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2005年10月 4日 (火)

レセプションシステムの変遷

'84年ロサンゼルス・'88年ソウルと、オリンピック2連覇を果たしたアメリカ男子ナショナルチームは、現在のバレー戦術におけるブロックシステムの基礎とも言える、バンチ・リードブロックシステムを作り上げただけでなく、レセプションシステムにおいても、現在のバレー界の戦術の基礎を作り上げた。

彼らは2人レセプションシステムを導入、それまではほとんどのチームは4・5人で行っていたレセプションを、いきなり「2人」でやってのけたのだった。これには、当時の "ミスターバレーボール" カーチ・キライをはじめ、アメリカの選手たちは大抵みんなビーチバレー出身者であるということが大きく影響している。ビーチバレーなら2人でレセプションをすることは当たり前であるからだ。そしてその2人にはカーチ・キライはもちろんのこと、両レフトの2人が担当することになる。レフトのレセプション面での負担が非常に大きくなってしまう、この戦術を採るメリットは、他のセンター・オポジットの選手の負担を減らすことにより、それぞれにレセプション以外の面で高度な戦術をマスターさせることを可能にした、ということであった。まず、センターの選手がリードブロックをマスターできる結果に繋がった。一方オポジットの選手に関しては、強力なバックアタックを打つ能力をマスターさせることを可能にした。それまではレフトの選手が "エースアタッカー" と呼ばれ、スパイクもレシーブも巧い選手が配置されており、一方のオポジットは "補助アタッカー" と呼ばれ、どんなプレーもそつなくこなす、"繋ぎ" の巧い選手が配置されていたが、レフトのレセプション面での負担が極端に増えたため、むしろオポジットに、レフトの選手以上のスパイク力が要求される結果となったのであった。オポジットはセッターの対角に位置し、セッターが前衛の時は常に後衛にいる。つまり、前衛アタッカーが2枚の攻撃力が弱いときに、オポジットの選手にバックアタックを打たせれば、常時攻撃が3枚の状態が作れるわけである。バックアタックを中心として、それまでの "エースアタッカー" 以上の攻撃力が要求されるようになったために、そのような役割でオポジットに配された選手を、スーパーエースと呼ぶようになった。

ところが時代が進み、バンチ・リードブロックシステムが完成すると、それを切り崩すための新しい攻撃システムとして、両サイドの高速平行とパイプ攻撃を絡めた攻撃システムが、ブラジル男子ナショナルチームによって編み出されることとなる。両サイドの高速平行をレフトの選手が行うためには、上述の2人レセプションシステムを維持するのが事実上不可能となる。ポジショナルフォルトのルール上、レセプションを行う人数をレフトの「2人」に限定すると、レフトの選手がレセプションの直後に行える攻撃というのは、実は非常に限られてしまい、両サイドの高速平行トスを打つのは不可能なのである。そのため、'92年のバルセロナオリンピック当時のブラジル男子ナショナルチームは、レフトのジオバーニ・サムエルに加えて、センターに配された当時のキャプテン・ゴウベイアの「3人」でレセプションを行うシステムを採ることで、高速平行・パイプ攻撃を実現させていた。このレセプションシステムが、2人レセプションシステムの発展型として、バレー界でのレセプション戦術の基本となり、その後サーブ戦術におけるスパイクサーブの重視傾向が強まったことや'98年のルール改正でリベロ制度が導入されたことも相まって、両レフトの「2人」と、後衛センターが交代するリベロプレーヤーをあわせた「3人」でレセプションを行う形が確立する(リベロが後衛センターと交代する形が一般的なのも、この経緯が理由である)。

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2005年10月 3日 (月)

ブロックシステム変遷(その2) - "パイプ攻撃"の完成

バンチ・リードブロックシステムの完成により、再びブロックシステム優位の時代を迎えつつある中で、今度はそれを切り崩す新たな「攻撃システム」が生まれることとなる。それは、'90年代前半のブラジル男子ナショナルチームによってもたらされた(当時の監督は、現在のブラジル女子ナショナルチーム監督であるギマラエス氏)。

バンチ・リードブロックシステムは、「トスが上がってから」ブロックに跳ぶシステムのため「高くて早い」速攻には弱く、また「中央にブロッカー3枚が集まっている」ため、両サイドのアンテナいっぱいまで伸びる早い平行トスにも弱い。そこで、当時のブラジル男子ナショナルチームは、当時(ひょっとすると今でも?)世界No.1セッターと呼ばれた、リマ・マウリシオの「肘をほとんど曲げずに高い位置でセットアップし、そこから左右へと自由自在に早いトス回しを出来る」という優れた資質を基軸として、両サイドのアタッカーに非常に高速の平行トスを打たせ、さらにスーパーエースとしてオポジットに配されていたネグロンには、前衛で主に速攻を打たせる戦術を採った。当時の彼の速攻には、普通のセンタープレーヤーが打つ速攻とは違う、スーパーエースならではのパワーはもちろんのこと、何よりもリードブロックをがたがたにするだけの高さとスピードがかね備わっていた。相手チームとしては、バンチ・リードブロックシステムにこだわっていたのでは、両サイドの平行にもネグロンの速攻にも対応できなくなる。そのため、仕方なくスプレッド・リードブロックシステムに切り替えざるを得ず、さらにはセンターブロッカーは要所でコミットブロックを使わざるを得なくなる。そうなった時に、次にリマ・マウリシオのトスから繰り出される攻撃が、それまでの「前衛のアタッカー同士が絡んで行う」時間差攻撃に代わって、「前衛センターの選手の速攻と後衛センターの選手のバックアタックを絡める」時間差攻撃であった。この、後衛センターの選手が打つバックアタック、それも時間差攻撃である以上は、スーパーエースが打つような高いトスのバックアタックではなく、比較的トスの低いバックアタックとなるわけで、それをパイプ攻撃と呼ぶ。このパイプ攻撃のすごいところは、前衛の両サイドのアタッカーが高速の平行を打つために、両サイドのブロッカーが"スプレッド"で相手アタッカーと同じく両サイドに釘付けの状態にしておいて、なおかつセンター中央付近での時間差攻撃を可能にしたという画期的な点であった。この画期的な武器を引き下げ、ブラジルはアメリカはじめ、イタリア・ロシア・オランダといった並みいる強豪たちを押さえて、'92年のバルセロナオリンピックでの優勝を、ノーマークでさらってしまった。

このブラジル男子ナショナルチームの画期的な攻撃システムの開発以来、男子バレーの世界では相手チームにバンチ・リードブロックシステムを採らせまいとして、両サイドの高速平行トス及びパイプ攻撃が当たり前の時代へと突入する。これは、再び攻撃システムが優位となりうることを意味するわけであり、対抗するブロックシステムとしては、如何にして相手チームの攻撃の幅を狭めるか? が重要となる。それは当然、如何にして相手チームのレセプションを乱して、攻撃の幅を狭めるか? ということを意味するわけであり、それは即ち、スパイクサーブの重要性に拍車をかける結果となった。また、相手チームのレセプションを乱せなくとも、試合の各局面において、どこにトスが上がりやすいか? ということを事前に予測して、その都度最も有効なブロックシステムを、試合中に切り替えることが要求されることにもなり、それは即ち、データバレーの重要性に拍車をかける結果にも繋がった。

以下に、参考となる書籍を挙げておく。

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ブロックシステム変遷(その1) - "バンチ・リードブロック"システムの登場

新しい戦術というのは常に、「目先の相手の優れた戦術に対して、如何に対抗するか?」とい模索の中から生まれる。
ブロックが「守備の最前線」である以上、ブロックシステムの変遷は、攻撃システム戦術の変遷と密接に絡んでいる。

速攻などの攻撃が生まれて以来、前衛の3枚のアタッカーそれぞれの多彩な攻撃に対抗すべく、基本的にアタッカーとブロッカーが「1対1」で真っ向勝負をする、コミットブロックが一般的となった。即ち、コミットブロックとは、トスが上がる前からアタッカーをマンツーマンでマークし、アタッカーの助走と同時に、つまりトスが上がる前に跳びにいくブロックを表す。相手のスパイクをシャットすることを目標にする場合、このコミットブロックは、最も優れた戦術となる。従って、コミットブロックを相手が採った場合、アタッカー3枚対ブロッカー3枚のそれぞれの「1対1」の「個人技」同士の戦いでは、素直にいけばブロックの方が有利となる。そのため、攻撃する側は策を練らなければならない。「個人技」同士の「1対1」では対抗できないため、時間差攻撃といった、アタッカー同士がセンター付近で "絡む(=交差する)" 攻撃、すなわちアタッカー3枚が「組織的に」コンビネーションを繰り出して、ブロッカー3枚に対抗するようになる。さらには前衛3枚のアタッカーでは数が足らないと、後衛のアタッカーにバックアタックを打たせることによって、「アタッカー4枚対ブロッカー3枚」という状態を作り出すことが当たり前の時代がやってくるのである。

バックアタックの普及により、アタッカーに枚数で絶対的にかなわないブロッカー(ルール上ブロッカーは3枚が上限となる)側としては、「組織的に」対抗する必要が出てくる。そこで生まれたの戦術がリードブロックである。即ち、リードブロックとは、トスが上がるのを確認してからブロックに跳びにいくブロックを表す。リードブロックを採ると、相手のトスの上がる場所を "読みとって(='read')" 跳ぶことになるため、「1対1」で対抗する必要はなく、トスが上がったアタッカー1枚に対して、ブロッカー2枚ないし3枚で対抗することが可能となり、すなわち「1対2ないし1対3」の状態が作り出せるのである。この戦術をチーム戦術としていち早く採り入れたのが'84年ロサンゼルス・'88年ソウルと、オリンピック2連覇を果たした、アメリカ男子ナショナルチームであった。
(一方、同時期にアメリカと世界一を常に争っていたロシア男子ナショナルチームは、リードブロックではなくスタックブロックを採用していた、、、。これについては、以前私が「へりくつバレーボール」に詳しく書いているので、是非こちらを参照してもらいたい。)

当時のアメリカ男子ナショナルチームが、リードブロックの採用によってオリンピック2連覇の偉業を成し遂げたのを契機に、一気にリードブロックは世界の男子バレー界に浸透することとなった。確かに、「相手のスパイクをシャットする」という観点からは、コミットブロックにかなわないリードブロックであるが、コミットブロックが、時に相手の時間差攻撃などに対して、ノーマークとなってしまいかねない「確実性の低い」戦術であるのに対して、相手のどんな攻撃に対しても確実にワンタッチを取ることが理論的に可能となるリードブロックが、より「確実性の高い」戦術として好まれた(それは即ち、ブロックシステムとディグを連携させて、両者で「守備」と考える、という考え方を意味する)わけである。そして、その「確実性の高い」という目的のためには、リードブロックという、単に1人のブロッカーが「どうブロックに跳ぶか?」というだけにとどまらず、ブロッカー3枚が「どう組織的にリードブロックを行うか?」が問題となり、そのためにはブロッカー3枚が「どのような位置取りで構えるか?」がより重要となる。そのブロッカー3枚の「位置取り」を表すバレー用語として、以下のものがある。

バンチ "bunch" ・・・語義は「束」、即ちブロッカー3枚がセンター中央に「束」の様に集まってブロックに跳ぶ、という意味であり、両サイドのブロッカーがセンターブロッカー(middle blocker)とあまり間を開けずに並んだ状態で構えるブロックシステムを表す。その状態でリードブロックを行うシステムを、バンチ・リードブロックシステムと呼ぶ。
スプレッド "spread" ・・・バンチ "bunch" と対になる用語であり、ブロッカー3枚が間を開けて構えるブロックシステムを表す。バンチ "bunch" では、両サイドのアンテナいっぱいまで届く平行トスにはついて行けないことが多く、それらのトスに備える場合に用いるシステムである。
(その他、上述のスタック "stack" も、狭義の意味ではこの範疇に入る用語である。)

もともと全盛であったコミットブロックに対抗すべく、センター付近での時間差攻撃などが多用されていた当時としては、当然バンチが理にかなっていた。アメリカ男子ナショナルチームがいち早く採用したリードブロックを、さらにブロックシステムとして洗練されたものに仕上げ、バンチ・リードブロックシステムとして完成させたのが、'90年代前半に全盛時代を迎えたイタリア男子ナショナルチームであった。

以下に、参考となる書籍を挙げておく。なお、下記書籍ではリードは、シー アンド レスポンド "see and respond" という言葉で表現されている。

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2005年10月 2日 (日)

"オポジット"とは?

オポジット "opposite"とは?・・・コート上の6人のサーブ順での並び順、即ち「配列」において、セッターと対角線上に並ぶポジションのこと。現在のトップレベルのバレーにおいては、同ポジションにスーパーエースと呼ばれる、レセプションに参加せずに攻撃に専念する、チームで最も攻撃力のあるエースを配する場合と、レセプションにも時によっては参加する、攻守の要であるユーティリティプレーヤーを配する場合(その場合ユニバーサルとも呼ばれる)がある。戦術の変遷としては後者から前者に一貫して移行しつつあったが、アテネオリンピックで金メダルを取ったブラジル男子ナショナルチームが後者に移行しつつあることもあり、再び後者が主流になる可能性もある。

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2005年10月 1日 (土)

"レセプション"と"ディグ"

レセプション "reception" とは?・・・サーブレシーブ・サーブカットのこと。最近では、特に女子バレーにおいて「キャッチ」という言葉も耳にするが、日本でしか通用しない。"reception" は "receive(レシーブする)" の名詞形であり、海外では「レシーブ」とは「サーブレシーブ」のことを指すのである。一方、サーブレシーブ以外のレシーブ、即ちスパイクレシーブや繋ぎのレシーブのことはディグ "dig" と呼んで区別する。要するに、"Best Receiver" とは「大会を通じてレセプション(サーブレシーブ)が最も上手だった選手」のことを指し、世界のバレー界で評価されるレシーブ力とは、「観客を惹きつける派手なファインレシーブ」ではなく「当たり前のように取るから目立たないレシーブ力」を指すのである。

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