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2005年10月 3日 (月)

ブロックシステム変遷(その2) - "パイプ攻撃"の完成

バンチ・リードブロックシステムの完成により、再びブロックシステム優位の時代を迎えつつある中で、今度はそれを切り崩す新たな「攻撃システム」が生まれることとなる。それは、'90年代前半のブラジル男子ナショナルチームによってもたらされた(当時の監督は、現在のブラジル女子ナショナルチーム監督であるギマラエス氏)。

バンチ・リードブロックシステムは、「トスが上がってから」ブロックに跳ぶシステムのため「高くて早い」速攻には弱く、また「中央にブロッカー3枚が集まっている」ため、両サイドのアンテナいっぱいまで伸びる早い平行トスにも弱い。そこで、当時のブラジル男子ナショナルチームは、当時(ひょっとすると今でも?)世界No.1セッターと呼ばれた、リマ・マウリシオの「肘をほとんど曲げずに高い位置でセットアップし、そこから左右へと自由自在に早いトス回しを出来る」という優れた資質を基軸として、両サイドのアタッカーに非常に高速の平行トスを打たせ、さらにスーパーエースとしてオポジットに配されていたネグロンには、前衛で主に速攻を打たせる戦術を採った。当時の彼の速攻には、普通のセンタープレーヤーが打つ速攻とは違う、スーパーエースならではのパワーはもちろんのこと、何よりもリードブロックをがたがたにするだけの高さとスピードがかね備わっていた。相手チームとしては、バンチ・リードブロックシステムにこだわっていたのでは、両サイドの平行にもネグロンの速攻にも対応できなくなる。そのため、仕方なくスプレッド・リードブロックシステムに切り替えざるを得ず、さらにはセンターブロッカーは要所でコミットブロックを使わざるを得なくなる。そうなった時に、次にリマ・マウリシオのトスから繰り出される攻撃が、それまでの「前衛のアタッカー同士が絡んで行う」時間差攻撃に代わって、「前衛センターの選手の速攻と後衛センターの選手のバックアタックを絡める」時間差攻撃であった。この、後衛センターの選手が打つバックアタック、それも時間差攻撃である以上は、スーパーエースが打つような高いトスのバックアタックではなく、比較的トスの低いバックアタックとなるわけで、それをパイプ攻撃と呼ぶ。このパイプ攻撃のすごいところは、前衛の両サイドのアタッカーが高速の平行を打つために、両サイドのブロッカーが"スプレッド"で相手アタッカーと同じく両サイドに釘付けの状態にしておいて、なおかつセンター中央付近での時間差攻撃を可能にしたという画期的な点であった。この画期的な武器を引き下げ、ブラジルはアメリカはじめ、イタリア・ロシア・オランダといった並みいる強豪たちを押さえて、'92年のバルセロナオリンピックでの優勝を、ノーマークでさらってしまった。

このブラジル男子ナショナルチームの画期的な攻撃システムの開発以来、男子バレーの世界では相手チームにバンチ・リードブロックシステムを採らせまいとして、両サイドの高速平行トス及びパイプ攻撃が当たり前の時代へと突入する。これは、再び攻撃システムが優位となりうることを意味するわけであり、対抗するブロックシステムとしては、如何にして相手チームの攻撃の幅を狭めるか? が重要となる。それは当然、如何にして相手チームのレセプションを乱して、攻撃の幅を狭めるか? ということを意味するわけであり、それは即ち、スパイクサーブの重要性に拍車をかける結果となった。また、相手チームのレセプションを乱せなくとも、試合の各局面において、どこにトスが上がりやすいか? ということを事前に予測して、その都度最も有効なブロックシステムを、試合中に切り替えることが要求されることにもなり、それは即ち、データバレーの重要性に拍車をかける結果にも繋がった。

以下に、参考となる書籍を挙げておく。

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