2008年7月 2日 (水)

"えせリードブロック"改め"ゲスブロック"

こちらで解説したえせリードブロックだが、東レアローズ男子の小林敦コーチのスポーツナビでのコラムでも登場し、本日届いていた『Coaching & Playing Volleyball(CPV)』の56号でも、米山一朋(嘉悦大)監督の記事中で登場しているゲスブロック "guess block" という言葉が、これと同じ概念を表す用語と考えられる。ゲス "guess" とはまさに「当てずっぽう」の意味である。

ところで、リードブロックの説明として時折、「トスの上がる場所を『読んで』跳ぶブロック」という表現を目にする。リード "read" の訳語が『読む』であることから、このような表現が出てくるものと推測するのだが(何を隠そう、私自身も'99年ワールドカップレポの際には、同じような表現を一部使っていた)、この表現はよく考えると誤解を非常に招きやすい表現である。日本語の『読む』には、単純に「書かれている文字を字面通りに『読む』」という意味もあるが、同時に「行間を『読む』」という表現に代表されるように「書かれていないもの、見えないものを心の目で『読む』」という意味がある。そのため「トスの上がる場所を『読む』」というと、「トスがどこに上がるのかを『予想する』」という意味にとられかねない。そのように誤解するとまさにえせリードブロック改めゲスブロック "guess block" となってしまう。恐らく日本人にとっては、リード "read" という言葉よりも、『セリンジャーのパワーバレーボール』で採用されているシー アンド レスポンド "see and respond" という言葉の方が、スムーズに概念を理解しやすいだろう。

日本人は外国語を理解する際に、いったん日本語の訳語に置き換えないと、意味を理解できないという悪い癖がある。言葉は文化に根ざしたものであり、それぞれの国で文化背景も全く異なるわけなので、訳語といっても必ずピタッと一致するものではない。従って、いったん訳語に置き換えるのではなく、出来れば原文のまま意味を理解しようとした方がいい。今説明したリードブロックの例は、まさにその日本人の悪い癖が災いする好例だと思う。以前何度か解説したデディケートなどは、確かに日本人には馴染みがない英語なので、意味が理解しにくいと思われるが、だからといってそれを無理に訳語を当てるとますます意味がわからない(しばしば『捧げる』という解説がなされているのを見るが、英語の "dedicate" と日本語の『捧げる』は、概念が必ずしも一致しない、、、あくまで「(何かに対して)(自分の神経などを)集中させる」というのが "dedicate" であって、(自分の神経などを)の部分に(自分の人生や一生を)が入った場合に『捧げる』という日本語が当てはまるだけである)。無理に訳語などに置き換えずにデディケートという新しい言葉として理解した方がいい。

例えば "libero" はもともとイタリア語で『自由』を意味する言葉だが、バレーにおけるリベロは実際には『自由』どころかプレー上たくさんの制約で縛られている。 "libero" が日本で『自由』という言葉として馴染みがある言葉であったならば、リベロ制導入時に多くの人が違和感を覚えて、ルールとしても浸透しなかったはずだ。ところが、実際には違和感どころか、すっかり当たり前のルールとして定着した。 "libero" がイタリア語でどういう意味なのか? など知らなくても、リベロという新しい言葉として、日本のバレーファンに定着したのだ。

本当は、日本人誰もが意味を「すぐに」「正しく」理解できる言葉を当てはめられたら一番いいのだろうが、バレーボールというスポーツにおける戦術用語に限っては、その概念自体が日本のバレーボール界に存在しないことも多いという現実があるため、実際には困難であろう。「戦術面で日本が世界から遅れを取っている」という現実を直視するためにも、ある程度英語の戦術用語を採り入れて行くべきだろうと個人的には思う。

えせリードという言葉は個人的にはすごく気に入っているのだが、この言葉だけでは "guess" の概念の全てを表現できてはいない。従って、これからはゲスブロック "guess block" で統一したいと思う。

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2008年6月 8日 (日)

16年ぶりのオリンピック出場権獲得に思う・・・

ご存じのとおり、全日本男子は見事、16年ぶりのオリンピック出場権を獲得した。

選手達はよく頑張った。本当に素晴らしいと思う。そして、久々にオリンピックでの男子バレーの試合中継を(日本戦以外も)見られる環境を作ってくれたことを、素直に感謝したいと思う。

しかし、しかしだ。
日本中が「日本男子バレー復活!」などと浮かれてしまう恐れがあるからこそ、だからこそ今、書いておきたい、いや書かねばならないことがある。


『ばれにゅ☆どっとねっと』より引用

植田監督が受け継いだ「イズム」

ミュンヘン組も植田監督を絶賛 男子バレー(産経新聞) - Yahoo!ニュース
金メダルに輝いた"ミュンヘン組"にも、新たな世代の五輪出場は感慨深い。「3年前に死にかけていた男子バレーが、植田の人間教育で生き返った」と監督を称賛するのは、ミュンヘンで監督だった松平康隆日本協会名誉会長。「日本らしいハートのこもったチームを作ってくれた」とは、バルセロナ五輪で監督として、主将だった植田氏に"ミュンヘン魂"を植え込んだ大古誠司氏だ。


さて、このお二方の「イズムを受け継いだ」と発言された植田監督。

・・・(中略)・・・

正直、上記発言については一瞬引きましたが、事実なんでしょう。日本バレー界の根強く残る古い体質がこれからも引き継がれていくのかと。ここで再び五輪出場を決めたことで、それはさらに強固なものになっていくのではないかと。

・・・(中略)・・・

五輪出場を決めたことで、日本バレーボールの現状が「これでよし」とされてしまう危険はあります。非常に不安ですね。


植田ジャパンがオリンピック出場権を獲得できた背景にはもちろん、"ミュンヘン組"の強固なバックアップがあったのは間違いない。女子とは違って、Vリーグの各チームも全日本男子に対して一致団結して協力する体制が整っていた印象が強い。さらにこれは女子同様に、最終予選をアジア大陸予選とくっつけておいて、日本の比較的相性の良い相手だけを選んできて、そして日本で開催するという、苦肉の策としか思えない「日本救済のためだけの」方式を採って、盤石の策を打った。もちろん、同じ状況でも4年前は獲れなかった出場権であるから、全日本男子の実力が上がったのは紛れもない事実だろう。しかし、日本の男子バレーを一旦「死にかけ」の状態に陥れたのも、紛れもなく"ミュンヘン組"の仕業なのだ! 寺廻監督時代、"ミュンヘン組"があの手この手を使って、当時の全日本男子チームの足を引っ張ろうとしていたのは、一ファンとして端から見ていても明らかだった。女子は今と同様のOQTのシステムになっていたのに、この時の男子はアジア大陸予選が単独で行われ、最終予選は当然のように海外で行われ、そして寺廻ジャパンは(最終的にシドニー本戦で4位に輝くことになった)アルゼンチン相手に砕け散った。これは、植田ジャパンが当たり前のように受けている強固なバックアップが、全く受けられなかったからこその結果とも言えるのだ。さらには、全日本男子がオリンピック出場権を逃すそもそもの歴史を作った張本人も"ミュンヘン組"なのだ!(詳しくは、こちらを参照)

"ミュンヘン組"は本当にマスコミ利用・情報操作に長けている。だからこそ日本バレー狂会は、ミーハーなファンばかりを増やそうとする、、、その方が、自分たちの情報操作でファンを煽動しやすい状況を作れるからだ。16年もの長い間、オリンピックへ出られない歴史が出来てファンも着実に減り、マスコミからも冷遇されるようになって、その状況の下で再び獲得したオリンピック出場権。今回のOQTでたくさんの新たな男子バレーファンを獲得したに違いない。そして、その新たなファンは、狂会の狙い通りに、昔の歴史すなわち、"ミュンヘン組"があの手この手で全日本男子の足を引っ張っていたことなど知る由もない、ミーハーファンであるはずだ。その状況ですかさず発表される記事が、この『ばれにゅ☆どっとねっと』に引用された「ミュンヘン組も植田監督を絶賛」なのだ・・・。

日本は女子バレーの世界も、一度シドニーの出場権を逃すというショックを味わいながら、気づけば結局元の木阿弥に戻ってしまった。男子に及んでは、オリンピックへ出られないのが当たり前という雰囲気にまで陥ってもなお、何ら体質は変わらないし、変わろうともしない。頑張っている選手達には感謝しながらも、今の状況を複雑な気持ちで見ざるを得ないコアな長年の一ファンがここにいる。そして、やはり同じような気持ちを抱いているファンは、他にも確実にいるのだ。

・関連記事その1:『/ja あやつる YmrDhalmel』黄金時代と暗黒時代とその後
・関連記事その2:『中西美雁の日々是排球』ただ勝利のためだけに


残念ながら8年前には、ネット上を見る限り戦術を語れるファンはほとんどいなかった。その意味で、寺廻監督はファンからもバックアップがなかったと言える。『ベリーロールな日々』に代表されるように、ネット上で戦術を語れるファンが急増している今、その状況も植田監督にとっては追い風になっていると言えるだろう。しかし、世界のバレーに追いつこうとして植田監督が採り入れている方向性は、寺廻監督が8年前にやろうとしたことと何ら変わらない。以前も書いたように、私は未だに朝日健太郎選手(現・ビーチバレー)を超えるmiddle blockerは日本にはいないと思っている。彼らをインドアの世界から追い出したのは、紛れもない今も旧態依然として脈々と受け継がれる、日本バレー狂会の体質そのものだ。

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2008年5月25日 (日)

ヌットサラ萌え〜〜

決して容姿に対してではないですよ。

容姿も悪くないですけど、何よりあのセットアップに萌えますね。そうです、アタックライン付近から上げるBクイックのトスに!


あー、そう言えばその昔、アジア大会のビーチバレー女子で、佐伯・高橋ペアが金メダルを賭けてタイのペアと戦っているのを見て、思わずタイを応援してしまった私・・・(そして、結果は見事にタイペアの優勝!)。でも、後日後輩とその話になって、妙に意気投合。そーかぁ、やっぱりお前もタイを応援したんかー(笑)。


・・・だって、タイの選手、美人なんやもん!・・・

・・・せやろ、せやろ・・・


はい、あの頃からタイを応援してます(爆)。

タイの選手の素晴らしいのは、例えば相手コートからチャンスボール(フリーボール)がエンドライン付近に返ってきた場面で、各選手が決してアンダーハンドパスを使わずにオーバーハンドパスを使って、セッターにきっちりパスを返す点。日本戦の第3セットでも見られたし、他国との試合でもしばしば見られる光景です。実に基本に忠実な、丁寧なプレーですね。日本がいつのまにか忘れてしまったプレーと言って過言でないでしょう。


今日も面白いことを言ってましたね、地上波で。韓国戦は、相手に時間差攻撃を面白いように決められたから、何とか修正しないといけないとアナリストが分析したとかしないとか・・・。だからぁ、要するにぃ、、、


今の全日本女子のブロックシステムは、コテコテのマンツーマン・コミットに戻っちゃったってことでしょ!(爆)

そりゃぁ、ユウは要らないでしょう、納得です(爆)。


p.s.: プルームジットって、あんなにがっしりした体型でしたっけ?! すごい筋トレ積んできたの? まさか、ドーピング? ただ単にウエイトオーバー??

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2008年5月17日 (土)

何が「1秒の壁」や? 「データバレー」や!?

ホントに始まったんですねー、OQT。
4年前は・・・必死にテレビにかじりついて見ていたような・・・。何なんでしょうねぇ、この気持ちの高ぶらなさ加減は。まぁー世間的にも、ネット上でもほとんど盛り上がってないようですけどね(爆)。

何ですか? 今頃「1秒の壁」って?
(渡り鳥さんの御協力により)前々から書いてきたように、メグはパイオニアではとっくの昔から、セッターのセットアップからほぼ1秒か0.9秒ほどで、両サイドの平行及びパイプ攻撃・バックライトからのバックアタックを打ちこなしているのだ。

さらには・・・ちょっと今回は真面目に「数学的に」書いてみよう。セッターのセットアップ位置(床からの垂直方向の高さ)をh(0)(メートル)・その位置からセットアップされるトスの垂直方向の速度をv(0)(メートル毎時)とし、セットアップの瞬間からt秒後のボールの位置(床からの垂直方向の高さ)をh(t)(メートル)・その瞬間のボールの垂直方向の速度をv(t)(メートル毎時)、重力加速度をgとすると、空気抵抗を無視すれば、、、

・v(t)=v(0)-g*t
・h(t)=h(0)+v(0)*tー1/2*g*t^2

となる。トスの放物線軌道において頂点を通過する瞬間にはv(t)=0となるので、上記2式からこのtを求めると「t=sqrt(2(h(t)ーh(0))/g)」と計算され、即ち「セットアップの瞬間からトスが放物線軌道の頂点を通過するまでの時間は、セットアップ位置とトスの高さ(=h(t)-h(0))が一定ならば一定値をとる」ことになる。

先日、この理論式に実際の重力加速度の値などをここに当てはめて試算してくれた方がいらっしゃって、それによればトスの頂点からボール3〜4個分トスが落下してきてスパイクヒットを行う場合、「スパイクヒットの高さが25cm違っても、セットアップの瞬間からスパイクヒットまでの時間は、わずかに0.06秒しか変わらない」ということが判明した。


今晩、TBS系列の『ブロードキャスター』を見ていたところ、案の定OQTの話題が採り上げられ、そして「1秒の壁」について、さも重大なことのように解説されていたが、上述の数学的事実を考慮すれば、番組中でパイプ攻撃に関して「1秒」で打つ木村沙織選手と「1.2秒」かかる栗原選手のスパイクヒットの位置が、たとえ25cmも(!)違っていたとしても、それでも「0.2秒もの時間差」は説明がつかない、、、セッターが同じ、つまりセットアップ位置が同じ場合に「0.2秒もの時間差」が生まれるためには、トスの高さ(=h(t)-h(0))が違ってこなければ、とても説明できないのである。

つまり、現在の全日本女子でメグがパイプ攻撃に「1.2秒」かかっている理由は、メグ自身の問題ではなく、セッターの意識の問題なのだ。 セッターの頭の中に「打点の高い選手には、打点の低い選手より(頂点の)高いトスを上げなければいけない・・・」という、数学的に間違った観念があるからなのだ!


さらにため息が出たのが、その後スタジオに登場した天才セッター。

データバレーなーんて知る由もない、というか多分興味もない、そんな番組出演者のおじさま方を相手に、「データバレーが活かされた今日のこの場面!」とかいって、何を解説するのかと思いきや、、、第2セット終盤、先にポーランドにセットポイントを握られた場面での、セッター竹下選手に代えてアサコ投入の場面。


・・・本来ならセッターの竹下(選手)がライトブロッカーで跳ぶので、そこを狙ってポーランドがレフトから攻撃を仕掛けてくるので、敢えてセンターブロッカーの荒木(選手)をライトブロッカーで跳ばせた(云々)・・・


ふざけるなーーーっ! それのどこが「データバレー」なんだよー!(怒)

皆さんは騙されませんよね、もちろん。


そうです、そのとおり。アサコをセンターブロッカーで跳ばせて、荒木選手をライトブロッカーで跳ばせた理由は、ただ単にアサコの方がセンターブロッカーとしての技量が優れているから! それだけのこと、、、。大村選手が同じようにワンポイントブロッカーで出てきても、いつも荒木選手はライトブロッカーに追いやられます。そんなの当たり前。

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2008年4月21日 (月)

申し訳ございません・・・

3月に一度、「コメントレスも止まったまま、またメール頂いた方にもまだ返信できておりません」と謝っておきながら、結局その後も1ヶ月ほど、ほぼ同じ状況でした。大変申し訳ございません。

本当に、少しずつ遅れを取り戻していきたいと思います。

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2008年4月 3日 (木)

今年の東レ(その2)

結果的に、今シーズンの東レのチームブロック数はセット平均2.74で3位。昨シーズンは2.09で9位であったことを考えると、随分と進歩したと言って良い。が、実はその半数以上を荒木選手とベタニア選手の2人で稼いでいる。単に「2人で」稼いでいる、と言ってしまえば、例えばパイオニアも両センターのユウとアサコで確かにチームブロック総数の半数以上を稼いでいるので、別に珍しいことではないだろうが、(その1)で書いた今シーズンの東レの配列においては、裏センターの荒木選手と表レフトのベタニア選手というのは、実は「隣り合う2人」なのだ。ブロックというのは前衛のプレーヤーのみに許されているプレーであるので、全部で6つあるローテーションのうちで、この「隣り合う2人」がともに前衛である2つのローテーションで、ブロック決定の出現頻度が異常に高いという、ローテーション上の「不均等」が生じているはずだ(もちろん、スタートローテーションの関係で、この2人がともに前衛のローテーションの出現頻度自体が多いという点も考慮すべきだが)。

例えばこの2人とセッターの中道選手の3人が前衛のローテーションでは、ライトブロッカーの中道選手だけがネットから離れて構えて相手チームのレフト攻撃のみにコミットし、荒木・ベタニア両選手が2人だけでバンチ・リードを行っている。3人で行う通常のバンチ・リードシステムに比べて、レフトブロッカーであるベタニア選手は、さらにセンターより構えており、その分だけ直後のトランジションでの攻撃への参加が難しくなるはずなのだが、ベタニア選手の並はずれた攻撃力がそれを十二分に補っている。そのため、このローテーションでは、ブロック決定本数も多いし、たとえブロック決定とならなくても、トランジションでの(ベタニア選手の)決定率も高いために、相当にブレイク率が高いはずだ。159cmのセッターが前衛で本来は苦しいはずのこのローテーションでも、確実に点数を稼ぐことが出来る点が、今シーズンの東レの一番の強みと言って良いだろう。

しかし、リーグ当初の菅野監督の構想としては、上述のようなローテーション上の「不均等」を恐らく避けたかったのだろうと推測する。177cmとそれなりに上背のあるオポジットの芝田選手に、敢えて159cmしかない中道選手と同じようなブロックの跳び方をさせ、表センターとして冨田選手を起用したのは、昨シーズンでスパイク賞を獲得した西脇選手の攻撃力を捨ててまで、冨田選手のブロック能力、はっきり言えばバンチ・リードを行えるだけの能力を選択した、ということだと思う。冨田選手と「隣り合う」木村選手との2人でも、荒木・ベタニア両選手同様に「2人でバンチ・リード」をさせて、ライトブロッカーは中道選手・対角の芝田選手どちらであっても、ゾーン・コミットを採る、、、このブロックシステムに合わせて、守備体型を配置する「ブロックとディグの連携」を図ろうとしていたはずだ。

結果的には恐らく、トランジションでの攻撃での決定力がなかったために、冨田選手よりもライト側へのワンレッグ攻撃での決定力のある西脇選手に代えざるを得なくなったのだろう、、、リーグ序盤はベタニア選手が合流していなかったため、冨田・木村両選手が前衛の場面では、この2人がバンチ・リードブロックで跳んだ直後のトランジションでの攻撃は、表レフトでその場面は後衛に位置する向井選手のパイプ攻撃しか選択肢がなかったはずであるから。だが、結果的には冨田選手を西脇選手に代えて、西脇・木村両選手が前衛の場面ではある意味「開き直って」マンツーマン・コミットに切り替えたことが、木村選手のブロック決定本数の増加(昨シーズンセット平均0.23・今シーズンセット平均0.37)にも繋がったし、何より彼女のトランジションの場面での攻撃という面での負担軽減にも繋がったと言って良いだろう。災い転じて・・・といったところか?


では、今シーズンの東レには死角はないのだろうか? 遂に念願のV・プレミアリーグ初制覇を成し遂げることになるだろうか?

確かに荒木選手のブロック賞は素晴らしいと思う。が、これまでも折に触れて書いているように、彼女は的を絞った場合(即ち、相手チームのトスが上がる場所が明らかな場合)には186cmの高さを活かしたブロック力を発揮する一方で、リードブロックで跳んだ時のネットからの体の離れ方が尋常でない。実際、彼女は有効なワンタッチを取るケースが非常に少ない。バンチ・リードをやっていると言っても、完成度は久光・パイオニアのセンター陣とは比べものにならない。それは今シーズンも何ら変わっていない。

実は、パイオニアのアサコも、昔からしばしば(疲れてくると?)両サイドの攻撃に対するブロックで体がネットから離れ気味になる悪い癖がある。が、しかし彼女が東レのセンター陣と違うところは、ネットから離れ気味になると、手の出し方を「キルブロック」から「ソフトブロック」にきちんと切り替えるところだ。だから、体がネットから離れていてもしばしば有効なワンタッチを取ることが出来る。

要するに、今シーズンの東レでのブロックシステムの要は、middle blockerではなく、実はベタニア選手なのだ。今シーズンで東レが最後に敗戦を喫した2レグの久光戦に、東レの弱点が隠れていると思う、、、ベタニア選手がレフトブロッカーであるために、どうしてもライト側からの攻撃を仕掛けづらいというのが東レと対戦するチームの正直な印象であろうが、敢えてライト側からの攻撃を積極的に仕掛けることで、相手チームとしては道が開けると思う。必ずしも強打は必要なく、軟攻でも構わない。この日の久光の勝因はそこにあった。

結局ブロックシステムを「2人バンチ・リード」の一つに統一できなかった今シーズンの東レは、結局のところは本当の意味での「ブロックとディグの連携」を図ることは難しかったはずだ。だから実際、デンソーやパイオニアが(さらにJTも当初)やろうとしていた、セッターがファーストタッチを行った場面でのトランジションの戦術(リベロを中心とする、後衛ライトを守る選手がトスアップを行う戦術)は、東レでは見受けらない。ライトから軟攻を仕掛けられた直後のトランジションでは、誰がトスを上げるのかが曖昧であり、それをたとえセッターの中道選手が上げることになっても、かなりの高確率でレフトへのハイセットかベタニア選手へのパイプにトスが上がっている。この点を突いていけば、東レの攻撃を非常に単調なパターンに持ち込むことが可能であろう。果たして、ライトにスーパーエースを配するデンソーが、決勝でどのような戦いを挑むであろうか? 注目してみたいと思う。

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2008年4月 1日 (火)

今年の東レ(その1)

さて、お待たせの(誰も待ってないって?)今シーズンの東レの戦術分析に入りたいと思う。

『チームの顔』で菅野監督は、こう語っている。

前回(のリーグは)ブロックの成績が非常に悪かったので、今シーズンは特にブロックとレシーブに力を入れてやってきました。・・・(中略)・・・ブロックを含むディフェンスが鍵を握るという意味では、センター陣の役割は大きいと思います。

確かに、昨シーズンまでの東レのブロックの問題点は、過去に何度か書いてきたとおり「組織化されていない」点に尽きる。これについては『日本女子バレーコンプリートガイド』の中でも「若さ以上の問題点は組織化の遅れだ」と評されている。上述の菅野監督のインタビュー記事からは「ブロックとディグの連携を強化してきた」という風に受け取れるだけに、それならば当然、ブロックの組織化が図られているはずだと考えるのが自然であろう。その意味で、今シーズン東レのブロックシステムがどのように生まれ変わっているのか?・・・この点にリーグ開幕当初から私は注目していた。

ところが蓋を開けてみると、昨シーズンからセッターに転向した大山未希選手に代わって、今シーズンは159cmの中道選手が正セッターの座に着いた。これについては正直、驚きを隠せなかった。「ブロックの組織化」という命題に159cmのセッターはどう考えても障害となると思われるからだ。では実際、今シーズンの東レのブロックシステムは如何なるものだったのか?


ブロックシステムの分析に入る前に、書いておかなければならないことがある。今シーズンの東レは、昨シーズンとは配列を大きく変えてきた。現在の全日本女子の主力でもある木村・荒木の両選手を昨シーズンの表レフト・表センターから、今シーズンは裏レフト・裏センターへと変えたのだ。代わりに表レフトを開幕時は向井選手が、表センターを冨田選手が務めていた。

今シーズンの東レには昨シーズンからの引退選手が一人もいなかった。昨シーズンから戦力が全く変わらないという、ある意味恵まれた状況の中で、サマーリーグや国体といった若手主体で臨むチームが多い大会にあっても、全日本選手の2人(木村・荒木両選手)を除いたベストメンバーで戦っていたところからも伺えるように、今リーグのためのチーム強化を昨シーズン終了後から1年間をかけて、一貫して図っていたという印象が強い。その意味で、スタメンの配列についても、恐らく菅野監督は木村・荒木両選手及び、新外国人助っ人のベタニア選手の合流を見越しつつ、ベストの配列をリーグ開幕より遥か前から構想を練っていたに違いない。結果的に木村・荒木両選手を裏レフト・裏センターに配する配列を選択した根拠に、上述の「ブロックの組織化」「ブロックとディグの連携」があったのだろうと推測する。

結論から言うと、昨シーズン中途半端にやろうとしてバラバラになっていたバンチ・リードブロックシステムは、今シーズンは採っていないと言ってしまって良いだろう。ライトブロッカーとなるセッターの中道選手と対角の芝田選手は、基本的にゾーン・コミットで、2人とも「デンソー方式」でネットから離れ気味に構えて相手チームのレフト攻撃に対抗している。一方、残りのレフトブロッカー・センターブロッカー2枚は、ベタニア選手が前衛にいればバンチ・リード、木村選手が前衛にいればマンツーマン・コミットに切り替わるという複雑な方式となっているように見える。しかし、リーグ開幕当初には表センターとして、昨シーズンのスパイク賞を獲得した西脇選手に代えて冨田選手をスタメンで使おうとしていたことから、レフト・センターの2枚のブロッカーはバンチ・リードを採りたかったのではないかと想像する。

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2008年3月23日 (日)

"キルブロック"と"ソフトブロック"

キルブロック "kill block"とは?・・・ブロックを行う際の手の構え方の一つで、ブロックシャットを狙って手のひらを下に向けて、手をネットから相手コートエリア内に出すブロックの手法のこと。一方、ブロックシャットを敢えて狙わずに、有効なワンタッチを取ることを狙って手のひらを上に向けて、手をネットから相手コートエリア内に出さないブロック手法をソフトブロック "soft block"と呼ぶ。通常ソフトブロック "soft block"は、B級レベルなどで低身長の選手が多いチームなどで活用されるブロック技術であり、トップレベルのバレーにおいてはブロックといえば、キルブロック "kill block"を用いるのが通常だが、トップレベルでも例えばリードブロックを採っていて、ブロックに跳ぶのが遅れた場合に、ブロックシャットは諦めて、ワンタッチ狙いでソフトブロック "soft block"に手の出し方を切り替える、という場面がある。

(追記)トラックバック頂いた、area71さんのブログをご覧頂ければ、具体的にソフトブロック "soft block"の手の出し方がわかりますので、是非ご覧下さい。

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