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2006年12月21日 (木)

レゼンデバレー(第5章)- 男子バレーの女子化

ブラジルの高速立体的3Dバレーになくてはならないのが、セッターのリカルドのセットアップ能力であることは、誰の目にも明らかであろう。今や彼の偉大なる先輩である、リマ・マウリシオを超えたと言っても過言ではない。

(第2章)で書いたように、現在のブラジルでは、ファーストタッチをセッターのリカルドが行った場合、リベロのセルジオがコート中央付近、アタックラインのすぐ後ろで踏み切ってジャンプトスを行う。従って、各アタッカーはアタックライン付近から上がってくる高速トスを打つ練習を、相当に行っているはずである。逆に、セッターのリカルドも、当たり前のようにアタックライン付近から高速トスを上げる練習を、普段から相当に行っているはずであり、極端な言い方をすれば、現在のブラジルにあっては、理想的なレセプション・ディグの目標点が、ネット近くの位置ではなく、ネットからやや離れてアタックライン付近にあると想定して、各選手がプレーしているようにも見えるくらいだ。これには、一つにはレセプションを行う選手の精神的・肉体的プレッシャーが随分軽くなる効果があると思われる。例えば全日本の場合は、理想的なレセプションをネット際のある狭い範囲に確実に上げなければ、効果的な攻撃システムを組み立てられないため、レフトの選手が海外勢の強烈なスパイクサーブに対して、必死に倒れ込みながらレセプションを行うシーンをよく見かけるわけだが、それでたとえ理想的なレセプション(「Aキャッチ」や「Aカット」などとマスコミでも取り上げられるようになったが)に成功したとしても、そのレセプションを行ったレフトの選手は間違いなく攻撃に参加できなくなる。それに対して、ブラジルの場合はそこまで理想的なレセプションを上げなくても、少しネットから離れてアタックライン付近でもいい、という程度のレセプションで構わないわけであるから、必死に倒れ込む必要もなく、そしてレセプション直後に平気な顔で高速パイプ攻撃に切り込んでいけるわけである。さらには、ネットからやや離れた位置からセットアップするように心がけることは、ほとんど全日本と身長的に変わらないブラジルとして、ヨーロッパの長身国と相対する場合に「ブロックで押さえ込まれない」ために好都合な戦術にもなりうる(これについては、イタリアリーグを肌身で経験した加藤陽一選手も、日本の選手達が海外勢と対戦する場合にもっと意識するべきだということを、以前彼の特集をしていた番組内でも指摘していた点だ)。

それにしても、ネット際でなくアタックライン付近から高速立体的3Dバレーを繰り出す戦術は、それ相当の練習が必要な、高度な戦術であることは間違いない。しかしながら、実は過去にそれに近い戦術を繰り出していたチームがあった。それはシドニーオリンピック当時の韓国女子ナショナルチームである。

当時の韓国女子ナショナルチームは、アジア本来の女子バレースタイルを追求し、素晴らしいバレーシステムを作り上げていた。リードブロックは採り入れていなかったが、相手の両サイドの攻撃に対して2枚ブロックを確実に敷いたうえで、ブロックに参加しなかったもう一人の前衛プレーヤーが素早く後衛に下がってディグのフォーメーションに参加する。そこで確実にワンタッチを取る、あるいはブロックのコースを抜けてきたスパイクを着実にディグで繋いで、それをコート中央付近からブロックに跳ばなかった前衛プレーヤーへの高速平行トスへと繋げる、、、このブロックからのトランジションの戦術が、見事に「システム化」されていた! 当時の韓国はシドニーオリンピックで惜しくもメダルを逃したとは言え「正真正銘」世界のトップレベルであり、一見同じようなバレースタイルに見えてその実、そういった「システム化」が全くなされていない全日本からすれば、全く歯の立たない相手であったことは至極当然の結果であった。しかし、その韓国のバレーシステムは最初に書いたとおり、上背のないアジア勢本来の、女子独自のバレースタイルを追求した理想型であったと思う。

その意味で、レゼンデ監督が目指したバレースタイルというのは、女子バレー独自のトランジションのシステムに、男子バレー独自のブロックシステム(バンチ・リードブロック)を組み込むという、「女子バレーと男子バレーの融合」であったと思う。そして、その完成型が今回の世界バレーでブラジル男子ナショナルチームが見せてくれたバレーであったと言ってよいだろう。女子中心に語ってきた当ブログとしては、再三「女子バレーの男子化」について触れてきたわけだが、これからの時代のキーワードは「男子バレーの女子化」なのかもしれない。ブラジルの男女ナショナルチームが、結果的に男女の監督を入れ替えたような形になって、それで現在成功しているのも、その意味ではいい象徴とも言えるだろう。

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