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2006年7月23日 (日)

たまには男子(ワールドリーグ 日本-アメリカ その2)

左利きのアンドレ選手をライト/オポジットに配置したブラジル男子ナショナルチームの唯一の弱点として、彼が前衛レフトの位置でのサーブカットフォーメーションがあった。

バックオーダーが常識の現在のバレーシステムにあっては、ライト/オポジットの選手が前衛レフトのローテーションでは前衛はレフト側から「ライト/オポジット・裏センター・表レフト」(セッターと隣り合うレフト・センターを表レフト・表センターと呼び、その対角を裏レフト・裏センターと表現する)と並び、このローテーションではラリーになってもそのままの位置でプレーを続ける。以前、フロントオーダーの欠点として「各ポジションの専門性が保てない」ことを挙げた。それはライト/オポジットの選手と「裏」レフトとの関係において生じる問題なのだが、実はバックオーダーでも6回のローテーション中1回だけ、ライト/オポジットの選手と「表」レフトとの関係においてこれと同じ問題が生じ、それが今問題にしているローテーションなのである。従って、現在のトップレベルのバレーシステムにおいては、表レフトと裏レフトの配置は、前衛ライトをこなす能力によって決まっている(その能力が高い方が表レフト)ことが多い。

例を挙げると、、、
・パイオニア:
表レフト 〜第10回Vリーグまでが斎藤元選手・第11回が榛沢選手・第12回が栗原選手
裏レフト 佐々木選手
・久光製薬:
表レフト 落合選手
裏レフト ケニア選手
・東レ:
表レフト 向井・イェレナ選手
裏レフト 大山選手

表レフトに配される選手が前衛ライトをこなせるとしても、ライト/オポジットに配される選手が前衛レフトをこなせなければ意味がない。これまで男子バレーの世界では、ライト/オポジットに配される選手はスーパーエースであり、チームで一番2段トスを打ち切れる選手なのであるから、前衛レフトをこなすことなど何の問題もなかったわけだが、ブラジル男子ナショナルチームの敷いた新しいシステムでは、左利きの早い攻撃を得意とする選手が前衛レフトをこなさなければならないという問題が(唯一)生じた。そのためこの当該ローテーションで意外と失点する結果となり、その際にレゼンデ監督は、左利きのアンドレ選手を右利きのアンデルソン選手に交代させる戦術を採っていた。

昨日・今日のアメリカ男子ナショナルチームは、ライト/オポジットにスーパーエースのスタンリー選手ではなく、右利きの小型で、早いトスを打ちこなせるマッケンジー選手を配し、4枚サーブレシーブを採っていた。右利きの選手のため、上述のブラジル男子ナショナルチームの呈した弱点は問題とならない。そして象徴的だったのが、各セットいずれも、以前の投稿で問題に挙げた「セッターが後衛センターに位置する(=ライト/オポジットが前衛センターに位置する)サーブカットローテーション」を最後に回ってくるローテーションにしていたことである。このローテーションだけ、以前私が名付けた「男子型」のサーブカットフォーメーションとなるために4枚サーブレシーブが採れず、監督としては「最も弱点となる」ローテーションと考えているようだ。今年の世界バレーに向けて、世界各国が「どのローテーションからスタートするのがトレンドか?」意識してみていきたいと思う。

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たまには男子(ワールドリーグ 日本-アメリカ その1)

かつて、寺廻監督時代の全日本男子は、当時としては画期的であった、4枚サーブレシーブシステムを採った。ライト/オポジットのポジションにはサーブレシーブを行わないスーパーエースを置くのが通常の男子バレーの世界で、本来はレフトの加藤選手を同ポジションに置いたのである。

そのシステムが生まれる背景にあったのは、「日本のサーブレシーブ能力が世界よりも劣っている」という認識であったが、ところが世界のトップレベル、すなわちブラジル男子ナショナルチームは、「サーブレシーブ能力が世界でもトップレベルである」にも関わらず、アテネオリンピック本番で同じシステムを敷いた。前年のワールドカップ2003で、スーパーエースでありながらアタック決定率の1位争いを最後まで繰り広げたアンデルソン選手を、わざわざ控えに回してまで、レゼンデ監督はこのシステムにこだわった。ワールドカップ優勝を果たした世界最先端のバレーシステムを、更に進化させるべく彼は、世界トップレベルのスーパーエースの攻撃力を捨ててまで、更なる安定したサーブレシーブを追求し、それを土台にして超高速3Dバレーを展開し、ついに五輪制覇の夢を成し遂げた。

アンデルソン選手の代わりに入ったアンドレ選手は、①左利きであり、②2段トスを打ち切る能力はアンデルソン選手に少々劣るものの、より早い攻撃を打ちきれる。それまでの男子バレーの常識であった「レフトサイドは早い攻撃・ライトサイドはやや高いトスをスーパーエースが打つ」というシステムから、「両サイドとも早い攻撃」というシステムに、即ちライト/オポジットのポジションの選手の役割が、「スーパーエース」から、「レフトの選手とちょうど左右対称の」役割に変えたのだった。さらには、バックアタックもいっそう早く、バックライトからのスーパーエースの打つ従来の高いトスのバックアタックは、従来のパイプ並みに低いトスとなり、そしてパイプはさらにいっそう高速のパイプとなった(ワールドカップ2003で、そもそもパイプを最初に打ち始めた先駆者とも言えるジオバーニ選手がそれを成し遂げ、アテネ本番では彼より若い、ダンテ・ジバ両選手がマスターしていた)。アテネ本番では、これら「現在の」最先端のバレーシステムはブラジル男子ナショナルチーム独自のものであった。バルセロナでパイプを完成させて優勝した時と同じ状況であり、ブラジルの優勝はある意味、必然の結果であった。

あれから2年経ち、アメリカ男子ナショナルチームは、戦術的にそのブラジル男子ナショナルチームの戦術に着実に近づいている。これまた世界有数のスーパーエースであるスタンリー選手抜きで、完膚無きまでに全日本男子を打ちのめした。そのアメリカがポーランドには2連敗したとのこと、、、。恐らくはヨーロッパ勢各国も同様のレベルに到達しているということだろう。何とも恐ろしい話だ、、、。

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2006年7月 2日 (日)

吉田新監督初采配(サマーリーグ)

吉田新監督が早速やってくれたようだ。

http://hochi.yomiuri.co.jp/sports/ballsports/news/20060701-OHT1T00122.htm

何と、ユウがセッターとしてデビューしたと! 彼女の身体能力の高さは、パイオニアファンの方なら皆さんご存じの通りであり、セリンジャー監督の時にもひたすらバックアタックを打たされたりして「いいように使われている」という感があったが、更に新しい課題が与えられたか、とも思えなくもないのだが、私としては恐らくこれはパイオニアが「本格的に組織的にリードブロックを導入する」ための下準備のような気がする。

組織的にリードブロックを行う場合、ラリー中の3枚ブロックは必至である。セッターが後衛の場面で、ラリー中に後衛のセッターがファーストヒットを行った場合、これまでのバレー戦術のセオリーでは、トスアップは前衛のオポジット/ライトの選手が行うのが常識であった。しかし、バンチ・リードブロック時代になり、もしそのセオリー通りにプレーを行うと、レフトに2段のオープントスを上げようが、センタープレーヤーにセンターオープンを上げようが相手の3枚ブロックにまともにあって終わるだけである。バンチ・リードブロックシステムを切り崩すために必要なのは、両サイドの攻撃を意識させつつ中央からのパイプを決めることであるから(これは何度も説明済み)、そのためには、ラリー中にセッターがトスアップを行えない状況であっても、両サイドとバックセンターからのパイプを使えなければならない。そのため、現在の世界のトップレベルのバレーシステムでは、セッターが後衛の場面でトスを上げにいくのは、前衛のセンタープレーヤーの役割となっている。これは現代のバレーシステムでは「常識」である(すでに1999年ワールドカップレポートの中でも書いたことである)。現在のVリーグ女子チームの中で、このシステムをきちんと採用しているのは武富士のみであり、この点からみても、現在の日本女子バレーのシステムが世界から遅れをとっているのは明らかである。センタープレーヤーが「大型化」という「うわべの側面」のみから世界を追いかけているため、最近の日本のセンタープレーヤーで身体能力の高い選手は極めて少ないと言わざるを得ない。そのため、女子では「ブロード攻撃をマスターすることで精一杯」で、はやいAクイックも打てないし、ましてラリー中に2段のセンターオープンは打てないし、レシーブはおろかトスすらまともに上げられない選手が多いのである、、、。これは男子にも当てはまることであり、象徴的なこととして、海外ではスーパーエースにコンバートされる選手は一般にもともとは「センタープレーヤー」であることが多い(古くはアメリカのスティーブ・ティモンズ、少し前ではブラジルのネグロンやマックス・ペレイラ、イタリアのジャーニなど)のに対して、日本ではほとんどがもともと「レフトプレーヤー」である、という事実がある。それだけ、日本の最近のセンタープレーヤーの身体能力は「低い」(=センターしかできない選手が多い)ということである。

少し話が脱線したが、吉田監督が本気でユウを「セッターとして育てる」つもりならば、オーソドックスに前衛でライトのポジションをとらせるであろうが、センタープレーヤーのヤンの対角に配列させて、前衛センターでセットアップをさせているのである。私の勝手な推測ではあるが、恐らく吉田監督はパイオニアに本格的に組織的なリードブロックを導入しようと目論み、そのためにはブロック後のトランジション(切り返し)が重要になることまで見越して、恐らくリードブロックの要になると思われる彼女に、ラリー中に両サイドへ2段トス及びバックセンターへパイプを上げられるように育てたい、と考えているのではないだろうか? 半年後のVリーグがますます楽しみになってきた!

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