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2006年12月10日 (日)

レゼンデバレー(第3章)- 徹底したデディケートブロック

ブラジルが、高速立体的3Dバレーを確率高く繰り出せる秘訣に、安定したディグがあることは(第2章)で述べた。しかし、安定したディグを展開するためには当然のことながら、ブロックシステムが有効に機能して、相手の繰り出す攻撃システムに対して確率高くワンタッチを取ることが必要不可欠である。

リードブロックは当たり前として、それが上手く機能するための鍵は「相手の攻撃システムをどう(狭い範囲に)絞り込めるか?」である。そのためにサーブで後衛レフトを徹底的に狙って、相手の高速パイプ攻撃を潰すことが重要な戦略の一つとなるわけだが、常にそれが可能なわけではない。相手が完璧なレセプションを展開していたとしても、何とかブロックを機能させなければ、世界のトップレベルの試合で連戦連勝を果たすことは不可能である。そのためには、データバレーを駆使しながら、ブロッカー3枚をどのように配置するか? これがリードブロックそのもの以上に、重要な戦術となる。

その点に関して、ブラジルは基本的に「バンチ」を採用している場面が多いわけだが、ブロッカー3枚がセンター中央付近にバンチで構えて、両サイドのアンテナとアンテナに挟まれた9mの空間全てに対して均等に対応しようというのが厳密な「バンチ」であるとすれば、決してそのような「バンチ」ではない。両サイドのアンテナとアンテナに挟まれた9mの空間全てではなく、相手のセッターのセットアップ位置を基準として、その位置から相手のレフト側(自チームのライト側)のアンテナまでの空間に、マークを集中させて(=「デディケート "dedicate"」)構えているのである。

「デディケート」というのは、トップレベルのバレーのみで行われる戦術では決してなく、むしろB級レベルで日常茶飯事的に行われているものである。B級レベルにおいては、ライトからのバックアタックはもちろん、セッターがバックトスを上げる攻撃自体が極めて少ない。例えば、セッターが前衛の場面では、前衛センターのAクイックと前衛レフトのレフト平行しかないということが多いわけで、その場合にブロッカー3枚がセンター中央付近に構えるのはバカげており、相手のAクイックに対してレフト側のブロッカーがコミット、レフト平行に対してライト側のブロッカーがコミット、センターブロッカーはその両方に対してリード、というのがB級レベルで一般的に採用されるブロックシステムとなり(もちろん技術レベルが低いほど、センターブロッカーはどちらかの攻撃に対してコミットとなる可能性が高いが)、逆に攻撃する側からすれば、相手のレフト側のブロッカーが自チームのAクイックに対してコミットで構えているのを確認した時点で、相手チームのフロントゾーンはレフト側が「がら空き」状態となっているわけなので、その「がら空き」のスペースへセッターがツー攻撃を繰り出せば決まる確率が高い、というのがB級レベルでの "セオリー" である。

トップレベルのバレーにおいても、何度も説明してきたように、現在のバレー戦術における基本攻撃システムは、「前衛レフトのレフト平行・前衛センターの速攻・オポジットのライト側の攻撃(ライト平行あるいはバックアタック)・後衛レフトの高速パイプ攻撃」であり、両サイドのアンテナとアンテナに挟まれた9mの空間の中で、攻撃ポイントが「4つ」あるわけだが、そのうちの「3つ」は( "バックセミ" ならぬ "Cクイック" 的な高速パイプ攻撃もあるが、基本的には)セッターのセットアップ位置から、攻撃チーム側のレフト方向のアンテナまでの空間に集中しているわけであり、ただ漠然と「アタッカー4枚対ブロッカー3枚」の戦いを挑むよりも、「デディケート」を採用して、「前衛レフトのレフト平行・前衛センターの速攻・後衛レフトの高速パイプ攻撃」の「アタッカー3枚対ブロッカー3枚」の戦いを挑んだ方が、理にはかなっているわけだ。しかしながらB級レベルと違い、ライト側から攻撃を仕掛けるオポジットにはスーパーエースが配されているわけであり、相手のライト側の攻撃に対するマークを甘くする「デディケート」は大きなリスクを伴う。特に、ブラジル相手に「デディケート」を行えば、恐らくはアンドレに面白いように高速ライト平行・高速バックアタックを決められるのがオチであろう。従って、ヨーロッパの強豪勢をしても、ブラジル相手に「デディケート」は行えないのである。

ところが逆に、ブラジルはヨーロッパの強豪勢相手に、徹底して「デディケート」を採っている。これは、たとえ相手チームがオポジットのライト側の攻撃を多用したとしても、レフト側のブロッカーとセンターブロッカー2枚が「リード」で充分対応できるという、強い自信の表れである。今大会、ヨーロッパの強豪勢がこぞってブラジルの高速パイプ攻撃を採り入れていたのと同様、オポジットの選手のライト側からの攻撃も高速化を図ろうという意図は見受けられた。しかし、如何せんアンドレほどの高速ライト平行や高速ライトバックアタックに敵うものではなかった。普段から自チーム内で、高速のライト攻撃と相対する練習を行えるブラジルとしては、他のチームの少々早い程度のライト攻撃など、何でもないということであろう。実際今大会のブラジルのブロック陣は、相手チームのスーパーエースに上がる、従来どおりのライト攻撃に対しては、相手チームのレフト側に「デディケート」していながら、「リード」で見事に3枚ブロックを完成させていた! 少し早いライト攻撃に対しても、遅れながら空中で見事に2枚ブロックを完成させていた! これが可能であるならば、自信を持ってレフト側に「デディケート」できるわけだ。「デディケート」していれば、相手チームがたとえ高速パイプ攻撃を繰り出したとしても、最悪でもマンツーマンで「レフトブロッカーが相手センターの速攻に、ライトブロッカーがレフト平行に、センターブロッカーが高速パイプ攻撃に」対応できるのである。相手チームの前衛センターの速攻に対して「リード」でワンタッチをとったとして、その場合ヨーロッパ勢はセンターブロッカーがワンタッチを取っているのが普通であるのに対し、ブラジルはレフトブロッカーがワンタッチを取っている場面が目立った。そこが、ブラジルとヨーロッパの強豪勢とのブロック戦術面での大きな差であった。

逆に言えば、ライト側から攻撃するオポジットの選手が如何に「早い」攻撃を繰り出せるか? が、現在のトップレベルの男子バレー界で最も要求される課題である、とも言える。これは言い方を変えれば、「脱スーパーエース」とも言えるわけであり、それは(第4章)として改めて書こうと思う。

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コメント

管理人さん、ご返答下さりありがとうございます。レセプションの件については期待しています。アメリカがこのシステムを始めた時は「サーブレシーブの安定」のためにこのシステムを取り入れたと思っていましたから。

今回の連載(?)のレゼンデバレーは楽しく拝見させてもらっています。レゼンデバレー2については全く同感です。3についてはブラジルのブロックが「デディケート」なのは観戦していて分かりましたが、それに加えてミドルブロッカーが相手の速攻の正面(「フロントブロック」?)に入っているように見えたのですが・・
また、レゼンデは非常に自分たちのスタイルを明確に持っている監督ですよね。私が観戦したチェコ戦ではアンドレの調子が悪く「片翼飛行」になりかけたため、さっさと変えてしまったぐらいですから。
高速パイプについてはブラジルは本当に絶対座標にトスが上がっていました。むしろ、ヨーロッパ勢のほうがパイプの場所を細かく変えていたようにも見えました(スプレッドの間にパイプを通す)。ブラジルのような攻撃は、リカルドの様に技術の高いセッターを持つチームでないと不可能のようにも感じます。

仕事も大変でしょうが(実は私も同業者です)連載をお願いします。

投稿: kgcci | 2006年12月11日 (月) 01時21分

なべさんは見てないと思いますが、昨日深夜、アジア大会準々決勝の日本対サウジアラビアがBS1でやってたのを見ました。0-3で見事なほど完敗です。これを地上波で放送すればええのにと思いましたわ。ちなみにサウジは世界ランク106位だそうです笑

相変わらず下手なブロック。簡単に崩れるサーブレシーブ。勝負どころで弱気なサーブ。アジアレベルでもこんなものかと思いましたわ。

特にスーパーエースの山本は、本当、何もだけないですよね。ブロックはタイミングが遅れるわ。スーパーエースとはいえ、無さ過ぎるレシーブ能力、勝負どころでミスや弱気なプレーを繰り返す。なぜ、直弘をもっと使ってあげないのか、気の毒になりますわ。石島もサーブはいいですが、ブロックがだめですよね。日本のシステムのせいなのか、個人の資質の問題なのか。越川も最近のピンチサーバー扱いに不満があるのか、益々プレーの精度がさがってますよね。


そろそろ監督の代え時がきたんちゃいますか。

ジャパンマネーで世界的な指導者を引っ張ってくればええのにと思いますわ。

今やったら日本にあいそうな監督って誰かいます?

投稿: オーツカ | 2006年12月12日 (火) 13時19分

>kgcciさん

たいへんお待たせしました。イタリア対キューバの試合、ようやく再放送されたものをビデオで見てみました。

おっしゃるとおりイタリアは、第1〜3セットでは、表センターのマストランジェロがファーストサーバーとなるように、自チームがレセプションからスタートするセットとサーブからスタートするセットで、ローテーションを一つ回す戦術を採っています。これについては、キューバのスタートローテーションが常にセッターが前衛ライトで始めているのに、ちょうど自チームのローテーションをあわせて(マッチアップさせて)いるということだと思います(マストランジェロが後衛ライトの際、セッターのベルミリオが前衛ライトとなります)。イタリアはデータバレーの国ですから、相手チームの攻撃に対してどのようにブロックマークを敷くか? 事前に細かく決めて試合に臨んでいるはずです。ですから、自チームがレセプションからスタートするセットとサーブからスタートするセットで、相手チームとのローテーションの関係が「ずれない」ように、一つ回しているわけです。ところが、第3セットはそれが思ったように機能せずにセットを取られたと、恐らく監督は判断して、表裏を3つ回してスタートしたのが第4セット、ということのようです。

>仕事も大変でしょうが(実は私も同業者です)

あっ、そうなんですか?! お互い頑張りましょうね! 仕事もバレー観戦も(笑) 

投稿: T.w | 2006年12月31日 (日) 16時51分

デディケート???違うのでは??

投稿: ?? | 2008年9月 9日 (火) 13時25分

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