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2006年12月17日 (日)

レゼンデバレー(第4章)- 脱スーパーエース

レゼンデ監督のバレー戦術の原点は、彼がナショナルチームの監督を初めて務めた頃の、ブラジル女子ナショナルチームのバレースタイルに隠されている。

ブラジル女子ナショナルチームを世界のトップレベルにまで押し上げたのが、彼の手腕にあることは誰もが認めるところであろうが、当時のブラジル女子ナショナルチームは、決してレセプション・ディグの良いチームではなかった。それが、現在のような(男子には及ばないにしても)高速立体的3Dバレーをお家芸とすることになった背景には、世界No.1セッターと言われたベンツリーニ、さらにずっと彼女の控えであった(シドニーではレギュラーセッターだったが)現在のレギュラーセッターでもあるフォフォンのトス回しにあるのは言うまでもない。しかし、レセプション・ディグが悪ければいくら素晴らしいセッターがいたとしても、高速3Dバレーは展開できないはずである。そこで彼は、ディグの悪さを補う最も効率の良い方法として、女子バレー界でいち早くバンチ・リードブロックシステムを採り入れた。さらに、レセプションの悪さを補う方法として、オポジットにレイラ・バロスを配した。

彼女はもともと左利きのレフトプレーヤーであり、ナショナルチームに選ばれた当時はアナ・モーゼらの主軸レフトプレーヤーの控えであった。上背はなかった(確か179cm)が、そつなくレセプションもこなし、時間差攻撃などの切れ味いい攻撃や少々乱れぎみのバックアタックのトスなどを打ちこなす能力に長けていた。アトランタオリンピックの後、次のシドニーに向けてレゼンデ監督はその彼女をオポジットへコンバートしたのである。もちろん、彼女はオポジットとしてレセプションに(基本的には)参加しないわけであり、表向き上は「スーパーエース」としてオポジットに配されていると言えるのであろうが、本来「スーパーエース」というのは、レセプションが乱れた苦しい場面で、高い2段トスを打って相手の3枚ブロックをぶち破ることが要求されているはずであり、その意味では、彼女は「スーパーエース」というのとは少し違う存在であった。彼女要求れていたのはむしろ、さほど高いと言えなかった当時のブラジル女子ナショナルチームのレセプション成功率をもってしても、確率高く高速立体的3Dバレーを展開させること、にあった。

男子バレーにあっては、女子以上にスパイクサーブが強力である。勝つためには、強力なスパイクサーブで相手チームのレセプションを崩し、相手の攻撃を単調にさせておいて3枚ブロックで押さえ込むのが王道であり、逆にレセプションを乱された側としては、その苦しい場面で上がる2段トスの攻撃で、3枚ブロックをぶち抜ける「スーパーエース」がいることが不可欠、、、これが最近の男子バレーの世界であった。事実、最近の世界の男子バレー界でのスーパースターと言えば、すべからく世界各国の「スーパーエース」であった(イタリアのゾルジやジャーニ、キューバのデスパイネ、ブラジルのネグロン、オランダのファンダール・ミューレン、スペインのパスカル、セルビア・モンテネグロのミリュコビッチ等)わけだ。しかし、現在のブラジル男子ナショナルチームに、「スーパーエース」は存在しない。2003年のワールドカップで大活躍した、アンデルソンという素晴らしい「スーパーエース」の攻撃力を捨ててまで、レゼンデ監督は安定したレセプションを追求し、それを土台にして高速立体的3Dバレーを展開しようとした。

以前にも、現在のブラジル男子ナショナルチームのレセプションシステムとして、4枚レセプションを採っているということを書いたが、少し言葉足らずだったので誤解を招いたかもしれない。私の言いたかった「4枚レセプションシステム」は、決して「常に4枚で」レセプションを行うフォーメーションを敷く、と言う意味ではなく、あくまで「やろうと思えばレセプションもこなせるような」選手をオポジットに配する、という意味である。従って、アンドレが実際にレセプションを行っているわけではない。もともとレフトプレーヤーだった左利きのレイラ・バロスをオポジットに配したのと同じ意味合いで、レゼンデ監督はオポジットに左利きのアンドレを配したのだ。

「スーパーエース」の攻撃力を捨てることは、もちろんリスクを伴う。相手な強力なスパイクサーブでレセプションを乱された場合にどう切り抜けるのか? これにきちんとした答えを用意していなければならない。時にはレセプションにも参加できるだけのレシーブ能力を持ちつつ、かつ少々レセプションが乱れようとも、高速立体的3Dバレーを展開できるだけの柔軟な攻撃力を持つ選手が両サイド(レフト・ライト)に配されているからこそ、「スーパーエース」の攻撃力を捨てることが出来るのである。今大会ブラジルに次いでメダルに輝いたのが、ポーランド・ブルガリアの両国であったことを、予想外の結果と捉えてらっしゃる方は多いと思う。しかし、ここ1・2年のワールドリーグで両国がメダル争いを繰り広げていたことを知っていた方ならば、決して意外な結果とは感じてらっしゃらないであろう。私もその一人なのだが、今大会での両国の戦いぶりを最後まで見て、ようやくこの両国が世界のトップに仲間入りしてきた理由がわかった。この両国はブラジルほどではないにせよ、「脱スーパーエース」の道を歩みつつあるのである。オポジットの選手が高速のライト攻撃を繰り出す、、、これが相手チームにデディケートブロックをさせないための重要な鍵であり、それが自チームの高速パイプ攻撃の決定率を上げる鍵でもある。どんなに素晴らしい「スーパーエース」がいても、その一人の選手の個人能力ではメダル争いは出来ない、間違いなくそういう時代になったと言っていい。

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