片方がどちらかと言えばテクニシャンタイプでもう片方が大砲型の場合は、大砲型を裏レフトに配してバックアタックを打たせる戦略がある(裏レフトの方が、セッターが前衛即ち前衛アタッカーが2枚の、攻撃が弱い場面で後衛に位置する機会が多いため)。今シーズンの武富士は開幕当初は、後者の戦略を意図してエステス選手を裏レフトに配したのかもしれないし、あるいは明らかに練習不足と思われる彼女に、いきなりライトから打たせる負担を背負わせたくなかったのかもしれない。しかし結果的に東京体育館でのJT戦を見ると、彼女が前衛ライトに位置する(オポジットの吉澤選手が前衛レフトに位置する)ローテーションにおいては、彼女がネット際に構えてレセプションから外れていることが多く、そのまま結局レフトからオープントスを打っているケースが多かったため、決して彼女が前衛ライトでプレーする機会はさほど見られず、上述の戦術論的観点で「表裏」を入れ替えたわけではないようだ。もう一つの可能性として、開幕当初に見られた弱点であった、オポジットの吉澤選手が前衛センターでのローテーションでのレセプションの場面で、レセプションを苦手とする足立選手がレセプションに参加しなければならなくなっていた点を、両レフトの「表裏」を入れ替えることでエステス選手にレセプションを任せるという意味合いがあるのかもしれない。

具体的には指摘できないが、開幕当初には何か「違和感」を覚えた今シーズンの武富士の「配列」だが、少なくとも足立選手とエステス選手を入れ替えたことで、「スムーズになった」印象はある。その「配列」操作が果たして功を奏しているのかどうかの評価として、今日の久光との首位攻防第2ラウンドが一つの試金石になるかもしれない。

ただし、昨シーズン見られた武富士の「強み」であったはずの、レフトへの早い平行とライトからのハニーフの高さのある攻撃、という「両サイド」を意識させる2種類の攻撃パターンが影を潜め、足立選手にしろエステス選手にしろ、すっかり「レフトサイドからの攻撃のみ」になってしまった感は否めない。吉澤選手のライト攻撃では如何せん「高さ不足」が否めない。昨シーズンは久光に勝ち越していた武富士だが、今シーズンの戦いぶりで果たして久光相手に善戦できるだろうか? 武富士としては何とかサーブで久光の安定したレセプションを揺さぶって、「個人技同士の戦い」に持ち込むしかないであろう。


次に、JT。

開幕当初、組織的リードブロックでワンタッチを取った後のトランジションに力を入れてきたのが目を惹いた今シーズンのJTだったが、東京体育館での戦いぶりを見る限り、若干「ボロ」が見え始めた感が否めない、、、。センター陣がトランジションで2段トスを上げに行く場面での「繋ぎ」の不安定さが顔を出し始めているのだ。

確かに寺廻監督の「やろうとしている戦術」は手に取るようにわかる。前衛両サイドの早い平行トスを、レセプションの場面でもトランジションの場面でも常に繰り出せるようにして、相手チームのブロッカーをスプレッド状態にさせておいて、ケニー選手の中央からのパイプ攻撃を絡める。理念としてはよくわかるが、現在のJTはあまりにも完成度が低すぎる。結局のところ、安定してレフト平行を打ちこなせているのは谷口選手ただ一人。さらに相手チームのブロッカーをスプレッド状態にするには、レフトへの高速平行だけでなく、センターから「高くて早い」速攻が繰り出されて相手センターブロッカーにコミットブロックを強いることが必要不可欠だが、そのような速攻は全く繰り出されない。従って、ケニー選手のパイプ攻撃が見事に決まったように見えても、それは「チーム戦術としての」攻撃システムではなく、ただ単に彼女の卓越した身体能力によって決まっているだけの「個人技としての」攻撃となっている。

なお、谷口選手の対角の高木選手がレフトとしては頼りないのは確かに否めず(もともとセンタープレーヤーであるからして仕方あるまい、、、)、リベロの菅山選手をアタッカーに戻して、谷口選手の対角に配したらどうかという意見を散見するが、恐らくそれは少なくとも今の寺廻監督の頭の中にはないであろう。なぜならば、菅山選手は、あの身長にして実は「テクニシャンタイプ」というよりどちらかといえば「大砲型」のアタッカーなのだ。時間差攻撃でセンター中央に切り込むアタックは得意だが、実は両サイドの早い平行トスを打つのは決して得意でなく、むしろ高いオープントスを打つ方が得意である(それは、全日本に選ばれるずっとずっと前から、彼女のプレーを見てきたファンならよくご存じのはずだ)。寺廻監督が目指すバレーは旧来の日本型バレーである「各プレーヤーの個人技や得意なプレーに依存したバレー」ではなく、「ある首尾一貫したバレースタイルが各選手の共通の理解として存在し、コート上にどの選手が入っても変わらないバレー」であり、今年のJTの各選手が共通の理解として念頭に置く「首尾一貫したバレースタイル」においては、レフトプレーヤーは「どのような場面でも高速のレフト平行トスを打つ」ということになっているはずだ。それを見事に体現できているのが谷口選手であり、恐らくそれを体現できなかった熊前選手が引退に追い込まれたのではと(勝手に)推測する。

結局、寺廻監督のやりたいバレーが体現されるまでには、まだまだ長い道のりが必要なようだ。今シーズンについては、ケニー選手の卓越した身体能力と「心中する」しかないと考えたようであり、実際例えば、本来はサーブ力のある谷口選手にもスパイクサーブを止めさせて、チーム戦術として相手チームの狙うべき場所へ確実に打つサーブに切り替えさせている。これは、それによって相手チームの攻撃システムを「確実に」単調にさせてブロックシステムでワンタッチをとる「確率を上げ」て、トランジションでとにかく「ケニー選手に決めてもらう!」ということであるはずだ。しかし、それですらも、トランジションでの「繋ぎ」が不安定であるようでは、元も子もないのだ。寺廻監督の苦悩はまだまだ続きそうだ。

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