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2006年12月 7日 (木)

レゼンデバレー(第1章)- 高速パイプ攻撃

長い長ーい、ココログのメンテナンスにより、ずいぶんアップが遅れたことを最初にお詫びいたします。

いよいよ世界バレー男子について、総括していきたいと思う。
「バレーボール用語集」のカテゴリーの中にある、ブロックシステムの変遷・レセプションシステムの変遷を必ず頭に入れてから、読んで頂きたい。)

やはり終わってみれば、ブラジルの2連覇に終わった世界バレー男子だった。
レゼンデ監督が、ブラジル女子ナショナルチームの監督であった頃から目指していた戦術を、今大会のブラジル男子ナショナルチームは見事なまでに体現していた。彼のバレーに魅了され、10年以上見続けている私にとっては、何とも感慨深い決勝戦だった。

素人目にもわかる、現在のブラジルの特徴は、あの「高速」パイプ攻撃を基軸とした高速立体的3Dバレーであろう。しかし「高速」パイプ攻撃自体は、決して今大会で初めて見られた攻撃ではない。ふり返れば2003年ワールドカップで、そもそものパイプ攻撃を'92年のバルセロナオリンピックで完成させた先駆者と言っていいジオバーニが、これまでのパイプ攻撃よりもさらにトスの低い、あの「高速」パイプを完成させ、それによって彼は見事にスパイク賞を獲得した。当時はブラジルといえども、彼以外には「高速」パイプを打つことは出来ず、セッターは彼が打つパイプ攻撃とそれ以外のレフトの選手が打つパイプ攻撃とでは、明らかにトスを変えていた。ところが僅か1年で、ジオバーニよりも若いジバやダンテといったレフトの選手達が、ものの見事に「高速」パイプをマスターし、それがアテネオリンピックの金メダルに繋がる一つの大きな要因となった。

因みに「高速」パイプは、ただ「高速」なだけではない。そもそものパイプ攻撃は、後衛センターから両サイドのアンテナのほぼ中央付近に向かって、アタックラインより後ろで踏み切って打つバックアタックであった。即ちパイプ攻撃を打ちに入る後衛レフトの選手は、Aクイックを打ちに入る前衛センターに対して、ネットから見てほぼ真後ろから重なるように助走に入る形となる。相手チームのセンターブロッカーがコミットでAクイックに跳んできたときに、そのブロッカーがちょうどジャンプし終わって2度跳びが出来ないぐらいのタイミングで、そのブロッカーの手の上をボールが通過するのがパイプ攻撃であった。時代が進んでパイプ攻撃が当たり前の時代となると、相手チームの前衛センターの繰り出す速攻が、コミットブロックを採らなくてもリードブロックで充分ワンタッチが取れる状況である場合には、相手がパイプ攻撃を行っても、ブロッカー3枚がバンチで構えていれば3枚ブロックでカモに出来るようになった。この段階が現在の女子バレーの世界であると言ってよい(パイプ攻撃が3枚ブロックで見事にシャットされる場面をよく目にすることがあるはずだ)。そのブロック有利の状況を打開すべく「高速」パイプは生まれた。但し、これまでのパイプ攻撃のトスだけを単純に低くしただけでは、実は「高速」パイプとしては必ずしも機能しない。なぜならば、世界のトップレベルのバレーにおいては(女子であれ男子であれ)、センターブロッカーはジャンプしなくても手がネットより上に出るぐらいに大型化が進んでいる。従ってトスをただ低くしただけでは、コミットで前衛センターの速攻に跳んだ相手のセンターブロッカーが、まだジャンプし終わらないタイミングでトスを打つことになる。そうすれば、最高点からは落ちながらもまだまだネットより上にある相手のセンターブロッカーの手にブロックされてしまい得るのである。もちろんブロッカーの手を避けて打つことも出来なくはないが、トスが低い分アタッカーにも余裕はさほどないため、充分な体勢で打てるトスではない。従って、より確実に「高速」パイプを機能させるためには、これまでのパイプ攻撃とは違って、前衛センターの選手の真後ろではなく、少し「横方向にずらした」形でネットに向かって「縦方向に」助走に入る形となった。例えるならば、これまでのパイプ攻撃で繰り出される時間差攻撃が「Aクイックと少しネットから離れたAセミ(前セミ)攻撃」であったものが、新しい「高速」パイプ攻撃では「Aクイックと少しネットから離れた低いBセミ攻撃」極端に言えば「Aクイックと少しネットから離れたBクイック」というものになったわけだ(ヴァリエーションは色々あって、「Bクイックと少しネットから離れたAセミ(前セミ)攻撃」であったり「Aクイックと少しネットから離れたバックセミ攻撃」なども見られる、、、恐らくファーストタッチのボールが乱れて、セッターのトスアップの位置が左右にずれた場合に、前衛センターはセッターとの相対的な位置関係を保ったままサイン通りの速攻を打ちに動くのに対し、「高速」パイプはコート上の絶対座標に従って、セッターが動いても常にサイン通りの場所にトスが上がる、という形なのだろうと思われる)。

さらに月日が流れ、以前ワールドリーグに関する投稿で書いたとおり、アテネオリンピック当時にブラジル男子ナショナルチームが独占していた「高速」パイプ戦術は、世界中に一気に広まった。今大会ベスト8入りを果たした各国のうち日本以外は(即ち上位進出を果たしたヨーロッパ勢各国は)、すべからく「高速」パイプを戦術として当たり前のように採り入れていた。従って、Pool F での各試合及び、Pool E でのポーランド対ロシア、ポーランド対セルビア・モンテネグロ戦では、相手の「高速」パイプ攻撃を繰り出させないように、スパイクサーブで相手のレセプションを乱すことに成功したチームがセットを取る、あるいは勝利するという展開になっていた。ある意味戦術的にはヨーロッパの強豪国もブラジルに追いついていたはずの中で、ブラジル優位の図式が崩れなかった理由は、何だったのか? それは(第2章)で詳しく書きたいと思う。

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コメント

こんにちは

渾身のレポありがとうございます。

男子決勝観戦してきましたよ!

まるで、サンバのコンサート会場みたいでした。
ポーランドの選手があの異様な雰囲気に飲み込まれたら、一方的な展開になるなぁ、と思っていたら、案の定でした。

ブラジルバレーは超・ウルトラ・スーパー高速でしたが、それを支えているのは素人考えですがやっぱり、リカルドじゃなかろうか?、と思いました。
ジバやダンテの代わりはいても、リカルドの代わりはいないような気がします(ブラジルの控えセッターは見たことないですが・・・)

では、レゼンデバレー(その2)を楽しみにしています!

投稿: ディーラー | 2006年12月 7日 (木) 23時52分

世界の高速バレーに日本はライトからのオープン攻撃で対抗!
…。
…。
…。
なんだかため息を通り越して笑ってしまいますよね…ははは…。

投稿: チャチャチャ | 2006年12月 8日 (金) 16時38分

>ディーラーさん

なんとも亀レスで(汗)申し訳ありません m(_ _)m

ポーランドは、ここ1・2年ワールドリーグでは何回もブラジルと死闘を演じてましたが、さすがに世界選手権の舞台は違ったようですね。ブラジルは、世界中どこに行ってもあの熱狂的サポーターがいそうだから、強いですよね。世界の強豪といえども、ブラジルを相手にするときには、どこで戦うにしても、あのサポーターを相手にしなければならないですから、、、。

リカルドについては、おっしゃるとおりだと思います。今回控えにはマルセロ選手が入っていて(アテネまでは、リマ・マウリシオがいました!)予選ラウンドでの格下相手では、結構彼もトスを上げる場面がありましたが、基本的には彼が出ても、ブラジルのバレースタイルはまったく変わりませんでした。おそらく、ブラジル国内では、「あのバレースタイル」が普通に浸透しているんじゃないでしょうか?(想像ですが、、、)


>チャチャチャさん

はじめまして。
おっしゃるとおり、男子の世界は今や「ライト攻撃の高速化」がキーワードとなりつつあります。直弘選手なども、以前に比べればずいぶん早い攻撃を打てるようにはなりましたけど、、、あまりにも見劣りしますね、やっぱり。2年前にVリーグの連勝記録を塗り替えた東レ男子は、ブラジル男子のバレーを目標にしていましたので、日本の現状としては東レ男子が一番世界に近いバレーをしていることになりますが、この前ビデオで久々に見て、やっぱり本家本元のバレーをこれだけ見た後だと、あまりにも見劣りしてしまいました、、、。

投稿: T.w | 2006年12月24日 (日) 17時01分

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